社外取締役 水越 豊 が見るカプコンが推進する成長戦略の妥当性

社外取締役メッセージ

社外取締役 水越 豊 が見る
カプコンが推進する
成長戦略の妥当性

2018年6月の株主総会で社外取締役に就任し、経営コンサルタントとしての知見から当社のマーケティング戦略の仕組みを注視してきました。今後、カプコンがグローバルでマーケットを創造するビジネスを追求するにあたり、将来に向けた戦略の構築と展開に対して助言・指摘をしていきます。

Q

社外取締役にご就任いただき1年が経過しましたが、社外取締役としての1年間を振り返っての感想は?

A

当社を取り巻く環境は急激に変化していると感じています。1年前と比較しても、カプコンが推進・注力してきたデジタル戦略の成果が如実に現れてきています。また、世界中で急拡大するeスポーツの盛り上がりが国内にも伝播し、新たな事業展開の可能性を実感しています。

その状況下、私の役割は、当社が将来も成長を継続するため、経営コンサルタントとしての経験や知見を活かし、社外取締役として独立した外部の観点から会社の経営を仕組み化するための積極的な提言を行うこと、特に、経営としてのマーケティング戦略の構築に一石を投じることで、取締役会の監督を強化することだと考えています。

Q

当社が家庭用ソフト開発に本格参入した1990年代と比べ、現在のゲーム業界の状況についてどうお考えですか?

A

1つのゲームソフトを数人数ヵ月のチームで開発し、また半導体ROMでのソフト提供によるパッケージ販売しかなかった時代を覚えており、まさに隔世の感があります。ゲーム専用機、パソコンの高性能化やスマートフォンの台頭に加え、通信環境の劇的な進化により、ゲーム市場のプラットフォームと販売地域は急激に拡大し、業界の事業環境や商品提供の方法もパッケージからデジタル販売へと大きく変化しています。そうした進化に対応し、大作ゲームの開発期間も長期化・複雑化し、私としては、自動車業界に次ぐ高度な領域になっているのではないかと考えています。

このような業界環境においては、経営としての核となるマーケティングへの考え方が何より重要で、「どのようなストーリーラインで長期的な企業成長を図り、また収益を最大化していくのか」の構図を練りあげる必要があり、開発・営業と三位一体となって事業に取り組んでいかないといけないと考えています。

Q

経営コンサルタントとしてのご経験から、企業価値の向上を目指すために必要と考える要素とは?

A

経営コンサルティングの仕事では、関わる企業を変えていくための具体策を提案していかなければいけません。かつ、企業が自力で実行できる運用可能な案を提案していくことが必要です。

ゲーム会社の成長戦略では、究極的には、人をいかに活かすかということにかかっており、開発組織と開発環境をどのように整備するかが重要な要素だと考えています。

その点、当社では世界最先端の開発設備や機材を取り揃えた環境を整備しており、加えて、ユーザーに評価される良いゲームを作ってきたという成功体験を蓄積していることは重要な資産だと思います。そうした環境を求めて、若い開発者も続々と加わってきている印象です。加えて、経営側も、開発者にとって更に「働きやすい」環境づくりに向けて企業内託児所の設置を始めとした様々な取り組みを実施しており、若い才能とともに新たなバリューを作っていかんとする姿勢を見守っていきたいと思います。

Q

カプコンがグローバルで事業拡大していくために必要な要素と、社外取締役としての今後の抱負は?

A

ゲーム産業は、いまや世界に通用する一大産業とも言われているものの、その歴史はまだ始まったばかりだと感じています。

今後、例えば「5G」の登場といったテーマにおいては、私が注目する特徴の一つは「通信遅延がないこと」であり、医療分野における手術の遠隔操作など様々な分野での活用、浸透が期待されます。ゲームにおいても、ネットを活用した対戦などにおいて、内容の革新があるのではないかと期待しています。

また、当社はeスポーツなど他にも新たな取り組みを行っていますが、同様に劇的な市場の変化をもたらす可能性があります。当社には世界で勝負するコンテンツホルダーとして、ゲーム産業をリードする会社となってもらいたいと考えます。

そのうえで私は、社外取締役として、当社が戦略を進める枠組みに対し様々な観点からの助言や指摘を行い、企業価値の向上を目指す中で機会損失を招かないようリスク管理をする役割が求められていると考えています。

今後もカプコンが新たなビジネスチャンスを生み出す仕組みを作り、グローバルでの更なる成長に向けて経営戦略を推進できるよう、社外取締役として促していきたいと思います。

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