INTERVIEW, TOPICS, タイトル特集

2023年8月17日

ゲーム発売記念!「EXOPRIMAL」楽曲インタビュー➁

こんにちは、タンタンです! 7月14日に発売となった「EXOPRIMAL」を記念して楽曲制作の過程について全3回に渡り、インタビューをお届けします!

今回は、サウンドディレクターの神田さん、リードコンポーザーの森本さん、コンポーザーの内山さん、宮田さん、成田さん、池田さんに音楽面でのお話をうかがいました。 左から宮田、森本、内山、成田、池田、神田(敬称略)
(東京開発:神田、森本  大阪開発:内山、宮田、成田、池田)

インゲーム:バトル曲のテンション

タンタン
それでは早速、インゲーム楽曲についてお聞きしていきたいと思います!バトル曲に関して、”ノリを良くし過ぎないように制作した”とのことでしたが、具体的にどのように気を付けたのでしょうか?
内山
私が制作したインゲーム楽曲で個人的に気をつけたポイントとしては、下記3点です。
●ダンスミュージックっぽいフレーズを使わないようにした
●4つ打ちを避けた
●あまりコード進行を変えないようにした

まず、意識したのがダンスミュージックにならないように。という点です。何度もキーワードとして出てくる「死と隣り合わせ感」は、踊れるようなテンションでは無いはずです。なので、ダンスミュージックっぽいフレーズや、音色、4つ打ちは避けました。

また、他に気を付けたポイントとしては、コード切り替えを多用すると、 そこに何らかの感情の浮き沈みに似たような「気持ちの色」、「感情の濃度」みたいなものが生まれてしまいます。 本タイトルの質感にとっては少々オーバーな表現になってしまう懸念があったので、コードを動かし過ぎないようにしました。
宮田
私は、インゲームのバトル曲でも4つ打ちを少し入れてる部分があります(笑)。一番初めに作ったモックアップのダウンタウンバトル曲ですね!
内山
そうだったね!人それぞれやり方は違うからね!そういう意味では、宮田さんの最初に作ったダウンタウンのモックアップはOKラインのある程度の指標になったよ。
宮田
そうですね!私の本タイトルでの最初のお仕事は、ダウンタウンのモックアップを作ることでした。 4つ打ちKickがある部分にHatを入れていたんですが神田さんからもう少し、ノレる感じを薄めたいというお話があって Hatやその他、リズム系の上モノをほぼ取っ払うと、「おー良いね!」となって。そもそも私がリズム系をたくさん入れる癖があるので、 それ以降、私も「これ以上やるとダンス寄りのノリになってしまうな」という基準がわかりやすくなりました。

インゲーム:バトル曲とゲームルールの結び付け

森本
まずは、バトルの中心となるディノサバイバルというモードの音楽的な仕組みをゲームルールとあわせてご紹介しますね。 ディノサバイバルは、10人のプレイヤーが5人ずつ、2つのチームに分かれ、新世代AI「リヴァイアサン」が提示するミッションを早くすべてクリアした方が勝利となります。

バトルの基本の流れとしては、1ステージ内で「1stミッション→2ndミッション→ファイナルミッション」です。

1st/2ndミッションの中にはフェーズと呼ぶ区切りがあり、これらで1セットとなります。

前半ミッション(ファイナルミッション以外)では始めから終わりまで「1曲」として捉えつつ、ゲームルールやプレイヤーが置かれている状況にあわせて 楽曲アレンジが変化していく仕様にしています。 バトル曲のアレンジは当該ステージのゲームルールの性質によって 「オフェンス系」「ディフェンス系」「スペシャル系」の3種類に分類され、抽選されるミッション次第で楽曲アレンジの組み合わせが変わっていくようになっています。

開発ではミッションとミッションの間のいわゆる非戦闘区間「大凪」ミッション中のフェーズ間「小凪」と呼んでいて、 大凪では一気にテンション・密度感を抑えることで、次に来るミッションのテンションへのクッションの役割を担っています。 このように、1曲と言ってもゲームに合わせた多数のバリエーションの組み合わせによってウォーゲームを盛り上げています。

タンタン
以下、前半ミッションの楽曲構造を少しご紹介して頂きました!
●1曲分の種類
●1曲分のテンションカーブ
●1ステージで作る楽曲遷移ごとのイメージ
森本
このように、各遷移ごとで伝えたい情報を音楽に反映させていきました。
宮田
1曲の中でオフェンスとディフェンスがあるってどういう事?!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、 わかりやすい例があったので、実際に一部分だけ聴いてみて頂ければと思います!

楽曲の基本フィールの比較をしてみよう
オフェンスルールとディフェンスルールの楽曲の違い

宮田
ダウンタウンの楽曲に関しては、オフェンスもディフェンスも同じBPM且つ同じ尺になっています。
宮田
上記オフェンスルール(1st)の楽曲の一例になりますが、細かいリフの刻みによりスピード感を感じる事が出来ると思います。ではディフェンスはどうでしょうか。
宮田
ディフェンスルールの楽曲では拍間がオフェンス曲の倍になっていて、スピード感というよりも、しっかりと軸を据えてバトルに挑むといった心構えを感じられるよう意識して制作しました。
タンタン
わぁ~!!すごくわかりやすいですね!!ありがとうございます!

同箇所の基本トラックの拍間と譜割りの比較

宮田
先程、聴いて頂いてお分かりかと思いますが、DAW上での見た目としてもオフェンスとディフェンスは顕著に違いが出ていたので、こちらも一例をご紹介します。

オフェンス楽曲の音符情報 :上段オレンジ部
ディフェンス楽曲の音符情報:下段青部

オフェンスのノリ

宮田
ではオフェンスの音符情報をみていきましょう。
図1赤枠部、キックが4つ打ちなので頭にアクセントが来ているように思うのですが、すぐ後に16分のリフ(緑枠の部分)が顔を出すため、 図2のように双方が合わさると裏拍アクセントになるリズムが、横に流れ、白い点線のように、前のめりなグルーヴが生まれます。 また、16beatを基準としているため、ひとかたまりのサイクルが早いのが特徴です。

ディフェンスのノリ

宮田
続いてディフェンスルールの楽曲のノリについてです。

まず8beatが基準となっており、ゆったりと大きなかたまりになっているのが図1でわかると思います。リフとリズムがほぼ同じアクセントを持っており、 シンコペーションしたとしても裏拍にアクセントが移ることなく、表にアクセントが来ています。 また、図2の白い点線のように、縦のリズム、リズムが垂直になっているのがお分かりかと思います。

宮田
このように、オフェンス・ディフェンスでは“分厚さ”や“派手さ”を変えるのではなく、”ノリ“を変えることでそれぞれのゲーム性や、フィールを音楽で伝えようとしています。
宮田
このようなポイントを大切にしながら、制作していきました!
タンタン
こんな仕掛けがあったんですね~!!!興味深いです…!

インゲーム:「ディノスウォーム」

タンタン
あの例の、大量の恐竜が空から降ってくる演出の楽曲についてお聞きしたいです!注目ポイントなどありますか?
森本
いきなり始まる非現実感!EXOPRIMALの目玉演出!ですね。楽曲は内山さんに作って頂きました。 とにかく、息つく暇もない目まぐるしい展開にあわせて音楽も変化していく様子を体感して頂きたいです。

ポイントは前半と後半とで一気に音楽性が変化する部分。後半はとてもドラマチックに演出しています。 アウトロが終わった瞬間、突然夢から覚めたような気持ちになるのが個人的にはミソです!!

実装についても少しお話しますと、最初に恐竜が湧き出す演出が入り、大群がプレイヤーたちのもとに押し寄せてきます。 そしていよいよ戦闘が始まるタイミングで楽曲も切り替わり、テンションが上がるという流れになっています。 この、バトル曲への切り替えには2パターンの条件を設けています。プレイヤー達が積極的に恐竜に当たりにいった場合は、最初に恐竜に接触したタイミングで楽曲が切り替わります。 逆にプレイヤー達が距離を取って様子を見ているような場合は大群がプレイヤーの近くまでやってきたタイミングで楽曲が切り替わります。 つまり、プレイヤー自身が楽曲のトリガーになっている、ということです。

タンタン
プレイヤーの気持ちの盛り上がりと共に曲も切り替わるとよりテンションも上がりそうですね!この楽曲に関してテーマやコンセプトみたいなものはあったのでしょうか?
内山
「異質感」
「死んじゃうかもしれない感」
「負けゲーと思わせるぐらいの絶望」

このあたりが、本楽曲のテーマです。当時、Dとのやり取りの中であったキーワードですが、あまりにも大量の恐竜が押し寄せて来て「え、、、これと戦わないとダメなの…?!」 という絶望を感じてもらいたい。このフィールを念頭に楽曲を作り始めました。
タンタン
確かにあの状況は200%絶望感ですよね!!こだわりポイントなどありますでしょうか?
内山
この楽曲はゲームの状況に応じて段々と音楽が変化していく仕組みになっています。接敵後、どれだけ敵を倒したかで音楽が盛り上がっていきます。

元々激しい楽曲だったので、いよいよゲーム的にもクライマックス!という状況になると、どんどん楽器を足していくだけでは飽和していきますし、あまり変化も感じられない可能性がありました。 なので、あえてリズムをバスッと抜いて上モノだけにし、そこに声の要素を入れました。そうする事で、大きな変化が感じられる&クライマックス感も出せたかと思います。

タンタン
では、苦労したポイントなどありますか?
内山
一番初めに作った、第一稿の楽曲がバトルのテンション的にかっこよくなりすぎて絶望という感じがあまり出ていませんでした。 イケイケな要素が出すぎてしまって、絶望感が薄まってしまっていたんですね。 そこで、そのかっこよさのロックっぽい部分、メインのリフ等を取っ払いました。

音色や響きを不協和音っぽい感じにしたり、接敵の冒頭部分でメインとなるシンセのピッチや音色を耳障りな感じでひずませて感覚的に嫌な音になるよう何度か作り直しました。

大量の恐竜が押し寄せてくる性急さというより、プレイヤーの絶望感や事実としての目まぐるしさみたいな要素を入れていくと、よりイメージに近づいていったような気がします!

宮田
第一稿と最終稿を比べると、やっぱり「楽曲の持つ重み」みたいなのが全然違いましたね!楽曲の要素として入っている恐竜の轟っぽい音、あれはしびれました…!!!
内山
ありがとうございます!

インゲーム:「ファイナルミッションについて」

タンタン
ファイナルミッションについてもお聞きしたいのですが、こちらはどういうゲーム性なのでしょうか?また、各曲に関してテーマやコンセプトみたいなものはあったのでしょうか?
森本
はい、まず前段の前半ミッションがステージに対してBGMを設けていたのに対して、ファイナルミッションはどのステージにも起こり得るものです。そこで、ルール毎にBGMを設け、各ルールに特化したユニーク性を音楽や実装面で実現できたと思います。
池田
まず、マッチングの際にファイナルミッションのモードを「PvP/PvE/ランダム」の3つの種類から選ぶ事ができます。

PvPでは、血生臭さ、ドロドロ感、バチバチ感の要素を楽曲に盛り込んでいて、PvEでは、最終バトルとしての熱をしっかり感じてプレイして頂けるよう、性急さ・盛り上がりを意識して制作しました。

タンタン
ファイナルミッションはルールごとで楽曲が違うという事でしたが、各ルールごとにいくつかポイントを教えて頂いても良いですか?
池田
はい、ではいくつかご紹介させて頂きます!

ファイナルミッション:「エナジーテイカー」

池田
まず私が一番初めに着手したエナジーテイカーからお話します。
池田
「エナジーテイカー」は相手よりも多くのエナジーを取得した方が勝つというルールですが、相手チームのプレイヤーを倒すことでエナジーを奪うこともできます。 つまり、せっせとエナジーを集めるテンションと、敵プレイヤーとの激しい撃ち合いになるテンションとが混ざり合ったルールなのです。 森本さんと相談しつつ、音楽でもそのルールの二面性をアレンジで表現することにしました。
池田
しかしこの場合、楽曲の移り変わりが自然過ぎると分かりにくくなりますし、逆に分かりやすくし過ぎると違和感が大きくなってしまう懸念があります。 絶妙なバランスを狙っていくため、森本さんの実装と私の作曲、この2軸で表現を作っていきました。

森本さんと相談しながら制作していく中で、楽曲のキーが同一キーだと自然過ぎたため、「エナジー集め」はGm、「撃ち合い」はDmにしてみたところ、すごく良い感じの変化になりました。 実装面では、それぞれの楽曲をいくつかのステムに分け、2曲が切り替わる際にステムの一部を残しながら遷移するようにしてもらいました。

キーが違うことによって差を生みつつ、重なりを持たせることで急激な変化を緩和させる。GmとDmは「重なっても成立する調」として選択しました。 また共通トラックとして、どちらの楽曲でも使用するトラックを設けることで2曲間のつなぎを作りました。 このように、ゲーム性にマッチした音楽表現を各ルール毎に用意して工夫しています。

こちら、エナジーテイカーの紹介動画もありましたので、よろしければご覧ください!

ファイナルミッション:「ハンマーチャージ」

池田
続いて、ハンマーチャージのルールと楽曲に関してです。

ハンマーチャージの勝敗の条件としては相手チームよりも先に最後のバリア破壊装置を壊した方が勝利となります。

バリア破壊装置は、エリア1~3の合計3つのエリアに配置されています。エリア1の破壊装置を壊した後、そこで初めてエリア2へ向かう事が出来ます。 バリア装置を壊すにはハンマーのチャージ率をMAXにする必要があり、そのためには恐竜をどんどん倒してパワーをチャージしていこう!というゲーム性です。

池田
楽曲的な変化としては2つありまして、ハンマーへのチャージ率がしっかり感じられる縦軸での楽曲変化と、 バリアを破壊しエリアの切り替わりごとに曲が盛り上がっていくという横軸での楽曲変化を設けています。

ゲーム特性上、特に爽快感を感じられるように心がけながら制作したのを覚えています!

●2つの特性
●曲のテンションイメージ
池田
ハンマーチャージの紹介動画もありますので是非チェックしてみてください!
タンタン
池田さん、ありがとうございました!

次回、EXOPRIMAL「楽曲インタビュー➂」では、ストーリー部分の楽曲やエンディングテーマの「~ExoHuman~」についてお聞きしています! ぜひお楽しみに~!

2023年8月31日にはいよいよ「エグゾプライマル オリジナルサウンドトラック」がデジタル発売決定となっております!ぜひお楽しみください♪