開発トップが語る開発戦略

江川 陽一 江川 陽一

Development

業績成長を支えるグローバルIPの
安定的な創出に向け、開発人材を強化

取締役専務執行役員
開発部門、PS事業管掌

江川 陽一

Yoichi Egawa

高品質タイトルの創出・拡大

開発の全体方針

デジタル販売の普及とゲームデバイスの多様化により、世界中、いつでもどこでも好きな時に、ゲームを楽しむ流れが加速しており、SNSを使えば誰もが情報発信者になれる時代です。この環境を踏まえ、開発部門では、ヒット作を生み出すため事業部門と連携し、デジタルイベントで効果的な発信を行う販売戦略や、映像展開およびライセンス商品等ワンコンテンツ・マルチユース戦略などの展開により、世界中のより多くの方々に当社のゲームを届けることを意識した開発を推進しています。同時に、変わらない価値として、グローバル市場で通用するオンリーワンのコンテンツを創出し続けることも重要視しています。

カプコンが目指すのは「世界一のゲームコンテンツ企業」。世界トップレベルのゲームクオリティの実現はもちろん、それを支える戦略的なデジタル販売、定期的な追加コンテンツの配信など、的確にユーザーに訴求し、その好奇心を刺激し続ける運営ビジネスを通じて、コンテンツへの満足度を高められるよう力を注いでいます。

こうして培ってきたノウハウに加え、将来に向けては、インパクトのあるビジュアルを実現する映像技術に加え、ネットワーク技術をより高め、次代を切り開くクオリティのゲーム開発に挑戦していきます。

開発戦略

中期経営目標のもと、開発責任者として、コンシューマタイトルに開発投資額の約9割を割り当て、「バイオハザード」や「モンスターハンター」など人気IPシリーズを展開して収益責任を果たすよう努めています。並行してオンライン運営型のビジネスモデルを構築し、追加ダウンロードコンテンツの提供などを通じて、多くのユーザーに長く遊んでもらえるカプコンらしいものづくりを推進していきます。新規IPの創出にもチャレンジしています。直近では、最新世代機向けの『PRAGMATA(プラグマタ)』や『エグゾプライマル』を発表し、制作を着実に進めているところです。

こうしたコンテンツ開発に欠かせないのが、自社で構築したゲーム開発エンジン「RE ENGINE」です。「RE ENGINE」は、高品質なゲーム開発および開発コストの短縮を可能にするだけでなく、各ハードウェアの性能を最大限に引き出せる優れたゲームエンジンです。VRなど先端技術への対応と研究を積極的に行っていくためにも、この内製エンジンも進化させながら、充実したラインナップを目指します。

開発内での協力体制

私は、ヒット作は偶然の産物ではなく、各チームの努力の積み重ねおよび協力体制によって作り出されているものだと考えています。

カプコンにおけるゲーム開発は大規模で、開発期間も長期にわたります。「こういうモノをつくりたい」を実現するためには、個人の能力はもちろんですがチームワークが大切になります。技術面では「RE ENGINE」を用い、技術研究担当者がタイトル開発チームに加わり、各タイトルに最適な開発環境の提供と支援を行っています。品質面では品質管理部門が開発中のタイトルが正常に動作するかどうかの確認や、ゲームの面白さ・快適性をチェックし、チームと意見交換を行い品質向上に努めています。

こうした環境のもと開発された『モンスターハンターライズ』や『バイオハザード ヴィレッジ』の売れ行きは期待を上回り、ユーザーの皆様にも好評をいただいています。今後も、より協力体制を強化し、「世界一のゲームコンテンツ」の創出に努めていきます。

開発人材の育成

高クオリティなゲーム制作の核となるのは「人」です。開発部門では、クリエイターがより力を発揮できるよう、快適な職場環境の構築を進めています。2013年度から毎年100名以上の開発者を採用し、現在では約2,500名のクリエイターが在籍していますが、中長期での持続的な成長には、引き続き人材の確保、戦力化が不可欠です。現在、開発現場では、新規採用した若手社員が実践の場でノウハウと技術を習得できるようにしています。量質ともに高いゲーム開発を経験することで着実に育成しています。

若手社員の早期育成と優秀層の拡大に向けて目標設定・マイルストーンの明確化を実施しています。「適材適所の人員配置」、「育成機会の創出」、「能力向上」を促進し、開発力の強化を図っています。

今春より人材投資戦略の更なる推進のため新たに開発部門の人事体制を再編しました。開発部門における事業成長の促進を目的に人的資源に対する支援を実施し、タイトル利益・生産性向上に必要となる「人材」と「能力」の確保を実現します。

家庭用ゲームソフト販売本数推移 (万本)

  • 採用活動

    採用活動

    新しい人材投資戦略により世界と渡り合える開発人材の育成を推進

    グローバル水準で戦える開発力

    • 松嶋 延幸

      常務執行役員 開発管理統括

      松嶋 延幸

      Nobuyuki Matsushima

    • カプコンのDNAを次世代へ継承し新たな人材の技術、感性を世界水準に

      グローバル市場において価値あるコンテンツを提供し続けるためには、次世代のクリエイターへ“世界一面白いものをつくる”というDNAを継承しながらも、新たな人材が持つ技術や感性との融合を図り、世界水準の開発力へと昇華させる必要があります。そのためには多様な価値観や感性を持つ新しい人材を確保し、いかにして育てるかが重要です。

      開発人事部は開発に携わる人材のための部門として、新たな人材投資戦略のもと、「いつでもどこでも誰とでも繋がる世界」において、「言語や文化を超えてユーザーに楽しんでもらえる“面白さ”とは何か」を育成のキーコンセプトとして、必要なスキルや技術を短期間で身に付けることができるカリキュラムや環境整備に開発現場のマネージャーと一緒に着手しています。

    社員の戦力を強化する、3つの人材育成方針

    人材育成の方針は「組織力向上」、「人材情報のパーソナライズ化」、「インナーブランディング」の3つです。

    新入社員育成にあたっては、「短期集中プログラム」で職種別のスキル習得やOJTによる早期戦力化を図ることに加え、新入社員へのフォローやケアを目的とした管理体制の構築など、育成における「組織力向上」を実施しています。

    次に、新たな取り組みとして「人材情報のパーソナライズ化」を促進しています。

    戦略的なタレントマネジメントができる環境の整備に向け、人材情報の一元管理に基づく分析はもちろん、マーケティング思考を取り入れた予測情報の分析強化に着手しています。ハイパフォーマーの行動特性であるコンピテンシー分析により、ハイパフォーマーをいかに早期育成するかという観点で、個々の特性情報の掛け合わせによる情報をもとに、「不足している経験、スキル」を効果的に補うカリキュラムを導入していきます。

    そして、最も重要な、コンテンツ開発のDNAを継承するため、次世代へのインナーブランディングを強化しています。コンテンツの「価値」がどこにあるのかを具体化することで、目指すべき“面白さ”を理解し、開発へと繋げていくトレーニングを実施しています。また、次世代の開発に必要な世界水準の技術の中でも、特に「幾何光学」、「剛体・流体・運動力学」、「ネットワーク」、「AI」、「情報セキュリティ」、「データ分析」をより効率的に学べる環境構築にも力を入れています。

    感性を研ぎ澄ましオンリーワンの感動で世界と繋がる

    “面白さ”とは何かを追求し続ける姿勢と、勇気をもって挑戦する心。そんな志を持った人をカプコンでは求めています。社員一人ひとりの感性を研ぎ澄まし、当社にしか生み出せない感動で世界と繋がる。そんな価値ある遊びを創造し続けることができるよう、全ての礎となる人材が、高度な技術と溢れる好奇心を活かし切磋琢磨できる育成環境を整える。新たな人材投資戦略のもとで、全社一丸となって取り組んでいきます。

  • 開発人材

    開発人材

    学び、チャレンジできる環境で、社員の力を発揮

    • 貴島 千賀子

      ギミック・レベルデザイナー
      第一ゲーム開発部 第五ゲーム開発室

      貴島 千賀子

      Chikako Kijima

      〈携わったタイトル〉
      『バイオハザード7』
      『バイオハザード RE:2』
      『バイオハザード ヴィレッジ』など

    • 誰も見たことのないゲームをチームで生み出す

      「最新グラフィックでゲーム開発ができる会社はここしかない!」その一念でカプコンを志望。入社以来、最新技術で世界を魅了し続ける「バイオハザード」シリーズを中心に、主に背景やギミック制作を担当しています。『RE:2』で初めて謎解きパズルのギミックリーダーに任命されたときは、プレッシャーを感じましたが、そんなときこそ、コミュニケーションとチーム力。メンバーとの連携によってやり遂げ、ユーザーから高評価をいただいたときに、大きな喜びを感じました。2年前に出産、育休を取得して復職。以前同様やりがいのある環境で、シリーズタイトルに携わり培ってきた力を活かし、困難に何度でも立ち向かいながら、新規タイトルを生み出したいと思います。

    • 村上 正成

      UIデザイナー
      CS第一開発統括
      第二ゲーム開発部 第二ゲーム開発室

      村上 正成

      Masanari Murakami

      〈携わったタイトル〉
      『ドラゴンズドグマ オンライン』
      『バイオハザード RE:2』

    • 新しいUIでゲームの魅力を更に高める

      「バイオハザード」などよく遊んでいたタイトルの開発に関われる。そのやりがいを感じながら、現在、UIデザインリーダーとして、プレイヤーの操作環境を整えるUIの作成を担当しています。入社3年目、初めて『RE:2』のUIリーダーを任された時は、不安もあり、デザインの方向性に迷いましたが、先輩に相談していく中で、自分が納得できる答えを追求する力を身に付けることができました。カプコンには「良いゲームを作る」というビジョンを共有する仲間と、アイデアや意見を交わし切磋琢磨して開発できる環境があります。最先端技術や多彩な経験を持った先輩から吸収を続け、より使いやすく新たなUIを追求していきます。

      ※ユーザーインターフェースの略称。UIデザイナーは、ユーザーとの間で情報をやり取りするための表示画面や操作方法の調整・デザインを行う。

  • 開発環境

    開発環境

    世界でも類を見ない最新クリエイティブ環境

    • 人物や物体のリアルな動きを再現「モーションキャプチャ―」

    • 人物や物体のリアルな動きを再現「モーションキャプチャ―」

      現実世界における人物や物体の動きを赤外線カメラで感知してPC上でデータ変換する「モーションキャプチャー」では、天井高7mを誇る国内最大級のスタジオを設備しており、ワイヤーアクションや落下スタントなど、高低差のあるアクションの撮影も可能。キャラクターやオブジェクトのリアルな「動きの追求」を行うことができます。

    • 作業の短縮・高精度化を実現する「3Dスキャン」

    • 作業の短縮・高精度化を実現する「3Dスキャン」

      約310台のカメラを用いたワールドクラスの「3Dスキャン」スタジオを完備。物体を360°取り囲み撮影することで、人やモノをデータ化し、3DCGとして再現します。従来、手作業だったCGモデリングの工程が大幅に短縮されただけではなく、高精度化したことで、更なるクオリティの追求が可能です。

    • 3D音響ブース「ダイナミックミキシングステージ」

    • 3D音響ブース「ダイナミックミキシングステージ」

      映画館でも使用されている最先端音響システム、ドルビーアトモスを採用。まるでその場に居合わせたかのような臨場感を再現できるリアルタイムバイノーラル技術を駆使して音像変化に対応しています。映像だけでなく聴覚にも働きかけることで、ゲームの没入感を高めます。

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