経営戦略:CFOが語る財務戦略

CFOが語る財務戦略

CFOが語る財務戦略

安定した財務基盤のもとで
投資を積極化し、成長への好循環を生み出します。

取締役専務執行役員 再考財務責任者(CFO)野村 謙吉

財務戦略の基本的な指針を教えてください
成長戦略の完遂を資金面から支えます

当社は、筋肉質な財務基盤を形成するとともに、成長のための投資資金の確保を実現するため、「ネットキャッシュの改善」と「資本効率の向上」の2つに取り組んできました。現在、当社は中長期的な企業価値の向上を目指す成長戦略を遂行しており、中核となるデジタルコンテンツ事業において開発環境の拡充とタイトルラインナップの整備を推し進めるため、開発投資を毎期約300億円程度にまで増強しています。
その一方で、投下資本の選択と集中を更に精査するとともに、原価・販管費などのコストを徹底的に見直すことで収益体質の改善に努めています。投資規模に見合う水準での現預金やコミットメントラインの確保など、強固な財務基盤により、成長戦略の完遂を資金面から支えていきます。

これまで取り組んできた資本効率向上の成果を教えてください
目標値を上回るROEを達成しています

当社は、資本効率性の指標としてROE(株主資本利益率)の目標値を掲げ、下記の成果を得ました。

目標(2015年3月期~ 2017年3月期平均) 8~10%
実績(2015年3月期~ 2017年3月期平均) 10.7%

3期平均の実績は10.7%と目標を達成しています。
目標達成における重点項目とした(1)当期純利益率の向上については、前3期と比べて安定的に向上させることができました。また、(2)総資産回転率、(3)財務レバレッジも上昇基調で推移しています。

ROEの3要素 2015/3 2016/3 2017/3 2018/3(計画)
(1) 当期純利益率(%) 10.3 10.1 10.2 10.2
(2) 総資産回転率(%) 63.8 68.1 73.3
(3) 財務レバレッジ(倍) 1.41 1.50 1.53
ROE(%) 9.8 10.6 11.6 12.2

次期のROEは12.2%を見込んでいます。
対売上比、対前年比、対計画比などを複合的にチェックすることで引き続き3要素を改善していきます。

ネットキャッシュの確保とリスクマネジメントについて教えてください
ネットキャッシュを効率的に創出するための仕組みの構築に取り組んでいます

当社は、ネットキャッシュを効率的に創出するため、キャッシュを生み出すプロセス管理を重視した2つの管理手法を採用しています。1つ目は、「投資回収管理の徹底」として、タイトル別投資回収状況(ROI)をデータベースで管理し、各プロジェクトの投資収益性を把握・分析しています。2つ目は、「運転資本効率の徹底」として、回転日数や回転率など更なる可視化の仕組みの構築に取り組んでいます。

なお、当期のネットキャッシュは84億円と3期連続減少しました。主な理由は、ラインナップ拡充に伴う開発投資の増加に加え、当期末のタイトル発売に伴い売上債権が約100億円増加したためです。各期末での売上債権分を考慮すれば、ここ数期は正味のネットキャッシュとして概ね同水準を維持しており、タイトルの仕掛残高までを含めた、いわゆる将来の成長に資する資産は安定的に増加していると言えます。

グラフ:ネットキャッシュn推移(億円)

内部留保と資金調達について教えてください
予想される開発費の増加に対応可能な水準を確保しています

コンシューマゲームソフトの開発費用は、高性能かつ多機能な現行機の登場に伴い増加傾向にあります。また、主力タイトルの開発期間は2年以上を要することに加え、DLC販売の浸透により販売期間も長期化しており、投資を回収するまでの期間も長期化しています。更に、オンラインゲームにおいても発売後の定期的なバージョンアップおよびネットワークインフラの維持に継続的な投資が発生するため、ある程度の現預金を保有しておく必要があります。

このような状況下、当社は資金調達力を確保するため、投資計画とリスク対応の留保分を考慮して保有しておくべき現預金水準を設定し、これを手元現金243億37百万円とコミットメントライン未実行残高217億円(契約総額267億円)で補完し、適正レンジで維持しています。

成長戦略のための投資とは、具体的にどのようなものでしょうか
経営資源の約80%をデジタルコンテンツ事業に投資しています

当社は中長期的に安定した成長を遂げるため、オリジナルコンテンツを生み出す源泉となるデジタルコンテンツ事業への十分な投資額を確保することが必要不可欠であると認識しています。具体的には、タイトルラインナップの拡充やVRなど新たな技術への対応に加え、開発者の増員や開発環境の整備への投資が必要です。したがって、2018年3月期は当社の経営資源(開発投資額および設備投資額を合わせた金額345億円)の約80%に相当する約275億円をデジタルコンテンツ事業に投資していきます。なお、投資水準の妥当性を計る指標として、開発仕掛資産の回転率を用いています。当期の開発仕掛資産回転率は2.9であり、前期の2.8から若干向上しています。

グラフ:開発仕掛資産回転率(%)

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