開発者インタビュー2020:シリーズ25周年を迎えた「バイオハザード」恐怖の先にある達成感で世界中のゲームファンを魅了

『バイオハザード ヴィレッジ』 プロデューサー

神田 剛

Kanda Tsuyoshi

2002年入社。国内でマーケティングや海外業務に携わった後、2008年にカプコンU.S.A.へ出向。2015年に帰任し、プロデュース職に転向。『バイオハザード7 レジデント イービル』と今作ではプロデューサーを務める。

『バイオハザード ヴィレッジ』 プロデューサー

神田 剛

Kanda Tsuyoshi

2002年入社。国内でマーケティングや海外業務に携わった後、2008年にカプコンU.S.A.へ出向。2015年に帰任し、プロデュース職に転向。『バイオハザード7 レジデント イービル』と今作ではプロデューサーを務める。

シリーズ25周年を迎えた「バイオハザード」
恐怖の先にある達成感で世界中のゲームファンを魅了

進化を続ける「バイオハザード」シリーズ
プレイヤーを「サバイバルホラー」の世界へ

「バイオハザード」シリーズは2021年3月に25周年を迎えました。これほど長きにわたってファンに支持されてきた理由は何だと思いますか?

25年もの間支持されてきたのは、1990年代に「サバイバルホラー」という新たなジャンルを切り拓いたことが大きいと思います。第1作の発売時は大きく注目されるタイトルではありませんでしたが、「本当に怖い、そして面白い!」と口コミ等で大きな話題となり、第2作からの国内外での記録的なセールスにつながりました。さらに、全6作にわたるハリウッド映画のシリーズや、テーマパークのアトラクション化などを通じ、ゲームに触れたことがない層にもファンが生まれ、グローバルで「バイオハザード」というブランドが浸透していきました。

また、「一見の価値ある面白いもの作りに挑む」というカプコンのDNAは、シリーズを通して常に新しい要素へ挑戦することで受け継がれ、「バイオハザード」を進化させてきました。歴代のディレクター、プロデューサーをはじめとする全てのスタッフが、毎作「前作を超えるものを作る」という気概のもと開発に携わり、一つひとつのタイトルが多くの方に受け入れてもらえたからこそ今があり、25周年という大きな節目を迎えられたのだと思います。

過去作のリメイクも好評です。
ありがたいですね。『バイオハザード RE:2』や『バイオハザード RE:3』は、シリーズファンからの強い要望が制作へとつながりました。結果、国内外で既存ファンだけでなく、初めてシリーズに触れた方々からも高い評価をいただきました。さらに近年は、過去作を含めたデジタル販売にも積極的に取り組んでいます。昨年、タイトル発売にあわせたセールを積極的に実施した結果、カプコンのタイトルシリーズでは初めて全世界で累計販売本数1億本を超えることができました。
新たな映像展開も発表されましたね。
はい。フル3DCGアニメーションの映像で初となる連続CGドラマ『バイオハザード:インフィニット ダークネス』のNetflixでの全世界独占配信を予定しています。また、キャストや監督を一新した完全新作のハリウッド映画の制作も進められています。

「バイオハザード」シリーズの単なるホラーにとどまらない面白さは何だと思いますか?
従来のホラーにはあまりなかった、大きな恐怖に打ち勝つ達成感、ゲームならではのカタルシスを味わえることだと思います。次々と降りかかる困難の中に、様々な武器やギミックなどの要素を多数盛り込み、ゲームファンの期待に応えられる面白さを追求しています。
単純な恐怖の連続、ではないということですね。
はい。物語の核心に迫るようなシリアスなシーンが続いたかと思えば、思いもよらないところから突然現れるクリーチャーや、所々で交差する個性的なキャラクター群など、恐怖を乗り越えながらプレイヤーが自らの手で全容を少しずつ解明していく。ホラー要素で全体を貫きつつ、キャラクターやドラマ性の深み、さらに自身のゲームプレイという要素が加わり、極限の恐怖とカタルシスが味わえるのが「バイオハザード」だと思います。

フォトリアルな美しさ×感覚を刺激する恐怖
寒村を舞台に未だかつてないホラー体験を

シリーズ最新作となる『バイオハザード ヴィレッジ』がついに発売されますね。
はい、前作『バイオハザード7 レジデント イービル』から実に4年ぶりのナンバリングタイトルに相当します。前作と同じく主人公イーサンを軸としたストーリーが展開します。
タイトル名に、第8作のナンバリングとしての趣向が施されています。
タイトルロゴで見ていただけるように、VILLAGEにローマ数字のVIIIを忍ばせています。VILLAGEの名の通り、プレイヤーは不気味な寒村を舞台に新たなサバイバルホラーに挑むことになります。

 

今回の新しさ、とは何でしょうか。
第1作『バイオハザード』にもみられる、近世ヨーロッパを彷彿とさせるゴシックホラーを継承しながら、まさに「死に物狂い」の恐怖をとことん追求しています。例えば、プレイヤーに迫りくる生々しいクリーチャーの数々、不気味な鳴き声など、ゲーム機のスペックを生かした多角的なアプローチで、未だかつてない恐怖を生み出せたと思っています。あと、シリーズの中でもひときわ遊び応えのあるプレイボリュームも楽しんでいただきたい部分です。

本作は新世代機だけでなく、従来機にも対応していますね。
まず最新作として、新世代機ならではの没入感あふれるゲームプレイ体験の提供を最優先に開発を進めました。高精細なグラフィックを実現しつつも、ゲームデータを最適化しロード時間を大幅に短縮することにより、ストレスのないプレイを目指しました。また従来機でも敵との戦闘などでスムーズな操作感を担保することで、より多くゲームファンの皆さまに楽しんでいただけるよう最後まで調整を重ねました。
その没入感を出すために、どのような工夫をしましたか?

前作に引き続き、「アイソレイト ビュー」という一人称視点でのプレイを採用していますが、これはプレイヤーが意識せず深く世界に入り込める、浸れることを意図したからです。この主観視点をベースにグラフィックやサウンド面で最新技術を駆使し、「今その世界にいる」ような没入感を生み出しています。

例えば、光の映り込みを再現する「リアルタイム レイトレーシング」技術により、ディテールの感じられる床面の映り込みや、さらにリアルな水面の描写、探索をする城内の調度品や食器に至るまで、現実のような美しいビジュアル空間を生み出しています。前作でも世界的な評価を受けているオーディオは、さらに進化したサラウンド技術を駆使して前作以上に臨場感と没入感溢れる空間を演出、敵がどの方向から近づいてくるのかが分かるほどで、グラフィックとサウンドの両面で新世代機にふさわしい更なるクオリティアップを目指しました。

現実と錯覚しそうな臨場感が伝わってきます。
さらにアクション性を高めたことも本作の特徴のひとつです。例えば、前作から採用している攻撃からのガード操作に加えてカウンター攻撃も可能。マップに置かれている家具を使って壁を作るなど、操作面でも幅を広げています。その他にも新要素はありますが、実際にプレイして確認してみてください。(笑)

お話を聞いているだけで興味が湧いてきますね。
是非、シリーズをプレイされたことのない方にも、身に迫る恐怖に抗いながら、試行錯誤して攻略をする面白さを味わっていただきたいです。
その面白さをいち早く試遊できる体験版『MAIDEN』(メイデン)が配信されましたね。
本作のビジュアルデモ『MAIDEN』を1月から配信しました。作中に登場するドミトレスク城に囚われた少女を操作し、城からの脱出を目指す内容です。『バイオハザード ヴィレッジ』こだわりのグラフィックを存分に体験していただけると嬉しいです。

多くのこだわりが詰まったタイトルですが、開発チームの規模も大きいのでしょうか。
国内外の協力会社が携わっていますが、社内では200人弱のチーム編成となります。次世代の開発を担う人材を育成するため、若いスタッフも積極的に起用しています。また、エンドユーザーの目線から開発チームへフィードバックを行う品質管理部からの意見も吸い上げ、様々な視点から議論を深めてタイトルのクオリティアップを図ることができる体制にしています。
大型タイトルともなると、開発期間も長くなるのでしょうか。
新世代機でリアルな描写を目指すと制作時間はかさみがちではありますが、カプコン独自の開発エンジンである「RE ENGINE」により、ゲーム開発に最適化した柔軟かつ効率的な開発環境がベースにあるため、開発期間の短縮化につなげられています。
新型コロナウイルスによる開発への影響はいかがですか。
やはり、モーションキャプチャースタジオやサウンドを制作するフォーリースタジオなど、専用機材を用いる開発現場を中心にスケジュールの乱れは生じました。リモートワークや、時差出勤、ソーシャルディスタンスの確保など感染対策を講じた上で、オンライン会議システムなどを最大限活用し、開発に不可欠であるコミュニケーションを確保することで、制作に支障が出ないよう努めました。加えて、「RE ENGINE」による開発で制作クオリティを維持し、かつ作業スピードもあげられたため、結果としてプロジェクトへの影響を最小限にとどめられました。

グローバルに展開するプロモーション
オンラインの波に乗り、更なるブランドの進化へ

神田さんは本作にプロデューサーとしてどのように携わりましたか?

制作工程の管理や開発チームのマネジメントのほか、グローバルのマーケティングのスタッフとコミュニケーションを取り、関連部門とともにタイトルの収益機会を最大化することが私の役割です。発売を前に協力会社や国内外の販売および販促部門と各地域に向けたプロモーション活動を進めていますが、地域毎に有効な情報発信の手法なども異なるため、細かなニュアンスのすり合わせなど密に連携を取っています。
新型コロナウイルスの影響で対面イベントの実施も難しい状況が続いています。

毎年恒例の大型ゲームショウであるE3やゲームズコン、東京ゲームショウ等は、直接ゲームファンに訴求できることから、当初のプロモーション計画では重要施策として位置付けていました。しかしコロナ禍により中止やオンラインのみでの開催となったことから、本作ではオンライン中心のデジタルプロモーションを推進してきました。

例えば、複数あったWEBサービスを統合しブランドサイト「BIOHAZARD PORTAL」を今年新たに開設しました。このサイトではタイトルの最新情報や動画コンテンツだけでなく、世界中の プレイヤーのプレイデータなども掲載し、ゲームをさらに楽しめるコンテンツを配信しています。コアファンだけでなく、カジュアルなファン層にも魅力が伝わるサイトを目指しています。

シリーズ25周年と連動した企画にはどのようなものがありますか?

目玉としては、本作『バイオハザード ヴィレッジ』を購入した方に、25周年記念タイトルと位置づけている『バイオハザード RE:バース』が、特典として無償付与されます。同作は「バイオハザード」シリーズの人気キャラクター同士で闘うオンライン対戦アクションで、5分間のバトルで獲得ポイント数を競い、本編では体験できないデスマッチを楽しむことができます。

また、キャラクターフィギュアをはじめとする豪華アイテムを収めた『バイオハザード ヴィレッジ コレクターズ エディション』も通常版と同時発売予定です。シリーズファンの皆さまに『バイオハザード ヴィレッジ』の世界観に浸っていただける特別なパッケージに仕上げました。

様々なプロモーションを展開していますが、神田さんの販売に対する意気込みをお聞かせください。
プロデューサーの立場としては、グローバルでずばり総販売本数1,000万本超を目指したいですね!前作は累計850万本を達成していますので、シーズンに合わせたセールの実施やデジタル施策など、様々な戦略を講じていけば不可能な数字ではないと思っています。
ますますの盛り上がりが楽しみですね。最後に一言お願いします。
カプコンには、常に新しい技術やクリエイティビティを追求し、世界に通用する面白いゲームづくりにチャレンジする社風と精神が根付いています。『バイオハザード ヴィレッジ』も、最高のゲームプレイ体験を心に刻んでいただけるよう全身全霊を懸けて開発とプロモーションを進めてきました。是非期待してお待ちください!

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