INTERVIEW

2013年8月6日

逆転裁判5 発売記念サウンドスタッフインタビュー!

逆転裁判5は面白い!もちろんサウンドも面白い! もう逆転裁判のことしか考えられない!賛成の反対!異議あり!異議なし! 今回は座談会形式でお送りいたします!待った!なし!

新鮮味を感じられるよう効果音を一新したいと考えました

DJ SANDOU
本日はSD(サウンドディレクター)と SE(サウンドデザイナー=効果音担当)担当者に集まってもらいました! 逆転裁判最高! 本作でご担当された業務内容をお教えくださいませ!
SD
サウンドディレクターとして、BGMを始めサウンド全体のディレクションと制作進行、 それに外部協力会社様との交渉などマネジメントも担当しました。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! プロジェクトマネージャー的な仕事もされてたんですね! サウンドディレクターの仕事の幅は広いですね!
SE
サウンドデザイナーとして効果音の作成を担当しました。 ゲーム本編だけでなくアニメパートや宣伝用のプロモーションビデオのMAも担当しました。
DJ SANDOU
素晴らしい!つまりBGM以外の音の鳴る部分全般の製作ですね! そうそう!開発時期が私が担当していた「レイトン教授VS逆転裁判」と被っておりまして、 しかも開発している席が隣同士なんで、 当時「異議あり!」を互いに鳴らしまくってましたね(笑) では、サウンド面での演出やシステム等で特にこだわった部分をお教えください!
SD
逆転裁判シリーズの主な効果音は、初代から逆転裁判4まで同じ音が受け継がれてきました。 しかし、数年ぶりの新作ということで、新ハードにふさわしいクオリティ、 そして新鮮味を感じられるよう効果音を一新したいと考えました。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! 一新ですか!これは勇気がいる決断だったと思います! とはいうものの、今までのシリーズの音の雰囲気を踏襲していて非常に良いと思いますよ! 正当進化とでも呼べるサウンドだと思います!
SE
そうなんです! 逆転裁判シリーズのファンの方にも、初めて逆転裁判をプレイなさった方にも、 どちらにも満足していただける音作りをすることにこだわりました! ファンの方々には「逆転らしさが残っていてうれしい!」と思って頂けると同時に、 「いろいろ変わっててすごい!」と感じて頂けることを、 そして新規プレイヤーの方々には 「逆転裁判のサウンドってなかなかユニークで面白いよね!」と 感じてもらうことを目標にしました。

新要素については「新しい!すごい!面白い!」と
感じて頂けると思います

DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! 素晴らしいですね!私もそう思います! では「逆転らしさへのこだわり」とは何でしょう?
SE
例えば、キャラのモーションSE(動きに合わせてつけるSE)は、 最近ではキャラのリアルな動きを表現し、臨場感を出すためにつけることが多いです。 しかし、逆転裁判でのモーションは、それよりも、キャラクターの特徴を印象付けるための、 いわば「漫画的な記号」のようなものに重きを置かれていると考えています。 そこで、SEにおいてもこの「特徴」を端的に表すことのできるモーションをチョイスし、 それを目立たせるために他のモーションには音はなるべくつけず、 かつユニークな音にすることよって「逆転裁判らしさ」を表現することにこだわりました。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! そうですね、音数が増えれば増えるほど 大事なSEの印象が薄れちゃうというのはありますね! まさに一球入魂!一音入魂!
SE
しかし、今作から新たに加わった「ココロスコープ」などの新しい遊び要素やアニメパート、 そしてさらに面白い動きをするようになった 追いつめられた証人の豹変やブレイクなどについては、 新しくなった感を存分に感じて頂けるように、 今までの逆転裁判にはなかったような凝った音の作成と付け方にこだわりました。 これらの新要素についてはきっと「新しい!すごい!面白い!」と感じて頂けると思います。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! いつもながらブレイクの表現は楽しみです! すっかり逆転裁判の1つの醍醐味となっておりますね! そうそう!ヘッドホンでプレイする時の調整を色々やってましたよね?
SD
おっ!きましたね! 携帯ゲーム機の場合、サウンド、特にBGMの聴こえ方の調整を 内蔵スピーカーに合わせるのか、 それともヘッドホンに合わせるのか、悩ましいところがあります。 逆転裁判5では、基本的にニンテンドー3DSのスピーカーに合わせて 音の調整をしているのですが、ヘッドホンでも心地よく音が聴けるよう、 ヘッドホンをニンテンドー3DSに挿した瞬間に、 ヘッドホンに最適の音質に自動的に調整する機能を搭載しています。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! そこはコダワリですね! 正にスピーカーとヘッドフォンの二刀流! 大谷選手も真っ青かもしれませんね!

逆転らしさを残しつつ新しくなった感が出せました

DJ SANDOU
では! 今までのSEを全て作り直したことについて、先ほども話題にあがりましたが、 一番皆様が興味深いところだと思いますので更に掘り下げて聞いちゃいます! SD視点から見て良かった点、苦労した点等、お教え頂けますでしょうか?
SD
効果音を作り始めた当初は、あえて既存の音とは多少イメージの違う音にしていました。 たとえば木槌の音などがそうで、これは最初に作ったものが製品版に収められています。 逆に、チームから既存の音とあまりイメージを変えないでほしいと リクエストされた音もあって、それらはできるだけ元の音に近付けてあります。 結果的に、既存の効果音とそっくりのものもあれば 雰囲気が新しくなった効果音もあるのですが、 これは、逆転裁判5の、一見2Dに見える3Dのグラフィック表現と 親和性が高いものだと感じています。 それに、音(波形)としてはどれもクオリティが大きく上がっています。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! チーム一丸で出した答え!コダワリですね! では!実際に製作されたサウンドデザイナー視点でのお話をお願いします!
SE
良かった点は「逆転らしさを残しつつ新しくなった感が出せた」ということです。 先ほども申しましたとおり、「逆転らしさを壊さないようにしよう」という 考えのもとで各SEを入れていくことにしたのですが、 前作までの音データをそのまま流用するのには抵抗がありました。 それは、その音データのサンプリングレートが極端に低い (簡単に説明すると音質がザラついていてクリアではないこと。 しかし逆に味があるサウンドともいえるのだ!) など、3DSの音データとして使用するには少々ふさわしくないというか …まあ、難があったからです。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん!
SE
そこでとった方法は、その前作の音そっくりに音を一から作り直すということでした。 いわば、SEの耳コピです。 この耳コピには苦労しました。 例えば、セリフ表示時の「ポポポ音」は実はあれは聞くと ひとつの「ポ」という音にしか聞こえませんが、 詳しく解析すると4つの音程の音が連続で一瞬のうちに演奏されているのです。 その音程と使用している音源波形、音の長さを詳細に調べる必要がありました。 幸い私はおっさん(笑)ですので、 昔のゲーム音響制作でよく使った手法を活用して作成しました。 具体的にはシンセのオシレータで生成した単純波形をMIDIで制御して作成しています。 ゲームのスペックが激しく進化した今でも、 こういう手法でSEを作れたことが楽しかったです。
SE
また、前作までの音データはサンプリングレートが低いだけでなく、 少ないメモリを有効活用するためにループサイズが極端に短かったり、 余韻をバッサリとカットしてあったりして、 いかにも『レトロなゲームサウンド』という感じでした。 そこでこのような音でも 「あえて変えちゃったほうがきっとよくなる!」と判断したものはリニューアルしました。 具体的には木槌の音やざわめきなどです。 このような音で他の開発スタッフから「音が変わっておかしい」と言われなかったものは 自分の「新しくなった感を出す」という判断に手ごたえを感じていたのですが、 やはり「どうしても違和感がある」とリテイクを受け、 従来の音に限りなく近づけた音もあります。 このような音に関しても全部耳コピしました。 どちらかというとポポポ音などの電子音系のSEよりこういう音の耳コピの方が苦労しました。 逆に新規で作成するSEに関しては自由にやらせていただいたので、 短時間でサクサクと作成できて楽しかったです。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! いい仕事しましたね!って感じですね! ホントに御苦労様でした!素晴らしい! では!今作からの新しい試みである声優さんによるキャラクターボイスに関しまして 何かありましたらお話を聞かせてください!
SD
これまで逆転裁判シリーズでは 社内のスタッフが「異議あり!」などのボイスを演じていました。 これは逆転裁判らしい独特の「手作り感」につながっていたと思います。 逆転裁判5では、アニメパートの導入ということもあり、 ゲーム中のボイスもすべてプロの声優さんにお願いしています。 これまでの「手作り感」とどちらがよいというわけでもありませんが、 従来にはない豪華さは出ていますね。

どんなタイプの音楽も完成度がとても高いので
新しい曲を聴くたびにいつも驚かされます

DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! では!BGMに関して新曲と旧曲のアレンジの使い方やこだわり、 今回BGMを担当された岩垂さんに関してのお話がありましたらお話を聞かせてください!
SD
岩垂徳行さんは、どんなタイプの音楽も完成度がとても高いので、 新しい曲を聴くたびにいつも驚かされます。 それに一曲ごとの作り込みやこだわりも大きく、 時にはご自身で生楽器を演奏して曲に盛り込むこともあります。 ゲーム制作の終盤には、岩垂さんの仕事場で、 一曲ずつニンテンドー3DSからの発音を確認しながら丁寧に仕上げていきました。 法廷パートの曲は、これまでのシリーズの曲の基本イメージを大事にしながらも、 ストリーム音源ならではの豪華なアレンジになっています。 探偵パートの新曲や新登場のキャラクターのテーマ曲も、 岩垂さんらしく、オケ、ジャズ、ロック、和風と非常にバラエティに富んでいます。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! ですよね!全てナイスな逆転サウンドに仕上がっていると思いますよ! では!!! お二人の本作でのサウンド的な見せ場をお教え頂けますでしょうか?
SD
BGMはどれも完成度が高く聴き応えがあるのですが、 一曲だけ選ぶとすると、新ゲームシステム「ココロスコープ」の曲です。 リリカルなピアノと幻想的なシンセパッドと打ち込みリズムが混然と絡み合う、 音楽的に非常におもしろい曲です。
SE
先ほども少し触れましたが、今回逆転裁判ではお約束となっております 証人が追い詰められて豹変したりブレイクするところはかなりパワーアップしております。 SEもかなり気合いを入れて作成しました。 このシーンはまさに逆転裁判ならではの面白さを存分に楽しんで頂けると思います。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! では!アニメパートについても一言お願いします!
SE
おっ!アニメパートですね! ここではゲーム本編では表現できないような迫力ある演出がたくさんされております。 普通、ゲーム本編とカットシーンで あまりにもイメージがかけ離れているのはあまりよくないのですが、 逆転裁判だけは別です!! フルボイス、派手な効果音と興奮するBGMによる新しい逆転裁判の世界を楽しんでください! また、今回の新要素である「ココロスコープ」や「カンガエルート」では、 これまでとは一線を画したサイバーでスピード感のある音に仕上げました。 ここにおいても新作逆転裁判の「新しい感」を味わっていただけると思います。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! アニメパートはじっくり楽しんで欲しいですね!

すべての音を
ゲームの最初から最後までしっかりと作り込んだつもりです

DJ SANDOU
では!では! CAP’STONEをご覧の皆様だけにこっそり教える制作秘話、等ございましたら お教え頂けますでしょうか?
SD
第1話に登場する、しのぶの咳き込む声ですが、 これは社内スタッフの声を録音したものを加工して使っています。 声優さんにも咳き込む声を演じていただいたのですが、 最終的に社内スタッフの声が選ばれました。
DJ SANDOU
これは!貴重な情報ありがとうございます! すっごくキュートな咳ですね! コホン!コホン! 最後に本作をプレイして頂いているユーザーの皆様へ向けて一言お願い致します。
SD
まだ序盤を遊んでいる人もいれば、 もしかすると終盤に差しかかっている人もいるかもしれませんが、 すべての音楽、すべての効果音を、 ゲームの最初から最後までしっかりと作り込んだつもりです。 逆転裁判シリーズは、初代が発売されてから12年、 逆転裁判4が発売されてからも6年の歳月が流れています。 シナリオもグラフィックもサウンドも、 6年ぶりの新作、という期待に十二分に応えられる内容だと 感じ取ってもらえたら嬉しいです。
SE
逆転裁判5、いかがでしょうか? ずっと待ちわびてこられたファンの方にも、 今作で初めて逆転裁判に触れられた方にも、 どちらにも満足していただけるような音を構築するのにとことんこだわりました。 ぜひご意見をいただければ、 どんどん新しいサウンド演出にもチャレンジしていきたいと思いますので、 ぜひご愛顧のほどよろしくお願いします。
DJ SANDOU
なるほど!なるほど!ナルホドくん! ホントにありがとうございました! 是非楽しんでプレイしてもらいたいですね! 逆転裁判最高!
DJ SANDOU
最後にシナリオディレクターの山崎さんからコメント頂きました!(^ω^)
山崎
こんにちは! 『逆転裁判5』シナリオディレクターの山崎です。
今回は、カプストーンさんにちょっとだけお邪魔させていただきます!
サウンドスタッフのインタビューは、読んでいただけましたでしょうか?
2人の並々ならぬ《コダワリ》の感じられる内容でしたね。
BGMとSEの制作裏話は、インタビューで語り尽くされてしまったので、
ここでは、サウンドスタッフが作ってくれた音を使って
ゲームを演出する側の《コダワリ》について書かせていただきたいと思います。
ゲームにおいて、BGMとSEはとてもとても重要です。(あたりまえですが!)
“音の演出”で、ゲームは何倍も面白くなります!
例えば‥‥ 《尋問》でムジュンの指摘に成功すると、「異議あり!」のSEとともにBGMがストップします。
静寂がとても気持ちの良い瞬間です。
初代逆転裁判で生み出されたこの“音の演出”。
今では当たり前になっていますが、すばらしい発明だと思います。
逆転シリーズを通して変えてはいけない伝統です。
山崎
そして、是非注目してみてほしいのは、
この後‥‥ 「次に、どのタイミングで何の曲が流れるか?」です。
これが、意外と悩みどころなんです。
BGMもSEも、ゲームを遊んでいるユーザーさんのテンションと
リンクするタイミングで鳴らさなければ、効果が半減してしまうんです。
逆に、「ここであの曲がかかってほしい!」というところでピッタリと音を鳴らすことができれば、
演出の効果は何倍にもなります。
このタイミングこそが、演出の担当者が一番大事にしている《コダワリ》ポイントです。
ムジュン指摘に成功した後は、各キャラクターの法廷でのテーマ曲を流すのが王道ですが、
実はいつもそうなっているわけではありません。
シーンに合わせて曲を変えているんです。
熱く証人を追いつめていく展開ならば、いきなり「追求」と呼ばれる一番アップテンポな曲が流れます。
主人公がクールに推理を披露する場面ならば、「ロジック」と呼ばれる曲が流れることもあります。あるいは、もっと“変化球”の曲が流れることもあります。
さらに、BGMの演出をつけるときはそのシーンの前後の流れもちゃんと把握しておかないといけません。
BGMの演出はコース料理と同じで、
「前菜→スープ→メインディッシュ→デザート」という順番とバランスが大切です。
そのシーンに合う曲だけを考えてつけていると
ずっと盛り上がる「追求曲」ばっかり使っちゃったりするんです。
コース料理で言うなら
「前菜→メインディッシュ→メインディッシュ→メインディッシュ→胃もたれ」状態です。
シーンに合わせた曲を選びつつ、その前後の曲の流れも計算しながら演出をつけていると、
1曲BGMを差し替えるだけで、それに連鎖して全体のBGMの構成が変わってきます。
曲を切り替えながら、一番良い組み合わせを探す作業は、まるでパズルのようです。
「ここであの曲を使いたいけど、直前でも使ってるから使えないじゃん! 考え直しだ!」
なんて頭を抱えることもしばしば。
何度も何度もやり直して、パズルの答えを探していきます。
演出担当者が時間をかけて《コダワリ》ぬいてくれた結果、
どんなタイミングで音の演出が入っているのか‥‥
BGMとSEが流れるタイミングを気にしながらプレイしてみても面白いと思いますよ。
法廷バトルの盛り上がりのヒミツが分かるかもしれません!
そんなこんなで、数々の《コダワリ》が詰まっている『逆転裁判5』のBGMとSEたち。
それらが、みなさんの耳を楽しませることができたら、
こんなに嬉しいことはありません。
是非、BGMとSEにも注目しながら、ゲームをプレイしてみてくださいね! それでは、今回はこのへんで失礼します。 お邪魔しました!