INTERVIEW

2025年6月13日

『カプコン ファイティング コレクション2』ただの移植で終わらせないのがカプコンサウンドチーム!

『カプコン ファイティング コレクション2』サントラ発売記念!
サウンドの取り組みについて、メンバーからご紹介!

今回解説をしてくれた『カプコン ファイティング コレクション2』サウンドメンバーのお二人
辻野(サウンドディレクター 写真右)
亀田(リードコンポーザー 写真左)

『カプコン ファイティング コレクション2』とは?

辻野
『カプコン ファイティング コレクション2』は

『CAPCOM VS. SNK MILLENNIUM FIGHT 2000 PRO』
『CAPCOM VS. SNK 2: Millionaire Fighting 2001』
『CAPCOM FIGHTING JAM』
『STREET FIGHTR ZERO3 UPPER』
『パワーストーン』
『パワーストーン2』
『燃えろ!ジャスティス学園』
『STAR GLADIATOR 2 : NIGHTMARE OF BILSTEIN』


が1パックになった作品です。

私は『CAPCOM VS. SNK』などが出た当時「え?CAPCOMとSNKがコラボ!?」と衝撃を受け、よくゲームセンターで遊んでいた時代の人なので、今回のお仕事は感慨深いものがありました!

サウンド再現度は99%

辻野
本タイトル『カプコン ファイティング コレクション2』に収録されているサウンドでは、過去に残された資料を元に、リードコンポーザーの亀田さんや凄腕のプログラマさんと綿密に打ち合わせたうえで、一つ一つSE(効果音)の再現を行っています。
もちろん当時の先輩方が残した偉大な音は継承されていくのですが、音のピッチの再現や音量調整、このSEが鳴ったらこっちのSEは止めるといった発音優先管理、一度に発音できる数をオリジナルと合わせる同時発音数など、システムやキャラクターのSEからBGMの発音、タイトルコールのSEに至るまですべて行いました。
そもそもデータが残っていない音や、資料不足などで合っているかが不明なものについては自社に残っている基板からの収録も行いました。
調整後のゲームに対しては、品質管理部が細かくチェックしたうえで仕上げていきます。
これは自信をもって誇れるのですが、8タイトル合わせて何千とあるSEやBGMを一つ一つ紐解いていった結果、サウンド再現度は99%といったところまで持ってこれたように思います。
その昔、どのタイトルもコイン握りしめて遊んでいたゲームを、バラバラにした状態から組み上げることができるなんて夢のような仕事でしたね。
もちろん大変なこともありましたが、とても楽しかったです。(笑)

BGMはとにかくド派手に!

亀田
当初、メインテーマ曲はインスト曲にする予定だったのですが、ダメもとで歌ものを作り、『STREET FIGHTER 6』のプロデューサーである松本さんに聴いてもらったところ、「むしろありがとうございます!」とお礼のお言葉を頂戴しました。(笑)
『STREET FIGHTER 6』発売後はメディアや大会などで露出する場面が多く、アイコンとなる楽曲となりそうで助かるとのことで、無事本採用になりました。

また、僕のところに話がきたときから『CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001』と『燃えろ!ジャスティス学園』、『パワーストーン2』の楽曲を全てアレンジをするという企画で、かつアレンジの内容はサウンドにお任せするというお話でスタートしました。
当然MIDIデータや譜面などは何もないので耳コピで制作するのですが、ただアレンジをするだけというのも味気ないので、現代風にするのはもちろんのこと、「当時のファンの皆様にも喜んでいただける曲にしたい!」という想いもあり、悩んだ末に「大胆アレンジ+国内外の著名アーティストによるアレンジ曲」というコンセプトにたどり着き、ディレクターや企画の方に提案しました。

アレンジに関しては、各楽曲を担当いただく社内外のコンポーザーさんに、「とにかくド派手にやってください!」と発注した記憶があります。(笑)
昨今、没入感を大切にしているゲームが多いゆえに、あまり主張しすぎないBGMを作ることが多くなってきておりますが、ここはあえてアーティスト性を十分に発揮していただき、「主張しすぎくらいで丁度イイ」ように調整していただきましたので、当時の遊んでいた感覚を損なわずに、新たな気持で楽しんでいただけるような形になったと思います。
さらに皆様気になっているところかと思いますが、なんと今作ではあの国内外のアーティストとも広くコラボされているシェーン・ガラース氏にご参加いただきました!
ドラマーとしてだけでなく、まさかアレンジャーとしても一緒にお仕事ができるとは思ってもみなかったのですが、今回カプコンとの縁もあって特別にご協力いただくことができ、改めて本当に豪華なアレンジになったと思います。
ご本人は大変気さくな方で、こちらの要望にも真摯にご対応いただきましたし、加えて仕事が早いのなんの!
一流のプロは違うなと、僕自身も貴重な経験をさせていただきました。

動画が公開されたときは皆様びっくりされたのではないでしょうか。
「まさかあの!?」という反応がSNSでも多く見られて、心のなかでガッツポーズしてしまいました(笑)
動画では実際のセッションや機材まで包み隠さず公開されてますので、まだご覧になっていない方は下記URLよりチェックしてくださいませ!

■シェーン・ガラース氏のYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@Innisfailman

■各種演奏動画
https://www.youtube.com/watch?v=RtGtLpk8P00
https://www.youtube.com/watch?v=wxEClcWtjao
https://www.youtube.com/watch?v=v2vlWY8uKSU

他にも数々の著名アーティストにご参加いただいております!
そんな豪華アレンジ曲が盛り沢山な『カプコン ファイティング コレクション2』ですが、サウンドトラックも配信が開始されております!
こちらもぜひお見逃し無く!

『カプコン ファイティング コレクション2』サウンドトラック配信・販売ページ
https://capcom.lnk.to/CapcomFightingCollection2

また簡単にではありますが、今回このタイトルに携わっていただいたアーティストの方々をご紹介させていただきます。
よろしければぜひチェックしてみてください!

「温故知新」の効果音

辻野
「ver.2K25(2025年版)」のサウンドを作るにあたり、頭にあったのは「温故知新」で、古き良きを残しつつ、新しい表現(音)もいれるといったコンセプトがありました。
ここでは温故知新の四字熟語本来の意味とは少し異なりますが、テーマ的な意味合いと捉えてください。

先ほどでも触れられている通り、BGMは純粋にオリジナルの良さや世界観、ジャンルなどを踏襲し、耳に残るメロディは残していくという方向性でした。
それに対してSEはどう向き合うか、結構悩みました。

「ver.2K25」のBGMはオリジナルに対してよりHI-Fi(高音質)かつダイナミクスレンジ(音量差)が広く、低音の迫力も増しているため、そこにオリジナルのSEを合わせてしまうと「音質の差」が顕著に出ます。
これは私の考えている温故知新ではありません。
「ver.2K25」のBGMに対してオリジナルのSEが取り残されてしまった感じがして、ゲームをプレイしていても違和感が残るわけです。

となれば作るしかない、となるのがカプコン・サウンドチームの真骨頂ですね。
完成に至るまでの制作工程は以下の通りでした。

①全SEをイチから作る

要するに、打撃のヒットからダメージやカウントアップの音まで、何から何まで全部作り変えてみました。
いざゲーム内にSEを実装!プレイ!

「あれ…なんかキモチワルイ…楽しくない…キモチヨクナイ…。」

確かにBGMとの親和性は取れたのですが、「全く別ゲーやん」となったわけです。
これでは先述した温故知新ではなく、ただなんか音が今っぽくなっただけでダメだと判断しました。
全部新しいSEにするのはオリジナルを全然リスペクトできておらず、違うという結論に至ったわけです。

②オリジナルSEと混ぜて世界観の整合性を取る

ここで思いついた次の策が、「オリジナルのSEを新しく作ったSEと混ぜる」という方法です。
これにより「〇〇のあの音はこうだよね」という、思い出に残る記憶による補正が見事にマッチし、原作固有の音のイメージを損なうことなく、「ver.2K25」のBGMとの親和性を強めることができました。

③時代感の踏襲

音にも実は流行があり、ここを外すと次は絵に合わなくなってくることがわかりました。
ひとつ例を挙げると、『パワーストーン2』のSEで大岩が転がってきたり崩れたりという音があるのですが、これは「ver.2K25」にしてもオリジナルのSEのままで変更していません。
手抜きなのか? コスト削減なのか? 違います。(笑)
この音が『パワーストーン2』の世界観に必要な音だからこそ、意図的に変更していません。
また、オリジナルのSEを制作した先人へのリスペクトでもあります。
「ver.2K25」にできる『パワーストーン2』『CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001』『燃えろ!ジャスティス学園』の3タイトルそれぞれでオリジナルのSEを残している箇所は違いますが、特定のカテゴリに対してこの方針を適用しています。
SNKさんの制作されたSEやボイスについても同様に、リスペクトの意図で一切手を加えずオリジナルのものを使用しています。

①②③をバランスよく配合できたと思っていますし、「ver.2K25」のサウンドはこだわりにこだわった仕上がりになっています。
上記の理由から、「ver.2K25」のBGMとSEは「セットでしか」選ぶことができないようにしています。
BGMは「ver.2k25」、SEは完全にオリジナル、という選択はできません。
これはブーイング覚悟のうえで行っています。
BGMとSEはセットで「ver.2K25」のサウンドを楽しんでいただければと思います。
 

今回は『カプコン ファイティング コレクション2』のサウンドコンセプトについて紹介してもらいました! 次回もぜひお楽しみに~!