開発トップが語る人材戦略
取締役専務執行役員
コンシューマゲーム開発、PS・AM事業管掌
江川 陽一
近年の開発成果を、継続できる仕組みにしていきます
「良い作品でなければ全く売れない」、「世界ブランドを志向しなければゲーム業界では生き残っていけない」。カプコンの開発思想と体制には、この考え方が根底にあります。
私が開発責任者となり、約2年が経過しましたが、その間、自分のモットーである「逃げない、あきらめない」を前面に出し、課題であった「世界トップクラスのクオリティの確保」で大きな成果を出すことができました。加えて、開発組織全体において、中期的なブランディングを意識した組織運営が機能し始めており、安定成長に向けた体制作りが進んでいます。
今後、私が注力すべきミッションは、従来の課題に加え、(1)世界トップクラスのクオリティと収益性の両立、(2)モバイルでのヒット作創出、(3)eスポーツや長期販売モデルへの開発対応、(4)マルチプレー対戦などネットワーク技術の強化、です。
モノづくりにおいては、往々にして「クオリティ」と「予算」は対立するものですが、当社の開発者は職人気質の尖った人材であるがゆえに、ヒットタイトルが生まれてくる素地があります。私は、彼らのこだわりを大事にしつつ、収益性とのバランスを両立する責任を果たしていきます。
また、これらミッションの実現には開発リソース(人員)の拡充が必要不可欠であり、引き続き、開発人材の採用と育成に注力していきます。
コンテンツ名 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 (計画) |
未発表タイトル除く 2018年8月末時点 |
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バイオハザード |
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モンスターハンター |
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ストリートファイター |
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デビル メイ クライ |
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ロックマン |
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合計 | 6タイトル | 11タイトル | 10タイトル以上 |
注1) ※は現行機移植 注2) NSWはNintendo Switch
人的資本への投資 ~開発組織・人材の強化~
人的資本に対する基本的な考え方
年々進化するゲーム業界では、「G(通信速度)」と「K(画面解像度)」への対応が重要な鍵となります。
また、大規模化するゲーム開発に即応し、かつ安定成長のための有力タイトルを充実させるためには、何より人員の増強が必須です。そのため2011年度から毎年約100名の開発者を採用し、2021年度までに2,500名体制にする目標を掲げています。
外注よりも、固定費が増える内製化を選択する理由は、ゲーム開発の高度化・大規模化にあります。対応可能な外注先は僅少であることに加え、内部で育成し切磋琢磨する環境を築くことが、世界トップクラスの開発力と技術力には必要と判断したからです。
上記方針のもと、主力のデジタルコンテンツ事業に当社開発者の内、約90%の人材を配置しています。
人材育成の仕組み
新卒に対しては、人材の質と量を担保すべく、ヒューマンスキルやテクニカルスキル向上のための独自の研修やメンター制度を導入するなど、3年で若手として一人前に育成する実践的な仕組みを整えています。また、中堅・若手人材(コア育成枠)に対しては、ゲーム開発全体の指揮を執る「コアメンバー」への成長に向け、彼らを要所に抜擢し、タイトル開発を通じて育成しています。ときに失敗もあり、壁にもぶち当たりますが、多くの経験こそが本人の成長の糧となります。
今後は、よりブランドに特化した組織体制にするため、ブランドベースでの人材配置を検討していきます。例えば「バイオハザード」と「モンスターハンター」では求めるスキルが異なるところも多く、どの開発者がどのブランドに適性があるかを見極めて適材適所に配置することで、よりクオリティの高いゲームを創出できると考えています。
モチベーションの向上
人材への動機付けとしては、タイトル別インセンティブやアサイン手当などの報酬面だけでなく、事業所内託児所を設置するなど働きやすい環境を整備しています。しかし、クリエイティブなゲーム開発において、開発者の最大のモチベーションは、自分の作りたいものが作れる環境にあるか、でしょう。私も開発畑出身であり、それがカプコンの開発の生命線であると認識しているため、予算や納期以外では、できるだけ、ものづくりが自由にできるよう取り組んでいます。
知的資本への投資 ~最新技術の習得・汎用化~
「進化を追わずして、世界トップクラスは成し得ず」という信念のもと、当社は世界最先端の研究開発棟や開発設備へ積極的に投資しており、その技術成果が他社との競争優位に繋がっています。他社との差別化のポイントは、最新技術を汎用化し、開発をしやすくして効率性を上げていることです。例えば、開発エンジン「RE ENGINE」は、実写さながらの表現を可能にするとともに、ゲーム開発に必要な時間を飛躍的に短縮しており、仕様を常に進化できる内作重視の開発体制がこれらを可能にしています。
PDF版ダウンロード
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カプコンの価値創造 (PDF:3.09MB/14ページ)