2019年4月10日
『逆転裁判123 成歩堂セレクション』開発コラム 第4回「ローカライズを導く、華麗なる言葉遊び」

ローカライズを導く、華麗なる言葉遊び

※注意:「逆転裁判3」のネタバレあり!

初めまして。逆転裁判シリーズのローカライズディレクターのジャネットです。
どうぞ、よろしくお願いします。

「逆転裁判123 成歩堂セレクション」はいかがでしょうか。英語でも遊んでおられるでしょうか?その時に、「日本語のこの言葉遊びは、英語ではどう翻訳されているのかな?」という思いもありますよね。今回は、「逆転裁判」のローカライズについて、少しだけ紹介したいと思います。

まず、“ローカライズ”という作業は、ただの“翻訳”や“直訳”とは違います。特にゲームのローカライズです。大枠で言うと、ゲームというもの(特に「逆転裁判」)には以下の特徴があります。

  • ・読む、見るだけで最後までたどり着く漫画やアニメと違って、自力でプレイして、ナゾを解決していくこと。
  • ・限られた画面サイズでテキストを表示するため、何行もの字幕を表示するのは不可能。

ということで、「ナゾを自分で解決できる」という最低ラインをクリアするため、各地域のプレイヤーの一般知識で解けるように、ある程度ゲームのシナリオや画像を“アレンジ”しなければなりません。

さらに、逆転裁判シリーズには、もう一つの特徴があります。それはあのユーモアセンスと言葉遊びがあふれている文章です。なので、キャラクターたちのセリフを直訳して、最低ラインをクリアするだではNGです。逆に、ジョークや言葉遊びを一瞬で納得できるように“意訳”しなければなりません。

「“意訳”とは何ですか?」の答えを、アイガのセリフで見てみましょう。

日本人なら誰でも理解できるジョークですね。だけど、英語に直訳すると、何が面白いのかが全く通じません。なぜなら、「ムウビング・マシイン」のジョークは「動機」の各文字を英訳しただけであることを理解し、初めて“面白い!”と感じます。ですが、漢字を使えない英語版では困りますね。

では、このセリフは英語版でどうなったのかを見てみましょう。

Motive, Mr. Wright! Motive! Might you my merry murderous motive manifest?
直訳:動機よ、ナルホドさん!動機! 我の殺気になる楽しい動機を証明できるかしら?

英文をよく見ると、彼のセリフにある単語はほとんど「M」で始まりますね。これは英語的な言葉遊びの一つです。たまに訳が分からないことを言うアイガは、英語版でも日本語版のように、彼らしい言葉遊びにしました。これはその“意訳”です。日本語版の意図を汲んで、英語でキャラクターらしいセリフを書きました。

意訳のもう一つの例を紹介します。

「Win Through Compromise」を直訳すると、善良そうな「妥協によって勝つ」になるけど、その裏意味は‥‥?

はい、「三日坊主」のことです。海外で似ている言葉がないので、別のものに意訳しました。この「Win Through Compromise(ウィン スルー コンプロマイズ)」には、裏の意味があります。「妥協」の意味を持つ「compromise」のもう一つの意味で、「相手を傷つける(危うくする)ことによって勝つ」になります。怖い、怖い!

最後に、言葉遊びをローカライズする際に想定外のところにも影響してしまう例を紹介します。

家元に、華麗に引導をたたきつけてやりなさい
Gravely roast the Master in the fires of Hades and bring our vengeance to fruition.
直訳:家元を地獄の炎で重々しく焼きなさい

逆転裁判3の第5話の「華麗なる逆転」の名物になる「華麗に引導」問題です。日本語版の場合、春美ちゃんは難しい漢字のせいで、「華麗に引導」を「インドカレー」に勘違いしてしまいます。そこで、gravy(グレービー)(グレービーソース)にヒントを得て、英語のスペルが得意じゃないPearl(ハルミ)は「重々しく焼く」の「gravely roast(グレーブリー ロースト)」を「焼き肉(ロースト)のグレービーソース」の「roast gravy(ロースト グレービー)」に勘違いして、同じ茶色の物を家元にかけてしまいます。

だけど、私の苦労はそれだけでは終わりませんでした。第5話のタイトル名「華麗なる逆転」はあの重要な「華麗に引導」によって作られたので、英語版にも、もちろん、影響します。ですが、「華麗」を単純に「grave」に差し替えすると、日本語のタイトル名にある輝きがない「The Grave Turnabout」(重々しい逆転)になるので、第5話にとって他に重要なテーマや言葉を必死に探しました。

いっぱいブレストした結果・・・

最終的に「Bridge to the Turnabout」(直訳:逆転への橋)を選んだ理由はいくつかあったけれど、最も大きかったのはまず、「おぼろ橋」自体が第5話にとって重要な存在だったと、隠喩的にキャラクターたちの将来(特に真宵ちゃんが家元になること)に向かうためのお話なので、この単語を選びました。

いかがでしたか?「逆転裁判」シリーズのローカライズについて、少しでも興味をもって貰えたら嬉しいです。
是非、好評発売中の「逆転裁判123 成歩堂セレクション」を、英語でもプレイして下さいね!

それでは、また!

← 第3回「新アレンジ曲への挑戦」

CAPCOM:逆転裁判123 成歩堂セレクション 公式サイト

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