開発トップが語る開発戦略

開発トップが語る開発戦略

人気IPの育成と創出、
デジタル戦略を強力に推進

取締役専務執行役員
開発部門、PS事業管掌

江川 陽一

  1. 開発の全体方針

    クラウドや5Gの時代を迎え、世界中、いつでもどこでも好きな時に、ゲームを楽しむ流れが加速しています。更にSNSの普及によって誰もが情報発信者になれる今、ゲームをヒットさせる方程式も変化しています。この環境下では、オンラインサービスの拡充あるいはマーケティング部門との連携を視野に入れたゲーム開発は必須です。一方で、変わらず重要なのは、グローバル市場で通用するオンリーワンのコンテンツを創出し続けることです。

    カプコンが目指すのは「世界一のゲームコンテンツ企業」。世界トップレベルのゲームクオリティの実現はもちろん、それを支える戦略的なデジタル販売、定期的な追加コンテンツの配信など、ユーザーの好奇心を刺激し続ける運営ビジネスを通じても、ユーザーに支持をいただけるよう力を注いでいます。

    こうして培ってきたノウハウに加え、将来に向けては、インパクトのあるビジュアルを実現する映像技術に加え、クロスプレイなど、多様なデバイスに対応できるネットワーク技術を高め、次代を切り開くカプコンクオリティのゲームづくりに挑戦していきます。

  2. 開発戦略

    中期経営目標のもと、開発責任者として、コンシューマタイトルに開発投資額の約8割を割り当て、「バイオハザード」や「モンスターハンター」など人気IPシリーズを様々なプラットフォームに安定的に展開して収益責任を果たすよう努めています。並行して、積極的な人材採用により拡充してきた人員を活かし、新規IPの創出にもチャレンジしています。直近では、新世代機向けのアクションアドベンチャー『PRAGMATA(プラグマタ)』を発表し、開発を着実に進めているところです。

    こうした当社のコンテンツ開発に欠かせないのが自社で構築したゲーム開発エンジン「RE ENGINE」です。「RE ENGINE」は、高品質なゲーム開発および開発コスト短縮を可能にするだけでなく、例えば『モンスターハンターライズ』では、データロードによるゲームの中断が発生しないシームレスな通信協力プレイを実現するなど、各ハードウェアの性能を最大限に引き出せる優れたゲームエンジンです。この内製エンジンも進化させながら、カプコンらしいものづくりを推進していきます。

    更に、今後は、『モンスターハンターライズ』や『バイオハザードヴィレッジ』における無料追加DLCの状況なども踏まえながら、オンライン運営のビジネスモデルの構築やユーザーのプレイ動向や嗜好を把握する顧客管理を推し進めていきます。

  3. 技術面の協力体制

    私は、ヒット作は偶然の産物ではなく、開発組織全体の連携によって作り出すものだと考えています。

    カプコンにおけるゲーム開発は大規模で、チーム体制は300人以上になることもあります。だからこそ、知識や技術を共有するための最適な組織が必要で、その点でタイトル開発の基盤となる技術研究を行う部門は当社の成功の要といえます。技術研究開発部門が生み出した「RE ENGINE」は『バイオハザード7 レジデント イービル』でデビューし、直近では『モンスターハンターライズ』にも採用されました。この2つのブランドは、ゲーム性もユーザー層も異なります。それぞれの特色を存分に表現し、かつ複数のプラットフォームへ展開するため、技術開発担当者が部門の枠を越えタイトル開発チームに加わり、各タイトルに最適な開発環境を提供しています。この自社エンジンを採用する大きなメリットにより、開発チームが高品質なタイトル開発に集中できる環境が整っているのです。

    こうした環境のもと開発された『モンスターハンターライズ』の売れ行きは期待を上回り、ユーザーの皆様にも好評を博しています。今後も、「RE ENGINE」を最大限活用、また進化させることで、業界トップレベルの開発環境のもと世界中のユーザーに支持される高品質なタイトルの創出に努めていきます。

  4. 開発人材の育成

    面白いゲームをつくる起点は「人」です。カプコンでは、ゲームづくりは人づくりと考え、人材採用と育成、登用に注力しています。採用面では、2013年度から戦略的に毎年約100名の開発者を採用し、近い内に2,500名体制となる予定です。新規採用した若手社員を、人気IPや大型タイトルの開発を含め起用するなど、実践の場でノウハウと技術を習得できるようにしています。『PRAGMATA』はまさに若手のチャレンジタイトル。デジタルネイティブの若い感覚を取り入れることで、IPに新たな魅力が加わっていると感じています。また、能力の高い若手をチームでサポートして育て、次の担当タイトルで全体を指揮する「コアメンバー」へと抜擢する仕組みも導入しています。こうして、次世代のリーダー候補を着実に育てています。

    前年に続き、コロナ禍の中での開発は試行錯誤の連続ですが、試行錯誤の中で追求することはものづくりの本質でもあります。

    世界中のより多くの皆様に当社のゲームを手に取っていただけるよう、これまで通り諦めずこだわりをもって「面白いゲーム作り」に挑み続けます。

図表:家庭用ゲームソフト販売本数推移図表:家庭用ゲームソフト販売本数推移

人材戦略と独自のプログラムで カプコンの未来を担う人材を 続々と育成

図表:市川圭子 管理本部 人事部 人材開発室 室長 市川圭子

2,500名体制で安定成長を目指す

カプコンが未来にわたって安定成長を続けていくために選んだ道、それは、ゲームづくりの技術と知識を自社内に集約し、カプコンDNAを次世代に着実に継承していくことです。少人数で開発するタイトルもありますが、今や大型タイトルの開発ピーク時は数百名もの人員が必要です。積極的な採用を行い、自社で人材を育成する。それによって、品質向上とラインナップ拡充も図れますし、各タイトルに若い世代の感覚を吹き込み、ゲームをより面白いものに進化させることもできます。これが2,500名体制で開発を行う、人材戦略の狙いです。

社員の戦力を強化する、3つの人材育成方針

人材育成の方針は「早期戦力化」「適材適所」「自育」の3つです。

まず「早期戦力化」ですが、新卒入社者には、入社後「短期集中プログラム」で職種別の専門スキルを学ばせ、早期戦力化を図ります。その後、実際のプロジェクトに配属し、育成担当のサポートのもとカプコンのモノづくりを実地で体験する中でスキルや個性を伸ばしていきます。

次に「適材適所」ですが、人材を適切に管理できるマネージャーの育成を強化するとともに、人材情報を一元化・分析して人材開発に活用するための取り組みを進めており、戦略的なタレントマネジメントができるよう努めています。

そして、最も大切なのが「自育」です。「人は他者から強要されても育たず、あくまでもその人の志ありき」という人材観に基づき、人材育成施策を立案、実施。その象徴ともいえるのが、開発中堅人材育成プログラム“VIRTUAL無茶振り道場”です。これは、人事と開発部門が共同で開発した体験型の教育プログラムであり、モデル人材に共通する思考、行動特性を明文化し、開発場面を模した疑似的なモノづくりを体験します。本プログラムを通じて自発的な気づきを得ることを目的としています。受講者からも「レベルデザインが素晴らしい」「夢中で楽しんだ」と好評です。独自のプログラムで自発的な気づきや学びを促しています。

社員一人ひとりの“感性”を世界中の大“歓声”に!

人生をかけて“おもしろい”を追究したい。そんな志をもった人をカプコンは求めています。嬉しいことに、次世代ゲーム開発に欠かせない「AI」や「ネットワーク」「データ分析」等を専門に学んだ学生の応募も増えています。カプコンのものづくりをより強靭なものにしてくれると期待しています。

カプコンは世界で一番になれるゲーム会社です。社員一人ひとりの“感性”を世界中の大“歓声”に! 社員たちが輝ける場所を提供できるよう、私たち人事は全力でサポートしていきます。

カプコンが誇る 最新クリエイティブ 開発設備

  • 図表:モーションキャプチャ

    作業の短縮・高精度化を実現する 「3Dスキャン」とリアルな動きを再現する 「モーションキャプチャ―」

    約130台のカメラを用いたワールドクラスの「3Dスキャン」スタジオを完備。物体を360°取り囲み撮影することで、人やモノをデータ化し、3DCGとして再現します。従来、手作業だったCGモデリングの工程が大幅に短縮されただけではなく、高精度化したことで、さらなるクオリティの追求が可能です。

    人間の実際の演技を赤外線カメラで感知してPC上でデータ変換する「モーションキャプチャー」では、天井高7mを誇る国内最大級のスタジオを設備。高低差のあるアクションなどキャラクターのリアルな動きの追求が可能です。

  • 図表:ダイナミック
                                    ミキシングステージ

    臨場感を再現! 3D音響ブース「ダイナミック ミキシングステージ」

    映画館でも使用されている最先端音響システム、ドルビーアトモスを採用。まるでその場に居合わせたかのような臨場感を再現できるリアルタイムバイノーラル技術を駆使して音像変化に対応しています。前後左右からのあらゆる音や声を表現し、映像だけでなく聴覚からも働きかけることで、ゲームの没入感を高めます。

  • 図表:進化し続ける自社開発
                                    内製エンジン「RE ENGINE」

    進化し続ける自社開発 内製エンジン「RE ENGINE」

    実写さながらの表現を可能にするとともに、VRなどの最新技術にも対応。更に、ゲーム開発に必要な各プロセスの時間を飛躍的に短縮しました。ゲーム開発チームとの連携により、仕様を常に進化できるのは自社開発の内製エンジンならではのメリット。世界に通じるクオリティを実現する重要な基盤です。

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