開発者インタビュー2021:『モンスターハンターライズ』

常務執行役員 CS第二開発統括

TSUJIMOTO RYOZO

2007年発売の『モンスターハンターポータブル2nd』以降、一貫してシリーズのプロデューサーを務める。 最新作『モンスターハンターライズ』でもプロデューサーとしてタイトル全体を統括する。

いつでも、どこでも、誰とでも。
“気軽に”プレイできる新たな「モンスターハンター」への挑戦

2021年3月に発売された『モンスターハンターライズ』(以下『ライズ』)は、2022年1月にはPC版も販売を開始し、累計販売本数800万本(2022年1月18日時点)を突破するなど、大人気タイトルとなっています。
いまだ勢いが止まらない『ライズ』は、シリーズ初のNintendo Switch™向け完全新作タイトルとなりますが、まずは、今回Nintendo Switch向けに発売しようと考えた理由を教えてください。

まず初めに、Nintendo Switch向けの新しい「モンスターハンター」を作りたいという思いがありました。据え置き機としても、携帯機としても遊ぶことができるNintendo Switchの特性を生かし、『ライズ』では、『モンスターハンター:ワールド』(以下『ワールド』)や『モンスターハンターワールド:アイスボーン』のように据え置き機で腰を据えて遊ぶだけでなく、携帯性を活かした遊び方を強く意識して開発しました。

「モンスターハンター」シリーズ人気の火付け役となったのは、携帯機で遊べるタイトルです。友達と持ち寄って遊ぶ楽しさはもちろん、携帯機向けゲームならではの手軽さがヒットに繋がりました。今回、『ライズ』でも、隙間時間に「クエストを1つやろう!」と気軽に遊べるようなテンポ感を意識しました。

Nintendo Switch向けの開発として、何か新たな取り組みはあったのでしょうか?

大きなところだと、使用する自社独自の開発エンジンが、今までの「MT Framework」から「RE ENGINE」に変わったことです。『ワールド』までの長い間、「モンスターハンター」シリーズは「MT Framework」を使用して開発してきましたが、Nintendo Switch向けという新しい試みとなるこのタイトルを機に、当シリーズも、最新開発エンジンである「RE ENGINE」を使用しようと決めました。

また、遊び方の面では、「翔蟲(かけりむし)」が新たな取り組みとなりました。「モンスターハンター」シリーズを制作する上で心掛けていることは、毎回何か新たなチャレンジを取り入れることです。今回の『ライズ』では、より軽快で立体的な操作感を感じてもらうため、「翔蟲」を使ったアクションに挑戦しました。

「RE ENGINE」で開発したことで、今までの開発と比べ、何か変化はありましたか?

家庭用のゲーム機が常に進化していくなかで、「モンスターハンター」シリーズがこの先長く戦っていくためにも、進化に合わせた開発、その土台づくりという点で、新しいエンジンで開発することに大きな意味があったと思います。

今回、シリーズとしては初の「RE ENGINE」使用でしたので、技術班と試行錯誤しながら『ライズ』に最適なエンジンにカスタマイズしていきました。そのおかげで、『ワールド』と同じように、シームレスにつながったフィールドをNintendo Switchでも実現できました。

「RE ENGINE」で、Nintendo Switch向けのタイトルとして最高水準の表現が実現したのですね。

そうですね。Nintendo Switchとして最高水準のグラフィックを表現するだけでなく、短いローディング時間で、シームレスに繋がったフィールドを高速で移動できるようにしました。フィールド内であれば見えているところは基本的にどこでも行くことができるので、与えられた道をまっすぐ進むだけではなく、崖を登って越えるなど、ユーザーが考える多種多様なルートで立体的に探索をすることができます。また、「モンスターハンター」はハンティングアクションゲームなので、プレイする際の手触り感にはとてもこだわって作っています。そこで、『ライズ』の新要素である「翔蟲」のアクションや「オトモガルク」を、立体的なフィールドをより自由に違和感なく探索してもらう要素として取り入れています。『ライズ』では、携帯ゲーム機でも遊べるモンスターハンターと、据置き機でのモンスターハンターの遊び心地の違いを、楽しんでもらえたのではないか思います。

多くのユーザーから好評を得ていますね。ユーザーの遊び方について、何か変化を感じていますか?

「モンスターハンター」はオンラインプレイ対応タイトルでもありますので、フィールドの広さや、タイムアタック機能など、ある程度プレイの仕方が決まっている部分はあるものの、同時に、そこから自由に遊び方を広げてもらいたいとも考えています。ここ最近は特に、YouTubeをはじめとした動画配信サービスが普及したことに加え、当社のガイドラインに沿ったプレイ動画の投稿が多くみられるようになったこともあり、タイムアタックを専門に挑戦する方や、キャラクターの見た目を自由に作成できるキャラクターメイクと重ね着装備を用いてコスプレコンテストを開催する方など、多くのユーザーに多様な遊び方をしてもらえています。

このシリーズは、「プレイヤー同士が殺伐としない世界観」を大事にしています。ですから、こうして自由にプレイヤー同士が楽しんでくれている様子を見ると、私たちが大切にしている「モンスターハンター」のコアバリューを、ゲームを通して伝えることができているのではないかと嬉しく感じます。

制限下でも世界中のユーザーに届けたい、
オンラインでの初の試みを実施

本作は、コロナ禍での開発になりました。当面の予定から延期することなく無事、発売を迎えましたが、開発を滞りなく進行するため、どのような工夫をされたのでしょうか?

在宅勤務や時差出勤などで出社するメンバーを絞ったり、社内ではソーシャルディスタンスを保つためにオフィスのレイアウトを大幅に変えたりして、コロナ禍における開発体制を工夫しました。

また、開発に関わるメンバーが総勢で300人を超える中、大人数が集まる定例会議の代わりにオンライン会議を活用するなど、ソーシャルディスタンスを保ちながらもコミュニケーションは欠かさないよう努め、タスク管理などを行いました。

通常とは異なる形での開発体制となりましたが、お互いにサポートしながら、開発メンバーは「ユーザーの皆様にこのタイトルを届けたい」ととても踏ん張ってくれました。最後はやはりメンバー1人ひとりの踏ん張りが一番大きかったと思います。

プロモーションへの影響はあったのでしょうか。

基本的に「モンスターハンター」シリーズでは、大まかなプロモーション計画を開発段階で決めています。
通常はその計画に沿って進めていきますが、コロナ禍の影響により、実地イベントのほとんどを中止しなければなりませんでした。その状況でどのように展開していくのか、プロデューサーの門脇と話し合い、SNSを中心に進めていくことになりました。

SNSを活用すれば、多くのユーザーに情報に触れてもらう機会を増やすことができます。接触頻度が上がれば、興味を持ってもらえる確率も高くなると考えました。その際、ユーザーに情報過多だと思われないよう、ゲームの新要素を大小様々に用意して、少しずつ発信していくなど見せ方やバランスも考えました。

臨機応変な対応が求められたのですね。他にも何か意識されたことはありますか?

短期決戦での宣伝も意識していました。通常、大作タイトルになると1年以上前からタイトルコールを行うこともあるのですが、『ライズ』の場合は短く、タイトルコールは発売の半年前でした。あえてそうしたことで、発売日や価格、商品特典などの詳細情報が出揃う密度の高いタイトルコールとなり、短期間で一気に認知を拡大できたのではないかと感じています。また、2021年7月発売の『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』と同時に発表したことで、「モンスターハンター」シリーズの盛り上がりをアピールできました。

YouTubeなどでの新情報配信も複数回にわたり行われていました。

コロナ以前は、毎年米国で開催される世界最大のゲームショウ「E3」などを情報発信の場として活用していましたが、コロナ禍で開催自体が中止になったことで、グローバルへの情報発信の機会も限られてしまいました。そのためYouTubeでの配信では、従来と異なり全世界への同時配信を行うことにしました。国内向けに偏らず、全世界のユーザーが平等に情報を受け取ってもらえるよう、ローカライズチームや海外宣伝チームには、多言語対応や各国からの公開時間等に対する要望の調整に尽力してもらいました。

『ライズ』は発売後も、常に話題を欠かさない印象があります。これも意識してのことでしょうか。

そうですね。発売後も、ユーザーの皆様に楽しんでいただけるようイベントクエストを配信したり、『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』や『大神』、「ストリートファイター」シリーズ、『ロックマン11 運命の歯車!!』、『帰ってきた魔界村』との当社ならではのコラボ企画、さらに他社とも、クエストやゲーム内で使用できる重ね着装備を用意したコラボ企画を行いました。また、多くのユーザーから要望があったPC版『ライズ』を2022年1月13日に発売し、世界中のより幅広い方々に遊んでいただいています。

さらには、『ライズ』の超大型有料拡張コンテンツ『モンスターハンターライズ:サンブレイク』も発表されています!

はい!新たなクエストランクのほか、フィールド、モンスター、未体験のアクションを追加した『モンスターハンターライズ』の新たな物語をお届けする予定です。2022年夏の発売に向け鋭意開発中ですので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。

全世界で大人気となった2018年発売の『ワールド』発売から3年後、開発やプロモーションでの新たな取り組みが功を奏し、『ライズ』も多くのユーザーから評価されていますね。

大変ありがたいですね。『ワールド』と『ライズ』を一概に比べることは難しいですが、『ライズ』が発売された後も、『ワールド』の販売は伸びています。どちらも「モンスターハンター」であることに変わりはありませんが、それぞれコンセプトも遊び方も異なるものになるよう意識しているので、どちらからでも「モンスターハンター」に触れてもらい、シリーズの魅力を体験してほしいです。

世界中に広がる「モンスターハンター」シリーズ、
さらなる飛躍に向けて

この先の展開についてはどのように考えていますか?

「モンスターハンター」シリーズ全体としての展開を常に考えていきます。2016年に『モンスターハンター ストーリーズ』を発売しましたが、このタイトルは、ハンティングアクションゲームではない「モンスターハンター」を作りたいという思いで開発しました。アクションゲームからRPGへの展開は珍しいことだと思いますので、これからも育てていきたいです。ゲームとしての足場をさらに広く強いものにしていきながら、Netflixで配信中であるシリーズ初のCGアニメ映画『モンスターハンター:レジェンド・オブ・ザ・ギルド』など、映像化等の多面展開も推し進め、「モンスターハンター」ブランドを世界中に幅広く浸透させていきます。

17年にわたって続いてきた「モンスターハンター」シリーズ、次代を担う若手も育ってきているのではないでしょうか。

「モンスターハンター」シリーズの歴史も長くなり、嬉しいことに「モンスターハンター」への熱い思いを持って入社してくれるクリエイターも増えています。開発の現場でも、若手クリエイターの感覚を取り入れるようにしていて、若手とベテランが互いに切磋琢磨しながら育ってくれていると感じています。若手クリエイターの育成は強く意識していることの1つですので、今後も若手には積極的に開発に携わってもらい、次世代の「モンスターハンター」を担うクリエイターを育てていきたいと思います。

最後に、今後に向けて一言お願いいたします。

「モンスターハンター」シリーズはカプコン独自のIPですので、プライドを持って育てていきたいです。『ワールド』で世界中のユーザーに評価いただいたことをきっかけに、当社全体として「モンスターハンター」シリーズをグローバルブランドとして大きく育てる思いがより強くなりました。世界には、「モンスターハンター」を知らない方もまだ多くいるので、常にチャレンジし続けることでユーザー層を広げていけたらと思います。今後も、「モンスターハンター」の挑戦にご期待ください!

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