- ― 『モンスターハンター フロンティア オンライン』(以下『MHF』)は2007年7月にサービスを開始しましたが、当初「モンスターハンター」をPCオンラインゲームで展開したきっかけを教えてください。
- 小野 2004年から2005年にかけて国内でミリオンタイトルが生まれにくくなり、市場の中心が海外に移り始めました。そこで、海外向けのゲームを開発する必要があったことに加え、これまでのような家庭用ゲーム機だけではなく、PCオンラインというカプコンにとって未開拓だった新たなジャンルの必要性について考えたことがきっかけです。
- ― 当時想定していた海外とは具体的にはどの地域ですか?
- 小野 カプコンが最も得意とする家庭用ゲームソフトの場合、アジアでは海賊版の問題もありビジネス展開が難しいため、欧米をターゲットに据えていました。
しかしPCオンラインゲームの場合、ユーザー認証によって海賊版の問題が解消されるため、アジアを中心に展開しようと考えました。
当時はアジア地域でオンラインゲームの運営を開始していた企業も多く、競合が予想されてはいましたが、当社の保有コンテンツのブランド力、クリエイターの技術力などを総合的に勘案した結果、十分に競争できると判断しサービスを開始しました。結果的には適正な時期にスタートできたと思います。 - ― 新規ビジネスの立ち上げの際、まず何から始めたのでしょうか。
- 小野 まずオンラインゲームのマーケティングを徹底的に行いました。これまでの経験から、どうしても家庭用ゲームソフトの常識に囚われがちになり従来の手法を押し通せば良いという流れがあったのですが、遊び方が変わればターゲットの好みも変わります。まずはその嗜好を理解しなければならない。それで、当時オンラインゲームで成功していた数社のゲームを参考に、オンラインゲーム市場において何が成功して、何が失敗して、何が強くて、何が弱いのかを分析しました。その結果「モンスターハンター」のオンラインゲーム化がカプコンにとって最も有効であるという結論に行き着いたんです。当時の「モンスターハンター」は大ヒットする前で、今ほどの知名度もありませんでしたが、第1作からオンラインを主眼に置いたタイトルでしたので、このコンテンツを活用することで、競合他社より良い条件で運営できるのではないかと考えたんです。
- ― なるほど。ではオンラインゲームの肝である課金システムについて『MHF』ではどのような仕組みになっているのでしょうか。
- 小野 いわゆる「ハイブリッド課金」と呼ばれるものです。月額1,400円を支払えば、ゲーム中の要素は基本的にすべて遊んでいただけますが、ゲームを手軽に楽しみたいという人には、別料金で特別な装備や素材を提供しています。実際には時間をかけないと手に入らないような武器でも、同等の素材や防具を手に入れることができるので、時間をかける人と時間に制限がある人が同じレベルでゲームを楽めるようになりました。
- ― アイテム課金を敬遠するユーザーはいないのでしょうか。
- 小野 もちろん中にはいらっしゃいます。特に家庭用ゲームソフトからのユーザーはパッケージソフトの買い切り形式に慣れているため、基本料金以上の費用を支払うことにためらいがあります。確かに、毎月料金を支払い続けることは、家庭用ゲームに比べて敷居が高く感じられるかもしれません。ただ、お金を支払う以上、ユーザーの判断はシビアです。面白くないゲームには誰もお金を払わないですよね。だからこそ、良いものを作らなくてはいけない。今現在『MHF』で非常に多くのユーザーが遊んでくれているという事実は、一定の満足度を得られているものと考えています。対価以上の「楽しさ」を提供し続けたいと思っています。


- ― ユーザーの環境に合わせて色々な遊び方が出来るということですね。
- 小野 そうですね。結果的に、アイテム課金はせずに基本プレイを継続して下さる方やアイテムを買ってどんどん強くなっていく方など、本当に様々なプレイスタイルがあります。カプコンとしての収益にばらつきは出ますが、年平均では比較的安定した収益が得られています。