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対談:アナリストの視点から見るカプコンの成長戦略

テーマモバイルでの劣勢をどのように挽回するか

「ワンコンテンツ・マルチユース」をベースに成長戦略を推進するカプコンですが、現在モバイル事業は、株式市場から厳しい評価を受けています。成長戦略においてモバイル事業をどのように位置づけ、いかに巻き返しを図るのか?
証券アナリスト・森はるか氏の鋭い問いに、代表取締役社長の本春弘が答えました。

モバイル戦略の総括

今回の対談の主旨は、第三者の意見を通じて読者に多角的な視点で当社への理解を深めていただくことにあります。一方、企業発行の冊子の対談では透明性が担保されないとの意見もありますが、私は、日頃アナリストレポートなどでいただく客観的な評価と同様の、忌憚のない意見を期待しています。
はい、過年度に対談されたアナリストの方々も同様かと思いますが、我々アナリストの使命は、公平公正な評価を提供し、経営の参考材料にしていただくことです。甘い評価は双方のデメリットになりますので、遠慮なく申しあげます。まずは株式市場から厳しい評価のモバイル戦略ですが、現状をどのように捉えていますか?
モバイル事業は、まずアメリカでビーラインを立ち上げ、当初は好調に推移したのですが、ユーザー層の拡大を図ったことで戦力が分散し、成長が鈍化しました。ビーラインは今後、得意の女性カジュアル層向けに「原点回帰」して巻き返しを図る考えです。
一方、国内モバイル事業のアプリ開発は、スタートからうまくいかず、事業見直しのため特別損失も出してしまいました。これは開発体制に起因しており、コンシューマの開発手法ではなく、PCオンラインのように開発とマーケティングを一体化した運営手法にすべきだったと反省しています。
なるほど。しかし、成長著しいマーケットだけに、もっとスピード感を重視すべきではないでしょうか?
photo:辻本春弘・森はるか氏
確かにその通りですが、ノウハウが無ければ、いくら作ってもヒット確率は低いままです。昨年は多くの新作を出しましたが、ノウハウが不足していたので結果が出ず、ユーザーの信頼も得られませんでした。モバイル事業は成長戦略の中でも最重点分野と位置付けていますので、諦めて力を緩めるつもりはなく、課題を分析し再度挑戦します。

成長の鍵を握るモバイル・PCオンライン事業

長期的に自社でのノウハウ蓄積が重要なのは間違いありませんが、競合他社と比べて対応が遅れているのも事実です。あまり自社開発のみにこだわらず、運営ノウハウのあるネット系企業との人材交流や協業を積極化し、短期的にも結果を出していくべきではないでしょうか?
外部との提携・協業の可能性はありますが、「丸投げ」では当社にノウハウが残りません。今後、コンシューマゲームでもFree to Playの時代が来ます。そのときにモバイルで蓄積した運営ノウハウがコンシューマにも活用できるので、長期的な強みになると考えています。当然、短期的にも成果を出す必要がありますので、既にPCオンラインなど運営ビジネス経験が豊富な部門を主軸に組織再編しており、2015年3月期は減収ながら、利益を大きく改善させるつもりです。

カプコンの強みを更に発揮するために

創業31年のカプコンは家庭用ゲームの老舗メーカーであり、近年の市場の激変に柔軟に適応できるかは疑問の余地があります。今後も競争優位性を発揮できるのでしょうか?
モバイル市場には特有のビジネスモデルがありますが、カプコンの強みである独自コンテンツを創出する開発力と融合できれば、勝機は十分あります。かつてゲーム専用機が2Dから3Dへ変わったとき、カプコンは非常に苦労し、試行錯誤の中で「バイオハザード」という人気コンテンツを生み出しました。当社の最大の競争優位性は、いかなる逆境にも不撓不屈の精神で挑む開発者と、彼らに明確な方針を示し、全面的に信頼する経営陣の両者が併存していることです。今後いかなる技術やビジネスモデルが登場しても、我々にはそれを克服する精神力と実行力があると確信しています。
株式市場の注目度が高い中国など、アジア戦略についても教えてください。まずはPCオンラインですが、特に中国展開は大きな可能性を秘めていますがいかがでしょうか?
PCオンラインゲームの市場規模が大きいアジア地域で、いち早くブランドの確立や収益基盤の構築を図っています。特に世界最大の中国市場では『モンスターハンターオンライン』など主力シリーズを活用したタイトルを投入します。ただし、自社開発ではなくテンセント社など現地企業と協業していきます。国内とは大きく異なるユーザーの嗜好に適応した運営ノウハウ習得のため、地元の有力会社との提携が現時点では有効と判断したためです。
急拡大する中国のモバイル市場ではクオリティの高いコンテンツや有力IPへのニーズが高まっており、日本のゲーム会社にも充分チャンスが出てきましたね。
photo:森はるか氏
PCオンラインと同様に、国内とは環境が大きく異なるため、当社で開発した国内向けアプリゲームを地元企業にローカライズや運営面で委託します。このフローを確立させるためにも、まずは日本で着実に成功させることが重要です。他のゲーム会社と違い、カプコンは多様な事業を擁してどれも一定の収益を上げています。モバイルゲームが成功すれば、すべてがリンクし、グローバルでも非常にユニークなコンテンツメーカーになりますので、不退転の決意で進めていきます。

対談を終えて

カプコンの中核は依然コンソールゲームとの認識が強かったのですが、今後の成長戦略においてモバイルが予想以上に中核分野であることが確認できました。しかしながら、モバイル事業は、よりスピード感を持って進めなければ同業他社に追いつくのは容易ではありません。強みである独自性の活用や自社でのノウハウ蓄積を貫くカプコンの姿勢は中期的に評価できますが、国内でも成功企業のノウハウを積極的に活用するなど、バランスよく事業を推進しなければ、モバイル事業の本格的な立ち上がりには時間を要するでしょう。テンセント社との提携をアップサイド材料として投資家は認識していますが、更なる評価を得るには、1年以内にモバイルでヒットを放つなど短期的にも結果を示すことが必要ではないでしょうか。(森)

森 はるか氏プロフィール

2013年4月JPモルガン証券入社、ゲーム・インターネットセクターを担当。
ゴールドマン・サックス証券、バークレイズ証券などを経て現職。
ゲームセクターは、2010年より担当。
上智大学法学部卒業。

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