CHOが語る人材戦略

人材投資の一年の成果と、
更なる高みを目指すための
人材投資戦略

取締役副社長執行役員
最高人事責任者(CHO)

宮崎 智史

人的投資の必要性

当社のビジネスの更なる進展のためには人材への投資が重要であることはCEOが述べているとおりです。

当社は開発品質の向上や技術の蓄積を目的に、2013年以降、毎年100名以上の新卒採用を行い、加えて即戦力人員として中途採用も積極的に進めてきました。その結果、2023年6月末には連結で3,517名、単体で3,196名の社員数となり、そのうち開発部門の社員数は2,666名になりました。経営目標である「毎期10%の営業利益増益」、中長期経営目標である販売本数1億本達成に向けて、引き続き高品質なゲーム開発が必要であり、パイプライン拡充に向けて優秀な開発人材の確保を継続して推進していきます。

ゲーム業界はこの10年間、大きく変化を遂げていて、今後10年の変化は更にスピードがあがると予測されます。その変化に対応していくためには、開発部門のみならず、事業部門、管理部門も成長を遂げる必要があります。加えてアミューズメント施設や機器など、周辺事業による継続的な収入や事業シナジーも不可欠であり、人材の多様性は今まで以上に重要になるでしょう。

人事組織の改編

当社は、パッケージビジネスからデジタル販売への戦略転換により業績が大きく成長した一方、従業員一人当たりの給与水準の見直しなど、人事制度も会社のステージに合わせて成長させる必要がありました。そこで経営は、人材投資を重要課題として捉え、昨年度の統合報告書でもお伝えしたとおり、2023年3月期に既存の人事部を新たに4つの組織へ再編、束ねるCHOを設置いたしました。経営と人事組織それぞれが深く連携し、人事課題解決に向けて動いています。更に、迅速かつ円滑な対応を図るため、2023年4月1日付でCHO下に新たに人事統括を設定しました。

そして現在、各人事組織が認識している課題の解決に向けた議論が、月1回開催されるCHO主催の会議で行われています。ここで議論された課題は、その後代表取締役会長が議長を務める人事委員会にて対応方針および施策などが決められます。

1年間の成果

前述の組織改編の後、1年間の成果として、①当社正社員の報酬平均30%増、②利益に連動した賞与制度の導入、③従業員向けの株式報酬制度の導入、といった3つの報酬制度の改定を実施しました。この賞与制度、株式報酬制度の導入は、従業員の頑張りによる業績成長、株価上昇が、自身の報酬にも反映されていくという好循環のサイクルを構築していきます。

また、2023年3月期より、当社従業員が人事制度導入の意図や会社業績、今後の成長可能性についての理解をより深めるため、業績説明会を定期的に実施しています。2023年3月期においては、計20回の経営層による従業員向けの説明会などを実施し、延べ1,400名超の従業員が参加しました。これらの取り組みを踏まえ、従業員アンケートによるワークエンゲージメントでも高い満足度を得ています。

当社正社員の報酬額の推移

今後の課題
将来を支える人材の確保、活用

当社は、毎年約150名の新卒を採用しており、平均年齢については37.6歳と、比較的若手人材が充実していますが、今後のゲーム業界で生き残り、さらなる成長を遂げるためには、若手人材を中心に力を発揮できるように働きやすい環境を整える必要があります。

例えば総合職では、「中期的な複数部署の経験」をキャリアプランの方針としており、特定部署に優秀人材が滞留しないように人員配置を行っています。最終的には、従業員のキャリアと会社の求める役割とをマッチさせ、最大限に能力を発揮して活躍してもらうべく進めています。

また、開発人材強化のため、スカウティング強化、退職者のカムバック採用、海外有名大学からのインターン受入れなど、採用チャネルの多様化を進めると共に、人材要件可視化とキャリアラダー設計による育成施策の強化、管理職候補者に対するマネジメント力向上のための研修、その他自己啓発促進のためのOff-JTの充実にも注力しています。加えて、優秀層の確保・定着や従業員のモチベートのため、前述の報酬制度の改定や、人事評価の客観性および納得感向上のための評価制度の見直しなどを行っています。

現在、働きやすい環境の整備の具体的な施策としては、以下のような改善を進めており、従業員の離職を防止し、会社・従業員間のエンゲージメントをより高めていきます。

  • 就業環境および設備の継続的な改善・拡充
  • 会社貢献を称えるための社内表彰制度
  • ハラスメント対策研修の充実およびグローバルで
    利用可能な相談窓口の設置
  • 従業員向けの保育所、保養所の提供
  • その他福利厚生制度の継続的拡充など

当社業績と社員数・年齢分布の推移

「ワークエンゲージメント」調査結果

ダイバーシティの推進

人材の多様性の確保が、サステナブルな国際的な競争力の強化につながるとの考えに基づき、女性、外国人の確保、活用にも力を入れています。しかし、人材の多様性確保において間違えてはならないのは、構成比率の改善が目的なのではなく、その施策によって当社の会社体質が強靭になるかどうかです。

当社のゲームは男性ファンが多いため、採用応募者の段階で男性の割合が多いのが現状ですが、そのような環境において、いかに社内の女性従業員を、特に若手社員をプロモートできるか、新たな仕組みを検討しています。現在では、女性が働きやすい環境づくりのための産前産後休暇・育児休業や時短勤務制度の推進、有給での生理休暇制度の制定およびハラスメント防止のための社内研修などを行っています。今後も引き続き、女性管理職比率の向上を含む女性従業員の育成・積極登用を推進していきます。

外国籍従業員は現時点で、約200名、30ヵ国以上の人材が在籍しています。当社では更なる充実に向けて、海外から日本への引っ越しを伴う場合の住居確保の支援、一時帰国のための特別休暇制度の導入、ニーズ把握を目的とした経営層との意見交換会等を行っています。外国籍社員の活用という観点では、海外現地法人の現地スタッフの中から同法人のトップへの抜擢、もしくはそういった優秀人材が本社で活躍できるルートづくりなども当社の体質強化につながるため、当社のカルチャーに造詣の深い外国籍人材の育成も必要になるでしょう。

最後に

当社のこれから10年の成長に目を向けたとき、市場の様々な変化に対応していくには、従業員のレベルアップによる生産性向上が必要不可欠です。また、中長期の目標であるゲームソフト販売1億本達成に向けては、開発の効率化、組織の拡大の両者に取り組む必要があります。

これらの実現には、これまで以上に中途採用の活用も重要になりますし、適正な処遇水準の提示、職場環境の提供も引き続き必要になるでしょう。

今、当社の経営陣では、人事課題について様々な議論が行われています。昨年度、報酬制度改定をはじめとする改革を実行できたのは、人材投資が当社にとってそれだけ重要な課題だったからです。ゲームビジネスを支えるのは人であり、人的資本こそが当社成長の原動力になると考え、今後もより一層人材投資戦略を推進していきます。

ダイバーシティ関連指標の推移

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