CEOコミットメント

辻本 憲三

CEO COMMITMENT

世界中の人々へゲームという
エンターテインメントを届け、
楽しんでいただきたい。

代表取締役会長
最高経営責任者(CEO)

辻本 憲三

最高のコンテンツを「大阪から世界へ」届け、世の中を豊かに

当社は2023年6月に創業40周年を迎えました。この間、ユーザーの皆様、株主・取引先の皆様、社員諸君をはじめ全てのステークホルダーの皆様のご支援、ご理解をいただきましたことに深く感謝いたします。

当社は2020年3月期より「毎期10%の営業利益増益」という経営目標を掲げ、直近の10期で連続販売本数増および営業増益を達成し、企業価値を増加させ続けています。

これは、ゲームは生活必需品ではない嗜好品であるにもかかわらず、人々の生活に豊かさと彩りを与えるものとして、楽しむ人が世界中で増えているという証です。私達カプコンは、創業より変わらず、ゲームを通じて世の中を少しでも豊かにしたいという思いから、ゲームコンテンツを生み出し続けています。一人でも多くの人々にゲームというエンターテインメントを楽しんでいただきたい。「大阪から世界へ」を合言葉に、今後も様々な課題を乗り越え、持続的成長を実現するための対応策を講じていきます。

当社業績推移

1

経営方針

当社は2017年頃よりダウンロード販売を主とするデジタルセールスに方針転換しました。特にPCプラットフォームへのコンテンツ提供を強化したことで、現在では230を超える国・地域に販売を拡大しています。これにより、当社のゲームコンテンツが世界の人々に楽しまれていることを手応えとして感じることができました。今後も持続的な成長を実現するためには、拡大した国・地域の人々が当社のゲームコンテンツを楽しむ機会を作り、それぞれの国・地域のユーザーを今まで以上に拡大していくことが重要です。

2023年3月期の当社ゲームコンテンツ販売本数は4,170万本であり、一人で複数本買っていただいた方がいらっしゃることを考慮すると、ユーザー数は2,000〜2,500万人程度になるであろうと想定しています。一方で世界人口は80億人を突破したと言われており、そのうちゲーム人口はモバイルゲームを含め約30億人と言われています。当社は現在4,170万本の年間販売本数を、近い将来1億本まで引き上げることを目標にしていますが、その先にも広大なマーケットが待っています。

2

中長期の課題

更なる成長に向けた機会と対応

当社の強みは、①全世界でブランド化された多数の人気IPを保有していること、②デジタル販売強化による市場のグローバル化、③世界最高品質のゲームを継続して生み出す開発力・マーケティング戦略の3点であると自認しています。そして前述の通り、当社はデジタルシフトにより継続的な成長を果たしています。しかし、創業50周年を睨んだ次の10年でも安定成長を続けるためには、様々な課題があることも事実です。我々は、持続的な成長を新たなステージに移行する段階に来たと考えています。ここでは今後の成長に向けた機会と対応についてご説明します。

高度化する技術への対応

日進月歩で進化する業界に50年身を置いてきた私が常に感じているのが、「世界一面白いゲームを生み出すためには、最高水準の技術が必要不可欠である」ということです。ここ数年の状況を見ていると、それ1台でゲームも映画も音楽も楽しめるPCがゲームデバイスとしても存在感を高めていると感じます。一方で、高性能な新型ゲーム機も市場に現れるでしょう。当社としては、これまでの40年間で実証してきた通り、ユーザーがいかなる機器を選択したとしても、対応可能な技術力があると自負しています。

また、ゲームは究極のシミュレーションであり、現実ではとても実施できないことが、ゲームでは実現可能です。特に近年ではバーチャル(仮想)な世界がより身近になったことで、ゲームの可能性は益々拡大しています。ゲーム開発では、ネットワークやAIなど、ゲーム開発そのもの周辺の技術習得の重要度も増していますし、eスポーツでは、健常者と障害のあるユーザーが同じゲームを楽しむこともできるようになりました。この取り組みを強化し、新作、旧作に関わらず新たなユーザーを獲得するためにも、当社がこれまで培ってきたノウハウや知見、スキルを更に高めるとともに、新たな創造や全世界の人々にサービスを提供するための専門技術を持った人材の獲得、育成に努めることが重要です。

ブランド力強化による旧作販売の更なる拡大

ゲーム販売のデジタル化により、生み出したコンテンツを長期間販売することが継続的な利益の創出につながります。当社では発売後、事業年度を跨いだ商品を「旧作」としていますが、旧作は基本的に原価負担が小さく、①収益性の向上に貢献、②価格施策として時限的なディスカウントが容易に行える、ことに加え、全世界の潜在ゲームユーザーを想定すると、旧作の拡販は当社成長の一つのドライバであると、私は確信しています。

しかしその一方で、更なる旧作の拡販に向けては、コンテンツブランド・コーポレートブランドの浸透・強化が必要だと考えています。230を超える国や地域に当社のゲームが販売されているとは言え、まだまだ当社のブランドが浸透したとは言えません。

2022年3月期に映像製作子会社カプコンピクチャーズを設立したのも、ゲームコンテンツの映像化によるIPプロモーションを積極化することが目的です。

ユーザー動向や要望の把握

これから先も成長を持続できるかは、如何にユーザーや市場が求めるものを的確に捉え、その期待を超えるコンテンツを制作できるかにかかっています。当社に求められているものは何か、満足度や要望、期待について、プレイデータをもとに分析し、当社の回答を提示することがこれまで以上に重要になります。ユーザーの声や要望を把握し、より満足度の高いコンテンツの制作に繋げていくことが、今まで以上のユーザー獲得に必須と考えています。

また、これまでに蓄積した販売実績やプレイデータから、国や地域によって当社のコンテンツやサービスに異なる反応があることがわかっています。全世界の方々が楽しめるコンテンツを作るためには、そうした国や地域ごとのユーザー特性を知ることが必要になります。嗜好には、国や地域で共通の部分もあれば、大きな差がある部分もあります。データ分析を通じて、ユーザーの要望や需要を把握し、その知見を新たなコンテンツ制作に生かすことが求められる時代になっているのです。

一方で、各国で個人情報保護という重要な課題を法制度に反映させる取り組みが進んでいます。当社は、必要最低限の個人情報の取得に留め、プライバシーポリシーに定めている通り使用目的を明示し、ユーザーの皆さまからお預かりした個人情報を最大の注意を持って取り扱います。

人材への投資

詳細はCFOの項にてご説明しますが、直近10年の業績成長により財務基盤は強固なものになりました。それを生かし、更なる成長に向けた投資を継続していきますが、特に注力すべきは人材面です。今後も年間約150名規模での新卒採用を継続するほか、当社が現在持っていない専門知識や機能を積極的に取り込んでいくため、M&Aも選択肢に、有益な投資を推進します。また、クリエイターに快適な環境を提供するため、開発スペース拡大のための投資も行っていきます。更に、世界中のユーザーとのコミュニケーションや海外拠点との密な意思疎通のために、いずれは24時間の業務体制が必要になるかもしれません。そうした問題意識から当社独自の「働き方改革」を進めていきます。

3

カプコンが取り組むサステナビリティ

1.持続可能な環境対策

2022年6月からは、関西圏の自社所有ビルなどに対して、再生可能エネルギー由来のCO2フリー電力を導入しました。加えて、2023年4月から当社東京支店においてもグリーン電力を導入するなど、一層の環境負荷低減に努めています。

また、当社が取り組むゲーム販売のデジタル化は収益性の改善に加え、パッケージ製造や運送の解消など、環境への負担軽減にも貢献しています。

デジタルコンテンツの販売という業態は他業種と比較して環境への負荷は低いですが、可能な限り取り組んでいくべきでしょう。気候変動への対応は地球に住む全ての人々が協力すべき課題であり、今後も環境保全につながる取り組みを推進していきます。

2.業界全体の問題解消に向けた取り組み

ゲームは社会に必要とされる一方で、「未成年者の高額課金」や「ゲーム依存」といった課題も存在します。ゲームを通じて人々を幸せにすることが私達の目的であり、ゲームによってユーザーが不幸になることは望むところではありません。そこで私達はこれらを業界全体の問題と認識し、業界団体を中心に各社が連携しています。

加えて、当社単独では、2004年よりゲームに対する社会的不安を取り除くための取り組みとして、ゲームに関する教育支援活動を継続して実施しています。

なお、世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を新たな疾病として位置づけたことに関しては、業界団体より委託を受けたゲーム障害調査研究会が調査結果を発表しました。当社としては、今後更なる詳細な分析と論文の発表に合わせて協議を進める業界団体と協力し、当該問題への意識を高め、適時適切な取り組みを行っていきます。

3.ダイバーシティの推進

私は、世界で通用するコンテンツを創出するにはダイバーシティが重要と認識しており、性別・国籍にかかわらず優秀な人材の確保・育成を推進しています。就業環境の改善にも継続して取り組んでおり、報酬面・待遇面でも種々改革を行ってきました。加えて、社員説明会の開催等で経営と従業員の直接対話機会を増やしてきた結果、2022年度の社内エンゲージメントは劇的に向上しました。引き続き改善を進め、モチベーションの向上を図っていきます。

4.地域社会の振興支援

当社の人気コンテンツを活用した地方創生活動として、①経済振興の支援、②文化啓蒙の支援、③防犯啓発の支援、④選挙投票の啓発支援、を行っています。地域に貢献し、社会から必要とされることで、持続的な企業運営が可能になるのです。

5.不正行為への対応

データを扱う企業として、それらの価値や権利を守ることも重要です。グローバルでのブランディング推進の一環として、インターネット上の海賊版や違法動画に対しては、常時から検知・削除を行うなど、継続した対応を行っています。また近年では、デジタルネットワーク技術の浸透に伴いサイバーアタックのリスクも高まっています。当社では2020年に受けた不正アクセスの経験を踏まえ、セキュリティ監督委員会の設置など継続的に対策強化を進めています。

4

ガバナンス ── 継続的な体制強化

仕組みづくりによる経営判断リスクの回避

前項にてお話ししたサステナビリティ実現のためには、健全なガバナンス体制も必要不可欠です。特に、当社は創業者の私がCEO、長男がCOOですので、社外取締役の監督機能を十分に発揮させ、取締役会が透明性・合理性の高い意思決定を行う独自の仕組みを構築し、「経営判断リスク」を回避しています。

仕組み1資料の数値化による「経営の見える化」

私は、経営判断する材料(資料)を原則数値化、いわゆる「経営の見える化」に取り組むことで一貫した経営を行っています。言葉でなく数字で示すことで恣意性や思い込みを排除し、問題点を見つけ出しやすくしています。

仕組み2社外取締役比率の向上

2002年3月期に導入した社外取締役制度は、現在取締役の社外比率を46.7%まで向上させています。社外取締役の選任基準は導入当初から現在も変わらず、「良識があり、ゲーム以外の各分野で最高レベルの専門家に、当社の経営・事業活動を判断していただく」ことです。事業投資リスクの回避を優先課題として、「創業者にはっきりと意見できる方々」を選任し、一般社会の視点で妥当性を判断していただきます。

なお、2022年6月には、経営人材力および取締役会の監督機能のさらなる強化のため女性を含む社外取締役2名を増員しています。

仕組み3持続的な成長を実現する仕組みづくりと後継者育成

私が40年間で作り上げた仕組みを後継者に理解させ、実行できるようにすることもまた、創業経営者の務めです。後継者計画に関する議論は指名・報酬委員会への諮問を通じて行われますが、後継を鍛え上げ、「企業理念」、「仕組みの整ったガバナンス」をかみ合わせることで、持続的な成長を実現します。

上場以来33年連続配当と過去最高配当で長期株主に報いる

最後に、株主の皆様との関係において重要な資本政策に関する私の考えをお話しします。

上場以来の1株当たり配当金

1.配当に関する基本方針

持続的な企業価値向上のための要諦は前述しましたが、株主の皆様への利益還元についても経営の重要課題の一つと考えています。将来の事業展開や経営環境の変化などを勘案のうえ、配当を決定しています。一方で、事業環境が大きく変化する中、持続的成長に向けての投資にも配意する必要があります。

それらの点を踏まえて、株主還元方針を、①投資による成長などにより企業価値(時価総額)を高めるとともに、②連結配当性向30%を基本方針とし、かつ安定配当の継続に努め、③機動的な自己株式の取得により1株当たり利益の価値を高めること、としています。

2.次期の配当

次期(2024年3月期)の配当は、配当性向28.2%となる年間54円を予定しています。なお、配当性向が30%を下回っていますので、次期の連結業績の見通しが確定した際に、配当額を見直します。

私は、ゲーム業界を長年走り続けた経営者として、過去40年間を超える更なる企業成長を図り時価総額を増大させることで、株主や投資家、ステークホルダーの皆様のご期待に応えていきます。

代表取締役会長
最高経営責任者(CEO)

辻本 憲三

オンライン統合報告書(アニュアルレポート)バックナンバー