ESG情報- 2016年度取締役会での主な議論

2016年度取締役会での主な議論

取締役会

当社の取締役会は、6名の社外取締役を中心に積極的な意見や助言がなされており、経営の透明性・健全性を確保しています。また、株主還元策である配当や自己株式取得の方針に加え、当社の事業リスクと成長戦略についても活発な議論を交わすなど、ガバナンスを活用した成長戦略の推進に注力しています。社外取締役との白熱した議論は多数ありましたが、本ページでは、その中から数度にわたる買収防衛策の議論の概要をご紹介します。
(水色マーカーを引いている箇所は社外取締役の発言です。)

議題

当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)
に関する議案(2017年4月)

野村
2014年6月開催の第35期定時株主総会で買収防衛策の継続が否決されたものの、2015年に改めて同施策導入が可決された。可決のポイントとしては、取締役任期の1年への変更、中期戦略との連動および意思決定プロセスの総会への変更を評価されたものと考える。2年前の再導入時に成長戦略との兼ね合いで、簿外資産であるコンテンツの収益化への取り組みに関して機関投資家等を含めた株主に説明し、いったん承認を得ているが、これについても時限性のある施策として理解、承認された経緯がある。
なお、コンテンツ資産の活用にあたり、リピート売上の拡大を戦略的に取り組んできており、2013年度以降、4期連続で営業利益の増益を達成し、企業価値の向上に向けて一定の成果を上げることができた。今回、新たな中期経営目標の進捗を株主に報告するとともに2017年6月の定時株主総会で買収防衛策の継続を上程し、引き続き成長戦略に資するべく買収防衛策を取り巻く環境を鑑み多数の賛同を得るためには、先の成長戦略と合わせて「今回限り」等、時限性を明記することが求められている。
村中
「今回限り」を明記した買収防衛策の導入について、今までの実務で例がないことから、相当の注目を集めるであろう。また、明記することで期限到来後は必ず廃止することにもなる。買収防衛策の実効性は限定的なものであるが、実務的には買収者に対する牽制的な効果を重視されている部分もある。当社の場合は、導入後に時限的に廃止する判断を迫られる点で異例の判断となるが、「今回限り」の明記をせずに、否決の可能性を認識しながら上程 することに慎重にならざるを得ないことも理解できる。「今回限り」の明記をして買収防衛策を導入するという提案には会社として、何を重視して、どのような方向で進めたいという意向があるのか、よりかみくだいたポイントを教えて欲しい。
松尾
このように「今回限り」とすることは相当異例であり、この2年間で何をやってきて、今後の2年あるいは3年でこういうことをやるという明確なスキームがないと、世間からは納得されない。
また、最終的には、「買収防衛には、好業績で株価を上げることが唯一の解だ」と言われる中で、同施策は株価にマイナス評価を与えることも事実である。今回は断ち切って非継続とする選択肢もあるのではないか。
小田
2015年と今回では、買収防衛策を取り巻く当社の状況は基本的には変化していると認識している。現在策定しているコンティンジェンシープランについても担当部門を含めてブラッシュアップすることになるが、対抗措置としては時間を要する部分もあり、買収防衛策によって防波堤となる期間をある程度定めておくことが望ましいという意味で、上程に賛成である。
松尾
理念的にはコンテンツを守るためということは良く理解しているが、前回導入から2年が経ち、創業家等が20%以上持っていると賛成しない投資家もいる状況下、経営陣は何を考え、なぜ買収防衛策を必要としているかという生の声を聞かなければ社外取締役として検討する意味がない。会社の戦略として、執行サイドから買収防衛策の必要性を社外取締役に対して説明してもらいたい。
辻本(憲三)
買収防衛策に頼ることが良いわけではない。また、有事は必ず起こりうるということを認識して経営・執行もしなければならない。買収防衛策があるが故に、本来取り組むべき課題がおろそかにされている傾向があるのではないか、という課題認識も必要である。買収防衛策の有無に多くの労力と活力と金をかけるのであれば、有事の際に判断・対応できるような備えをすべきである。この数年間の努力により安定的な利益の増大、それによる株価上昇と時価総額の増大を完遂してきたが、これこそが本来の買収防衛策と考えている。
守永
防衛策自体に異論はないが、「今回限り」という条件で継続することに対しては望ましくないのではないか。「今回限り」とした場合に、何故「今回限り」なのかという理由を株主に対して、十分に説明する必要がある。様々な施策は買収防衛策の有無にかかわらずやるべきことであり、数値目標であるROEは会社として常に達成すべき指標であるが、仮に達成できなかった場合に、株主に対してどのように責任をとっていくのか、という点も含めて考えていかなければならない。
村中
買収提案の対応準備は、大変重要であり、防衛策の有無にかかわらず対応すべきテーマと考える。自身が弁護士として買収事案に関与する中で感じることとしては、有事に際して準備・対応できることは限られている、ということである。他社での敵対的買収案件では、危機管理チームが機能せず、平時において有事に備える対応ができていなかった。その意味で、平時における危機管理チームの設置やシミュレーションを踏まえた、マニュアルの策定等が必要であり、また、アドバイザーや弁護士を含めた体制についても検討してもらう必要があると考える。
辻本(憲三)
当社の買収防衛策は、買収者が従うべき手順を定めた仕組みである。定めた仕組みに沿わない形で買収を行ってきた場合、経営として話し合いの時間を確保するためのものである。一方で強い会社が弱い会社を買収するのは、経済行為として当然のことであり、経営が、自社が強いか弱いかの確信がなく、買収されることに対してあれこれ言うことが間違っている。筋を通さない手法では対応しない、という会社としてのポリシーがあるのであれば、買収防衛策は重要であるが、「今回限り」の記載は会社のポリシーに反している。多くの株主が反対であれば、今回は非継続とすれば良いと考える。それ以外のところは会社で努力すればよい。

注) 2017年4月27日のプレスリリース「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)の非継続(廃止)について」もご参照ください。

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