開発トップが語る開発戦略

江川 陽一

DEVELOPMENT

経営リソースを最適に配分し、
グローバルで通用する
最高品質のタイトルを生み出す

取締役専務執行役員
開発部門、PS事業管掌

江川 陽一 YOICHI EGAWA

戦略と強み

家庭用ゲームソフト総販売本数推移 (万本)

開発の全体方針

変化の激しいゲーム市場の中で、10期連続営業増益、過去最多の販売本数を達成できたのは、ひとえに社員たちの「ものづくりに捧げる情熱」とユーザーニーズやデータに裏付けされた「戦略」が実を結んだからではないかと思います。

毎期10%営業増益という中期経営目標の実現に向け、起点となるのは戦略的な開発リソース配分です。各部門からの販売情報やマーケティングデータを分析し、「バイオハザード」や「モンスターハンター」などの主力タイトルを中心に、投入IPを検討し、資金、人材、技術、設備などを配置していきます。1タイトルを100~300名のクリエイターが専門領域を分業して数年かけて作り上げていく現在のゲームづくりにおいて、あいまいな判断は許されません。計画をもとに、グローバルで戦えるクオリティのタイトルをタイミングよくリリースできるよう進めています。

昨今のゲームソフトの販売は、オンライン上でコンテンツのダウンロードから決済まで行うデジタル販売が主流です。定期的にイベントや追加コンテンツを配信するなど、満足度が持続するように運用にも注力しています。カプコンDNAを受け継いだ独自IPと社員ともに「世界一のゲームコンテンツ企業」を目指します。

開発戦略

中期計画に基づき、人気シリーズの過去作を現在の技術で進化させたリメイク版をはじめ、シリーズ最新作や完全新規タイトルを開発し、グローバルの販拡を推進しています。2023年6月に発売した『ストリートファイター6』は、2022年、シリーズ35周年を迎えたカプコンを代表するIPで、私自身、かつて開発者として携わった思い入れのあるIPでもあります。シリーズ累計販売本数は5,000万本に迫り、eスポーツにおける対戦格闘ジャンルのけん引役ともなっており、カプコンの知名度向上に貢献しています。

2023年7月には完全新規タイトルとなる、オンライン専用のチーム対戦型アクションゲーム『エグゾプライマル』を投入し、次代の種を蒔くとともに、異なるハードウェア間で協力や対戦プレイが可能なクロスプレイの可能性を広げていきます。このような新しい取り組みは開発メンバーのよい刺激にもなり、開発現場の活性化にも繋がると感じています。

開発には、クオリティとスピード、効率化が求められます。それを可能にしているのが、独自で構築したゲーム開発エンジン「RE ENGINE」です。「RE ENGINE」は、効率的な開発を可能にするだけでなく、各ハードウェアの性能を最大限に引き出し、VRなど先端技術へも対応したうえで高品質なゲーム開発ができる自社を誇るゲームエンジンです。新たに「クリエイティブスタジオ」も増設し、設備の充実によって開発時間短縮とゲームクオリティ向上を図っています。

開発内での協力体制

開発部門には約2,500名の社員が所属しており、第1開発、第2開発といったゲームを開発する部門だけでなく、基盤技術を研究する部門、周辺支援を行う部門、品質管理を行う部門が連携することで、大規模化、長期化するゲーム開発の最適化を図れるよう努めています。第1開発は「バイオハザード」、第2開発は「モンスターハンター」や「ストリートファイター」などに代表されますように、各部門が持つ特色を活かした開発スタイルで、ユニークな世界観を創造し、グローバルで通用するコンテンツを制作します。「RE ENGINE」を含む、各タイトルに最適な開発環境のもと、クリエイターが追求するクオリティを実現しています。

また、コンテンツのバグチェックなどの品質管理のほか、商標関連確認などは、識別AIを活用するなど効率化を進めている一方、近年の話題である生成AIに潜む可能性とリスクを慎重に検証しております。

開発人材の育成

ゲーム開発の核となるのは、やはり「人」です。2013年にコンテンツ制作の内製化を志向してから毎年100名以上の開発者を積極採用しています。当社コンテンツに魅せられた希望者は多く、異なる業界から志望されるケースもあります。人材の多様化はゲーム開発の土壌を豊かにします。新規採用した若手社員は、実践の場に配属し、現場のノウハウと技術を習得して戦力として活躍してもらえるよう育てています。また、開発現場にも経営視点を持ってもらうため、会社概況説明会を通じた経営層との対話や業績連動賞与、株式報酬制度なども導入しました。個人の能力を最大限発揮し、やりがいと向上心をもって働ける環境や制度を充実させています。

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