INTERVIEW, TOPICS

2019年4月10日

「デビルメイクライ5」サウンドメイキング!~SE編~

こんにちは、タンタンです!
3月8日に発売された「デビルメイクライ5」のサウンドチームに突撃インタビューしてみました!
第2弾は、SE編です!

   ▲DMC5サウンドチームの皆さん
今回お話を聞いたのは、
渥美(サウンドディレクター 下段右)、和田(リードサウンドデザイナー 下段右から3番目)
西田(サウンドデザイナー 下段右から2番目)、江副(サウンドデザイナー 下段左から2番目)
元井(サウンドデザイナー 下段右から4番目)、諏訪(サウンドデザイナー 下段左から3番目)
森口(スタジオエンジニア 下段左)
です!

リアルなだけじゃない!「ホンマっぽい」音作り

タンタン
それではさっそく、効果音について、フォトリアルになった最新作ならではのこだわりを教えてください!
渥美
DMC5では、「リアル」と「外連味」のバランスを大切にしながら制作しています。単純に質量感やサイズ感を突き詰めた音にするとフォトリアルな絵に合う音の表現にはなるのですが、デビルメイクライはド派手で爽快なアクションがウリのゲームなので、ゲームとは全くマッチしないリアルなだけの音になってしまいます。ゲームプレイ中に効果音を聞いてゲンナリしてしまわないよう、リアル過ぎない「ホンマっぽい音」にしているんです。
江副
「ホンマっぽい音」というのは、効果音を作っている時に渥美さんからキーワードとしてよく言われましたね。道中の壊せるオブジェクトの音なんかも、攻撃した瞬間は壊すのが気持ちいいと感じてもらえるようDMCらしい味付けをしています。バラバラになった後の破片は実際にフォーリーステージで音を録って質感をしっかりと出すことで、フォトリアルな絵に合うようにしているんです。
渥美
ちなみに、これはDMC4からなのですが、物を壊した時の破片ってちゃんと1つ1つに散らばる音がついてるんですよ。
タンタン
へえ! 細かいところまで音が鳴っているんですね!
江副
ちょっとしたものにもちゃんと音が付いていると、「質量感」のあるものを切ったという説得力が増して気持ちいいですからね。ちなみに、今作のミッション2の始めてすぐのところに風船があるんですが、その風船はすごく細かいところまで音がついてるんです。
▼風船に隠された「細かいところの音」とは・・・!?
江副
実はあの風船・・・接触したときに、風船同士がぶつかり合う音もつけているんですよ! ぜひ耳をすまして聞いてみてください(笑)
タンタン
そんなところまで!! フォトリアルな背景になったからこそ、そういったこだわりが活きて来るんですね!
諏訪
同じ背景の音だと、他に「環境音」があります。全体の空気感の音、みたいなものです。DMCではフィクションの世界もたくさん出て来ますが、今作はフォトリアルなので、音の方も悪魔がいる世界の温度や湿度、空気の流れ、モノの材質や重さ…等々を如何に「ホンマっぽく」感じさせるかを意識して制作しました。悪魔がひしめいているような禍々しい場所になんて実際には行けないのですが、現実に即した音に加えて、例えば、お肉をぐちゃぐちゃする音や人間の口でぐちゅぐちゅするような不快な音を加工して混ぜることで禍々しさに納得感を持たせているんです。
タンタン
お肉! 環境音じゃない音からも、環境音が出来ているんですね! ほかにも、「ホンマっぽい音」にするためにこだわった箇所をぜひ教えて下さい!
西田
プレイヤーキャラで言いますと、ネロのデビルブレイカーは、ゲーム性と関係ない物体の素材感や変形機構の動きにも音を付ける事によって「パーツが変形する⇒変形した部分から技の動力原に力が蓄えられ⇒結果そこから電流や空間の歪みが発生する」というストーリーを表現するべくチャレンジしました。そういう風に、リアルに存在したら・・・という説得力のある音を作ったうえで、発砲音やエネルギーの射出音などのFXの音を上乗せしていきます。ゲームならではの気持ちよさやカッコ良さとフォトリアルの質感を黄金比でブレンドさせる点に、全力を費やしました。
タンタン
プレイヤーの武器も、リアルさと気持ちよさ、両方大切にしているんですね!
西田
はい。プレイヤーの中でもダンテの武器は実物に近い物が多いので、デザインするのが楽しかったですね! キングケルベロス(ヌンチャクから変形する武器)は、実際のヌンチャクをひたすら振り回して鎖の音・身体との擦り合う動作音・風切音を収録して「ホンマっぽさ」を出しつつ、氷・炎・雷のようなエフェクティブな音をmixしていきました。
▼キングケルベロスの音は実際にヌンチャクを振り回して生まれている
西田
それから、キャバリエーレ(バイク型の双剣)だと、単純な2輪のバイクではなくジェット機の機構を持つようなデザインをされてましたので、バイクのエンジンだけでなく、飛行機のジェットエンジンの音をブレンドして、有り得ないけれども「実際にあったらこうなるよね!」というのを意識してます。
▼ジェット機のような機構もサウンドデザインに活かされている
和田
敵も、「リアルな音」と「そうでない音」両方入れながらバランスを取って作っていますよ。DMC5には多くの敵が一度に登場するので、音でどの敵がどうやって襲い掛かってくるか分かるようにしないといけません。なので、ただリアルなだけではなく、一聴してわかる特徴のある、各敵の特徴・個性をより際立たせるサウンドデザインにするよう努めているんです。それから、〝敵の見た目の変化”もゲームの面白さに関わっているので、そこの部分の表現にも苦労しています。
元井
今作は、部位が壊れたり、怒ったり・・・状態によって行動が変わる敵や、変わった攻撃をする敵がたくさんいますからね。どういう音にして、どういう仕組みにするのか、敵との戦い方を考えながら鳴らし方を考えるのは面白い作業なのですがすごく大変でした。
タンタン
なるほど! 「鳴らし方」でこだわった部分について、詳しく教えてもらえますか!?
元井
個人的に、アルテミスは音の鳴らし方を考えるのが難しい敵でした。アルテミスは沢山の細いビームを出すのですが、あれはカッコよくかわすのが気持ちいいので、近くをかすめた時に風切り音が鳴るようにしているんです。ただ、1本1本のビームに風切り音を鳴らすことでゲームの処理が重くなってしまわないよう、聞こえる距離や、何本に1本だけ音を鳴らす・・・などすごく絶妙に、気持ちよく聞こえるように考えているんです。
和田
それから・・・鳴らし方だと、グリーンエンプーサの羽の音は面白い作り方をしていますよ。強く羽ばたいたり弱って羽が止まったりするんですが、この時、羽が羽ばたく角度よって一つのループ音をシームレスに変化させる形で鳴らしているんです。角度が大きいと元気に羽ばたいてるので高くて速い元気な音、角度が小さいと弱く羽ばたいているので低くて遅い音・・・という風に。
▼羽ばたく角度の大きさで羽音が変化している!
タンタン
音の作り方だけではなく、鳴らし方にまでこだわりがたくさんあるんですね!

映画のようなイベントシーンのサウンドの秘密!

タンタン
今作はまるで映画のようなイベントシーンも魅力でしたが、イベントシーンのサウンドはどういった風に作っているのでしょうか?
森口
イベントシーン担当のサウンドスタッフが、コンポーザーやプレイアブル部分の音を作っているスタッフ、そして社外のフォーリーアーティストの方などとやり取りして音を付けています。そこから、私がMIXの最終調整を行って完成!という形でした。
タンタン
なるほど! 今作ならでは、なポイントはありますか?
森口
今作は、過去の作品よりもゲームとイベントシーンのつながりがより滑らかになっています。具体的には、ゲーム中でクリフォトの根を枯らすとその音が鳴ったままイベントシーンに入ったり・・・あとは、ゲームとイベントシーンのBGMがシームレスにつながっていたり・・・なので、音量もゲームとのバランスが崩れないようにするのが大変でした。
▼ゲーム中の音が途切れず、なめらかにイベントシーンに移行している
タンタン
それは大変そうです! ゲームでカッコイイ音量とイベントシーンでカッコイイ音量は違いますもんね・・・ どうやってゲームとイベントシーンの音量をそろえたんでしょうか?
森口
渥美さんから「ゲームのことは考えなくていいからイベントシーンとしてイイ感じになるように合わせといて! あとはゲームの方で合うようにするから!」と言ってもらったので、こちらはイベントシーン単体で気持ちよく聞こえることに集中することが出来ました。
渥美
あとはゲーム側でシーンごとに細かく調整しました。全シーン分なので大変な作業ですが、しっかり調整したおかげで「ムービーに入ったら音が小さい!」「音の雰囲気が変わる!」みたいなこともなく、なめらかで自然なつながりになりました。

こだわりのハリウッドサウンド!

タンタン
効果音作りで、何か印象的だったことなどはありますか?
渥美
思い出深いエピソードだらけですが、個人的には子供が産まれた事が一番大きい出来事です。仕事がとてつもなく忙しい時期だったので、仕事と子育てに忙殺されていました。どちらもとても楽しい事だったので何とか乗り越えられましたが。
元井
そういえばお子さんが産まれた頃に1か月くらい海外のスタジオに収録に行かれてましたよね!
タンタン
1か月も海外収録していたのですか!?
渥美
今回のイベントシーンは身体や、口、表情の動きを先に撮影し、その後ボイス収録をする作り方でした。なので、声優さんの声の演技がどれだけ良くても、口の動きに合っていなかったらやり直し・・・その逆でもやり直し・・・と、とっても時間がかかりましたが、その苦労の分とても良い物になりましたよ。
和田
ちなみに、DMC5では「英語のボイスを録りに行く」だけではなく、効果音制作でもハリウッドのスタジオに出張しているんですよ。
タンタン
効果音制作でもですか!?
和田
はい。いくつかの音をハリウッドのスタジオにも手伝ってもらっているんです。具体的には、敵の音や、ネロのバスター、ダンテのキャバリエーレなどですね。
西田
Vの魔獣達の声もハリウッドのスタジオで作って頂きましたよね。Vは新キャラなのでどういう方向性で作ってもらうのか、本当に難しかったです・・。シャドウは魔獣っぽくサウンドデザインして頂いたのですが、獰猛さだけでなく、ネコなで声のようなゴロゴロしたようなニュアンスも入っているんで、私とても気に入っているんですよ!
▼シャドウの声もハリウッドのスタジオの力を借りて制作している
和田
もちろん全てではありませんが、ここは!と思うところで、ハリウッドの力を借りているんですよ。私は、その監修のために、はるばるハリウッドのスタジオまで伺っていたのです。最近はハリウッド製サウンド!といっても驚かなくなってきましたが、実はカプコンがハリウッドのサウンドスタジオに効果音の制作を依頼したのは初代のデビルメイクライが初めてだったんですよ。今からもう約20年前になりますが、その時に聞いたサウンドの出来が素晴らしくとても印象深かったので、今回も是非にと当時と同じ方に制作の依頼をしました。
タンタン
効果音の監修ですか!
和田
まずは、事前にゲームの世界観、求めているサウンドをしっかりと話しあって、それからクリーチャーの特徴や、求める音像についてディスカッションを重ねていきました。・・・そして、大まかな方向性が決定した後、最終調整として私がハリウッドのスタジオに行って、あちらのサウンドデザイナーの方と共に音の最終調整をしました。
タンタン
なるほど!  でも、わざわざハリウッドまで行くんですね! データをもらうだけじゃダメなんでしょうか?
和田
はい。メールなどデータのやりとりだけだと、どうしても音の細部に妥協せざるをえなくなります。「音」というのは聞く環境でかなり変化するんです。彼らが彼らのスタジオで作っている音を私たちの環境で再生しても、彼らが聞いている音とまったく同じにはなりません。もちろん、同じ機材、同じスピーカーで再生すればかぎりなく近くなるかもしれませんが、それでも音を再生する部屋、湿度によっても音は聞こえ方が変わってくるんです。ですから、実際にその場所に行き、実際にサウンドデザイナーと同じ環境で同じ「音」を共有し、求めている音を仕上げていくことが重要だと考えます。それに彼らと話ていて思いつくアイデアもたくさんあるので、それらを現場で音に盛り込んでいく過程が最高にクリエイティブで楽しい時間ですね。
タンタン
すごく綿密な調整をしながら、ハリウッドの音を取り入れているんですね!
和田
はい。今回の制作でもハリウッドの力を借りつつ、私たちの制作の刺激にもなったので、映画のようにスタイリッシュなゲームにふさわしい音になったんじゃないかと思います。ぜひ、ハリウッドと日本の力を合わせたサウンドを、いつもより少し耳を澄ませてじっくり聞いてみてください!

サウンドチームの皆さんから一言!(SE編)

タンタン
最後にこの記事を読んでくれている皆さんに向けて、何か一言お願いします!
渥美
カッコ良くて楽しくて熱い体験が出来る最高のアクションゲームです。是非遊んでください! そしてサウンドによって、よりカッコ良くて楽しくて熱い体験をしていただけると幸いです。
タンタン
DMC5のカッコイイサウンドのヒミツを聞くことが出来ました! DMC5サウンドチームの皆さん、ありがとうございました!

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