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対談:社外取締役の視点から見るカプコンのガバナンス

多角的な観点での議論に基づいた取締役会の判断が、
激変する事業環境への対応を可能にする

目まぐるしく変化する事業環境に対応すべく、カプコンの各部門では事業戦略や組織体制について様々な変革が進められています。その最終的な判断機関である取締役会では、どのような議論が交わされてきたのか。当社社外取締役の守永孝之氏と代表取締役会長の本憲三が、2013年度の取締役会を振り返りました。

数字に基づいた「経営の見える化」を徹底

守永
5年前に私が社外取締役に就任した際は、カプコンは創業者オーナー企業なので取締役会も会長がワンマンで取り仕切っているのでは、という先入観もありましたが、実際は取締役会の議長として、会長は出席者に発言し易い雰囲気を作っていただいておりまして、毎月の取締役会で、私共社外役員は、自らの経験に照らし、自由闊達に意見を述べることが出来ています。特に、様々なテーマを色々な角度から十分に検討できるよう、毎回、議案毎に整理された詳細な資料が配られていることが、取締役会の活発な議論に結びついています。
取締役会の役割の1つは、執行部門が事前に様々な議論を重ねて練り上げた議案について最終のジャッジメントを行うことです。そのためには判断材料が要ります。特に社外役員の皆さんは、月1回の取締役会のみで判断をしていただく訳ですから、各議案に付随する問題点などは当然説明しますが、なぜ執行部門がそう決めたか、背景を理解するためのバックデータをすべて出す必要があると考えています。
守永
確かに毎回の配布資料では会長が進めておられる数字を主体とした経営の「見える化」が実践され、社外役員にも非常に分かり易く纏まっていますね。取締役会では私は主として、財務の健全性が保たれているか、業務遂行が計画通り進んでいるか、環境変化に機動的に対応し新分野にチャレンジしているか、といった観点から発言していますが、配布資料には対売上比、対前年比、対計画比など比較対照がきちんと示されており、会議時間内に全てを確認できなくても、持ち帰って自分で勉強したり、後日担当部署に直接質問することも可能です。
photo:辻本健三・守永 孝之

2013年度取締役会の重要議案を振り返って

守永
2013年度の取締役会では、ゲーム市場の環境変化に対応すべく開発組織を部門全体の横断体制から、主要タイトル毎の中長期計画(60ヵ月マップ・52週マップ)に基づいた縦割りのスタジオ制へ変えるという議案がありました。その際、私は「業務効率は向上するだろうが、一方で部門間の壁が生じ、会社全体としての組織力が弱まらないよう運営面に配慮してもらいたい」という意見を申しあげました。
そのような指摘をもらえることが有り難いのです。新体制では、各開発部門の共通認識を確立するとともに、開発プロセスを管理できる人間を各現場に置いてスタジオ間の調整を徹底し、個別最適の行き過ぎがないよう努めています。
守永
2013年度の取締役会で最も大きな議論を呼んだのは、前期に引き続き業績の下方修正を行ったことでしょう。下方修正の主な理由である多額の特別損失については、原因や今後の対策について厳しい質問や指摘がありました。
辻本
特別損失の最大の要因は、モバイルゲームをコンシューマゲームと同じ手法で開発したことです。開発期間の短いモバイルゲームの場合は1、2ヵ月の短期間で結果を検証していくべきところを、自分たちが納得いくまで長期間作り続けていたことで傷口が広がりました。これはマーケティングとオペレーションのミスであり、現在はこの部分の改革に徹底して取り組んでいます。オペレーションも「見える化」し、開発プロセスの段階で何度も外部評価を実施します。計画が遅延している場合は、開発の別部門から応援を出してでも「売れる商品」になるまで仕上げます。
守永
当時の取締役会では、私も開発原価の増加に対して問題提起しました。「売上原価率が66%と収益を圧迫しているが、こうした状況に至った原因はどこにあるのか?」と。
これも開発費に対して売上が上がらなかった、つまり「売れる商品」が出せなかったことが原因です。収益に繋がらなかったタイトルの大部分は、外部に開発を委託したものでした。2年前から開発の内製比率を高める方針を打ち出し、毎年新卒者を約100名採用していますが、それまでの人員不足を解決するため、外部へ委託したタイトルは依然として多く残っていました。現在は外注のラインを大幅に縮小し、その分の開発費を内作へ振り向けています。社内開発のオペレーションを抜本的に改革することで、外部委託に比べコストパフォーマンスを大きく高めることが可能だと考えています。

経営トップの「決断」で問題に素速く対処する

守永
今回の特別損失に関しては「ユーザーや社会の変化に対応出来ていないのではないか」という厳しい質問が社外役員から出ていました。私自身も、ゲーム市場の大きな変化の中、パッケージ主体からダウンロードコンテンツ(DLC)やモバイルコンテンツ市場への広がりに対して、コンシューマゲーム開発を得意としてきたカプコンも転換が必要な時期に来ているのではと感じています。
確かに近年、オンライン機能の進化やスマートフォンの台頭によりゲーム業界の市場規模が急拡大するとともに、地域的にも広がりを見せています。今回、結果として失敗はしましたが、モバイルでコンシューマの技術を活かしたリッチコンテンツの開発にトライしたように、我々は新しいことに挑戦していかねばなりません。一方で、パッケージ販売からダウンロード販売への軸足の移行が奏功したように、これまで実施してきたことの見直しも必要になっています。そこで色々な試行錯誤があるのは事実です。
photo:守永 孝之
守永
そういう時こそ経営層の力が問われますね。各部門の施策がすべて成功するとは限りませんが、重要なのは上手く行かなかった時に原因を明確にし、どのような対策を講じ、改善していくか。特に抜本的な組織改革などは、経営トップが決断して実行を促さないと進まないでしょう。
その通りです。開発部門の改革を含め、問題が見つかった部分は、早期に手を加えなければいけません。これは経営トップにしか出来ないことです。過去2年において「コンシューマのDLC対応の遅れ」や「モバイルの運営の失敗」を分析し大きく改革したように、まず出血を止め、思い切った手術をする。問題を放置しておくと、身体全体がおかしくなってしまいますからね。

取締役会の「正しい判断」が企業価値の向上に繋がる

守永
今後のカプコンの成長にとっては、モバイルコンテンツへの取り組みが1つの鍵になると思いますが、個人的な見解として、私はアジアにももっと目を向ける必要があると考えています。市場の潜在的な大きさを考えると、アジアはカプコンにとって有望なマーケットになるのではないでしょうか。
確かに、中国にオンラインゲームの巨大企業が出現するなど、従来の欧米中心の市場展開を見直す時期に来ていると私も考えています。
守永
環境の変化が厳しい状況の中で、カプコンとして変化に対応して「変えなければいけないもの」が色々あるでしょうが、一方では「変えてはいけないもの」もあるような気がします。カプコンの場合は、会長が育ててこられた企業理念や経営の軸を守ることで、カプコンブランドはより強くなり、これが企業価値を高めることに繋がるのではないでしょうか。変えるべきもの・変えてはならないもの、その見極めが大切だと思います。
仰るように執行部門が進む方向や考え方を見誤っていないか、またガバナンスの視点から取締役会の判断が間違っていないか、問題ないかを厳しくジャッジしていただきたいと思います。その意味で、経営の重責を担っていただいていると感謝しています。今私がすべき仕事は、後進の世代においてもカプコンが成長できる仕組みを構築しておくことです。そのためにも、ぜひご協力をお願いします。
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