特集 モンスターハンター ヒットの軌跡(後編)

「モンスターハンター ヒットの軌跡」シリーズ通算2,100万本を誇り、「モンハン現象」と呼ばれる社会現象を起こしたカプコンを代表するタイトル「モンスターハンター」の誕生からヒットまでの軌跡をご紹介します。(後編)

期待感の醸成と認知度の向上、2面展開のプロモーション戦略期待感の醸成と認知度の向上、2面展開のプロモーション戦略

(写真1)リアル集会所では毎回多くのユーザーが集まり、初対面同士でマルチプレイを楽しむ。

遂にカプコンを代表するタイトルに成長した「モンスターハンター」だが、ゲームの面白さだけでここまでのヒットを記録したわけではない。開発者がどんなに面白いゲームを開発したとしても、それがユーザーに伝わらなければゲームの購入にはつながらない。新規ユーザーの開拓には、イベントの実施や他業種とのコラボレーションなど、プロモーションも大きな役割を果たしている。自分たちでマルチプレイを売りにしているのだから、そうした遊び方ができる環境をユーザーに提供するべきだと企画されたイベントが、「モンスターハンターフェスタ」である。

このイベントでは “リアル集会所”という、見ず知らずの人同士でマルチプレイを楽しむブースを設置した。より多くの人と協力して遊びたいと思っていたユーザーはもちろん、興味はあったが一人でしか遊んだことがないというユーザーからも好評を博し、今ではどの会場でも満員となる人気ブースとなった。

(写真2)長野県渋温泉に「ユクモ村」を再現。当地へはラッピング電車を運行し、閑散期ながら1万人以上が訪れた。

なお、こうしたイベント実施の副次的効果として、ゲームユーザー以外からの認知度向上も挙げられる。熱心なユーザーであれば会場との往復の間もゲームで遊んでくれるため、たまたま同じ電車に乗り合わせた人がその様子を見ていれば、”あの人たちは何で遊んでいるのだろう?”と興味をかき立てることができるのだ。

また、「モンスターハンター」では株式会社ユニクロと協力したオリジナルTシャツの販売や赤城乳業株式会社のガリガリ君のパッケージイラストへの展開、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとのコラボイベントなど、ライトユーザーへの知名度浸透を図り、異業種とのコラボレーションを積極的に行っている。『モンスターハンターポータブル 3rd』の発売時には、長野県渋温泉でゲームにちなんだ造作物の設置や街一面の垂れ幕展開など、地元組合の理解と協力のもと、ゲームの舞台である「ユクモ村」を再現したことも世間を驚かせた。

新規ユーザーにゲームを紹介してくれるのは、ほかならぬ既存のユーザーたちである。コラボやイベントの実施により、彼らには友人に紹介したくなるような期待感を、紹介される側には、「モンスターハンター」と聞いたときに”どこかで聞いたことあるよ”と言ってもらえるように知名度の向上を、この2面展開により、「モンスターハンター」はユーザー層の拡大に成功したのである。

異例の試み。長野県渋温泉とのコラボレーションの舞台裏

プロダクト室 商品化ライセンスチーム 南出 直人

最初は渋温泉にゲームの内容を知らない方も多く、コラボによる伝統や風習の毀損の懸念もありました。この壁を払拭するため、ゲームに触れてもらうだけでなく、各種イベントを体感していただき、ゲームへの理解を深めてもらいました。また企画自体も、温泉街にマッチした提案にするなど、Win-Winの関係を堅持することで先方との信頼関係を築くことができました。こうした働きかけの結果、「モンスターハンター」を共通言語として、初対面の人とでも盛りあがれるイベントが実施できたのは非常に有意義だったと思います。

既存の方法にとらわれない販売施策により、ゲームのイメージ浸透に成功既存の方法にとらわれない販売施策により、ゲームのイメージ浸透に成功

世間から注目されるゲームを最大限販売につなげるべく、営業部門でもまた”ユーザーがユーザーを誘いやすい”環境を作るため、年間を通して「モンハン」の情報を世間に提供している。

(写真3)ミリオン突破時には写真のような300万本突破告知を行い、市場での更なる認知度向上を図った。

前述の「モンスターハンターフェスタ」や試遊体験会をはじめ、定期的にイベントを実施するほか、販売本数が一定数を超えた際には”○○万本突破記念”の告知を行うなど、いかに世間で人気のあるゲームであるかをアピールすることで、ブームの伸長を図ると同時に、販売店と協力し、売り場での長期コーナー確保および「モンハン応援店」の設置、更には情報誌「MONFAN(モンファン)」を配布するなど、継続した情報提供に力を入れた。

また「モンスターハンター」では、廉価版の投入タイミングに工夫を施した。廉価版は通常、ある程度販売の落ち着いた時期に投入するが、「モンスターハンター」では早いものでは発売から約半年で投入している。世間で盛り上がり、友人からも勧められてはいるが、少しきっかけが遅くなったり、ゲーム機本体ごと購入しなければならない人など、価格を理由に購入をためらったりしている層を後押しするためである。”ユーザーがユーザーを誘うゲーム”である以上、販売が落ち着いた頃ではなく、世間で盛り上がっているときに買ってもらえなければ意味がないのだ。なお、この施策の効果により『モンスターハンターポータブル 2nd G PSP the Best』は廉価版としては異例のミリオンセールスを達成している。

更に、世間の話題喚起のためには発売日の設定も重要だ。「モンスターハンター」の主なユーザー層は中高生である。学校で話題にしてもらうとともに、ターゲットユーザーの生活スタイルに合わせた施策を発売日設定やプロモーションに取り入れている。こうした取り組みの結果、過去一部の販売店で「モンスターハンター」の販売予約を開始すると”4本ずつ”予約が増えたという。これは”「モンスターハンター」は友達を誘って4人で遊べるゲーム”と市場に認知されたことの証左だろう。

(写真4)販売店の協力により設置している機関紙「MONFAN」。ゲーム情報以外にも、イベント情報などが記載されている。(写真5)プレイするだけでは伝わらない要素は、アテンドスタッフが懇切丁寧に説明する。

試遊体験会では、熟知したスタッフの対応により
新作への理解をサポート

CS 事業統括 副統括 石田 義則

初代『モンスターハンター』ではいかにゲーム内容を理解してもらうかに腐心しました。完全新作のタイトルでは、少し遊んだだけではゲーム内容を理解してもらうことは難しいため、イベントなどで試遊してもらうときには、ゲーム内容を熟知したスタッフを配置することで、様々な不明点や意見に対応できるようにしました。ちなみにこの方法は今も一貫して続けており、新規で「モンスターハンター」に触れていただける方へ的確なフォローができるようにしています。

常に全力疾走。ユーザーと共に進化を続ける「モンスターハンター」常に全力疾走。ユーザーと共に進化を続ける「モンスターハンター」

『モンスターハンター3(トライ)G』発売日の様子。早朝にもかかわらず、開店前から大行列ができた。

2011年12月、『モンスターハンター3(トライ)G』がニンテンドー3DSに向けて発売された。未知なる新規ハードでの挑戦ながら160万本という好調なセールスを記録するとともに、今後のタイトル開発に向けたノウハウの習得など、シリーズにとって大きな収穫のあるタイトルとなった。更に2013年の春には新たな要素をふんだんに詰め込んだ最新作『モンスターハンター4』の発売も控える。

シリーズ初のニンテンドー3DS向けソフト『モンスターハンター3(トライ)G』は160万本の出荷を記録。

「モンスターハンター」は新作を開発するたび、いかに早くモンスターを討伐できるかを競うタイムアタック要素やプレイヤーと一緒にモンスターに立ち向かってくれるオトモアイルーなど、前作にはない様々な要素を搭載し、進化してきた。これらの要素は皆、”誰もが分け隔てなく楽しめるゲームであること”に基づき、コアユーザーからライトユーザーまで幅広いユーザー層をサポートするべく考案されてきた。初代で設定した基本コンセプトは今でも変わることはない。シリーズが誕生した2004年から8年間、「モンスターハンター」に関わったスタッフは皆常に、”誰もやらなかったことをやろう”という思いで駆け抜けてきた。

それも全てはゲームを楽しんでくれるユーザーのため。
そしてそれを受け止めてくれるユーザーの存在があったからこそ、ここまでの盛り上がりを見せることができた。これからも「モンスターハンター」はカプコンを代表するタイトルとして、ユーザーと共に更なる進化を続けていく。

※2012年6月末時点

ニンテンドー3DS向けソフト『モンスターハンター4』は2013年春に発売予定。

最新作 『モンスターハンター4』で目指すもの

編成部 プロデュース室 プロデューサー 辻本 良三

『モンスターハンター4』では、シリーズならではの面白さはそのままに、”新鮮さ”を感じてもらえるように開発を進めています。「モンスターハンター」は、現在遊んでくれているこどもたちが親になったときに、こどもと一緒に楽しんでもらえるような、息の長いシリーズとなることを目指しています。”『モンスターハンター4』があったからこんなにシリーズが続いたんだね”と言ってもらえるような進化が見せられればうれしいですね。

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