Her family.

その日、ローレンは小学校の作文と格闘していた。
厳しいことで有名な国語のサラ先生から与えられたテーマは、「わたしの家族」。
ローレンは、頬杖をついて天井を見上げ、床につかない足をぶらぶらさせながら
考えていた。

ローレンには、大切な家族が3人いる。
ママと、うさぎのキケロ、それからエミリおばさん。

キケロは、5歳の誕生日にママがくれたぬいぐるみで、白くてふわふわしていて、
耳のところだけピンクのサテンでできている、とても素敵なうさぎだ。
エミリおばさんは、ママが仕事でいない間、家の手伝いに来てくれる人だ。
とってもやさしくて、歌が上手。裁縫も得意で、かばんでもワンピースでも、
ローレンが欲しいものはなんでも作ってくれる。
その上、おばさんの作るごはんはすごくおいしい。
学校から帰ってきたローレンが、夕方の料理番組を見て、
「おいしそう!」
とつぶやいたメニューは、次の日、必ず食卓に並んだ。
以前、ママにそのことを話したら、
「ローレンとエミリさんが仲良くしてくれて、ママ嬉しいわ」
と笑っていたが、その笑顔はちょっぴりさみしそうだった。
ローレンはママの顔をのぞきこんで、
「ママ、一番はもちろんママだよ!」
と真顔で言った。
「お歌が下手でも、アップリケつけられなくても、ごはんがちょっとかたくても、
そんなの関係ない! ママが一番だよ!
ママみたいに強くてクールなお母さんはいないもの!
手品がたくさんできるし、それに前に強盗にケリ入れたとき・・・」

「ローレンったら」
ママは、すばやくローレンの唇に指を当てた。
「ケリなんてどこで覚えたの? そんな言葉は使っちゃだめよ」
口元は笑っているけど、ママが片目だけ細めるときは怒っているときだ。
「ごめんなさい」
しゅんとしてローレンは謝った。
男の子でも女の子でも、汚い言葉は使っちゃだめ。というのが、ママの口癖だった。
ローレンもそれはよく理解しているつもりだったが、どれが汚い言葉なのか、
ローレンはちょくちょくわからなくなってしまう。
「えっと・・・、ママが強盗を蹴って、強盗がカウンターの向こうに飛んでいったときも
すごくカッコよかった、って言いたかったの」

「そう、ありがとう」
ママはにっこり笑うと、やさしくローレンの頭を撫でた。
ローレンは、頭を撫でてくれるときのママの手が大好きだった。
あたたかくて、ふんわりしていて、 まるでだっこされているかのような安心感だった。
「あのねママ。わたし、ママみたいになりたいな」
そう言うと、ママは片方の眉を上げ、いたずらっぽく首を傾げた。
「あら、でもママはお歌は下手だし、アップリケはつけられないし、
ごはんもおいしく作れないのよ?」

「エミリおばさんがいてくれるから大丈夫だもん!」
それに、とローレンは続けた。
「わたしがママみたいに強くなったら、一緒にお仕事できるでしょ?」
「ローレン・・・」
ママは何度かぱちくりとまばたきをしてから、うれしそうに微笑んだ。
「そうね。ローレンが大きくなってもそうしたかったら、一緒にお仕事しましょうか。
きっと楽しいわ」

ローレンはまるい目を大きく開いたかと思うと、すぐに満面の笑みをうかべて
「絶対よ!」
と、ママのおでこに自分のおでこをコツンとぶつけた。
ママがそっと目を閉じたので、ローレンも目を閉じると、いつものママのにおいがした。
やさしい花の香りだ。
我慢できず目を開けると、ローレンはそのままぎゅっとママに抱きついて、
その香りを思いっきり吸い込んだ。
「ママ、だいすき!」
「ママもローレンが大好きよ」

・・・思い出せば思い出すほど、玄関でママの帰りを待っていたい気持ちに駆られたが、ローレンはぐっとこらえた。
「早く作文を書いて、ママが帰ってきたら読んであげようっと!」
うれしそうに言うと、ローレンはさっそくペンを走らせた。

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