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2023年8月31日

ゲーム発売記念!「EXOPRIMAL」楽曲インタビュー➂

こんにちは、タンタンです! 7月14日に発売となった「EXOPRIMAL」を記念して楽曲制作の過程について全3回に渡り、インタビューをお届けします!

今回は、サウンドディレクターの神田さん、リードコンポーザーの森本さん、コンポーザーの内山さん、宮田さん、成田さん、池田さんに音楽面でのお話をうかがいました。 左から宮田、森本、内山、成田、池田、神田(敬称略)
(東京開発:神田、森本  大阪開発:内山、宮田、成田、池田)

チームハンマーヘッズの仲間たちを掘り下げる

タンタン
前回は主にインゲームについてのお話でしたが、今回はストーリー部分であるカットシーンやアウトゲームの楽曲、エンディングテーマである「~ExoHuman~」についてお聞きしたいと思います!

早速ですが、どのようなコンセプトでカットシーンの楽曲は作られたのでしょうか?

成田
まずは、制作する前段で海外ドラマ、特にクライムサスペンスや医療ドラマ系のBGMを研究しました。あくまでハリウッド映画ではなくTVドラマの方ですね。 登場するキャラクターによって生ドラムを主体にするか、エレクトロなリズムを主体にするかをまず決めて、そこにキャラクターを象徴するようなサウンドを盛り込み、 曲によっては薄くオケ楽器をプラス!という流れでした。
タンタン
まさにキャラ付けですね! 具体的にお聞きしたいのですが、主要なキャラごとの音色やフレーズみたいなものがあるという事でしょうか?!
成田
あります!これ…実は、先に形になっていたメインメニューの楽曲コンセプトからヒントを得たんですよね!
タンタン
なんと…?!メインメニューとカットシーンに出てくる各キャラクターに、何か紐づいている点があるのでしょうか?
森本
はい、あるんです!…では、メインメニューのお話を先にさせて頂いた方がわかりやすいかと思いますのでそちらから。

実は、メインメニューの楽曲仕様を考えるまで、登場キャラクターにテーマフレーズを持たせることは考えていませんでした。 逆に言いますと、メインメニューの楽曲を考えることで物語への音楽表現の幅が広がった、とも言えます。

ハンマーヘッズの仲間たちとの交流は主にカットシーンの中で描かれることになるのですが、 その中だけでキャラテーマを使ってもなんかピンとこないなぁ…と思っていました。 とはいえ、ウォーゲームを乗り越えるために一緒に戦う仲間たちの姿をどうにか描きたいという思いがありました。

森本
メインメニュー画面では、船の中でハンマーヘッズの仲間たちが来たるウォーゲームに備えて準備をしている様子が描かれています。
タンタン
はっ…!確かにそうですね!
森本
はい。船は彼らにとってホームのようなところ。各キャラクターに自分の持ち場があって、それがメインメニューの機能とリンクしているんですね。

エースはエグゾファイターとして出撃準備をする「ウォーゲーム」
メカニックのロレンツォは「ハンガー」
クールなマジェスティは「キャリア」
技術士でテクノロジーマニアであるアルダーズは「データベース」
サポートAIのサンディは「ホーム」
という感じになっています。

メインメニュー画面でキャラクターのテーマ性を音楽で表現することは理にかなっていると思いました。 また「みんなが同じ空間に居る」― それを、共通する楽曲構成及びベーストラックを用いることで表現することもできる! ということから、メインメニュー画面でキャラクターを掘り下げる音楽にしたのです。

結果的に、冒頭で成田さんからもあったようにキャラクターのテーマフレーズはカットシーンの中でのキャラ表現としても使っていくことになりました。 具体的にどのようなアレンジ分けになっているかと言いますと、以下の項目をご覧ください。

メインメニューのサウンドイメージ






タンタン
各キャラのサウンドイメージってこんな風に作られていくんですね!メインメニューの項目ごとに音が変化しているとは…驚きでした!

メインメニュー:カメラのピントを合わせるように、各ページの主役にフォーカスする

森本
更に、メインメニュー画面の演出でこだわった部分を上げますと、「同じ空間に仲間が居る」と思わせることです。 その上で、ページ毎にキャラクターのテーマ性をしっかりと提示したいと考えていました。 ページを高速で切り替えることができますので、そのような操作をしても聴き心地に違和感が生まれないようにしたのもミソです。

メインメニュー画面の楽曲構想に入る前に、まず演出全体のテーマを決めました。 「カメラのピントを合わせるように、各ページの主役にフォーカスする」というものです。

「ウォーゲーム」の主役の音が「ハンガー」では背景の音になる。 「ハンガー」の主役の音が「キャリア」では背景の音になる。 「キャリア」の主役の音が… といったように、隣り合ったページは“主役”と”背景“が交代するような表現にしたいと考えました。

例えば「ハンガー」ではロレンツォがフィーチャーされますが、 隣の「ウォーゲーム」ではエースがいることを感じさせます。また、共通トラックとして全てのアレンジで使用するトラックを設けることで、更に空間の一体感を持たせています。みんな同じ船にいるよ!ということですね。

森本
実装においては、高速でページを切り替えた場合のことを考えなければなりません。 各ページを切り替える際に、アレンジ波形の切り替え処理と音量・EQの変化を持たせていますが、 その処理(変化にかかる時間)がページを切り替える速度についていかない場合、どうしても聴き心地が悪くなってしまいます。 試行錯誤の末、以下のことに気が付きました。

「リズムトラック」はロングノートが無くフェードの必要性がないことからパタパタと切り替わっても違和感が無い。 一方、「上モノトラック」はフレーズの性格的にフェード処理が必要なことから、パタパタ切り替わると違和感が生じる。 (※上モノトラックとは各アレンジのリズム以外の楽器がまとまった波形)

そこで、切り替わりの設定においても「リズムトラック」と「上モノトラック」とで、個別に分けることにしました。 「リズムトラック」はページが切替わったら即座に切り替わるように設定しており、 「上モノトラック」はページが切り替わってから少し間をおいてフェードインさせています。 「上モノトラック」が切り替わるまでの間に更にページが切り替わった場合は、直前のトラックは再生しないようにしています。 ページが変わると最初に「リズムトラック」で変化を感じさせ、次に徐々に「上モノトラック」がクロスフェードしていく順番でプレイヤーに変化を伝えています。

主役が背景に、背景が主役に。このような演出部分ではレイヤー構造を利用しています。 隣り合うページではそれぞれの波形を同時に再生させていますが、背景に回った際には音量とEQを使ってぼやけさせています。 全てのアレンジが同じ「尺・キー・展開構成」で作っているため、重なり合っても成立するようになっています。 このような形で、メインメニュー空間で仲間たちとの一体感を感じられるように音楽でも工夫をしています。

タンタン
こんなに曲が遷移されているんですね~!! 何気なく操作していると自然すぎて意識していませんでしたが、すごく繊細に作られているからこそ飽きずに好奇心を持ってプレイできるのかもしれませんね…!

カットシーンでしか表現できない音

タンタン
各キャラの音がなんとなくわかったところで、カットシーンのストーリー部分についてお聞きしたいと思います!カットシーンでのコンセプトやテーマみたいなものはありますか?
成田
先程も少しお話させてもらいましたが、カットシーンでの楽曲は、映画寄りではなく「海外ドラマ寄りの医療系やクライムサスペンス系ドラマのような雰囲気」というコンセプトがありました。 カットシーンの映像は、インゲームには無いような軽さやコミカル感が、エッセンスとしてほんの少し入っています。

ファイター達はすごく過酷な状況下ではありますが、仲間同士で冗談を言ったりする割とお気楽な部分や、ファイター達の日常もカットシーンでしか描かれていないので、そこは大切に表現したいと考えていました。シリアスな話をシリアスだけで終わらせず、だけどコミカルすぎてもいけないので、そのあたりの尺度は制作を進めていく中で探っていきました。

内山
曲でどこまでオチっぽい表現をするか…ここらへんは難しかったですね。
池田
さらっと、ほどよく面白くなればいいなっていうニュアンスでしたね!
タンタン
なるほど、だから映画というよりもTVドラマっぽいサウンドがコンセプトだったんですね~!例えば主要キャラ以外でも、楽曲制作で印象に残っているキャラクターはいますか?
成田
マグナムというキャラクターがいるんですが、彼のイメージはアメリカのタバコのような渋かっこいい感じというか、少しファンキーなイメージでした! あと、キャラクターとはちょっと違うかもしれませんが開発内で、あの主要キャラ達(クルーメンバー)を「チーム・ハンマーヘッズ」と呼んでおりまして、 彼らのテーマとしてCaseyさんに制作頂いた楽曲があります。 カットシーン序盤のキャラクター紹介部で鳴っている楽曲です。 サウンドトラックにも入っている、「Bikitoa Island, 2043」という楽曲があるんですが、この前半部がそれにあたります。

チーム・ハンマーヘッズのコンセプトは、こうです。

成田
非常にニュアンスを伝えるのが難しかったですが、Caseyさんが見事に表現してくださいました!人間模様が描かれるのがカットシーンと言われるストーリー部分ですが、タイトルの世界観も担保しながら、心の動きに音をつけていますので、そのあたり是非ご注目ください!

エンディングテーマ「~ExoHuman~」について

タンタン
エンディングテーマのコンセプトはどのように決めていかれたのでしょうか?
神田
エンディングテーマは、開発初期 ― メインテーマの元となったコンセプトトラックを作成した頃には自分の中で構想がありました。 エグゾスーツに搭乗するエグゾファイター達の内面に最も寄り添った曲で、タフな彼らがここではポロっと感情をみせてしまうようなイメージです。

EXOPRIMALのバトル曲等で貫いてきた「クールさ」というよりも、 「キャッチーで汗や熱を感じるノリ」を求めたのですが、デモとしてあがってきた楽曲を聴くと、 もしかしてキャッチーすぎるかな?もう少しクールに寄せた方が良いかも?と迷ったり…ただ、コンポーザーメンバーのこれがいいという後押しもあり、 仕上がってみれば構想のイメージに近いものになり、嬉しくなったのを覚えています!

タンタン
楽曲が仕上がるまでのストーリーもあったわけですね!作曲者であるCaseyさんと実際にやり取りされていた成田さんからも本楽曲への思い入れ等ありましたらお聞きしたいです!
成田
そうですね、非常に抽象的ですがエンディングでは「何と戦うか」を直接的に表現したくなかったというのが大前提としてありました。 実際には対象はリヴァイアサンや恐竜、ダーバンだったりするわけですが、そうではなくて「ウォーゲームを生き残るための今日という一日」と戦うイメージです。その上でタイトルのテーマである「相反するもの」=「過去と未来」「肉体と機械」は勿論「日常と戦い」「喧嘩と抱擁」「自分と並行世界の自分」といった、インゲームにはないカットシーンだけに見られるような光景をエンディングテーマに反映したいと思いました。 メインテーマがまさにゲームプレイを音楽に投影したものだとするならば、エンディングテーマはストーリーを匂わせるものにしたかったんです。それを十二分に理解してくださったCaseyさんの曲は強い熱量に包まれつつ、ハンマーヘッズの戦いは勿論、彼らの「生活感」のようなものを感じられる楽曲になっており、その点でもメインテーマとの差別化を図れたのだと思います。 この差別化はプロモーションにも非常に有利に働いていると思います。
タンタン
そのお話を聞いて、早くゲームクリアをしてストーリーも全部知りたい!と思いました!ありがとうございます!

制作期間中のエピソード

タンタン
制作期間中の思い出深いエピソードや苦労話などありますか?
宮田
いやぁ~、振り返ると色々ありますが…とにかくスケジュールがタイトでしたね!
内山
特にゲーム試作の時はひと月ちょっとで15曲制作という…
なかなかのハードワークでした(笑)。
森本
インゲーム曲のMIXはDaniel Krescoさんにお願いしていたのですが、数日後にMIX予定の楽曲がまだ完成していない!という緊張感たっぷりの状況では正直嫌な汗がだらだらと流れました… 「内山さん、すみません!まだ○○曲ができていないので、急遽★★曲(完成済み)のMIXを前倒しするしかなく…今日中にステムを作ってください!僕は今から△△曲の準備をしますので!」 なんていう事態になったことがあったり。内山さん、その節はすみませんでした…
内山
いやいや、とんでもございません!あの時は、本当に皆で助け合おう!っていう感じだったし…それこそ、皆それぞれが持ちつ持たれつだったよね!
池田
そうですね、本当に大変でした!そして頑張りました!
森本
徐々にコンポーザーが増えていって、気が付けば大所帯になっていましたね。タイトなスケジュールの中で、コンポーザーメンバーには本当に助けてもらいましたし(物理的にも気持ち的にも)、何よりみんなでゲームについて話をしている時間が楽しかったです!!
神田
本当にサウンドスタッフ、皆の協力で乗り越えることができ感謝しています!ありがとう!
タンタン
振り返ると皆さん色々ありますね!では最後に、この記事を読んでいる方へひとことお願いします!
森本
エグゾファイター達も熱いですが、開発現場も熱かったです!そんなアッツアツなEXOPRIMALを是非音楽面でも楽しんでいただけましたら幸いです!
内山
多彩なスキル・ロール、工夫が凝らされたギミック・ミッションで何度でも遊べるゲームです!音楽もその時々を象徴するカッコイイものになっているのでぜひ楽しんでください!
成田
バイオ、モンハン、ストファイ…並みいるタイトルに負けじと、今後もカプストーンで皆様にEXOPRIMALのサウンドの魅力をお伝えできる機会が来ることを願っております!
宮田
カジュアルに遊べるところが個人的にはめちゃくちゃツボなゲームです!音楽面でも、1ステージのバトル曲で、こんなにも(11種類)も遷移があるんだ…! というほどパターン違いが存在しているので、そのあたりも注目して聴いて頂けると嬉しいです!
池田
ゲームルールや画面も恐竜やプレイヤーやリヴァイアサンでてんこ盛りですが、音楽でも要素がてんこ盛りとなっています!多様な要素をたくさん楽しんで頂ければ幸いです!
神田
忙しくて、騒がしくて、バトル中は曲にじっくりと耳を傾ける暇がないゲームだと思うのですが、リヴァイアサンによってウォーゲームに駆り出されるうちに、楽曲のリフ・ノリ・グルーブが強く擦りこまれるような場面、そしてそのルールを呼び起こすような内容になっていると思います。ぜひゲームを遊んでいただけたら幸いです。もちろんストーリーやストーリーバトル、10人協力の場面ではドラマチックで熱い楽曲も聴きどころです。ビキトア島でリヴァイアサンと共にお待ちしています。
タンタン
自然にプレイしていたゲームでも、こんなに色んな仕組みが積み重なって音が出来ていると思うと、感慨深いですね…!「EXOPRIMAL」サウンドディレクターの神田さん、コンポーザーの皆様、ありがとうございました!
 

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