インタビュー

ベスト版『大神 絶景版』発売記念特別インタビュー

1月29日(木)「大神 絶景版 PlayStation 3 the Best」発売を記念し、カプコン公式ファンサイト「マイカプコン」のコラム「カプコン伝説」の「大神絵師インタビュー」完全版をここに掲載!

大神絵師:島崎 麻里氏インタビュー

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発注が無かったアニメパターン

――島崎さんは大神開発には、どのような経緯で関わったのでしょうか?

島崎:はい、もともとはカプコンに入社したのですが、ゲーム制作が1本終わった段階で、クローバースタジオに移籍しました。
新人2年目の頃だったと思います。

当時は背景デザイナーでしたが、吉村健一郎さんの推薦で『大神』開発からキャラクター班に転属となりました。
急なお話だったもので、背景デザイナーの上司の片貝さんからは、「いつ戻ってくるの?」と言われながらの異動でしたね(笑)。

――実際の大神開発チームはいかがでしたか?

島崎:神谷ディレクターのチームは初めてでしたが、実は入社直後の新人研修プログラムとして開発現場見学というものがあり、その時の自分のグループの案内人が、神谷さんでした。
そこで当時『ビューティフルジョー』チームの制作現場などを見学させていただいたのですが、神谷さんのゲームの持つインパクトにやられ、いつかチームに参加したいと思っていたので、緊張しつつも、楽しみな気持ちの方が大きかったことを憶えています。

――なるほど!願いがかなった形の転属だったのですね。実際、開発に入ってからの印象深い出来事などはありましたか?

島崎:サクヤの雲羽衣のアニメーションパターン制作は思い出深いです。
動かしたら見た目楽しいだろうと、"勝手に"張り切って作り始めたのですが、慣れなくて、全然イメージ通りにいかず…
…ものの見事に、未熟な自分の首を絞めました(笑)。

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ご神木「コノハナ様」の精霊であるサクヤ姫。
首まわり、雲羽衣が渦巻きゆらめくアニメーションパターンも必見です。

――"勝手に"動かす形を作ったんですね(笑)。

島崎:(笑)ただ、竹安さんのコメントでもありましたが、この「発注も無いのに作って」というパターンが、『大神』の制作現場には多かった気がします。
とても贅沢なお話なのですが、必要最低限のみを作るというのではなく、開発担当の個々人が「こういうものあったら、面白いだろう」と考えたものを試みることができました。
あの現場の空気感なども、最終的に作品の世界観を深めたひとつの要因では……と感じさせられた現場でした。

――それはクリエイティブな現場ですね!

島崎:もちろん制作後半ではまとめに入らなければならないので、それどころではなくなりますが…。
後半、神谷さんをはじめとする諸先輩方の手によって、それまでに作ったものがどんどん繋げられゲームとして仕上がっていく過程は、新人の自分にとってすごく勉強になりましたね。

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開発のノリの良さが、随所に感じられる『大神』の世界。
そういったノリも含めて、『大神』というゲームの質へと昇華されています。

島崎:あとバグチェックの際、演出がすべて入った状態でのスサノオとクシナダの最後のくだりをプレイした時に、素で感動してしまって……。
まわりに分からないように鼻をすすっていたのですが、まさにその瞬間、「バグ出たから修正して」と先輩からバグシートを渡され、泣き顔のまま受け取るという、気まずい思い出もありました(笑)。
あの神谷ディレクターの風貌からは想像つかない優しいお話だったので、そのギャップに苦しむ…と、当時の一部スタッフ内ではよく話をしていました。(笑)

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"ダメオヤジ"スサノオとクシナダの一幕。
この二人の関係の変化も、物語の重要な展開の一つです。

大神キャラクターの作り方

――『大神』の場合、数多くの昔話キャラを制作しなければいけなかったと思いますが、その辺の苦労はありましたか?キャラ設定のベースとなる昔話のリストアップは、どのようにされたのでしょう?

島崎:昔話とキャラクターのリストアップは、私が合流したころには企画の方から出されていました。
キャラクターの描き方、ビジュアルのフォーマットは吉村さんと片貝さんがはじめに設定してくださったので、合わせる形で制作に入りました。
とにかくチームに入った時から物量が多いことは分かっていたので、いただいたフォーマットをどう広げていくか、というのが、当時の私に与えられた仕事と思っていました。

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吉村さん作の男女ベースデザイン。
これを元に、『大神』世界のタッチが統一されています。

島崎:キャラクターについては色やシルエット、顔などのバリエーション差についてよく考えました。
遠くから見る場合は「色」と「シルエット」差の方が重要ですが、物語のあるキャラクターたち、ということを考えると、「顔」にある程度要素を集中させてやらないと、感情移入がしづらいのでは…?と思っていましたね。
ただ、大神のフォーマットにおいては、この「顔」の情報量は一番少なく設定されていたので、それを崩さず差別化するにはどうしたらいいか…と。

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かなり顔のパーツなどが記号化されている、大神のキャラクターたち。
しかし、その一人一人が、実に豊かな表情と性格を見せてくれます。

島崎:そういったこともあり、笹部郷のスズメたちは、そもそも「人型」を外してしまおうと、今の形になっています。
顔面積が大きく取れるし、思い切ってディフォルメしてしまう方がかわいく新鮮だろう、と。

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かなりデフォルメの効いたスズメキャラたち。
当初は、人間に準じた頭身案もありました。

島崎:また、オイナ族などは「アイヌ」モチーフということで、ステージの雰囲気もがらりと変わる予定でした。
これも「顔」は全く違う系統にしようと思い、「仮面」を付けることにしました。

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オキクルミデザイン画。
仮面の要素が入ることで、これまでのキャラクターとの異質な存在感が出ています。

島崎:ちなみに「オイナ族が狼に変化する」という設定は、終盤になってから神谷さんによって追加されました。
あわてて設定画を描いて、モノによっては直接モデルから作って…と、バタバタした記憶があります(笑)。

――開発の常ではあると思いますが、いろいろ大変だったんですね(笑)。島崎さんがデザインされたサクヤ・イッスンや、そのほかキャラ制作のエピソードはありますか?

島崎:サクヤとイッスンは吉村さんのコメントでも触れられていましたが、諸事情により急遽、自分の担当になったという流れでした。
しかし、設定を聞いたときにすぐ今のデザインが頭に浮かんだので、それだけ皆がイメージ持ちやすい、ハッキリしていたキャラだったのかな、と思います。
そういうわけで苦労話が無いですね(笑)。
…オーダーも、イッスンの顔はイケメンにして、と神谷さんに言われたくらいだったような…。

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アマ公…アマテラスの良きパートナーである、イッスン。
実は気骨のある"男前"なキャラでもあります。

島崎:サクヤは、今見るとなんでお尻を出したんでしょうね?(笑)。
自分で描いておいてよく分かってないのですが…ただ、難しいことを考えすぎない、こういう勢いは、時として大事だなと思ってます。

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シリアスな展開が多いサクヤですが、設定は振り切っています。
"桃"の表現が素晴らしいですね!

――たしかに(笑)。ほかのキャラクターはいかがですか?

島崎:オキクルミやカイポク、オイナ族の人々は、好きなものを詰め込みました。
前述の「仮面」についても、実は好きな要素をなんとか採用してもらおうと、理論武装もありつつで…。
それに加えて、モチーフとしていた「アイヌ」には、特徴的な柄と色も豊富にあったので、つい情報量が前半ステージのキャラクターより多くなってしまいました。
吉村さんからも「多いよ(笑)」と、ツッコまれたのを憶えています。
でも「修正して」とまでは言われなかったので、そのまま通してしまいました(笑)。
そのあたりも、おおらかな現場だったな、と思いますね。

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半獣半人であるオイナ族。
より自然に近い存在であることが、風貌からうかがえます。

島崎:ポンコタンのキャラクターに関しても、思い入れがありますね。
笹部郷のスズメたちもそうですが、丸っこいものが好きです。
ポンコタンでは虫や木の実などを身に着け、ミヤビたちには最終的に和服でもなくワンピースを着せるという趣味丸出しだったのですが、コンセプトアートの菅裕介さんが、それに合わせた違和感の無い見事な背景デザインにしてくださり、無事収拾してもらった思い出があります。

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ポンコタン、コロポックルたちの設定画。
"てのひらサイズ"な世界の、かわいいキャラクターたちです。

島崎:後半ステージのキャラクターがある程度幅を持ったデザインでも大丈夫だったのは、最初に組んでいただいたフォーマットがしっかりしていたから、ということの証明でもあります。
先輩方が作られた土俵の上で伸び伸びとやらせていただいた、とてもありがたい現場でした。

イラスト制作の苦労

――また、キャラクターイラストなども吉村さん、竹安さんと分担だったと思いますが、印象に残るものがあれば教えてください。

島崎:当時力が足りず、吉村さんの筆タッチに似せるのがとにかく大変で…。
結果的に似てません…勢いはかろうじて残った、という状態で、個人的には反省点が多いです。
当時の精一杯の絵なので、こういうことは言ってもはじまらないですが、毎回見るたび感じる悔しさですね。

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サクヤ姫のキャラクターイラスト。
PCで彩色していますが、手書きのタッチが残る描き方で統一されています。

――女性らしい、華やかさとかわいらしさを持つイラストだと思うのですが…。一枚絵に関してはいかがでしたか?

島崎:キャラクター紹介イラスト以外のものは割と自由だったので、そこは各々の腕試し、という感じで、また違ったやり応えがありました。
コンセプトとレイアウトはディレクターと相談するのですが、仕上げの方向性は基本的に担当者に委ねられていました。
特に一枚絵系は終盤までその都度仕上げ方法を探っていたという事もあり、毎回描き方に変化が加わっていたと思います。

――ご自分の描いた中で、好きなイラストはありますか?

■大神博文録

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神谷さんとネタ出ししつつ、キャラクターの未来や過去を想像して描いたので思い入れが深いです。特に辛いエピソードが多かったキャラクターにはなるべく明るくあたたかいエピソードを、と思いつつ描きました。
ストーリーのある絵が好きなので、この仕事はご褒美だな!と思ってやってました。

■アマテラス劇場イラスト

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島崎:ゆるい雰囲気で好きです。
キャラクター達のちょっとした幕間を描けるのがいいとこですね。
メールマガジンの絵は、とくに描き手によってネタの差も出ていて、そこもいいなと思っています。

■ファミ通WAVE2006年3月号表紙

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島崎:一枚絵は何回か描かせていただいたのですが、これはキャラが一杯描けたのでうれしかったです。
今見ると、もうちょっと華やかにしてもよかったですね。

■PLAYmagazine2006年3月号表紙

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島崎:ファミ通WAVE表紙もそうですが、表紙系は雑誌のロゴなども入るので、レイアウトにとくに気を遣います。
これはレイアウトが割とうまくいったかな、と思えた一枚です。

――それでは最後に、プレイヤーに一言お願いします。

島崎:『大神』が発売されてからもうすぐ9年になりますが、こうして今でもさまざまな形で続けていただけるのは、ひとえに作品を愛してくださっている方々のおかげだと思います。
癒しと元気が欲しいな、と思ったときは、またこの優しい世界を旅してみてはいかがでしょう?
これからも、『大神』をどうぞよろしくお願いいたします。

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