vol.05 江川 陽一

開発者インタビュー2016

江川 陽一/ 取締役専務執行役員/ 入社後、業務用ゲーム機器の開発において、プログラマーとしてCPシステム基板の開発に携わる。その後コンシューマ用ゲームソフトの開発を経て、1996年にパチンコ&パチスロ事業(P&S事業)、1999年にモバイルコンテンツ事業を創設する。1999年に第五制作部長を経て執行役員CE事業統括に就任。2011年に常務執行役員、2013年より取締役専務執行役員(現任)に就任。現在、コンシューマゲーム開発管掌兼PS・AM事業管掌を担う。

INTERVIEW 05: "二つとない"、世界No.1のゲーム開発を志し、変化を恐れず挑戦を続ける

江川 陽一/ 取締役専務執行役員/ 入社後、業務用ゲーム機器の開発において、プログラマーとしてCPシステム基板の開発に携わる。その後コンシューマ用ゲームソフトの開発を経て、1996年にパチンコ&パチスロ事業(P&S事業)、1999年にモバイルコンテンツ事業を創設する。1999年に第五制作部長を経て執行役員CE事業統括に就任。2011年に常務執行役員、2013年より取締役専務執行役員(現任)に就任。現在、コンシューマゲーム開発管掌兼PS・AM事業管掌を担う。

カプコンのモノづくりの根幹は「質にこだわる」こと

1985年に入社されて30数年カプコンに在籍され、2016年7月から新しく開発のトップに着任されました。
私は、業務用ゲームをメインに開発している時期に入社しました。その時期からファミコンをはじめとしたコンシューマゲームの開発が始まるなど、当社のゲーム開発の変遷を見てきました。途中でPS事業を立ち上げ、一時期、ゲーム開発から離れることになりましたが、その間も主力となるコンシューマのゲーム開発を客観的な視点で見てきました。
ゲーム開発の領域が業務用から家庭用、オンラインと広がっていく中で、カプコンのものづくりで変わっていない根幹はありますでしょうか。
決して派手なところはないのですが、昔からゲーム作りに専念している職人的なところでしょうか。業務用向けのゲーム開発時代から、「質にこだわる」という土壌があったと思います。その中で、今も続いている「ストリートファイター」、「モンスターハンター」や「バイオハザード」といったタイトルが生み出され、シリーズとして成長していきました。
辻本会長も「中途半端なものを発売するな」とクオリティには非常にこだわっていますね。
質にはこだわっていきたいですね。「バイオハザード」にしても「モンスターハンター」にしても、作りこんで作りこんだうえで世の中に送り出すという姿勢が大切で、クオリティにこだわり抜くからこそ、ユーザーの皆さんに響く作品になるのだと思います。

開発のトップに立ち、見えてきた2つの課題に取り組む

江川さんが管掌に着任されて、開発スタッフやマーケティング部門、経営陣と話し合う中で見えてきた課題について教えていただけますでしょうか。
大きく分けて2つの課題があります。ひとつは、「開発体制の強化」と「ブランドマネジメントの運営」です。コンソール事業はグローバルでの競争に勝っていかなくてはいけませんし、オンライン・ソーシャル事業はゲームデザインに加えて、運営デザインが肝要です。開発がスムーズに進行するように適材適所な人の配置・編成が必要となります。技術研究も重要で、得たノウハウを流動させる必要があると感じています。中核となる人材の育成も欠かせません。
中核となる人材の育成については、どのようにお考えでしょうか。
専門性が高いので、いかにその専門性を極めて行けるか、開発のコアとなるメンバーをいかに育てて増やしていくか、ということだと思います。新たに人材育成計画を作成して実行に移したいと考えています。目標を定めて推進し、問題点や課題を見つけ、方法や手法を常に見直しながら育成に取り組みたいと思います。
そして、もう1点の課題である「ブランドマネジメントの運営」とはどのようなものでしょうか。
当社は、他社と比較して、グローバル規模で支持されている複数のシリーズがあることが特徴だと思います。「バイオハザード」、「モンスターハンター」や「ロックマン」などのブランドを、モバイルなども含めたマルチプラットフォーム展開を行い、またワンコンテンツ・マルチユース戦略に沿いアニメや映画などに展開するといった、ブランド価値の向上を包括的に推進していけるIPがあることは大きな強みです。事業側とも連携して、戦略的に発売時期や対応プラットフォームを定めて市場に投入していける運営体制を整えていきます。
この2つの課題を解決していくために、事業側でも、組織変更があったのでしょうか。
はい。「グローバルマーケティング本部」が2016年4月の組織改編で設置されました。当社は、グローバルで戦う力はありますが、開発側がこれまで以上に「面白いゲーム作り」に専念できるように、ユーザーニーズを分析する専門部署との連携を強化する必要があると思っています。事業側と開発側がこれまで以上に連携を重ねることで、多くのユーザーに楽しんでもらえるコンテンツ展開を世界中に広げていきたいですね。

開発と「グローバルマーケティング本部」が連携している例を挙げていただけますでしょうか。
例えば、「デジタル戦略」ですね。当社では、高収益体制の確立と安定的なポートフォリオの形成を目指しており、事業側から、「HD化タイトルを出して欲しい」「追加ダウンロードコンテンツを投入してほしい」など、の要望があります。過去作のHD化では、昔のタイトルを現行機でもデジタル配信し、これまでそのタイトルに触れたことのないユーザーの興味を喚起し、楽しんでいただき、新たなファン層を開拓していきます。また、追加ダウンロードコンテンツでは、継続ビジネスとしてコンテンツを何段階かに分けて配信するのですが、グローバル規模での市場動向を分析しながら、戦略を策定する必要があります。
グローバルなゲーム市場ではVRやeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)といった新しいトレンドが生まれていますが、カプコンとしてどのように取り組まれていますでしょうか。
当社は、アクションゲームの開発に強みがありますので、その長所を伸ばしつつ、新しいチャレンジをしながら、未開拓の市場にも入り込んでいければと考えています。
VRについてはいかがでしょうか。
VRに関しては、コンシューマ向けの『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、バイオハザード7)やアミューズメント施設で稼働中の『特撮体感VR 大怪獣カプドン(以下カプドン)』などがあります。『バイオハザード7』は、「恐怖」に原点回帰したゲーム内容とVR技術の融合により、当社のものづくり力を世界に発信できるコンテンツに仕上がったと思っています。また、『カプドン』などアミューズメント施設への展開に関しては、採算面での課題もありますが、今後市場の拡大が期待される分野だと思いますので、引き続き技術検証を進めていきます。

なるほど。eスポーツについてはどうでしょうか。
この分野では、『ストリートファイターV』を活用し、子会社のカプコンUSA. INC主催によるカプコンプロツアーを全世界で開催することに加え、他社と協業することで、年間を通じてeスポーツを観戦する機会を設けるなど、新しいユーザーの獲得を狙っていきます。
その他で、未開拓の市場へのチャレンジというと、モバイルでヒットした『囚われのパルマ』などになるのでしょうか。
そうですね。女性中心のプロジェクトから生まれたこのタイトルなど、これまで当社が市場に投入してこなかったカテゴリーにもチャレンジしていきたいですね。
ありがとうございます。最後にカプコンのものづくりに期待されている方々に向けて一言お願いいたします。
当社の開発陣が気持ち良く面白いゲームを作っていける体制を目指していきます。環境面でも「3Dスキャンスタジオ」「フォーリーステージ」「モーションキャプチャー・フェイシャルキャプチャースタジオ」など、クリエイターたちが作りたいゲームを実現するための技術的な設備も自社で保有しています。また、2017年4月には事業内保育所を設置予定です。仕事と育児の両立を目指す社員をサポートできればと考えています。加えて、グローバルマーケティングの分野を強化し、開発部門と事業部門がこれまで以上に連携を図ることで、ユーザーの皆様に響く商品を世に送り出していきたいと思います。ご期待ください。

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  • 01. スマホで疑似恋愛体験 女性中心で開発した新しい女性向けゲーム /CS第一開発統括 第一開発部 第四ゲーム開発室 室長/原 美和
  • 02. 最強のゾンビアクションゲームで北米・欧州ファンを唸らせろ! /カプコン・ゲーム・スタジオ・バンクーバー, INC. スタジオ ディレクター/ジョー・ニコルス
  • 03. すべては"恐怖"のために。開発体制から変革した、新しい「バイオハザード」 /常務執行役員 CS第一開発統括/竹内 潤
  • 04. 新たな事業領域の確立に向けて5年先まで継続できるオンラインゲーム運営体制を構築する /CS第三開発統括 第四開発部 第二開発室 ディレクター/木下 研人
  • 05. "二つとない"、世界No.1のゲーム開発を志し、変化を恐れず挑戦を続ける /取締役専務執行役員 /江川 陽一

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