CFOが語る財務戦略

10期連続の営業利益増加の
分析を踏まえ、
持続的な成長に向け
た課題に取り組む

取締役専務執行役員
最高財務責任者(CFO)

野村 謙吉

  • 当社は、ユーザーの皆さまをはじめとするステークホルダーのご理解とご支援により、2023年3月期で10期連続の営業利益増益を実現することができました。これに伴い、当社の財務状況も大きく変化しました。

    概要は次の通りです。以下の表をご覧いただけば、当社の財務状況の変化をご理解いただけると思います。

  • 財務戦略の概要

過去10年間の財務状況の変化

ビジネスモデルの転換による財務状況の変化

CEO、COOも述べている通り、当社はデジタル販売に方針転換し、目標としてきた営業利益は、10年前比で5倍、5年前比で3.2倍となりました。また、直近期のROEは23.9%となり、3期連続して20%を超えることができました。

この主な要因は、①販売国・地域が拡大し、年間販売本数が大きく増加したこと②発売後の経過年数を考慮した低価格販売により前年以前に発売したリピートコンテンツの販売が大きく伸長したこと③主にディスクの製造原価の軽減により売上高の成長以上に費用項目(売上原価+販売管理費)が減少したこと④アミューズメント施設およびアミューズメント機器のビジネスがそれぞれの課題を乗り越えて安定的に成長するフェーズに入ったこと等、が挙げられます。

デジタルダウンロードでの販売により、小売店の店舗立地と商材を置く棚確保などの制約がなくなり、コンテンツの長期販売が可能になりました。この結果、2023年3月期には過去発売のコンテンツを含む販売数は307タイトルに増加、リピート販売本数は2,930万本と10年前に比して7.5倍になりました。

新作タイトルは、IP毎の歴史的な積み重ねにより初年度販売本数には波がありますが、その後も継続的に販売継続することにより利益面で大きく貢献する構造になりました。当社のコンテンツは発売後1〜2年で制作コストの回収を完了しますので、その後の売上の利益率は大きく上昇します。2023年3月期のリピートタイトルの利益率は90%を超え、リピート販売の拡大が当社の収益拡大に大きく貢献しています。

同時にコスト面でも大きな変化が起きています。ダウンロード販売の拡大により、製造と販売コストが減少しました。売上原価にはパッケージの製造コストや販売のための小売店向けコストや販売プロモーションコストが含まれますが、ダウンロード販売によりこれらのコストが大きく削減できました。一方、販売管理費(経費)は、2022年度に実施した報酬制度改定により大幅な報酬アップを行ったため、人件費が5年前、10年前に比べ増加していますが、CHOが述べている通り、これは未来への投資と考えています。人件費の増加を除けば、経費はほぼ200億円程度で、売上原価と合わせた原価+販管費率は、60%を下回る改善を実現しています。

損益計算書項目

貸借対照表項目

販売国・地域と販売本数の推移

キャッシュフローの変化

私は昨年の統合報告書で、運転資金影響を除いたキャッシュフローを注視しているとお伝えしました。これを5年前、10年前と比較すると実質営業キャッシュフローは着実に増加しています。ゲームソフトのダウンロード販売では、世界各国に社員を配置する必要がなく、北米、欧州、アジアに計4拠点設けているだけで、これらの拠点が定められた担当地域の動向を把握するとともに、各地域の特性を分析してユーザー数拡大に向けた努力をしています。これらの努力により、稼ぐ力を強化するとともに、キャッシュアウトを適正に管理することで、今後ともキャッシュフローの拡大に努めていきます。

(注)2023年3月期財務キャッシュフローの悪化は、自己株式取得(13,645百万円)によるものです。

持続的成長継続への課題

成長継続への投資

これまでの10年間は、これまで述べてきたビジネスモデルの転換によって経営目標を達成してきました。これからの10年については成長シミュレーションを描き、その達成に向けての課題抽出・解決をローリングしています。

新たなユーザー獲得のための魅力あるコンテンツ制作

今後の持続的成長のためには、世界の販売国・地域の拡大方針から、それぞれの地域で新たなユーザーを獲得していくことが大きなテーマとなります。そのためには、新作に磨きを加え、旧作を含めて当社のコンテンツの魅力を全世界のゲームユーザーに伝えていくことが課題と考えています。世界最先端の魅力あるコンテンツ制作のためには、まず人材の確保と育成、制作ならびに全社での生産性向上への投資が不可欠です。

当社では、営業利益に対する開発投資額をROIとして生産性向上の目安としています。この10年間のROIは着実に改善していますが、人材確保・育成のための投資やデバイスの性能向上による開発投資の大型化、ユーザー動向をより的確に捉えるための仕組み作りが今後の持続的成長の鍵と考えています。今後も毎年100〜150名の人員増加を図り、育成するための投資を拡大することで、今年度以降の開発投資額は400億円を超え、更なる増加を見込んでいます。

2023年3月末の開発社員数は2,460名で、本社地域と東京支店の一部で制作をはじめとするコンテンツ開発に取り組んでいます。しかし、すでに狭隘感があるため、既に取得した本社北側隣地に開発向けビルの建設を予定しています。こうした投資をはじめ、今後の事業環境の変化を見越してゲームユーザーの動向を的確に捉えるためのシステム・ネットワーク構築のための投資や政策規模の拡大を支えるM&A投資、全世界ユーザー数拡大に向けてコンテンツ認知度向上のための映像への投資、更にセキュリティ向上に向けての継続的な投資拡大、などの投資検討案件が目白押しの状況にあります。

先に述べた利益拡大→キャッシュフローの増加→増加したキャッシュフローを踏まえた計画的・継続的投資というサイクルで、持続的成長を止めない資金運用を図っていきます。

株主還元

最後に、株主の皆さまへの還元についてお話しします。以下の表の通り、当社の株価は当期純利益の増加に歩調を合わせて推移してきました。これからも株主、投資家の皆さまの期待に応える成長を目指します。株価は、市場において投資家の皆さまによる評価を表したものと考えており、今後も投資家の皆さまとの対話を通じてご期待に応える努力をしていきます。

コスト構造の変化

キャッシュフローの推移

開発投資と生産性

株主還元

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