戦国BASARA特集1:「戦国BASARA」開発物語(2)

戦国BASARA特集1 「戦国BASARA」開発物語~誕生10周年記念~

事実を基にストーリー仕立てにしています。

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人気ブランドタイトルとなった「戦国BASARA」は思わぬ社会現象を生み出していた。 人気ブランドタイトルとなった「戦国BASARA」は思わぬ社会現象を生み出していた。

Scene:5 展開 2009年 夏

「お疲れさまでした。連日大変ですね」
雑誌社のインタビューを終え、応接ルームから出てきた小林に、山本が声をかけた。

「『歴史』ブームのおかげでここんとこ毎日取材攻めだ。仕事にならないよ」
そうぼやきつつも小林の顔には笑みが浮かんでいる。
「まあ、これもプロデューサーの仕事ですよ」
山本も笑った。

2009年7月。初代『戦国BASARA』の発売からもう4年が経過していた。

この4年間、2人はシリーズ続編を年1作のペースでリリースし続けるとともにドラマCD、コミック、アニメ、舞台などのマルチメディア展開を進めてきた。今では「戦国BASARA」は人気ブランドタイトルとなり、社内でも確固たる地位を築いている。

一方で「戦国BASARA」は思わぬ社会現象を生み出していた。「歴女ブーム」だ。

2007年頃から全国各地の戦国武将ゆかりの史跡や伝統行事を観光し、互いに情報を交換して盛り上がる若い女性達がマスコミの注目を集めはじめる。「戦国BASARA」はこのブームの火付け役と見なされ、最近ではプロデューサーの小林に、ゲーム雑誌だけでなく地方紙や一般紙からも取材申し込みが相次いでいた。

「今日の取材も、やっぱり『歴女』がらみだったんですか?」
「うん、予想通りの質問がきたよ。『ブームの仕掛け人としてひと言』ってやつ」

一般に「難しさ」が魅力のアクションゲームに女性ファンは少ない。だが「戦国BASARA」は女性でも簡単な操作で大勢の敵をばたばたなぎ倒せる。キャラクターにもお洒落でイケメンの男子が揃い、しかも選ぶキャラによって多彩なゲームカラーを楽しめる。そうした独自の魅力が多くの女性の心を捉えた。主人公として選べない「脇キャラ」にすら熱心な女性ファンがつき、関連史跡に大勢が押しかけて地元の人々を驚かせた。

「仕掛け人か…別に狙ったわけじゃないんですけどね」
「うん。当初から流血のような”女性に嫌がられるような要素は入れない”とは決めていた。でも女性ファンがここまで増えるとは全然予想してなかった。今日も記者さんにそう話したよ」
「そういえば、宮城県からウチの『伊達政宗』を使いたいってオファーが来てるそうですね」
「うん、考えたらすごいことだよな。知事選挙の啓発ポスターがゲームのキャラクターだなんて」

ゲームが創造した世界観。それは時として社会的にも大きな影響力を持つ。2人はあらためてゲームの可能性の大きさと深さを実感していた。


TVアニメ「戦国BASARA」
©CAPCOM/TEAM BASARA

「ええ。やれることは、全てやっていますから」いつになく厳しい表情で山本は答えた。 「ええ。やれることは、全てやっていますから」いつになく厳しい表情で山本は答えた。

Scene:6 焦燥 2013年 夏

「なんだよ、このアクション。言ってたのと全然違うじゃないか!」
「ええっ、だって山本さんが『もっとダイナミックに』って言ったんでしょ?!」
「そういう意味じゃないんだよ! これじゃ単に跳び回ってるだけじゃないか!」
「じゃあ、どうしろって言うんですか!」

2013年7月。久しぶりに開発ルームを訪れた小林の目に飛びこんできたのは、プログラマーチームのリーダーと山本の激しい議論だった。しかしスタッフ達の中で、そちらに目を向ける者は誰もいない。毎日のようにこんなシーンを見せられ慣れっこになってしまっているらしい。全員がディスプレイに向かい自分のタスクを黙々とこなしている。野戦部隊のキャンプのようなどこか殺伐とした空気が、開発チームを覆っていた。

「『戦国BASARA4』のリリースまで、もう半年を切ったけど、うまくいってるの?」
ミーティングルームに入り、山本と向き合った小林はそう尋ねた。
「ええ。やれることは、全てやっていますから」
いつになく厳しい表情で山本は答えた。

その言葉に嘘はないだろう、と小林は思った。ディレクターとしての山本の能力には全幅の信頼を寄せている。キャラクター、ストーリー、デザイン、アクション、音楽、シナリオ、声優…ゲームに関わる全ての要素をしっかりと把握し、自ら独創的なアイデアを次々と生み出しつつ、確固たるイメージを持ってスタッフ達を指揮して目指すものを具現化していく。彼の並外れた能力があったからこそ、「戦国BASARA」はここまでこれた。

だが、今の開発チームから感じるのは、創造の熱気というよりも何かヒリヒリとした焦燥感のような熱だ。プロデューサーとしての業務が多忙になって、ここ数ヵ月は現場を山本に任せっきりにしていたが、やはりプレッシャーが大きいのか…。
「大所帯になったから、大変だよなぁ」小林はさりげなく言ってみた。

3年前(2010年)の夏、小林と山本が「やりたいこと」の全てを注ぎ込んだ『戦国BASARA3』は多くのファンの心を掴み、累計50万本以上を売り上げるヒット作となった。この成功によって次作『戦国BASARA4』への期待度も飛躍的に高まり、開発体制も初代『戦国BASARA』の3倍以上という大規模なものになっている。

「確かに大所帯ですが、それを動かすのが私の役目ですから」相変わらず山本の表情は硬い。

彼はどんな時も絶対に手を抜かない。それはわかっている。ただ、組織というものは人数が増えるにつれコントロールがどんどん難しくなる。大勢のスタッフの全員にディレクターの意思を行き渡らせるのは、至難の業だ。大丈夫だろうか…。小林はかすかな不安を覚えた。

「それができれば、次は絶対にいい物がつくれる」このままでは、終われない。 「それができれば、次は絶対にいい物がつくれる」このままでは、終われない。

Scene:7 再起 2014年 冬

小林の不安は6ヵ月後、現実のものとなった。2014年1月にリリースされた『戦国BASARA4』は目標に満たない販売本数にとどまった。
「戦国ブームがピークアウトした」「アクションなど新要素の詰め込み過ぎ」「プロモーション不足で新ファン層を取り込めなかった」等々、社内では販売不振の要因が様々に指摘された。確かにどれも真実ではあるだろう。だが一番の原因は別にある、と小林は考えていた。

「悔しいね」
6ヵ月前と同じミーティングルームに入り、小林は山本に言葉をかけた。
「そうですね…。悔しいというか、今は何も考えられなくて…」
つぶやくように山本は言った。うつろな目をしている。そんな彼を見て小林は決心した。やはり言ってしまおう。
「社内では色々言われてるけど、おれは自分達のゲーム企画そのものが間違っていたとは思っていないよ」
「?」
山本が顔を上げた。
「多分一番の問題は、おれ達2人の頭の中にある『戦国BASARA4』の世界を、スタッフ達と共有できなかったことだと思う」
黙って見つめる山本に、小林は続けた。
「開発中にチームリーダー達に色々話を聞いたんだけど『山本さんの言ってることがわからない』とよくこぼしてた。思いが伝わっていないことが多かったんじゃないか?」
しばらく考え込んでいた山本は、ゆっくりと口を開いた。
「確かに…そうだったかもしれません。何としても『戦国BASARA3』を超えるんだ、と気がはやってメンバー達とじっくり話し合うことが少なかった。ディレクションじゃなく一方的な押し付けになっていたかも…」
「凄いプレッシャーだったし、無理もないよ。フォローし切れなかったおれにも責任がある。大きなプロジェクトになるほど、思いを1つにするのって難しいからね」
「ゲームの前に、まずチームをつくる。その基本的なことを忘れていたかもしれません」
山本の目にようやく光が戻ってきた。小林はうなずいた。
「でも、それができれば、次は絶対にいい物がつくれる。そう信じているよ」

山本もうなずいた。このままでは、終われない。彼の中に再び静かな闘志が湧き上がってくるのが、小林には見えた。

戦国BASARAの歴史

2010年7月 P3,Wii

戦国BASARA3

初のPS3対応ソフトとしてグラフィックとアクションが大幅に進化。「徳川家康」と「石田三成」が新主人公として登場し、関ヶ原の戦いを中心に描いた作品。

2011年4月 PSP

戦国BASARA クロニクルヒーローズ

携帯ゲーム機2作品目として、『バトルヒーローズ』に『3』のキャラクターを追加し、チームバトルを楽しめる作品。

2011年11月 P3,Wii

戦国BASARA3 宴

『3』では描ききれなかった物語、アクション要素をプラスした外伝作品。

2012年8月 PS3

戦国BASARA HDコレクション

『戦国BASARA』『戦国BASARA2』『戦国BASARA2 英雄外伝(HEROES)』をPS3でもう一度プレイできるようにHD化した作品。

2014年7月 PS3

戦国BASARA4

戦国創世をコンセプトに「伊達政宗」「石田三成」らを中心に全32武将のアクションとストーリーで新戦国時代を丸ごと体験できる作品。

2015年7月 PS3,PS4

戦国BASARA4 皇

シリーズ10周年記念作品。「足利義輝」「千利休」「京極マリア」がプレイヤー武将として参戦!全40武将のアクションとストーリーが凝縮されたボリューム最大の自信作。

戦国BASARAの歴史

2010年7月 P3,Wii

戦国BASARA3

初のPS3対応ソフトとしてグラフィックとアクションが大幅に進化。「徳川家康」と「石田三成」が新主人公として登場し、関ヶ原の戦いを中心に描いた作品。

2011年4月 PSP

戦国BASARA クロニクルヒーローズ

携帯ゲーム機2作品目として、『バトルヒーローズ』に『3』のキャラクターを追加し、チームバトルを楽しめる作品。

2011年11月 P3,Wii

戦国BASARA3 宴

『3』では描ききれなかった物語、アクション要素をプラスした外伝作品。

2012年8月 PS3

戦国BASARA HDコレクション

『戦国BASARA』『戦国BASARA2』『戦国BASARA2 英雄外伝(HEROES)』をPS3でもう一度プレイできるようにHD化した作品。

2014年7月 PS3

戦国BASARA4

戦国創世をコンセプトに「伊達政宗」「石田三成」らを中心に全32武将のアクションとストーリーで新戦国時代を丸ごと体験できる作品。

2015年7月 PS3,PS4

戦国BASARA4 皇

シリーズ10周年記念作品。「足利義輝」「千利休」「京極マリア」がプレイヤー武将として参戦!全40武将のアクションとストーリーが凝縮されたボリューム最大の自信作。

プロフィール

プロデューサー 小林 裕幸

プロデューサーとして「戦国BASARA」、「ドラゴンズドグマ」、「デビル メイ クライ」、「バイオハザード」など人気シリーズを担当。

ディレクター 山本 真

デザイナーとして入社後、「戦国BASARA」のディレクターとして抜擢される。以降、シリーズを通してディレクターを務める。

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