INTERVIEW 03 岡部 眞輝

開発者インタビュー2018

『デビル メイ クライ 5』
シニアプロデューサー

岡部 眞輝

Michiteru Okabe

2010年カプコン入社。前職でのアニメーション、エフェクト、企画、ディレクターなど様々なゲーム開発の経験を活かしカプコン入社後は『ゴーストトリック』や『大神伝』の海外展開に携わった後、『バイオハザード リベレーションズ2』ではプロデューサーを担当。約10年ぶりのシリーズ最新作となる『デビル メイ クライ 5』ではシニアプロデューサーとして全体の指揮を執る。

INTERVIEW 03: 約10年振りの最新作     シリーズ史上最も美麗なグラフィックでスタイリッシュアクションの魅力を最大限に引き出す

最新テクノロジー×職人技 ハイスピードバトルを美麗な映像で実現

はじめに、『デビル メイ クライ 5』を開発することになった経緯について教えてください。

同シリーズの『2』から制作に携わるディレクターの伊津野を中心に、『デビル メイ クライ 4 スペシャルエディション』の発売後、『5』の構想を開始しました。

ディレクターの伊津野から開発当初、プレイヤーは3人、ネロが主人公で右腕を奪われるシーンから始まる、というかなり具体的な構想が決まっており、彼の『5』への思いが募っていましたね。現在、ほぼ当時の構想どおりに進んでいます。

「デビル メイ クライ」シリーズは、『1』から実に18年間続く長寿シリーズになりますが、支持されている理由はどこにあるのでしょうか。
シリーズ最大の魅力を一言で言うと、個性豊かなキャラクターとハイスピードバトルが生み出す爽快感です。本作では、そのスタイリッシュなアクションを、最新技術によりシリーズ史上最も美麗なグラフィックスで実現しています。
最新作『デビル メイ クライ 5』の魅力を教えてください。

前作から数年後を舞台に、『4』に続き登場するネロや、ダンテを含む多くのキャラクターが重要な役どころとして登場する、ユーザーを飽きさせないストーリー展開にしています。

シリーズを初めてプレイするユーザーにも、見た瞬間「これはプレイしておかなければ!」と思っていただけるよう、映像にはかなりこだわって作っています。約10年間待っていただいたシリーズファンの期待を軽く越えるべく、本作には思いの全てを盛り込んでいますので、より長く楽しんでいただけるかと思います。

最新のフェイシャルスキャン技術とRE ENGINEで育まれる"リアル"なキャラクターたち

ビジュアル面ではどのような工夫をしているのでしょうか。
カプコンの開発エンジン「RE ENGINE」を活用し、最新技術を駆使したフォトリアルな表現を実現しています。キャラクターのアクター(俳優)は、イメージに近づけるため海外から登用し、オリジナルで製作したコスチュームを着てもらいメイクをしたうえで、3Dスキャンシステムで3Dデータとして取り込みました。さらに、表情豊かなキャラクターを生み出すために、海外にある3Lateral社の技術を採用しています。
登用するアクターや技術はどのように見つけ出しているのですか。
開発スタッフが、条件を満たす技術、アクターやモデルを世界各国から探し出し、実際にその国に行き、目で見て採用の有無を判断しています。3Lateral社も東欧のセルビアにある会社なのですが、ゲームキャラクターの表現で世界一の技術を持ち合わせていたので、今回採用することになりました。

ひとりのキャラクターの制作に、かなりの時間や手間がかかっているんですね。
外見、アクション、ボイスなど、ベストなものを集結させて作るという点では実写映画を超えるでしょうね。例えばアクションでは、日本人特有の所作が必要なパートは日本のアクターの動きを取り込んだり、ボイスは、英語のVやTHの発音時に舌の動きを表現できるので当然英語圏のアクターを採用しています。プレイ中には意識しない些細なことですが、「デビル メイ クライ」の世界観に浸っていただくために手は抜けないですね。
プロモーション映像に登場するキャラクターも、表情豊かでまるで実写のようでした。

キャラクターの顔がしっかり作り込まれていると、セリフの無いシーンでも、表情だけでその場の雰囲気を感じさせるような演出が可能です。

通常、アニメやゲームでボイスを収録する際、ボイスアクターに、その時のキャラクターの年齢や感情について補足説明をする必要があります。しかし本作では、表情のニュアンスまで感じ取れるほどアニメーションの完成度が高いこともあり、日本語版吹き替え収録の際は画(え)を見ただけで、まるで洋画の吹き替えかのように演じてもらえました。

フェイシャル技術と「RE ENGINE」のなせる技ですね。
含み笑いのような表情では、皺一つで雰囲気が微妙に変わってきます。単に「ポリゴンの3Dモデルが動いている」ではなく、「RE ENGINE」を活用したからこそ完成度の高いアニメーションが実現できました。

対戦格闘ゲーム開発で培った経験が毎秒60フレームのハイスピードバトルを実現

※フレームとは…1秒間に描画する静止画の数を表す単位。60フレームの場合、1秒間に60枚の静止画を表示、言い換えると、0.016秒ごとに画面を書き換えるという意味。フレーム数が多いほど、滑らかな映像となり、操作のレスポンスも良くなる。

シリーズの魅力のひとつである、アクションの操作性ではどのような苦労がありましたか。
本作でディレクターを務める伊津野は、もともと対戦格闘の制作ノウハウがあり、アーケードゲームならではの見せ方や操作感を当シリーズにも取り入れてきました。それにより生まれる、シリーズの売りである爽快感やスタイリッシュさは、きっとユーザーにも受け入れてもらえると信じて制作しています。
対戦格闘ゲームのどのような要素をアクションに取り入れているのでしょうか。

人間の行動と違い、ゲームでは操作から実際のアクションまでにタイムラグが生じます。ユーザーのコントローラー操作はまずプログラム上の入力指示となり、様々な計算処理が行われた後、結果として画面に反映されるからです。

このリアルとゲームの差を、可能な限りプログラムで吸収する必要がありました。そこで、60フレームという厳密さが求められる対戦格闘ゲームの世界で培った経験を、1人用のアクションゲームにも取り入れ、プレイヤーの入力を即座に反映する抜群の操作性を実現したのです。

高精細な映像と処理時間の短縮は両立できるのでしょうか。
今のカプコンの技術であれば可能です。リアルなビジュアルが売りのゲームは多いですが、高精細な映像でありつつ、「処理時間の長さ」=「操作性の違和感」を解決する策の一つとして、同シリーズの初期の方からアニメーションを担当し、他のゲームシリーズでも実績があるクリエイターに今回加わってもらっています。「違和感を感じさせない」ことを目標に、何度も手作業で調整して、という非常に地味な作業ではありましたが、今ようやく最終調整までこぎ着けています。この技術は当社以外では簡単には真似できません。

技術面で乗り越える壁が多々あったんですね。
他社でも同じ課題にぶつかることはあると思いますが、技術力とゲーム性の両方について深いレベルで理解を共有しなければ、この課題はクリアできません。職人的な技術力を持つ人、それを実現できる開発環境ももちろん重要ですが、前提としてゲームにあるべき操作感とは何かを理解している必要があります。
細かなところにまでこだわるのは、日本ならでは、なのでしょうか。
対戦格闘ゲームの開発ノウハウというバックグラウンドがあること、そして日本人ならでの職人気質があるんでしょうね。海外でも素晴らしいゲームはたくさんありますが、ここまで細かな点にこだわるケースは少ないと思います。

ステージ全体に響くファンの歓喜   ユーザー満足度の向上のためにプロモーションが目指すべきゴールとは

2018年6月、米国ロサンゼルスで開催された世界最大級のゲーム見本市E3(Electronic Entertainment Expo)で初のお披露目となりましたが、会場の反応はいかがでしたか。
全世界のユーザーに向けて本作を発表できたことに非常に興奮しました。伊津野とプロデューサーのマットがステージ裏にいたのですが、発表映像が流れ会場の歓声が響き渡った瞬間、期待以上の反響に二人でガッツポーズして感激に浸っていたようです。
映像ではカプコンのゲームだとすぐにはわかりませんでしたね。

実は映像の前半では、何のタイトルなのか、どこのメーカーなのか、全く分からないように作りました。中盤でカプコンのロゴを出し、その後「デビル メイ クライ」だと分かる演出を入れました。タイトルを知った瞬間、観客がどんな反応するかとても楽しみでしたね。

ありがたいことに動画の閲覧件数は数百万単位に上りましたし、ファンの声も続々と届いています。「待ってました!」という期待感が毎日のように伝わってくるので日々の開発の励みになっています。

今回の反響を受けて、愚直にアクションを追求したゲームを市場が期待してくれていることに感動しています。今後もファンが求めるシリーズならではの世界が生み出せるよう、新たなチャレンジと過去の経験を融合しながら開発していきたいと思います。

発売までのプロモーションはどのように展開していくのですか。

6月の映像発表の後、8月にドイツで開催された欧州最大規模のゲームイベント「Gamescom(ゲームズコム)」では初めて試遊機を出展しました。苦労して仕上げてきた操作性のクオリティを証明する場となりましたが、無事アピールできたと思っています。9月の東京ゲームショウ以降は、登場キャラクターや目玉となるアクションをプレイ映像で紹介しながら、このゲームの魅力を積極的に伝えていく予定です。

現在、市場から日本のゲームが好感されていることや、人気シリーズが多いカプコンのブランドイメージもあり、本作のプロモーションは、ファンの期待通りに開発が進んでいることを継続的に伝えるだけでも十分効果はあると考えています。加えて、開発スタッフや技術力を付加価値として新規ユーザーの開拓をも目指せるので、本当に贅沢なプロジェクトだと感じます。

最後に『デビル メイ クライ 5』に期待する方々へメッセージをお願いします。
カプコンが長年培った開発ノウハウや技術が詰まった最高傑作が出来上がりつつあります。「平成最後にして最高峰のアクションゲーム」を目指し、グラフィックとアクションを期待以上のクオリティまで引き上げるべく、チーム一丸となって挑戦し続けてきました。まさに「一見の価値あり」ですので、たくさんの方々に存分に遊んでいただければと思います。DMC IS BACK!!

日本ゲーム大賞2018 フューチャー賞を受賞しました/『デビル メイ クライ 5』

  • INTERVIEW 01 30年を超えて愛される名作シリーズ今も変わらないアクションゲームの面白さを未来へつなぐ/『ロックマン11 運命の歯車!!』プロデューサー/土屋 和弘
  • INTERVIEW 02 最恐のゾンビ、ここに。最新技術で甦るホラーエンタテイメントの傑作 /『バイハザード RE:2』プロデューサー/神田 剛
  • INTERVIEW 03 約10年振りの最新作  シリーズ史上最も美麗なグラフィックでスタイリッシュアクションの魅力を最大限に引き出す /『デビル メイ クライ 5』プロデューサー/岡部 眞輝

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