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2020年9月2日

深世海 Into the Depths
音のちょっとだけ深い話
其ノ四 音響 後編

“深世海 Into the Depths 音のちょっとだけ深い話”
其ノ四 音響 後編
 

2019年9月にApple Arcadeより配信され、2020年3月にNintendo Switchでも発売された新進気鋭のプロジェクト”深世海 Into the Depths“(以下:深世海)、そのサウンド制作の裏側やちょっとした小話を現場のクリエイターを交えてシリーズで紹介していきます。その名も“深世海 Into the Depths 音のちょっとだけ深い話” 本日が最終回です。長きにわたって読んでいただきましてありがとうございました。今回も音響の後編ということでお送りします。前回同様、森口さん、森本さん。そしてスペルシャルゲストとして本作のサウンドトラック、またクリア後に開放される自動音楽再生機のために音源をマスタリングしていただきましたオノ セイゲンさんを迎えております。深世海の話に限らずオノ セイゲンさんの考えるゲームオーディオや次世代のオーディオ表現にまで話が大盛り上がりしました。


過去の記事:
深世海 Into the Depths 音のちょっとだけ深い話

其ノ壱 音制作 全体編
其ノ弐 効果音  前編
其ノ弐 効果音  前編
其ノ参  音楽  前編
其ノ参  音楽  後編
其ノ四  音響  前編


(※オノ セイゲン氏)


ウサミ)
今回は特別ゲストとして、なんと!オノさんとの対談が叶いました。『深世海 Into the Depths』では、サウンドトラックに加えて、ゲームクリア後に解放される「自動演奏装置」で聞くことのできる音源のマスタリングをしていただきました。オノさん、本日はお忙しい所ありがとうございます。オノさんのことを知っている方も多いと思いますが、改めて自己紹介いただけないでしょうか?


オノ セイゲン)
はい、よろしくお願いします。20歳の時、老舗のコマーシャルスタジオ、「音響ハウス」に入社しました。2年間(1978-80)しか居なかったんですが、今思えば、そこでフィルムの映写係(35ミリ16ミリ映写機)と、アシスタントとしてブームマンをやったり、テープ編集をハサミでやったのが良かったですね。そして22歳、いきなりフリーランスになり、ピットインなどのライブハウスに出入りしてました。ステージ周りからバーやPAまで。アナログ・テープを楽器のように扱えたのでスタジオミュージシャンとしてお呼びがかかったこともありました(笑)時代はニューウェーブやパンクからテクノ、ヒップホップなどレコーディング・スタジオはセッションを録音する場所から革新的に新しい音楽を創り出す場になっていきました。アナログ16トラックから24トラックに変わる時期で、ゲートエコーやリズムマシン、フェアライトなんかもこの時期からです。当時の実験的なレコーディングに多く関わりました。清水靖晃、そして坂本龍一「戦場のメリークリスマス」、渡辺香津美、近藤等則など。


(左上:森本、右上:森口、左下:ウサミ、右下:オノ セイゲン氏)

オノ セイゲン)
来日ミュージシャンのライブレコーディングの指名が急に増えたのもこの時期。アート・リンゼイ、ジョン・ゾーン、ビル・ラズウェル、ラウンジ・リザーズ、デヴィッド・シルヴィアン、マンハッタン・トランスファー、ジョー・ジャクソン、オスカー・ピーターソンなど。アナログからデジタル、DAWまで現場での経験から、プロオーディオの商品企画やベータ版のテストなどにも積極的にかかわってきました。1996年ヤマハ「O2R」、98年ソニー「Sampring Reverb DRE-S777」、2000年ソニー「SONOMA」、2011コルグ「Clarity」、ギャラクシースタジオ「AURO 3D」、2015年DSDライブストリーミングなど。フィロソフィーとして40年間、一貫しているのは、音色は響きと言うことかな。重要なのは、もちろんミュージシャンの演奏です。そこがダメだとどんな高価なマイクでも絶対にいい音では残せません。いい演奏を引き出し、いい音で録音するには、ピアニッシモが正確に表現できて、少ない力で楽器がよく鳴る空間、スポットを見つけること。そして初期反射と響きを常に意識することです。


森口)
僕が音に目覚めた学生時代から雑誌などのメディアで拝見していて、しかも、僕も使いまくっていた機材の開発に関わっていた方と、まさか対談できるとは夢にも思いませんでした。本当に楽しみにしておりました。


森本)
オノさん自身がゲーム作品は今回が初めてだということですが、率直に『深世海』というゲームをご覧になられて感じられたことをお聞かせください。


オノ セイゲン)
僕にとって全く新しい世界のゲームの仕事に関われて、しかもみなさん音質のことを大切にしていることを感じて、とても刺激的でした。


森口)
今回のマスタリングはかなり特殊な例だと感じています。というのも、リアンプを繰り返し行って仕上がった音源はローファイというか、決して綺麗な音ではないことは明確です。そこを味や世界観として表現していたというのもあるのですが、音質という意味ではかなりのディスアドバンテージがあります。


オノ セイゲン)
マスタリングしてお渡しした音には、その大切にしていた部分は残っているでしょう?


森口)
そこなのです。どのようにこの味を残しつつ、より良くするためアプローチしたのかは気になっています。


オノ セイゲン)
秘密はなにもないです。今回のマスタリングは、ぼくの主観で進めていく通常のマスタリングと違って、ただ音をクリアにするのではなく、デフォルメしたわけでもないです。より深く広く暗くなってものすごく遠近感を感じた。深世海では音作りで、フォーリーで実際にバスタブでリアンプしたりして、IR(注:インパルス応答)やプラグインだけのIN THE BOXでないのが良い。それが本物の深海ではないにしても、アプローチはデジタルの中だけでなく、プリミティブな手法をどんどん体験したり気づいたりして試すべきなのです。


森本)
今振り返ってみると、リアンプ作業はスピーカー内の気泡が溜まったり、僅かな位置のずれなどにも録れる音が左右されるし、とにかく時間もものすごくかかったのですが、逆にプラグインではなく、自分たち自身の手を動かして表現したというのは我々らしいなというか 笑 おっしゃられるように、実際にやるからこそ気づくことが多かったです。楽曲毎に質感のわずかな違いはあっていいし、その時の生の音になっていると感じます。深世海では「いい音」の定義を改めて考えました。


オノ セイゲン)
ローファイがいい音か?例えば今みんなで話しているテレビ会議システムの音はサンプリングレートが大体22khzで、せいぜい11khzぐらいまでしか出てないから、広義ではLo-Fiサウンドです。ただこの環境下でも、複数人で同時に音を出してアンサンブル楽曲を制作する上で、この音質とディレイ感(レイテンシー)を逆手に取った、ずれても成立する音楽を発表している作曲家も現れている。それはこの環境でしか成立し得ない音や音の質感が出来上がるということ。FMの音楽番組をカセットテープに録音して聴いていたことに近い感覚を覚えている。カセットに感じていたノスタルジックがテレビ会議システムの音にはあるんじゃないかな?


ウサミ)
音の質感を懐かしむって、今だからこその感覚なのかなと思いました。



オノ セイゲン)
今回マスタリングする前に、カプコンサウンドチームからリアンプした意図などを教えてもらったときに、この音源に確かに存在するノイズはクリーンアップするべきでないということは明確でした。いい音とはその質感が伝わることだと思います。この質感が、例えば録音している場所や楽器にあるとすれば、そのままキャプチャーして、なるべく変わらないようにする伝送技術、録音や配信技術がすごく重要です。リアンプの場合、リアンプした結果の質感を読み解くことがとても大切。水中だと、その水中のIRをあえてとらず、水槽の中で全て通して作り上げたそのリアンプの音はクリエイター自身が想像して作り上げたものだから、そのままをユーザーに届けるべきだと思います。


森口)
オノさんの考えるマスタリングとはどういうものでしょうか?


オノ セイゲン)
マスタリングとは、最終的に納品するフォーマットへのクオリティコントロール、品質保証の最終工程です。そこで決められた音が、頒布されます。再生環境とメディアフォーマット、95%のリスナー(5%の拘りのマニア、プロ向けではなく)が、それでどの程度のスピーカー、ヘッドホンで聴くのかを想定して、音を決めます。理想的には実際にマシンをお借りして、エンコード、デコードを確認しながらできるとさらに(僕的には)クオリティが上げられます。5%のハイエンド向けには、別途にDSDとか96Khz24bit、48KHz24bit非圧縮のWAVデータを音のマスターアーカイブとして残しておくと将来、マシンと通信速度が向上した時にも、最高のスペックでユーザーに届けることができます。僕自身の音楽はDSDと96Khz32bitでアーカイブしています。写真とかグラフィックデザインに例えると分かりやすいかもしれませんね。写真のポジからプリントになって初めてギャラリーで写真家の作品として観る。レコードジャケットになる、雑誌に印刷される、ここで色の校正が入りますよね?一流アートディレクターが、紙まで知り尽くした色校正のセンスとプリンティング・ディレクターのような職人仕事。言うなれば音のプリンティング・ディレクター。それがマスタリングです。


オノ セイゲン)
またDSDとは、デジタル写真のRAWデータに相当します。マイク2本や3本だけでうまく録音された音楽には、ミキシングもマスタリングも要りません。ミキシングやダビング、コンピューターでバーチャルで作られた音楽でも、それがスピーカーやヘッドホンから聞こえるのではなく、直接脳に届くような音質に焼き付けることがマスタリングであり、その際そこに写っている主人公がとんでもなく美人に見えるような陰影を与えることもマスタリングでできます。写真も同じですが、まれに撮影(収録)の時にパーフェクトに作り込んであると、そのままを収録するだけで理想的な仕上がりができます。コンサートホールでマイク2本だけで録音とか。仕上がりを確認するだけでQCできている=何もしないのもマスタリングです。


森口)
オノさん、以前のインタビューで、新しい音楽のリスニングスタイルとしてyoutubeを挙げられていましたね?


オノ セイゲン)
僕は職業柄、youtubeでもあっという間にマスタリングの係数が決まるので、リアルタイムでPCMさらにDSDアップコンバート・マスタリングした音でyoutubeを楽しみます。貴重な5分の時間、音楽を聞くのに音がいい方が楽しいですよ。


森本)
音楽の聴き方でいうと、今回『自動演奏装置』というゲーム内で楽しめるインタラクティブなサントラ機能を実装していますが、インゲームとはまた違った、より音楽視聴に特化した表現をしています。


森口)
確かにゲームへの実装(ゲームの遊びに直結した実装)となるとゲームのシステムとか、ある意味でハードルが高くなる傾向がありますが、今回のようなゲーム内サウンドトラックなど限られた領域での音楽の使い方はとても可能性を感じています。そこにおける音質や音の質感、聞こえ方の演出をよりピンポイントに向上されるのはシステムを組むという意味でも比較的容易だと思います。高いオーディオの処理などをアプリなどを通じてユーザーさんがアクセスできるようになると、音楽の聴き方も変わってくるのかなって思います。


ウサミ)
音ハイレート音源も一般的に普及していきていますしね。自動再生機はまさにそのためです。ゲーム内での圧縮は行われていますが、それでもハイレートで実装しています。容量に余裕があればPCM音源で実装も可能ですしね。


森本)
「ゲーム」というメディアや、「ゲーム音楽」「ゲームオーディオ」に対して思っておられることを教えていただけませんか?


オノ セイゲン)
ゲームは、「まるで現実のような」を超越した非現実の世界にトリップできると考えています。現実社会や経験には決して起こらない体験を、「時空を超えた非現実の世界」にアバターとして入り込める。つまり映画以上に、収録した元と同じかどうかはむしろ比較の意味はなく、結果が面白ければ、より非現実の世界にトリップできる。アニメーション映画もストーリーは一本ですが、音作りという意味ではこちら(ゲーム)側だと思います。ゲームのドキドキ感は、自分がストーリーの中にかかわって、行き先はリミックスのように何種類もの想定ができることかと思います。録音している元音と結果プロダクツになった音との比較の対象がない。映画のようにリファレンスとなるダビングステージや劇場がない。むしろ全くもってパーソナルな音響体験の場であるので、まさにVR/ARが目指す世界、それも音楽のリファレンス環境が、しかもヘッドホンで立体でできる時代が来ると、ゲームのハードとインフラで音楽も映画も妥協なく取り込んでしまう可能性を見ました。


森口)
ゲームだと、3Dオーディオや立体音響というのが一つのトレンドとしてあります。詳細の定義は割愛しますが、つまり立体的に音を聞くことができることで、サラウンドスピーカーに高さ(ハイトスピーカー)を加えたものが一般的にそれだと言われています。でも現状ではスピーカーをフルにセットアップして聴く人、というか聴ける人はあまりいないと思います。そこから議論されているのがその表現をヘッドホンに叩き込む技術、昨今立体音響を聴くためのヘッドホンや立体音響をリプロデュースする手法については確かな技術進歩を感じています。とはいえ、中々スピーカーと同等までの表現力とは言えないのではと思っています。今後の技術革新についてどのようにお考えですか?


オノ セイゲン)
イマーシブ(3D立体の)オーディオはプロオーディオの中でも今まさに進化している領域です。今はまだ荒い部分もあるけど、それでもイマーシブ、3Dによる表現力の高さは目を見張るものがあります。5.1chの頃からこの分野については興味を持っていて、だってスピーカーを普通の部屋の後ろに置くのはねえ(笑)、もちろん究極のゴールはスピーカーに囲まれた状態で聴いている音と、ヘッドホンで聞く音に差がない状態で聞こえること。それこそ3年前だとヘッドホンの立体は、自分の耳のバイノーラル録音を60点とすると、立体エンコードされた音は10点ぐらいだったけど今は35点くらい(笑)。完全な意図通りの再現にはまだ達していない。それでも包まれている感じや音が動いている感じはかなり改善している。今後は、より個人の聴覚に合った聴き方に近づけるためHRTF(頭部伝達関数)のパーソナライズやそこを実現するための簡易測定など、いろんなメーカーで様々な技術が急速に進歩しています。どんどん良くなってくると思いますよ。あと思うことは、このような技術を存分に使ったコンテンツがもっと広く出てくると一気に広がりますよね。そういう意味でもクリエイターは技術革新を待つだけでなく、自分たちのやりたいことを高次元に表現するためにはこれが欲しい!という貪欲な姿勢も大切だと思います。



ウサミ)
その通りです。少し話が変わりますが、オノさんはエンジニアだけでなく、音楽を制作するコンポーザーとしての顔もありますよね。


オノ セイゲン)
はい。1984年、作曲家・レコーディング・アーティストとしてJVCからファースト・アルバムを出しました。それが世界6ヶ国で出て、セカンドアルバムは、1987年にヴァージンUKの最初の日本人としてアルバムを出しています。ちょうどその頃、コム デ ギャルソンから「誰も、まだ聴いたことがない音楽を使いたい」「洋服がきれいに見えるような音楽を」という依頼によりショーのためにオリジナル楽曲を作曲、制作、2000年より、スーパーオーディオCD Multi-chフォーマット(サラウンド)を多数プロデュースしてきました。最新アルバムは『CDG Fragmentation / Seigen Ono』ですが、7月28日に26年ぶりに東京でショーがあったんですが、そのために急にオリジナル曲を作ることになり、これからイマーシブのアルバムに仕上げようとしてます。


森口)
自身の音楽性を1から10まで、最後の出音である再生ツールまで自身で関わっていらっしゃるのは驚異的ですよね。


森本)
ゲームの世界って当然0から作られているので、正解ってないんですよね。ビジュアルコンセプトからイメージを膨らませていったり、その世界観や視覚にマッチする音を探りながら作っていくので、実際の世界の音よりもデフォルメして表現する傾向がある。「リアル」ではなく、「リアリティの奥行き」が重要になるというか。今回リアンプした音源には森口さんが水中ノイズをいれていて、これはミックスというよりも、デザインに近いように感じています。デザインをミキシングエンジニアが手掛ける、個人的には新しい経験でした。このデザインの部分やデフォルメについては、オノさんの過去のインタビューとか拝見していた時に親和性を感じて、是非オノさんにマスタリングしてもらえたら素敵だな、と思っていたのです。オノセイゲン氏の持つ作家性とかけわせたかったのです。


ウサミ)
川田D、平林さんはじめプロデューサー陣、そしてチームの理解や後押しは大きいですね。基本的には全員の作家性やアーティスト性をうまく攪拌させて化学反応を起こして、エネルギー弾を作る(より良いものを作る)ことを重視していました。



森口)
ノイズに関しては、この深世海ノイズを消せば消すほど世界観から外れていったのですよね…。


オノ セイゲン)
カセットテープなんて想像するとわかるけど、サーって音があるよね?僕はカセットテープであれば、それはやっぱり必要だと思っている。サーの向こう側に聞こえる響きとか、この暗騒音がとても大事。例えばCDだと16bitだから、音の奥行きや暗騒音がどうしても切られてしまう。


森口)
もちろんクリアに収録するということは、エンジニアリングにおいてとても重要ですが、意図に応じて汚していくという事も同じくらい必要かもしれないと思いました。


オノ セイゲン)
そう。特に無意識の暗騒音をね。これからのゲーム機はさらにスペックが上がるだろうから、この表現にも存分に強みが発揮されると思いますね。


森口)
このプロジェクトでは終始、無意識に暗騒音を探したかったのかもしれませんね。雪山とかだと音が雪に吸収されてシーンとしちゃうのが妙に不安感を与えたり、都会独特の喧騒な音に安心感を覚えるのかもしれませんね。


ウサミ)
こういう理由から全てリアンプしたのかもしれませんね。環境音もそうだけど、とにかくマイクを突っ込みたかったのかな。


一同)笑い

ウサミ)
実際マイクを入れて収録するたびに、音の変化は必ずそこにあって、ましてや収録日を変えたらどっと音が変わることもありました。雨などが排水溝を伝って、水槽で響き、それをマイクで拾う。妙に心地よい時もありましたよね。暗騒音が味になって、それが深層的な部分に訴える心地良い音になったのかなって思います。


森本)
水中ということもあって、かなり実験的な試みが最終的にゲームに反映されているのは素直にうれしいですね。ここまでの道は容易ではなかったし、結局意図せずにたどり着いた部分もやっぱりあったのですが、このフローを経たからこそ面白かったですし、結果、深世海サウンドに集約されたなと思います。単なリアルさというよりも、自分たちの想像の先にこの音がありました。


ウサミ)
たどり着いたこの音のデザインが、最終的にはゲームの表現と結合したからこその相乗効果です。


森本)
開発するときにいつも思うのですが、現行機を比較するだけでもハードウェアのスペックは様々あります。でも僕たちが提供すべき体験は同じであるべきです。そこにはもちろん各ハード由来の表現と、コンテンツそのものでできる表現、これは二軸で考える必要があります。そしてできるだけたくさんの時間を使ってコンテンツの中で表現できるものをより高めるべきだと思います。



オノ セイゲン)
でも皆さんとこう話していると、やっぱり僕はゲームやっちゃだめなんですよね。ギャンブルとかと一緒で、絶対はまちゃって…。抜けられなくなる。


一同)笑い

オノ セイゲン)
でも本音を言うとゲーム機からエンコードされて出てくる音を聴いて、ミックスやコーデックの提案とか興味ありますね。スペックがどんどん上がっていくと思うけど、現行機でここまでやれる!ここまで追い込める!いうのは機会があればぜひともチャレンジしてみたいです。あとこの座談会、もし次回があればベルリンの青島さんも招待して、ベルリン談話なんてしたいですね。僕もベルリンとは縁があって、もちろん今のベルリンではなくて、僕のベルリンの話は壁が崩壊する前の話。アエロフロートでモスクワから陸路でドイツに入って…。長くなるのでまた今度します。


一同)笑い

森口)
様々なものが日々変化するこの時代だからこそお伺いしたいのが、オーディオ業界の近い将来。どのように変化しているとお考えですか?また、オノさん自身が目指されているところはどこでしょうか?


オノ セイゲン)
オーディオ業界と言っても、音楽を聴くという意味では広義で音楽家(作曲家、演奏家、リスナー)と、我々のプロオーディオの作る側の世界。そしてオーディオファイル(オーディオマニア、オーディオ評論家の趣味趣向)側のリスナーの世界。ゲームは、ゲーム機というのは、ある意味スーパーコンピューターです。スマホとゲーム機が、GPU、CPU、インターファイス、通信、メディアの扱い方の可能性は格段に上をいきます。しかもパーソナルで楽しむことが前提ですから、立体ヘッドホンのHRTF個人化などでも現在のレベルのものでも、十分対応可能だと思います。音楽オーディオ業界的には、そのようなイマーシブの優れたコンテンツが少ない。かつてソニーPlayStationでスーパーオーディオCDが楽しめることを知っていたレコード会社の人は、ごく僅かであったように。ゲーム機のハードのスペックはどんどん上がっていくのに、音楽オーディオ側は、ゲーム機が最強の音楽プレーヤーになることは気づいてない。オーディオ、ビデオのメディアと、ストリーミング再生機能をゲーム以外にも対応させたAVモンスター・ストリーミング対応(できればスマホ機能付き)のハードが出てきたら、音楽も映画も妥協なく取り込まれてしまうでしょう。ヘッドホンでパーソナルな立体音響体験、VR/ARが目指す世界はまずは、ゲームから行くべきです。それはすでに映画もカバーされるし、音楽のリファレンス環境に近づくには、最新のCPU、GPUなしにはできません。音楽のスピーカーと画面だけ評論家に解説してもらえばいいのです。その上で目指すことは、まったく厚かましい話なのですが、自分も原点に戻り音楽を作りたくなりました。『深世海 Into the Depths』をきっかけにゲーム経験ゼロからですが、自分が作曲家チームを作って、例えばイタリア、フランス、スペインの恋愛ものの、ロマンチックでぐっとくる映画のようなゲームストーリー。ゲームだから行き先は人生のように何通りもありますね。ハッピーエンドだけではないんです。




ウサミ)
本日は貴重なお時間ありがとうございました。オノさん、最後の読者の方にコメントいただけないでしょうか?。


オノ セイゲン)
例えば100人に一人くらいでもいいので、音質にも気がついた方からの意見を聞きたいです。で、残りの99人の方には無意識のうちにもそれが深世海の世界観とストーリーを引き立てているのが、深世海サウンドチームですね。音楽にも興味持っていただけた方は、ぜひ48KHz24bitの『深世海 Into the Depths』のサウンドトラックもお楽しみください。人間は視覚より先に聴覚で空間の広さや材質を脳内にマッピングしていきます。ハイレゾでは無意識のうちにも空間や静寂ができることで、全てのオブジェ、登場人物はよりリアルに体験できるのです。


ウサミ)
オノ セイゲンさん、そして森本さん森口さん、本当にありがとうございました。


森口 森本)
ありがとうございました!


ウサミ)
本稿にて“深世海 Into the Depths 音のちょっとだけ深い話”は最終回を迎えました。今まで記事を読んでくださったユーザーの皆様に心より感謝を申し上げます。サウンドだけでなく、様々セクションの素敵なクリエイターが一生懸命作った本作を何卒最後までご堪能いただけますと開発者として大変嬉しく思います。またサウンドトラックの配信もございますので、ぜひ水中の質感を付与した深世海サウンドも併せてお楽しみください。本当にありがとうございました。



深世海 Into the Depths 公式サイト
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深世海 Into the Depths サウンド制作MV