サステナビリティの取り組み

当社グループは、企業価値創造の源泉である人的資本への取り組みを最優先課題の一つとして位置づけており、最高人事責任者(CHO)を設置し、人材投資戦略を推進しています。

(※統合報告書2025 より編集しています)

人的資本におけるガバナンスとリスク管理

代表取締役会長(CEO)が議長を務める人事委員会をおおむね毎月1回開催し、人材投資戦略について集中的に議論し、方針および施策等を決定しています。同委員会の議論および決定方針を踏まえ、CHOおよび人事統括のもと「開発人事部」「東京人事室」「健康経営推進部」「経営企画部人材戦略チーム」および「人事業務部」が横断的に連携し、具体的な取り組みを推進しています。

将来を支える人材の確保と育成

当社グループは、毎年100名以上の開発人員の増員を推し進めるとともに、2022年から当社正社員に対し、平均基本年収の30%増額、業績連動性を高めた賞与制度の導入、株式報酬制度の導入等の施策を実施し、2025年3月期末の開発人員数は2,846名となりました。

2025年4月には新卒初任給を月額30万円に引き上げ、報酬面での採用競争力を高めるとともに、世界に通用する若手クリエイターの早期発掘・育成を目的とした産学連携施策や、中途採用のチャネル拡充等の推進により、優秀な人材の確保に努めるほか、若手育成のためのOJT/Off-JTの充実や、管理職候補者に対するマネジメント力向上のための研修など、将来を支える人材の育成・強化を図っています。

働く環境の再整備と向上

当社グループは、開発の大規模化と技術の高度化に対応するため人員の増強を図っており、開発体制を支える環境および設備の拡充に向けた、事業用資産としての不動産取得等の成長投資を進めております。

また、人権を尊重する会社風土の醸成と働きやすい環境の整備に努めており、研修による役職員の意識向上や各種施策の実施を推進しています。2022年から経営層と従業員が直接対話をする機会を活用し、質疑応答や意見交換を行うなど、従業員とのコミュニケーションを通じた相互理解を図っており、開催の定例化により、社内への施策の浸透や従業員のニーズのより正確な把握に取り組んでいます。

今後も、従業員の離職防止およびエンゲージメント向上に向けて、会社貢献を称えるための社内表彰制度、ハラスメント対策研修の充実およびグローバルで利用可能な相談窓口の設置、従業員向け保養所の提供、その他福利厚生制度の継続的拡充等を行っています。

人材の多様性の確保

今後より一層の開発人員の拡充を図っていくためには、多様な背景を持つ人材が能力を最大限に発揮できる環境づくりが必要です。当社グループは、性別、国籍、年齢等に関係なく採用や評価等を行うなど、多様性のある人材の確保・育成に努めています。

多様性に配慮した職場環境の推進

当社は、採用段階での女性の積極的採用、管理職候補者に対するキャリア形成研修および女性管理職の積極登用を行っています。女性が働きやすい環境づくりとして、産前産後休暇・育児休業や時短勤務制度の推進のほか、有給での生理休暇制度およびハラスメント防止のための社内研修等を行っています。加えて、性的指向や性自認にかかわらず福利厚生制度において平等の取り扱いをするため、パートナーシップ制度を導入しています。

外国籍従業員の積極活用などの取り組み

当社は、外国人の積極的採用、外国籍従業員のキャリアアップ支援と管理職への積極登用および日本語教育プログラム等を行っています。海外から日本への引っ越しを伴う場合の住居確保の支援、一時帰国のための特別休暇制度の導入、外国籍従業員のニーズを把握するための経営層との意見交換会等を行っています。

女性従業員比率・外国籍従業員比率

  • 女性従業員比率・外国籍従業員比率

これらの結果、当社は社員の21.5%を女性が占め、女性管理職が当社管理職に占める割合は11.9%であり、また外国籍従業員の出身国数は36ヵ国、外国籍従業員が当社従業員に占める割合7.6%となっています。

当社は、2024年4月に「一般事業主行動計画」を策定し、2029年3月末までに男性の育児休業取得率85%以上、正社員における男女間賃金格差(女性正社員の平均賃金を男性正社員の平均賃金で割った比率)88%以上を目標としています。

引き続き、多様な背景を持つ人材が活躍できる環境づくりのため、各種取り組みの推進と制度拡充を図ってまいります。

育児介護の支援

当社は、従業員のワークライフバランスの実現のため、育児介護休業の取得推進、事業所内保育所「カプコン塾」の設置、介護セミナーの実施、テレワーク等による育児介護支援制度の充実等を図っております。

事業所内保育所「カプコン塾」

当社は、社員が安心して子育てをしながら長期的に働き続けられる環境を目指しています。その一環として、通常の保育に加え、自ら学び自ら成長できる子どもの育成を目的とした「カプコン塾」を運営しています。

「カプコン塾」は就学前1~2歳の保育に加え、小中学生を対象に夏休みなどの長期休暇時には、プログラミング教室や開発体験、親子ランチなど多彩なイベントを実施しています。さらに英語指導や個別学習サポートなど、子どもの成長を促す「学びの場」を提供し、働く社員と一体となって子育てを支えています。アフタースクールとしても幼稚園児・小学生を幅広く受け入れており、現在は月極で23人の子供を預かるほか、延べ495人の一時利用にも対応しています。(2025年3月末時点)

従業員ニーズの把握とエンゲージメントの向上

当社は、従業員のエンゲージメントを把握し、各種取り組みに活用するため、エンゲージメント指標の把握に努めています。

仕事に対する自発的行動やポジティブな感情についての指標であるワークエンゲージメントは、前期同等の水準となったほか、会社への愛着等に対する指標であるエンプロイーエンゲージメントも緩やかに上昇しています。また、離職率は前期より低下し、自己都合退職者は2.2%となるなど、目標の3.0%程度を達成しており、報酬制度改定および働きやすい環境づくりへの取り組みが貢献したものと考えています。

今後も優秀な人材の定着に向けて働く環境の整備を進めます。

2025年3月31日現在
決算年(3月期) 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 目標
エンゲージメント(単体)(偏差値)(注1)
ワークエンゲージメント 52.6 51.8 54.4 54.1 54.7 55.0
エンプロイーエンゲージメント 51.8 52.1 53.1 55.0
離職率(単体)(注2) 3.9% 5.4% 3.5% 2.9% 2.8%
うち自己都合 3.6% 4.7% 3.2% 2.5% 2.2% 3.0%
程度

注) 1.エンゲージメントは、当社従業員(社会保険対象外の短時間労働者を除く)を対象とした外部業者によるアンケート調査(エンゲージメント・サーベイ)の結果における当社の偏差値です。詳細は2025年3月期 有価証券報告書をご参照ください。

2. 離職率は、各期首の従業員総数に対する期中に退職した従業員数(期中に入社および退職した従業員を除く)の割合であり、集計対象は正社員のみです。

従業員の健康管理を支援

健康的な食事を提供する社員食堂のほか、東阪それぞれの拠点には、産業医面談や健康相談ができるクリニカルルームに加えて、国家資格を取得したマッサージ師が常駐するマッサージルームを設置しています。また、職場環境の向上や従業員とのコミュニケーション強化に専門的に取り組む「健康経営推進部」を2022年に設置するなど、従業員等が安心して健康的に働くことができる職場環境の整備に取り組んでいます。

自己実現を可能にする最先端の設備

クリエイティブなゲーム開発において、開発者のモチベーションを左右する最大のポイントは、自分の作りたいものを形にできる環境が整備されているかどうかです。当社では3Dスキャンやモーションキャプチャースタジオ、ダイナミックミキシングステージ、フォーリーステージなど、常に最先端の開発設備を整備し、クリエイターのビジョンの具現化をサポートしています。2023年には、国内最大級の広さを誇るモーションキャプチャースタジオを備えた「クリエイティブスタジオ」を大阪市に新設し、稼働を開始しました。これにより、より自由度の高い表現が可能となり、開発現場におけるクリエイティビティをさらに引き出すための環境を整備しました。

社員の声

外国籍社員

アレクサンダー エアハルト  S第一開発統括 第一ゲーム開発部 第一ゲーム開発室

言葉の壁を越えて描く
プレイヤーの心に残る世界観の創出

アレクサンダー エアハルト

CS第一開発統括
第二ゲーム開発部 第六ゲーム開発室

私は、ゲームの世界観をビジュアル化するコンセプトアーティストとして、人気シリーズに加えて新規IPの開発にも携わっています。ゲームの物語や設定に基づいて、環境やアイテムなど様々な要素をデザインし、作品の世界観を深める役割を担っています。

ドイツ出身の私は、子どもの頃からカプコンのゲームに親しんできました。日本に移住し、カプコンに入社した当初は、日本語をほとんど話せませんでしたが、ゲームの物語を深めるデザインを実現するには、日本語の習得が不可欠だと感じていました。会議で自分の意図を正確に伝えたい、フィードバックの微妙なニュアンスまで理解したいという思いから、日本語研修の受講を決めました。研修は週2回、オンラインで受講できる個人レッスン形式で、週次スケジュールに組み込まれるため、負担なく継続できています。受講開始から2年が経ち、同僚との日常会話が弾むようになり、成果を実感しています。

まだ学ぶべきことは多いですが、継続的に日常会話や業務的な専門用語の学習を重ね、少しずつ課題を解消していきたいと考えています。これからも、日本語力を高めることで文化への理解やチーム内のコミュニケーションを深めていき、アートディレクションやストーリーをより高いレベルで理解し、プレイヤーの記憶に残るビジュアル体験を私のコンセプトアートで実現したいと思っています。

若手社員

釼持 笙子 CS第二開発統括 第一ゲーム開発部 開発二部 第一ゲームプログラム

多彩な意見・発想から生まれる
世界を魅了するタイトル創りへの挑戦

釼持 笙子

CS第二開発統括
第一ゲーム開発部
開発二部 第一ゲームプログラム室

プログラマーとして、プレイヤーや敵、ギミック、UIのプログラム実装を担当してきました。入社3~4年目で新人育成を担当し、5年目にはユニットリーダーを経験しました。その後、試作前の検証実装を進める傍ら、グループ長としてチームメンバーのキャリア相談や評価などにも携わっています。

業務タスクのマネジメントを担う上で大きな経験となったのが、「メンタートレーニング」という研修です。1時間のオンライン研修を10回にわたり受講し、メンバーのモチベーションを高めるためにリーダーとして必要な資質を学びました。研修には、グループ長から部長まで立場の異なるメンバーが参加しており、議論を通じて多様な考えや体験談に触れることで視野が広がりました。中でも、「どんな意見もまずは受け入れる」という皆さんの姿勢には強く刺激を受けました。

開発現場では、経歴も職種も異なるメンバーが集まり、一つの作品を作り上げます。もともと若手も積極的に意見を出せる職場ですが、その様々な意見の背景にある意図を見逃してしまっては、「世界中の人が楽しめるゲーム」は生まれません。研修後は、どんな意見でもまず受け止めた上で対話をする意識を持ち、その前提として相談しやすい環境づくりにも一層力を入れるようになりました。今は、メンバーの熱意や要望を丁寧に汲み取りながら、大好きなゲームを仲間と共に作れることに大きなやりがいを感じています。

女性管理職

瀬野 友貴 OP事業統括 第一ゲーム開発部 OP事業統括

キャラクターの魅力を最大化
チームの情報感度から生み出す商品企画力

瀬野 友貴

OP事業統括
店舗商品部 店舗商品企画チーム チーム長

「カプコンストア」などの直営店舗や、「カプとれ」「カプくじ」などのオンラインサービスで取り扱う自社限定商品の企画・開発を行うほか、チーム長として商品企画全体を管理しています。

キャラクターグッズ業界は年々活況を呈しており、商品の主な告知手段であるSNSも日々トレンドや手法が変化しています。そのため、目新しさのない企画やプロモーションでは、他の商品に埋もれてしまう可能性があります。当社の強みである、幅広い層に長く愛されるタイトルの魅力を活かした商品を企画するには、各チームメンバーが広い視野を持ち、様々な情報に触れることが重要だと考えています。

まずは自分自身がアンテナを張り巡らせ、一見業務に直結しない情報もアイデアの引き出しとして意識的に蓄積し、得た情報はチーム内で積極的に共有するよう努めています。

この業務の面白さは、ゲームタイトルのユーザー層とグッズの購買層が必ずしも一致しない点にあります。タイトルが対象とするユーザー層以外にもアプローチすることで、企画次第では購買層を大きく拡大できる可能性があり、とてもやりがいを感じています。

私たちのチームだからこそ生み出せる価値をメンバーとともに追求し、「誰かに共有したくなる商品」をモットーに、カプコンIPの世界観をより深く楽しんでもらえる商品を提供していきたいと考えています。

育休取得男性社員

中西 勇磨 企画戦略統 経営企画部 コーポレート戦略室 室長

公私の成長を支える職場環境で
組織力強化の貢献へ

中西 勇磨

企画戦略統括
経営企画部 コーポレート戦略室 室長

国内および海外子会社での法務業務を経て、現在はコーポレート戦略室にて中長期戦略に関する社内議論の方向付けやM&A、報酬制度改定など、企業の成長を左右するダイナミックな打ち手の遂行に携わっています。私は室長として、こうしたインパクトの大きな仕事に携わりながら、チーム長やメンバーへの指示、日々の相談対応なども担っています。世界で勝負する今のカプコンにおいて、成長機会に満ちた業務に大きなやりがいを感じています。

責任ある立場ではありますが、プライベートでは子どもの誕生時に1ヵ月間の育児休業を取得しました。育休中はチーム長を中心に業務を担ってもらい、室内メンバーのサポートもあって、取得しやすい雰囲気とスムーズな復帰ができたことに感謝しています。育休中は早寝早起きをし、夜中の授乳以外の家事全般を担当しました。限られた期間ながら、一つ一つの家事を集中的に訓練できたことで、復帰後も積極的に育児サポートを行えるようになりました。家族との時間を大切にしながら、仕事にも全力で取り組める環境があることを実感しています。

「最高のコンテンツで、世界中の人々を夢中にさせる企業」という当社ビジョンの実現に向け、情熱をもって業務に取り組むと共に、立場に関わらず仕事とプライベートを両立する姿を自ら示し、メンバーが後に続きやすい環境づくりにも力を注いでいきたいと考えています。