逆転通信presents 『逆転裁判6』開発座談会

2016/08/04

最終回『逆転裁判6』開発座談会

『逆転裁判6』の開発チーム6人による、座談会・最終回をお届けします。今回もこの方々に語っていただいています。

プロデューサー:江城元秀(えしろ もとひで)
ディレクター:山﨑 剛(やまざき たけし)
アートディレクター兼coディレクター:布施拓郎(ふせ たくろう)
企画メイン:醍醐頼希(だいご よりき)
メインプログラマー:野田尚孝(のだ なおたか)
サウンドディレクター:堀山俊彦(ほりやま としひこ)

それでは、逆転通信presents 『逆転裁判6』開発座談会・最終回をお楽しみください。

――前回に引き続き、開発チームのことを伺っていきます。まずは、“初めての○○”と題しまして、新たな試みや、制作期間中に初めて体験したことなどをお話いただければと思います。

山﨑:僕は初めてモーションキャプチャーの撮影に立ち合いました。すごく楽しかったですよ。活劇座という会社さんにお願いして、アクターさんに大阪に来ていただいて収録しました。

――『戦国BASARA』シリーズのアクションも担当されている会社さんですね。

山﨑:実は、僕も少しだけお手伝いしたんですよ。もちろんモーションキャプチャーを撮ってはいないのですが、周りの雰囲気作りのために必要なエキストラとしてなんですけどね。そんな経験もできたので、楽しかったですね。役者さんも、キャラクター性+その場面の感情を演技に入れていただいて。セリフというか、叫ぶシーンは実際に叫びながら撮っていただきました。おかげで生き生きとした動きが取れたなと思っています。それがゲームのデモシーンにも活かせてよかったですね。

布施:僕は、開発環境の話なんですけど、“ディレクターが離れた場所にいる”という体制を初めて経験しました。

山﨑:そうなんです。僕、途中から転勤で東京に引っ越しまして。開発期間の後半は東京から大阪に通うような形でやっていました。

江城:平日は大阪、週末だけ東京に戻るという状態が何ヵ月間か続いていましたね。

山﨑:そういうこともあって、今回から布施がcoディレクターとして現場を見ることになったんです。その分、布施は大変だったと思います。

布施:全部言われてしまいました(笑)。大変でしたけど、ふたりでちゃんと相談しながら始めたことなので不満はないですね。結果的にもいい体制でしたし、それが作品にも繋がっていると思います。

――協力体制がクオリティーアップに結びついたわけですね。では、江城さんはいかがですか。

江城:僕は『逆転6』ではこれまでの『逆転』シリーズでやりたくても中々やれなかったことを実践できました。それは、本流とは全然関係ないエピソードをひとつ入れることなんです。

――『逆転6』の第4話ですね。

江城:ええ。以前から、僕は『逆転3』の展開が好きで。あまり関係のない吐麗美庵(※1)の話が出てくることで、全体的な話の幅というか、『逆転裁判』という世界観が広がっていると思っていました。『逆転6』でもクライン王国や日本でお話が進んでいくなかで、全然違う毛色の話がポンと入るというのをやりたかったんです。
(※1 とれびあん。第3話に登場するフランス料理店。シェフ・本土坊 薫が出す料理は想像を絶するマズさ)

――あのお話では、キャラクターたちの日常が垣間見えて新鮮でした。

江城:でも、本筋と関係ないお話って、開発の佳境になると様々な事情で削らざるを得なくなることが多くて。だからこそ『逆転6』では絶対に入れようと思っていました。今回は本当に、スタッフが皆がんばってくれたなと思います。

――江城さんはプロモーションにも携わられていますが、そちらで試みたことはありますか?

江城:プロモーションで初めてっていうと、TVCMを特別法廷(※2)っぽくしたことですかね。ちょうどテレビアニメ『逆転裁判』も放送していたので。掛け合いでキャラクターが特典のPRをするというのも、初の試みでしたね。その分、かなり大変でしたけど……。
(※2 法廷を舞台にしたフルボイスの会話劇映像。主にイベントなどで限定公開されている。)

山﨑:ハハハ(乾いた笑い)。

江城:開発でCM用の素材を作ってもらったんです。ただでさえゲームの制作に忙しいのにね。

山﨑:それに加えて、プロローグのアニメも作りましたね……。

江城:あれも、『逆転6』の企画スタートの段階で「プロローグをアニメにしたい」って言ったら、「じゃあそのシナリオは誰が書くんですか」、「そりゃあ、山ちゃん(山﨑D)やろ」って(笑)。そういう無茶振りを『逆転5』以上にやっていましたね。たぶん、開発スタッフは僕のことを「アイツめー」と思っているハズです。

山﨑:この場の皆さんの表情が物語っていますねー。

醍醐:否定はしません(笑)。

――開発は順調だったのでしょうか。

江城:順調……ではないですけど、まあ。

山﨑:忙しいときは、忙しいですけどね。ええと、じゃあ、堀山さんはどうでした? 初めての試みは。

堀山:初めてといえば、SEとBGMを一体的に作ったことですね。ポットディーノの証言でも、ポポポ音と曲を一体的に作ったり。カットシーンでも、曲とその時に鳴っている効果音を一体的に作るというのをやりました。

醍醐:ポポポ音で歌うところは、すごく苦労しましたよね。最初はメロディーっぽいポポポ音を使ったりもしたんですけど、どうしても歌っているように感じられなくて。それで「どうしよう」と悩んでいたら、堀山さんが「メロディーライン載せてみる?」って言ってくれて。でも、それだと膨大な作業量になっちゃうんですよ。にも関わらず、「大丈夫です」って。

江城:漢気あるなあ。

醍醐:そうなんです。まず、あるパートで試しにやってみたんですけど、これがすごくハマッて、このやり方で行こうとなったんです。僕は「じゃあ、このメロディーラインに合うように、他の部分の歌詞を変えていくのかな?」って思っていたら、まったく逆でした。大量のテキストに合わせてメロディーが付けられていったんです。

山﨑:(堀山に向かって)その節は大変ご苦労をおかけしました!

――では、次の話題ですが、皆さんに尋問をお願いしたいと思います。メンバーに聞いてみたかったことや、素朴な疑問をぶつけてください。

布施:じゃあ、僕から堀山さんに普段聞けないことを。お互いにモノを作る人間として聞きたいんですけど、曲を作るときに何からインスピレーションを受けるんですか? どこかに出かける人もいれば、調べものをする人もいますけど……。

堀山:まあ、何というか曲作りの基本みたいなものがあるので。この音の次は、この音に行くというような。

江城:ほお、セオリーがあるんだね?

布施:でもその最初の方針というか、その辺は……。

江城:天啓じゃない?

堀山:あはは、まあ、その場面が大まかに楽しい場面か、悲しい場面かとか、激しいのかユルいのかとかで曲調が絞られていきます。メロディーがハッキリあった方がいいのか、それとも漂うような曲がいいのかとか。どんな曲が求められているのかと。これは発注した人という意味でなく、その場面がどういう曲を求めているのかというのを考えます。すると自然に「出だしの和音はこんな感じ」と。そこから次々に繋がっていく感じです。和音と同時にメロディーも考えるんですが、「この和音が来たからメロディーはこう行こうか」とか。

布施:そうやって作っているんですね。じゃあ、堀山さんを形成しているもの、影響を与えたものって何ですか。いろんなミュージックがありますけど、自分に色濃く出ているものってありますか?

堀山:サントラのライナーにも書いたんだけど、この前亡くなったキース・エマーソンっていうイギリスのロックミュージシャンが好きで。

山﨑:へええ、堀山さんは洋楽とかロックがベースになっているんですね。全然知りませんでした。

野田:じゃあ、僕が気になっていたことなんですけど、山﨑さんは東京に転勤されましたが、江城さんと普段何をしゃべっているんですか?

江城:ほぼね、しゃべってない(笑)。

山﨑:ええ、あんまりしゃべってないですね。僕はよく江城さんたちの会話を聞いてますけど(笑)。

布施:漫才のコンビとかも、こんな感じだって聞くよね(笑)。

醍醐:そうだね、普段しゃべらないんだってね。

江城:逆に、すごいコミュニケーション取っていると思ってた?

布施:席も隣同士ですからね。

山﨑:よく「山ちゃ~ん」って呼ばれて、「なんスか?」って行くというのはしょっちゅうですけどね。

江城:大体、チェック関係だけどね。すぐ確認できるからそれはすごく便利になったね。

堀山:僕は、逆に二人はあんまりしゃべってないなっていうのは何となく分かっていたんですよ。曲のチェックのこととかで、二人からバラバラにメールが返ってくることがあって。二人で話をして一緒に返事してくれたらいいのにね(笑)。

醍醐:ここでまさかの暴露!

江城:ま、そういうこともありますな(笑)。

山﨑:江城さん、メール見たら僕に相談せずにすぐ返事送っちゃうんですもん(笑)。じゃあ僕から江城さんに質問ですが、『逆転6』は何話までプレイしました?

江城:今ね、第3話の終わり……。いつもね、第4話に行こうとすると、ROMが新しいバージョンに変わっちゃうんですよ。ROMが変わるとね、データを引き継げないんです。セーブデータが新しく作られるので、またイチからチェックして。それでまた第3話が終わったくらいでまたROMが変わるんですよ。

布施:製品版、まだクリアしていないんですか!?

江城:まだしてないの。あ、もちろん全部内容は知っていますよ。

山﨑:そういえばE3(※3)行きの飛行機でやっていましたね。
(※3 Electronic Entertainment Expoの略。アメリカで毎年開かれる世界最大規模のゲーム見本市)

醍醐:こうなったら、江城さんを入院させてあげるしか(笑)。

江城:入院したらね、プレイできるんです。

――やっぱりお忙しいんですね……。では江城さんから聞きたいことはありますか?

江城:みんなにまた次回作を作りたいと思うかどうかを正直に言ってもらいたいですね。ナンバリングをやりたいのか、全然違う『逆転』作品をやりたいのか。

堀山:VRで『逆転裁判』を作ったらいいんじゃないですか。自分が法廷に立てるっていう。

醍醐:立つのは証言台ですか?

堀山:どこでもいけると思うけど……。

江城:やっぱり弁護するから弁護席じゃないかなあ。

山﨑:VRは“みぬく”とかが大変そうですねえ。

江城:じゃあ、次は布施くん。

布施:もともと、アクションゲームも作りたいなっていう気持ちがありまして。『逆転』でアクション作るならそれはそれでアリかもしれませんけど(笑)。

醍醐:『マヴカプ』(※4)が、もう出てるじゃないですか。
(※4 格闘アクション『MARVEL VS. CAPCOM』シリーズ。『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』にはナルホドくんも参戦している)

江城:じゃあ、醍醐は?

醍醐:先ほども言ったんですけど、今回、思い残すことがないくらい全部やり切ったので、またしばらくはやりたいことを溜めないとな、と思っています。

江城:多分、今は出し切ってカラカラなんでしょうね。

布施:僕も『逆転』をやるなら新シリーズじゃないですけど、完全新作をやりたいですね。

江城:コンセプトだけは『逆転裁判』だけど、もう1回構築するっていうことやね。

布施:そうですね。世界が違うと。

江城:スタッフは変わるかもしれないですけど、逆転シリーズは続いていくかなと思いますね。

山﨑:布施も言っていたように、ひとつの可能性として新しい『逆転』をゼロから作れるタイミングなのかなとも思っています。一方でタイトルとして『6』は思い残すことはないんですけど、シリーズ全体で見ると、まだ描いていないところもあるんですよね。前回、復活させたいキャラクターの話もありましたが、シリーズキャラクターのその後がどうなったのかとか、まだ開けていない引き出しはあると思います。そこを描くというのもありですよね。

江城:僕としても逆転シリーズを作れる次の世代も育てないといけないと思っています。今回、やり尽した彼らが他のタイトルに行って、またそこで新しい経験を積んで、そして「よし、逆転の新作を作るでー」って再集結したときに、他のタイトルの経験が活きてくるはずなんです。トリックであったり、デザインであったり。

――今後も『逆転』シリーズは続くということで、ホッとしました。

江城:「これ、ええやんけ」と、『逆転』シリーズを望む声が出続けている限りは。誰が作ったかというのも重要ではありますが、『逆転裁判』らしいよね、というのを判断するのはお客さんですからね。映画でも本でも、おもしろければおもしろいほど、次が観たくなりますよね。『逆転6』を作って、今できることをやり尽してはいますが、その先を見たい、遊びたいというお客さんは絶対いると思っています。だったら次はどうするか、シリーズを預かるプロデューサーとしてはそれを一番考えなければいけないことだと思っています。

山﨑:本当に、今はいろんな可能性が開けていると思います。『逆転6』は、この後どんな展開でもできるようにしたつもりです。どこが舞台でも、誰が主人公でも続編を作ることができるように。『逆転』シリーズの可能性を閉じるのではなく、開くような終わり方にしたいと思って作りました。この先がどうなるかは、ユーザーの皆さんが何を望んでくれるか次第だと思うので、是非皆さんの声を開発に届けてもらえたら嬉しいです。

江城:その先どうなるかは、お楽しみですね。

――それでは、最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。

堀山:シリーズの6作目となりましたが、ここまで続けて来られたのは応援してくださるお客様がいらっしゃってのことなので、本当にいつも感謝しています。これからも『逆転裁判』シリーズは続くでしょうけど、やはり皆さんの応援があってこそなので、今後ともよろしくお願いします。

野田:『逆転裁判6』、無事に発売できて本当によかったなと思っています。ダウンロードコンテンツもあるので、ぜひ遊んでみてください。

醍醐:今回はやり残したことがないようにやったつもりです。前作はいろいろとご意見をいただきまして、それに応えたいと、つきつけるメッセージも増やしています。その分、シナリオのスタッフとかキャラモデルのスタッフもすごくがんばってくれました。もちろんそれはプレイヤーの皆さんのためにやらせていただいたことですので、ぜひ骨の髄まで楽しんでいただけたらと思います。

布施:今回も公式ビジュアルブックが8月に出る予定です。『逆転5』のときもご好評いただいたので、『逆転6』でもがんばって作っています。ゲームをクリアした後でも楽しめる内容だと思うので、興味ある方はぜひお手に取っていただきたいなと思います。

山﨑:きっと今回の座談会で伝わったかなと思いますが、開発チーム全体の協力関係がすごくしっかりしていて、それが内容の濃さやクオリティーにも繋がっていきました。『逆転6』はリーダー陣がそれぞれのスタッフとタッグを組んでちゃんと作っていった、チームの総合力が発揮できた作品だと思います。このメンバーが力を入れて作った『逆転6』をぜひ遊んでいただければなと思います。いろんなインタビューで「集大成です」と言ってきましたが、やっていただければ、どういうことなのかときっと分かっていただけると思います。この先の未来、『逆転』シリーズがさらに広がっていけるように、おもしろい展開ができるようにしたつもりですので、今後も注目していただければと思います。

江城:この座談会は逆転通信に入ってくれているユーザーさん、つまり相当『逆転裁判』が好きな人が見てくれていると思うので、かなりツッコんだ話をしてきました。クリアした方もこの座談会を見てからもう1回プレイしてもらうと、また新しい発見があるんじゃないかと思います。シリーズの展開の話も出ましたが、僕ら開発としては、遊んでくれる人がいなかったら作っても意味がないんですよね。ゲーム作りは僕らにとっては仕事ですし、生活するためにも必要なこととはいえ、それだけの動機ではやっていけないんですよ。ここにいるリーダーたちも、チームスタッフもみんな、それぞれに遊んでくれている人に感じてほしいことや、こだわりを持って作っています。今回は『逆転5』でもらった意見に極力応えていこうというコンセプトを掲げて制作しました。お客さんが想いを伝えてくれていた結果が、実を結んだんだと思います。 今後に関しては、現段階では何も決まっていないんですけど、何か新しいことも考えていきたいと思っています。タイミングやお客さんのニーズを考えて展開していきたいですね。また、今年は逆転シリーズ15周年を迎えますので、これまで『逆転』シリーズを愛してくれた方への答えをご用意しないといけないなと思っています。そこも含めて、これからも注目していただけるとうれしいです。

いかがでしたか?『逆転裁判6』開発座談会は。このように開発陣が一堂に会することはなかなか無いのですが、このタイミングで「逆転通信」だから実施できた内容だったのではないかと思います。もし、まだ逆転通信会員じゃないよという方がいたら、この機会にご登録していただけると嬉しいです。(登録無料です!)
今後の逆転通信にもご期待ください。

関連記事

今週の逆転通信

2017年10月19日
「逆転イラスト」を更新!
2017年10月12日
「逆転四コマ」を更新!
「イーカプコン限定リクエスト企画のご紹介!」を掲載!
2017年9月21日
「成歩堂龍ノ介のミステリークイズ」を更新!