COOが語る成長戦略2025

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COOが語る成長戦略 デジタル戦略を継続、 カプコンファンを増やし年間ソフト販売 1億本を目指す 代表取締役社長最高執行責任者(COO) 辻本 春弘 COOが語る成長戦略 デジタル戦略を継続、 カプコンファンを増やし年間ソフト販売 1億本を目指す 代表取締役社長最高執行責任者(COO) 辻本 春弘

当社グループは2025年3月期、12期連続での営業増益と、10期連続での営業利益の2桁成長を達成し、販売本数も過去最大の5,187万本となりました。これにより、次の10年に向けて好調なスタートを切ることができました。これまで支えてくださったすべてのステークホルダーの皆様に、心より感謝申し上げます。

当社は2010年代中盤より、グローバル展開と安定収益の確立を目指し、デジタル戦略に注力してきました。従来のディスク販売には、小売店における棚確保などの制約や価格主導権の問題、海賊版対策など多くの課題がありましたが、デジタル販売への転換により、220以上の国・地域での展開が可能となり、収益構造も新作依存型からリピート販売中心へと移行しました。持続的な成長には、開発力だけでなく販売・マーケティング体制の強化が不可欠です。世界トップクラスのコンテンツを安定的に生み出し、ブランド認知を高めることで、年間ソフト販売1億本という長期目標の達成が現実味を帯びてきました。この取り組みは、「『遊文化』をクリエイトし、人々に感動を与える『感性開発企業』という当社の理念にもつながるものです。

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これまでの取り組み

~デジタル化によるグローバルでの市場拡大~

マーケット環境の変化

ディスク販売が主流だった時代には、欧米の主要先進国がゲーム市場の中心であり、ゲームコンテンツは主に家庭用ゲーム機で楽しまれていました。その後、ゲーム機の進化とインターネットの普及により、遠隔地のユーザーとのネット対戦や協力プレイが可能となったほか、ゲームコンテンツを直接ダウンロードできるデジタル販売も実現しました。

これにより、小売店の営業時間や売り場面積に左右されることなく、発売から年数が経過したゲームコンテンツでも長期的な販売が可能となり、さらに、ゲームパブリッシャー主導による柔軟な価格施策の展開も可能になりました。

マルチプラットフォーム戦略、
PCプラットフォームへの対応強化

当社はデジタル戦略の強化にあたり、PCプラットフォームへの展開にも注力してまいりました。ゲーム専用機による展開は、インフラの整った主要先進国に限られる傾向があるため、より多くのユーザーにリーチするには、新興国にも訴求可能なPCプラットフォームでの積極的なコンテンツ展開が不可欠と判断しました。この取り組みにより、従来のコンソール機市場を大きく上回る、220を超える国・地域での販売を実現することができました。現在、当社のソフト販売におけるPC版の比率は新興国を中心に伸長しており、昨年度には約50%を超える水準に達しました。今後もさらなる成長の余地があると分析しています。

昨今、PCを含む多様なプラットフォーム、そして地域ごとに異なるユーザー層に向き合う中で、技術の進化とともに求められる品質水準は一層高まりを見せており、私たちは改めて、常に高品質な体験を提供し続けることの難しさを実感しています。

こうした環境下において、当社はこれまでもユーザーの皆様の声を真摯に受け止め、それを反映したコンテンツづくりを大切にしてまいりました。今後はその姿勢をさらに深め、開発体制の見直しを含めた組織全体の強化を図りながら、より高品質で安定したゲーム体験の提供に向けて、継続的な改善と挑戦を続けてまいります。

2025年3月期 庭用ゲームソフト国別販売本数実績

販売データによる価格戦略

ゲーム販売のデジタル化により、パブリッシャー主導の価格施策が可能となりました。当社は早期にデジタル販売へ移行し、国別・価格別・販売本数などの膨大なデータを蓄積してきました。これらを再整備し、現在ではマーケティング戦略に活用しています。当社の基本的な価格施策としては、発売直後に60~70ドルで販売し、市場価値に応じて段階的に価格を引き下げ、最終的には10ドル、5ドル程度まで下げていきます。単年度ではなく5年間を視野に入れ、販売本数と利益の最大化を目指す方針です。開発コストは1~2年で回収できるため、価格を下げた後でも利益に貢献します。また、新作発表などと連携することで新たなファン層を獲得し、次回作へとつながる好循環を生み出しています。好例が『モンスターハンター:ワールド』であり、2023年度の『モンスターハンターワイルズ』発表に合わせて9.99ドルで展開した結果、累計販売本数は2,800万本を突破しました
※『モンスターハンターワールド:アイスボーン マスターエディション』を含む

このように、高品質なタイトルを長期的に販売することで、現在では年間販売本数の7割以上がリピート作となり、デジタルコンテンツ事業の収益に大きく貢献しています。これこそが、当社がこの10年間で安定的な収益構造を確立するに至った大きな要因のひとつです。当社のゲームコンテンツ販売国を2020年と比較して、販売本数が100本未満だった国・地域が、100本以上、1,000本以上、10万本以上、さらには100万本以上へとシフトしています。これは各国・地域の経済成長による所得水準の上昇が、当社マーケットの拡大を後押ししているためです。

そもそも長期的かつグローバルに販売を可能としている成長の背景には、
①当社創業時のアーケード基板ビジネスの時代から既に世界に展開しており、ブランド形成をなし得ていたこと
②当社の開発陣の努力により、高品質タイトルを安定的に投入する技術力・開発力を有していること
という2つの要因が前提としてあったことは言うまでもありません。

新作タイトルの初動の最大化

さらなる成長のためには、初動の販売本数をいかに高めるかが重要です。リピート作の販売動向を分析した結果、初動が好調なタイトルほど長期的な販売につながり、累計販売本数の増加にも寄与する傾向が明らかになっています。今後は、初動強化を明確なテーマとして掲げ、発売前のプロモーション強化や過去作のグローバル展開など、ブランド認知の向上に向けた取り組みを強化していきます。これらの施策を通じて、販売実績の一層の向上を図ります。

地域別販売実績

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これからの10年を見据えて

~マーケティングの強化による持続的な成長の加速~

CEOが語った「これからの10年の重点方針」について、COOの立場から具体的にご説明いたします。

調査会社のデータによれば、世界のゲームユーザーは約34億人にのぼり、その多くはモバイルユーザーですが、当社が主にターゲットとするPC・家庭用ゲーム機ユーザーは約15億人規模と推定されています。2024年度の当社ソフト販売本数は5,187万本でしたが、この市場規模に対しては、まだ大きな成長余地があると考えています。年間販売1億本の達成には、さらなる拡販と開発体制の強化による新作パイプラインの充実が不可欠です。加えて、発売前のプロモーション強化などを通じてブランド認知を拡大し、新作タイトルの初動販売本数を押し上げる取り組みも進めてまいります。

国・地域の特性を考慮したマーケティング強化

当社では過去の販売データを整備しマーケティング戦略に活用していますが、この精度をもっとあげていく必要があります。また、ユーザーの購入傾向を踏まえた最新タイトルの情報や、リピート作タイトルの販売価格情報を提供することにより、一層のユーザーへ訴求するプロモーションが可能になります。しかしながら、個人に紐づいた詳細なデータの蓄積は容易ではありません。また各国の個人情報保護や未成年保護の法制にも慎重に対応しなければなりません。

そのような中で、今後は当社が提供するゲームやサービスを利用するための共通IDであるCAPCOMIDなどを利用し、ユーザーの購買動向ならびにプレイ動向などのデータ蓄積・分析をさらに進めていきます。

当社が今後の成長余地として強く注目しているのが、インドをはじめとする新興国、いわゆるグローバルサウスです。2023年秋にはインドに社内調査チームを派遣し、2024年にはブラジル、インドネシア、タイへ、2025年には中東地域への派遣も実施しました。

これらの国々において、カプコンのゲームがどのように受け入れられ、どのように遊ばれているのかを現地で直接確認することで、今打つべき施策を見極めながら、向こう5年間をかけてブランド構築と市場形成に向けた戦略を着実に進めてまいります。

そうした点を踏まえながら、国・地域ごとの特性を把握し、価格施策と連動したブランド認知拡大を図るとともに、海外子会社を含むマーケティング体制の強化も進めてまいります。実際、新興国では高価格の新作よりも、価格を抑えたリピート作が売れており、購入タイミングの分析を通じて、地域ごとに最適な施策を展開し、市場開拓につなげていきます。

高品質タイトルの長期販売実現

映像コンテンツによるカプコンブランドの浸透

ゲームをプレイしたことがない人、カプコンのゲームを知らない人に対して、当社のブランド認知を高めていくためには、短時間でゲームの世界観を伝える映像コンテンツは強力なツールと言えます。それは過去の「バイオハザード」などのハリウッド映画化を振り返っても明らかです。

過去展開してきた映像作品の活用をはじめ、「ストリートファイター」の新実写映画およびTVシリーズの制作、他検討中のものもいくつか進めていきます。今後、ゲームコンテンツを世界に広げるための先行投資として、映画館上映に限らず動画配信サービスなども活用し、映像戦略を積極的に推進していきます。

2025年4月、Netflixオリジナルシリーズとして『デビル メイ クライ』のアニメが配信開始されました。これに合わせて『デビル メイ クライ5』を7.99ドルで販売したところ、1ヵ月で100万本以上を売り上げました。映像作品公開に合わせたセールは以前から行ってきましたが、今回は反響の規模が大きく、ゲームと映像の親和性の高さを改めて実感しています。

当社は2010年代中盤からデジタルシフトを進めており、各タイトルのユーザー数や地域分布などのデータを保有しています。こうした情報を活用することで、配信・映像事業者との連携による効率的なプロモーションが可能となり、双方のビジネス成功に寄与すると考えています。今後も相乗効果を高めるため、連携の可能性を積極的に検討してまいります。

事業・協賛案件によるカプコンブランドの浸透

モバイルコンテンツにおいて、当社がライセンスアウトした『モンスターハンター Now』が、2023年9月にサービスを開始しました。本作は、位置情報とAR技術に強みを持つ外部パートナーによって開発・運営されており、「モンスターハンター」をモバイルコンテンツで気軽に遊んでいただくことで、グローバルベースでのさらなるブランドの認知度向上に寄与しています。2024年に発表した『モンスターハンターアウト ランダーズ』をはじめ、他社へのIPライセンスアウトによる当社ブランドの認知拡大施策は、今後も継続して展開してまいります。

アミューズメント(AM)施設事業やアミューズメント(AM)機器事業は独自に収益を拡大するとともに、日本国内での当社のゲームコンテンツのブランド拡大にも貢献しています。AM施設事業は、当社と一般消費者を含めたユーザーとのリアルにおける貴重なタッチポイントであるとともに、ゲームソフトの体験会などを通じ、コンシューマビジネスとのシナジーを図る場としています。またAM機器事業は、ゲームコンテンツと遊技機の相性が良く、ユーザーの裾野を広げています。

ライセンスビジネスは、新作ゲームの発売時期に合わせたコラボ商品や他社ゲームに当社キャラを登場させるようなコラボ案件の増加により、営業利益は過去最高を更新しています。現在ライセンスビジネスは、日本・アジア地域が主体ですが、グローバル展開を念頭に置いた強化策を進めていきます。

eスポーツビジネスは、2014年より、最大160ヵ国・地域を対象に「CAPCOM Pro Tour」を展開してまいりました。2024年6月からは『ストリートファイター 6』を用いた「CAPCOM Pro Tour 2024」を世界各地で開催し、2025年3月には両国国技館にて「CAPCOM CUP 11」および「ストリートファイターリーグ: ワールド チャンピオンシップ 2024」を日本初開催し、計1万4千人が来場、オンライン視聴は1,000万回を超えるなど大きな反響を得ました。2025年夏には「Esports World Cup」も実施され「CAPCOM Pro Tour 2025」など各大会との協力体制の構築により、『ストリート ファイター 6』の認知拡大とグローバル市場での成長を加速してまいります。

これから世界中でより多くの方々にカプコンファン、カプコンユーザーになっていただくためには、当社のコーポレート・ブランド、コンテンツ・ブランドをさらに拡大・浸透させていくことが不可欠です。2022年5月以降に発表した日本バレーボール協会やサッカークラブ「セレッソ大阪」、東京国際映画祭へのスポンサー協賛や、今年3月から開催され好評を博している当社ゲーム開発のプロセス等を展示した「大カプコン展-世界を魅了するゲームクリエイション」、大阪・関西万博への体験型コンテンツ『MONSTER HUNTER BRIDGE(モンスターハンターブリッジ)』の出展など地域・文化・技術等への社会貢献活動も行っています。

コンシューマを核としたグローバルでのブランド力強化の図

世界最高のコンテンツを安定して生み出す開発力強化

当社では、KPIである毎期10%以上の営業利益増益、年間ソフト販売1億本の達成に向け、「バイオハザード」「モンスターハンター」「ストリートファイター」などの主力IPを軸に、ナンバリング、続編、リメイク、新規IP、最新ハードへの移植などをタイトルマップに落とし、課題を一つずつ解決しながら確度を高めています。毎年2~3本の主力新作を安定的に投入していますが、将来的にはパイプラインの拡充が必要です。

当社は「ロックマン」、「デビルメイクライ」、「逆転裁判」などグローバルに人気のあるブランドも多数保有しており、これらの新作やリメイク、また新たなハードへの移植を通じてユーザー層の拡大と業績の伸長を図ります。ブランド力を高め、固定ファンを育てることで、主力IPへの成長を目指します。

こうしたコンテンツを生み出すのは、社内の世界トップレベルのクリエイターです。3年前から人的資本強化を経営課題とし、開発体制の拡充に向けて人材の育成・採用を進めています。以前より、開発拠点を大阪に集約し効率化を推進してきましたが、さらなる開発体制の強化のため、本社隣地に新たな開発施設を建設中であり、2027年竣工予定です。さらに近隣の土地も取得し、将来的な拠点拡張も視野に入れています。加えて、当社の開発力を支える「RE ENGINE」は自社開発であり、継続的なアップデートにより新技術への対応や作業効率の向上を実現しています。

今後はAIなど新技術の登場により、ゲームビジネスはさらに変化する可能性があります。VRやクロスプレイにもいち早く対応してきましたし、今年6月に発売された新ハードNintendo Switch 2にも発売初日に対応タイトルを提供するなど、引き続きマルチプラットフォーム戦略を推し進めています。これらの新領域へも技術的な検証を行っています。大事なことは、新技術を活用して新たなゲーム体験をユーザーの方々に提供することです。技術が先行しても、ゲームとして面白くなければ意味がありません。

最後に強調したいのは、ビジネスの形が変わっても、当社が最優先すべきは「世界最高のコンテンツへ磨き上げること」であり、それを販売サイドがしっかり訴求されれば、プラットフォームやサービスが変わってもユーザーに選択していただける。逆にコンテンツやサービスが中途半端であれば、たとえ一時時流に乗ったとしても、成長は持続しない。当業界の最前線を走り続けてきた経験則から、当社はそう確信しています。


マーケティング戦略の図

中長期の成長戦略

  1. COOが語る成長戦略
  2. 市場分析
  3. CHO兼CFOが語る人材・財務戦略
  4. 財務ハイライト

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