INTERVIEW, TOPICS

2022年2月17日

サウンドトラック発売記念!『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』コンポーザーインタビュー

こんにちは、タンタンです!
2/16(水)に発売となった、『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~ オリジナル・サウンドトラック』。
今回は発売を記念し、『モンスターハンターストーリーズ2』の音楽について、サウンドディレクターの宮田祥平さん、コンポーザーの鈴木さん、大木さん、宮田裕子さんにお話を聞いていきたいと思います!

 ▲左から順に宮田裕子、大木、宮田祥平、鈴木

村や街、自然の広がるフィールドに音楽も交わりたかった

タンタン
まずは本タイトルの顔、『風の絆 ~モンスターハンターストーリーズ2 Version~』についてのお話を聞かせてください!
前作『モンスターハンターストーリーズ』に比べ、がらっと雰囲気が変わりましたが、作曲者としてこだわった点はどのような部分でしょうか?
鈴木
今作のテーマ曲『風の絆 ~モンスターハンターストーリーズ2 Version~』では、ストーリーの中で主人公と仲間たちが見る景色を曲にも反映させたいという想いがありました。
オリジナルである、前作『モンスターハンターストーリーズ』の『風の絆』を制作する際は力強さと、主人公の背中を押すような気合の入る楽曲をと思っていたのですが、今作ではテンポも緩やかで、テーマ曲では少し珍しい3拍子になっています。
タンタン
確かに、3拍子のテーマ曲って珍しい気がします!
なぜ主人公たちの景色を表現しようと思ったのですか?
鈴木
『モンスターハンターストーリーズ』シリーズの村や街、自然の広がるフィールドですが、大きな所から小さな部分まで、このシリーズらしい表現がされているなと思っていて、その世界観に音楽も交わりたかったからという感じでしょうか。
それが色味からくるのか、小物のチョイスなのか、絵の難しいことは分かりませんが(笑)
見た目としての景色と、シナリオの中で主人公たちが見る物語の一片としての景色の、両方を表現したかったという想いです。

実は曲の中間で一旦静かになる部分は、物語の中核となる伝説の真実が明かされていく「そうだったのか…!」を表現したいなと思って作りました。ゲームをプレイして改めて聴いていただいて、ココが「そうだったのか…!」と分かった人がいたら凄いです!語り合いたい(笑)
タンタン
ありがとうございます!
「そうだったのか…!」の瞬間、見つけてみたいと思います!
次に、『地の緋 天に光に』について教えてください。この楽曲は、どのような想いで制作されたのでしょうか?
鈴木
この曲は歌詞を元に、オープニングの『祭りの夜』で歌姫が唄う映像なども意識しながら制作していきました。制作の際は、まだ映像が白黒の絵コンテを繋ぎ合わせたものだったのですが、歌詞に物語のキーにもなる言葉が込められていたので、歌詞とリンクして雰囲気は十分に伝わってきたのを覚えています。

実はこの曲、最後の「紅蓮の炎で…」以降がもっと悲しげな曲調だったのですが、もう少し明るくして欲しいというオーダーがあり、今の楽曲になっています。希望が見いだせた感じもありますし、このほうが楽曲としてもストーリーに沿っていていいなと思っています

聴いた人が直感的に情景を思い浮かべるようなテーマ曲

タンタン
お次は、サウンドディレクターの宮田祥平さんにお話を聞いてみたいと思います!
本タイトルのサウンドディレクターとして、『風の絆』『地の緋 天に光に』の2曲に込めた想いなどはありますでしょうか。?
また、ディレクションしていく上で印象深かったエピソードなどあればお聞かせください!
宮田祥平
まずはメインテーマ曲についてですが、新しく本作のために書き下ろしたテーマ曲を制作するか、本シリーズのテーマである『風の絆』をアレンジするかについて、コンポーザーの鈴木さんをはじめディレクターやプロデューサーを交えて議論をしました。その中で、「『モンスターハンターストーリーズ』シリーズといえば『風の絆』、と思ってもらえるようにしたい」というような意見があり、私自身も『英雄の証』のように、聴いた人が直感的に『モンスターハンターストーリーズ』シリーズの情景を思い浮かべるようなテーマ曲になって欲しいという思いがありましたので、本作でもアレンジをした上で、『風の絆』をメインテーマにすることになりました。
『地の緋 天に光に』についてですが、この作品の冒頭に流れる楽曲になるとのことだったので、これから何か大きな物語が動き出すことを予感させるような楽曲に仕上げてもらいました。併せて、民謡のような「その地で脈々を受け継がれる普遍性を持ったメロディ」という部分も意識して制作してもらいました。

歌の収録に関しても日本語・英語ともに、この2つのイメージを見事に反映した歌唱をしていただきまして、より多くの人が冒頭のシーンでこの作品の世界観に引き込まれるような楽曲になっていたら嬉しいなと思っています。
タンタン
鈴木さんと宮田祥平さんのお二人、ありがとうございました!

ズバリ!推し曲!

タンタン
続いては、ゲーム中で流れる数々の音楽について、大木さんと宮田裕子さんにお聞きしたいと思います!
まずはズバリ!担当した曲で推しの曲はなんでしょうか!
大木
僕は、『繁栄の街〜ルルシオン』『レウスの飛翔』、そしてネタバレ防止のため一応モンスター名/曲名は伏せますが、ラスボス戦の曲が特に推しの楽曲です!
特に『レウスの飛翔』は、何よりいいシーンなので…。当時、脚本の段階でめちゃくちゃ泣いたのを覚えています。(笑)
宮田裕子
私は、『陰謀持つ者との戦役』『伝説の残る村〜ヌア・テ村』『粗暴な者たち』の3曲が特に思い入れがありますね。『陰謀持つ者との戦役』は敵対するライダーとの戦闘曲、『粗暴な者たち』は大型モンスターとの汎用バトル曲となっています。
それぞれの工夫や思い出については、後ほどじっくり語ります!
タンタン
ありがとうございます!
どの曲もゲームのシーンが思い出されますね〜。

旋律を特にフィーチャーした構築

タンタン
楽曲全体としては、なにかこだわった点などはあるのでしょうか?
大木
今作の音楽は、楽曲それぞれの持つ旋律(メロディ)を特にフィーチャーして構築していきました。わかりやすいところでは『地の緋 天に光に』の主旋律かと思いますが、ゲーム中のあらゆる楽曲において、この旋律を散りばめてあります。(譜面①~③)
▲譜面①
赤枠が主旋律I、紫枠が主旋律II



▲譜面②
『祖父の残り香~護りレウスの森』では、主旋律Iの変奏が用いられている



▲譜面③
ラスボス戦の曲では、主旋律IIの変奏が用いられている
この他にもさまざまな場所で出てきます!
今作は「破滅の翼の伝説」を中心に渦巻く、主人公とレウスとの絆の物語となっています。この「破滅の翼の伝説」に対し、『地の緋 天に光に』の旋律を標識として定義づけることにより、より物語が入ってきやすくなるよう目指しました。
ゲームではプレイヤーさんが自由に行動できるので、プレイスタイルによってはしばらく探索に熱中して遊んでいただいたり、セーブをして次に話が進むまでに日が空いたりと、人それぞれシナリオ進行の期間に大きく開きがあるかと思います。実際、僕自身がRPGゲームを遊ぶ際、途中途中のNPCに話しかけたくなったり、探索してみたりと、シナリオはゆっくりじっくり進める派なので気持ちはよくわかります。(笑)
そうなった時に、シナリオのアイコンとなる旋律が存在することで、スムーズにシナリオの流れへ立ち戻りやすくなり、このシーンは「破滅の翼の伝説」にまつわる話をしているんだな、と意識的にしろ無意識的にしろ、感じ取りやすくなっているというわけです。

他の楽曲では、カイルとツキノのテーマ曲『暗躍する二人』についても、旋律のこだわりがあります。楽曲の最初に出てくるこの主旋律は、ツキノのモチーフになっています。(譜面④)
▲譜面④

この旋律はツキノのモチーフなので、ゲーム中盤から遊べるようになるミニゲーム「ツキノ占い」では、このモチーフを長調に変奏した楽曲を流していますね。(譜面⑤)
▲譜面⑤
そして、「暗躍する二人」の途中から入ってくる対旋律(譜面⑥茶枠)はカイルのモチーフとなっています。カイルとツキノが登場するときはこの音楽を流しているわけですが、「ツキノ一人なのか」「カイルもいるのか」といった部分で、流す箇所を変えているというわけです。
▲譜面⑥
茶枠がカイルのモチーフ、ピンク枠がツキノのモチーフ
さらに、ネタバレにならないようあえて伏せますが、ゲーム中盤の「あるシーン」で、このカイルの旋律がやはり長調に変奏して流れます。
プレイ済みの方は、ぜひマイハウスのギャラリーから探してみてください!
これからプレイされる方はぜひお楽しみに〜!
▲譜面⑦
このフレーズはどこで出てくるか…ぜひ探してみてください!

キャラクターの個性とリンクした音色

タンタン
各曲のメロディにこんな工夫が施されていたのですね!
モチーフ以外についても、このような仕掛けがあるのでしょうか?
大木
今作では多くの主要キャラクターたちに対して固有のテーマ曲を当てているのですが、この楽曲群は音色面でこだわりました。
このテーマ曲を持つキャラクターたちは、それぞれが自分たちの村や故郷、家族を持ち暮らしています。彼らの生活と棲み家は、シナリオとして切り離せない関係なのはもちろん、個性としてもリンクしているわけです。
そこで音楽側のアプローチとしても、彼らが住まう村と統一感のある音色で楽曲を制作しました。ルトゥ村/アルマの音楽は木琴やハープを、クアン村/アユリアの音楽はストリングスや太鼓系の打楽器を、ルルシオン/リヴェルトの音楽はアコーディオンとアイリッシュフルートを、楽曲の中心に据えています。アイルーの隠れ穴/オルゴは宮田裕子さんの担当曲ですが、同様に木管楽器とマリンバなどで統一感を取ってもらいました。その結果、ひとつの章としての統一性が取れただけでなく、そこで暮らす人々の生活の一部といった、土着的な部分の印象を強めることができたのではないかと思います。
タンタン
シナリオだけではなく、キャラクターに寄り添った楽曲制作を心がけていたんですね!

絵の持つ力

タンタン
宮田裕子さんは推し曲をさらに深堀りしていただけるということでしたね!
作曲者本人の目線として、それぞれどのような楽曲なのか教えて下さい!
宮田裕子
まず『陰謀持つ者との戦役』です!
こちらは、敵対する覆面ライダー達とのバトル時に使用されている楽曲ですが、制作に入る段階で既にイベントシーンの映像があったので、その場の状況や各キャラクターの気持ちの輪郭をはっきりと捉える事が出来ました。
彼らとの対峙シーンから、バトルする流れになるまでの空気感を前半部分で表現し、後半部分で、白熱するバトルの表情を描きました。敵がまだ何者なのかわかっていない状態からバトルが始まるので、何をしてくるのかわからない、彼らは何者なんだ?!というトリッキーさ、怪しさ、なかなか簡単には倒す事が出来なそうな力強さを表現しました!
次に、『伝説の残る村〜ヌア・テ村』です。
この楽曲も、制作開始時に村のコンセプトアートができていたので、PCのデスクトップに村の画像を6枚くらい並べつつ、イメージを膨らませてから制作しました。
非常に神聖な場所という設定で、アートからも湧き出る神々しさに私自身も圧倒されながら、次々に音色のイメージが脳内に溢れました!
ステージに使用されている紋様、色合い、配置されている神具、村長や、ここに住んでいる人々の服装、それぞれが素晴らしくて、絵の持つ力って凄いなと、改めて感じながら制作した楽曲でした。
最後は『粗暴な者たち』です!
一番最初にこの楽曲を聴くのがネルギガンテ戦になると思いますが、とにかく冒頭の部分から強くて荒々しいイメージを出したい!と思い制作しました。大型感も感じられつつ、まくしたてられるようなスピード感を両立させたかったので、低めの弦楽器でざくざくと切り込むようなフレーズをモチーフとして展開させています。
タンタン
ありがとうございます!
開発期間を経たうえでの想いやアピールポイントなどはありますか?
宮田裕子
タイトル制作期間を振り返ると、本当にあっという間でした!
チームに入って、まず資料を読んだりゲームをプレイしたりしながら楽曲の構想を膨らませていきましたが、各拠点の雰囲気がとても素敵で、居心地の良い空間に仕上がっているなという印象でした。また、ストーリーを進めてゆくにつれ自然と感情移入していて、気が付くと泣いていたり……(笑)
それくらい、各キャラクターの持つ個性が豊かで、自分と主人公とを重ねながらストーリーを進めている時も結構ありました。楽曲作りの際、イメージに苦労することなく制作出来たのは、キャラクターや、ゲームのストーリー、世界観にリードしてもらっていた部分が大きいと思います。

また、本タイトルでは『風の絆 ~モンスターハンターストーリーズ2 Version~』『地の緋 天に光に』や、ラスボス戦の曲のオーケストラ収録を行いましたが、そこでの感動も非常に大きかった事を覚えています!
楽曲の表情がみるみるうちに広がっていく過程を現場で見ている時の幸福感と興奮は何ものにも代えがたく、胸が熱くなる瞬間でした!
是非皆様にも聴いて頂きたい楽曲です!

『モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜』をプレイしてくださった皆様、ありがとうございました!
そしてまだプレイされていない皆様、是非機会がありましたら、よろしくお願いします!
また記事を読んでくださった皆様、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
タンタン
宮田祥平さん、鈴木さん、大木さん、宮田裕子さん、ありがとうございました!
『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~ オリジナル・サウンドトラック』は好評発売中です!
また、ゲーム本編では流れなかったサントラ限定のボーナストラックも一部収録しておりますので、ぜひお楽しみに!