ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記 石井ぜんじ((元ゲーメスト編集長))のD&D突撃インタビュー

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元ゲーメスト編集長:石井ぜんじ氏が「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に熱い思いがある方へ突撃インタビュー!それぞれから語られる当時の思い出、D&Dに対する思い、裏話等ここでしか聞けないトークが繰り広げられる…!

最終回 片岡謙治(本作ディレクター)

石井 最終回となる今回は、『ダンジョンズ&ドラゴンズ® -ミスタラ英雄戦記-』のディレクターである片岡さんをお迎えしてお話を聞きたいと思います。片岡さんは十数年前、『シャドー オーバー ミスタラ』の開発にも携わったとお聞きしていますが、当時はどのように開発が進められていたのでしょうか。

片岡 あのころは対戦格闘ゲームの全盛期で、自分には対戦格闘を作るか、ベルトスクロールアクションを作るかという選択がありました。対戦格闘のラインは何本か走っていたので、自分はベルトスクロールアクションで勝負しようと。

石井 『シャドー オーバー ミスタラ』は、その前にすでに出ていた『タワー オブ ドゥーム』と少しゲームの雰囲気が違いますよね。

片岡 そうですね。『タワー オブ ドゥーム』はコアなプレイヤー向けの作品だと思います。ザコ敵ひとりでも強いので、常にぎりぎりの緊張感があります。1人で遊ぶとそれが楽しく、これもひとつの正解だと思うんです。でも自分が作る場合はもうちょっと雰囲気を軽くしたいと思っていました。『D&D®』の世界を知らなくても楽しめるというか、西村キヌさんにキャラクターを描いてもらったのもそれが理由です。作っているとそういう雰囲気は社内に伝わるみたいで、「前作とはちょっと違う」というようなことを言われていました。

石井 『D&D®』は海外の版権なので、キャラクターデザインには苦労されたのではないですか。海外のデザインだと、彫りが深くていかつい感じになるはずです。

片岡 ファイターやエルフのデザインは、向こうの方から見ると子供に見えるみたいですね。若すぎると言われました。最初は衝突もありましたが、最終的には信頼関係が築けて、比較的自由にやらせてもらった記憶があります。

石井 キャラクターデザインはいいところをついていると思うんですよ。本来の『D&D®』らしさを残しつつ、日本でも受け入れられるデザインになっていると思います。1Pと2Pキャラクターの描き分けもうまくて、よくできていると思いました。

片岡 マジックユーザーの2Pはあえて顔を隠して、プレイヤーに想像してもらうように考えました。2Pファイターも、どちらかといえばそうかな。2Pクレリックが禿げているのはカプコン伝統のお約束ですね。ちなみに2Pエルフがポニーテールなのは僕の趣味です(笑)。

石井 『シャドー オーバー ミスタラ』といえば、その爽快感が特徴だと思います。これはかなり意識して作られたのでしょうか。

片岡 当時カプコンでは『エイリアンVSプレデター』というベルトスクロールアクションゲームがありました。自分はこのゲームの爽快感が気持ち良すぎだったので、それに近いものを目指した、というのがありました。『エイリアンVSプレデター』がなかったら、もう少し難しい感じのゲームになっていたかもしれません。

石井 なるほど、それで納得しました。この独特の遊びやすさは、どこから来ているのかと思っていたんですよ。

片岡 これは『シャドー オーバー ミスタラ』に限ったことではないのですが、ゲームを作るときにいつも意識していたのは「プレイヤーの力量に合った難易度に常にしていきたい」ということですね。簡単すぎると作業になるし、難しすぎればゲームをあきらめてしまうので。そこは考えて調整しています。
 当時はまだレベルデザインという言葉はなかったかもしれませんが、そこがポイントだと思います。アーケードゲームだと最初のプレイで嫌だ、面白くないと思ったら、二度と遊んでもらえない。ゲームセンターで見ていると一発で分かります。そういう意味では、アーケードゲームを作るのは怖かったですね。でもそのぶん、得られるものは大きかったと思います。

石井 パーティープレイが楽しいのは、そのあたりに理由があるのですか。

片岡 プレイヤーにできることが増えた、というのも理由のひとつだと思います。『シャドー オーバー ミスタラ』は相手(敵)がこうしたら自分はこうする、という対戦格闘ゲームのような考え方も取り入れています。波動拳コマンドでダッシュ必殺技を出すことができたり、レバー下上で対空必殺技を出すことができるというのもその影響ですね。

石井 シーフのバックスタッブも格闘ゲームの影響ですか。

片岡 そうですね。あれを使いこなすのはなかなか難しいと思いますが、上手い人にカッコよく使ってもらえれば、と思って入れました。いわゆる上級者の見せるプレイですね。

石井 『シャドー オーバー ミスタラ』はパーティープレイのおもしろさが知られるようになってから、プレイヤーに長く愛されるゲームになったと思います。アーケードの発売から10年以上経ちますが、今回『ミスタラ英雄戦記』がPS3でリリースできたのは、やはり当時ゲームセンターで遊んだプレイヤーの要望があったからでしょうか。

片岡 つねに移植してほしい、という声は聞こえてきていました。サターンには移植しましたが、ハード性能の関係で完全移植は難しかったです。その後も移植の話はあったのですが、版権の問題があって時間がかかってしまいました。しかし今回は以前の家庭用ではできなかった、オンライン4人同時のパーティープレイができるので、せひ楽しんでほしいですね。

石井 『ミスタラ英雄戦記』の目玉である、ネットワークでのパーティープレイの反響はどうですか。

片岡 おかげさまで好評です。ただゲームセンターとは違って、クレジットのシステムにはしていません。無限にコンティニューできるわけで、そういった点ではプレイヤーの緊張感が違うでしょうね。ゲームセンターで遊んでいた往年のプレイヤーと、新規のプレイヤーでは遊びの感覚が違うかもしれません。

石井 感覚の違いはあるかもしれませんが、どんな人と一緒にやってもおもしろい、というのがアーケード版『D&D®』の特徴だと思います。対戦格闘ゲームとは違って、勝った負けたを超越したおもしろさがありますから。

片岡 そうですね。知っている仲間と遊ぶ冒険も楽しいですが、まったく知らない新しい人と遊ぶとまたぜんぜん違うゲームになりますから。一度エンディングまでやったら終わり、というのではなく、何度もいろいろな冒険が体験できます。

石井 それこそが人と一緒に遊ぶゲームの魅力ですよね。近年はオンラインで複数の人と遊ぶゲームが増えましたが、カプコンのアーケード版『D&D®』はその元祖のような作品だと思います。

片岡 ネットワークの部屋は項目の「難易度」とか、「アピールコメント」など見てもらい、自分のレベルにあった所を探すことが出来ます。条件を整理する事も出来ますし、初めてプレイする人でも入りやすいと思います。一度ネットワークプレイを体験すればそのおもしろさがわかると思うので、ぜひ遊んでみて下さい。よろしくお願いします。



インタビューを終えて
ディレクターの片岡さんとは、『カプコン アーケード キャビネット』の仕事でお会いして以来の顔合わせとなりました。今回のインタビューでは、『シャドー オーバー ミスタラ』の制作にまつわるお話を興味深く聞かせていただきました。アーケード版の発売当時はインターネットが普及しておらず、オンライン同時プレイなど想像もできない時代でした。しかし役割分担がしっかりできた4人同時プレイがこの時代に生まれ、現代に再びよみがえるのは感慨深いものがあります。これからも時代の垣根を越えて、人を結びつける優れた作品を作っていただけることを期待しております。


C・LAN

【プロフィール】
片岡 謙治
本作ディレクター。アーケード当時も「ダンジョンズ&ドラゴンズ® シャドーオーバーミスタラ」に開発として参加。
「カプコン アーケード キャビネット –レトロゲームコレクション-」ではプロデューサーを務める。

石井ぜんじ(いしい ぜんじ)

【ライタープロフィール】
石井ぜんじ(いしい ぜんじ)
アーケードゲーム専門誌"ゲーメスト"元編集長。現在はゲームライター、 レビューなどを担当、ゲーム制作の仕事にも関わる。
ゲーム関連ほか、SF、ミステリー、アニメなど、思い入れのできるエンタメ全般に興味あり。