INTERVIEW, TOPICS

2019年8月5日

『TEPPEN』音楽制作秘話

こんにちは、タンタンです!
欧米諸国で先行リリースがされ、8月8日に満を持して日本に上陸した『TEPPEN』。
今回はコンポーザーの皆さんにお話を聞きたいと思います!

 ▲『TEPPEN』コンポーザーメンバー
左から順に小倉、北川、大木

TEPPEN感とは何か、を追求

タンタン
メインテーマを担当した北川さんから話を聞きたいと思います!
北川
テーマ曲を担当しました北川です。これまで、エクストルーパーズ、大逆転裁判シリーズ、囚われのパルマシリーズなどの音楽を担当しました。
タンタン
まずはじめに、『TEPPEN』とはどのようなゲームなのか教えてもらえますか?
北川
この『TEPPEN』は、カプコンの人気キャラクターが多数登場する、スマートフォン向けアルティメットカードバトルです。簡単な操作で、迫力あるリアルタイム制バトルを世界中のプレイヤーと楽しむことができます!
厚塗りで表現された重厚感あるキャラクターと背景の雰囲気に圧倒される世界観が特徴のゲームです。ストーリーのほうも、各カプコンキャラクターの個性は最大限重んじつつも、『TEPPEN』の世界の中に存在している「登場人物」であるというところを前提に、オリジナルストーリーが展開していきます。
タンタン
『TEPPEN』をプレイしたら最初に耳に入るテーマ曲ですが、制作時の話について教えてください!
北川
世界観が重厚なダークファンタジーということで、オーケストラを音楽の基本として、そこからTEPPEN感とは何か、を追求していくことになりました。最初に資料とキービジュアルをいただいたのですが、その一枚の絵が全てを表現していまして、道標となりました。構成のポイントは2つあって、まず「クワイア」…ア~~~ヘッホッヘッ!というような合唱のことです。クワイアで荘厳な空気を出すということ、そしてリズムを前に出してバトル感を出すこと、というこの2つを意識して作りました。テーマ曲は、そのゲームの世界を包括的に表現しなければならないと考えていますので、前半は荘厳なクワイアとオーケストラで『TEPPEN』の世界観を表現し、後半はドラムが入ってきて激しいバトル感を表現しています。一曲の中にハッキリとしたコントラストの差があり、聴き飽きない曲になっていると思います。
タンタン
このテーマ曲は作中やPVなどで様々なバージョンがあるように思いますが、どのような作り分けをしたんですか?
北川
テーマ曲自体、世界観を表現した部分と、バトルを表現した部分との二層に分けて作ったため、PVのコンセプトに応じて前半を使ってみたり後半を使ってみたりしました。PVにも使いやすい構成をイメージして制作しましたね。タイトル画面はテーマ曲を少しだけ編集して、ほぼそのまま使っています。メニュー画面の楽曲は専用のオリジナル楽曲が存在していて、そこにテーマのモチーフを落とし込むという編曲のやり方をしています。
タンタン
さまざまな使われ方を想定して作られていたんですね!

原曲を活かしつつ、『TEPPEN』に合わせて再構成

タンタン
続いて、大木さん、小倉さんにも話を聞いてみたいと思います!
大木
ストーリーモードと、各ヒーローの楽曲を担当しました大木です。担当したヒーローは「リオレウス」「モリガン・アーンスランド」「ダンテ」「ネルギガンテ」の4キャラクターです!
小倉
同じくヒーローの楽曲を担当しました小倉です。「リュウ」「春麗」「エックス」「アルバート・ウェスカー」の曲を担当しております!
タンタン
ヒーローの楽曲ですか!それはいったいどういうものなんですか?
大木
本作では、マッチングした対戦相手の使用しているヒーローに基づいた楽曲が流れるというシステムになっています。原作にて、各キャラクターと関連深い原曲を元に、この度新たに『TEPPEN』に合わせて編曲しました!
タンタン
なるほど!
各ヒーローの曲については、どのようなところにこだわったんですか?
大木
リオレウスの楽曲に関しましては、原曲(LIOLEUS/咆哮 - 『モンスターハンター』)が短めであったということと、歴代のモンスターハンターシリーズでお馴染みの楽曲であるということから、今回はTEPPEN感マシマシで編曲してみました。原曲で最も印象的な箇所は残しつつも、広い音域でのピアノのアルペジオ(分散和音)やクワイアを用いることで、竜らしさや飛翔している雰囲気といった部分を前面に出していきました。

ネルギガンテの楽曲の場合は逆に、比較的最近のタイトルである『モンスターハンター:ワールド』より、「古龍を脅かす獣牙 ~ ネルギガンテ」を元にしているため、大幅に変えることはせず、なるべく原曲を重んじた形でアレンジしました。ただし『TEPPEN』の楽曲として、世界観の統一を損なってはいけないので、ドラムやクワイアといったパートを足し、重厚感やバトル感を増してみました。
小倉
もともとエックスの原曲( OPENING STAGE X - 『ロックマンX4』)は、1~2フレーズくらいで構成されたかなり短い楽曲で、オーケストラの楽曲でもないため、それをオーケストラに落とし込むのを頑張りました。
北川
元が短い分オリジナル部分で『TEPPEN』の世界観を色濃く出していこうねって相談しながらやったよね。
小倉
そうでしたね!
唯一メカっぽい要素を持っているヒーローなので、何かそういうモチーフみたいなのを入れられないかなーって思って、シンセサイザーの音を入れたり、リバースさせた音を入れたりし、機械仕掛け感を出せるように工夫してみました。

アルバート・ウェスカーは元々がオーケストラの楽曲(Wind of Madness – 『BIOHAZARD 5』)なので、基本的には原曲に忠実にしつつ、やはりテーマ曲との関連性でクワイアをいれ、重厚感を足す方向性でアレンジをしました。結構スピード感が必要なゲームなので、ユーザーさんがプレイしていて疾走感を感じられるよう、リズムを工夫してみたりしました!

どちらの曲も、原曲を書いた先輩がカプコンサウンドにいるため、「いいな」って思ってもらえるようにアレンジしました!
北川
オーケストラ系の楽曲の制作経験が少なかったから、アルバート・ウェスカーの曲はスコアを見ながら作ってもらったけど、それをきっかけにめちゃめちゃレベルを上げたよね(笑)
小倉
頑張りました(笑)
タンタン
レコーディングもしたとのことですが!
大木
僕の担当した中では、モリガン・アーンスランドの楽曲(原曲:MORRIGAN Stage (Scotland) - 『VAMPIRE』『VAMPIRE HUNTER』)にてテナーサックスのレコーディングを行いました。打ち込みでは最も人間らしさを損なってしまうパートであったため、この楽曲を象徴するサックスに関しては、実際に生で録りたいなと思い、レコーディングしました。演奏してくださった奏者さんはアドリブや表現力において非常に長けた方だったので、かなり少ないテイク数で仕上がったのを覚えています。アドリブ部分に関しては奏者さんにお任せしたのですが、全てのテイクにおいて本当に素敵な演奏を頂けたので、僕の独断で一番ツボだったテイクを頂戴しました(笑)
北川
やっぱり餅は餅屋だよね。これぞサックスっていう感じ。
大木
まさにそうですね。レコーディング前に「チャラチャラッ」と吹いていたその音の雰囲気だけで「ああ、レコーディングしてよかった…」と思ってしまいましたね。
小倉
私はリュウの楽曲(原曲:RYU Stage - 『STREET FIGHTER Ⅱ』)でヴァイオリンを収録させていただきました。リュウは熱い人なんですけど…「筋肉!」みたいな。アートワーク見ても服破けちゃってるんで(笑)
タンタン
服の器には収まらない感じですね(笑)
小倉
打ち込み段階では熱い筋肉の人の曲って感じのアレンジだったんですが、『TEPPEN』では重厚感の中に高貴な雰囲気も必要で。綺麗なヴァイオリンを入れていただいたことで、それを足すことができたので良かったです。使命を背負った熱き格闘家といった雰囲気になりました!
北川
生演奏にすることで、より深みや奥行きが出たよね。

三人三様なアプローチ方法

タンタン
全体的にダークな雰囲気が漂う今作ですが、制作期間はどのようなことからインスピレーションを受けていたのでしょうか?
北川
さっき世界観の話でも触れましたけれど、アートワークが特徴的な雰囲気や深みを持っているので、これを見ているだけで音が出てくるという感じでした。作曲する人ってあると思うんですけど、すごく力強い作品を見ていると、それだけで自然にインスピレーションを受けて音が出てくるというか…え、自分だけ!?(笑)
大木
大丈夫です、皆感じてます(笑)
北川
良かった…(笑)
やっぱりインパクトのある絵ってそういうパワーを持っていると思うんですよ。人からプレゼンを受けるときも同様で、プレゼン力のある人から聞くことでどんどんイメージが引き出されていくのを感じることもありますね。カプコン側のディレクターである岡野Dに、世界観をすごく熱心に語ってもらったりして、そこからインスピレーションを得て助けられました。
大木
僕は曲を作るときは参考曲を聴いたりするんですけど、『TEPPEN』の世界観に近づく手がかりを得るため、豊麗さを求めてクラシックを聴いたり、重厚感を求めてメタルやEDMを聴いたり、結構多ジャンルに音楽を聴いて作ったなっていう印象は結構ありますね。普段メタルはあんまり聴いたりしなかったんですけど、これをきっかけにはまってしまったりして、なんか私生活が変わったなって(笑)
北川
そこまで!?(笑)
でも色々なキャラクターが登場しているので、それだけ幅広い音楽を聴いて着想を得る必要があったってことだよね。
大木
そうですね!
それぞれのキャラクターの個性を潰しちゃいけないですし、各原曲の良さを生かすという意味でも、楽器の奏法やジャンルからのアプローチが大切だったように思います。
小倉
私も北川さんと同じで、最初はアートワークからイメージを得るんですけど、その後はめちゃくちゃキャラクター設定を読みますね。この人はどんな性格なのかっていう部分を大事にしているかもしれないです。それを見た上で、このキャラクターはユーザーさんから一般的にどう思われてるのかなっていうのをネットで調べてみたり。
北川
そのアプローチは面白い!
小倉
アルバート・ウェスカーとかだったらわかりやすく「イケオジ」みたいに思われてたりするんですけど、それを『TEPPEN』ではどう持っていくか、自分の知識と混ぜて考えつつ作っていきました。
北川
キャラクターテーマを作るにあたってそこが一番重要だもんね。常に小倉さんはサブディスプレイにキャラクターの設定資料を出しながら曲作ってたけど、さらにインターネットの力を使っているとは…すごい。第三者からどう思われているかリサーチして作る…僕も明日から実践します(笑)
大木
結構三人三様というか(笑)
こんなにアプローチが違うものなんですね。
タンタン
その他裏話などはありますか?

テーマ曲と奮闘した3ヵ月

北川
『TEPPEN』はガンホーさんとカプコンの二社がタッグを組んで作ったタイトルなので、メインテーマ曲はカプコンだけではなく、ガンホーさん側のOKもいただく必要があったわけです。そういう事情もあり、お互い納得するまで徹底的にこだわって制作したため大体3か月ほどかかりましたね。でもその甲斐あって結果本当にいいものができてよかったです。カプコンのキャラクターを使っているとはいえ、新規タイトルなので0から1を作るということもあり、やりがいのある3か月でした。
タンタン
ガンホーさんとのやり取りも含めて、濃い制作期間を過ごしていたんですね。
北川
窓口は岡野Dでしたので、その都度ともに考えてもらえて本当に感謝です。納得いくものを作るのに苦労したという想いがあるだけに、このテーマ曲に関しては我が子のような存在というか…。大事にあの世まで持っていきたいと思います(笑)
大木
個人的には自分の楽曲そっちのけで、『TEPPEN』で一番好きな楽曲ですね。魂を感じます、魂を。
北川
それは嬉しいな(笑)
作曲者冥利に尽きますね。
タンタン
大木さんも何か裏話はありますか?
大木
確か制作した順番が「ネルギガンテ」「リオレウス」「ダンテ」「モリガン・アーンスランド」の順だったんですけど、ほぼ同じ順番で原曲の長さが短くなっていき、さらにジャンルがオーケストラから離れていくという現象がありまして。そうなると、『TEPPEN』アレンジにするために「原曲を活かしながら尺を補完する」という部分の割合が増えていくので、毎回毎回難易度が上がっていくという…。
北川
半分作曲だもんね。
大木
半分作曲ですね。特にモリガン・アーンスランドの楽曲はかなり作曲しましたね、制作順序がよくできてるものだなって思いました(笑)
北川
小倉さんは何か裏話あった?
小倉
裏話…。岡野Dは大変忙しい人なので、メールなどで間接的に聴いてもらい、文面でフィードバックしてもらうことが多いんです。 ただ、文面だけじゃ伝えきれない曲が1曲ありまして、その時は直接自席にきて身振り手振りで「ここのリズムです!!」ってすごく表現してくれまして(笑)
「おお…!なるほど、そういう勢いと、重さと、そして岡野さん」みたいな(笑)
北川
そして岡野さん(笑)
小倉
さっきのインスピレーションに加えて岡野Dもインスピレーションになりました(笑)
それぐらいディレクターさんも曲に熱い思いをもっていることが伝わりました。
北川
それだけ熱心に伝えてもらえるとモチベーションも上がるもんね。

TEPPENを目指す読者さんへ一言!

タンタン
最後に、TEPPENを目指す読者さんたちへ向けて一言お願いします!
北川
カプコンの人気キャラクターの魅力が新しい形で凝縮された本作品は、どなたでも楽しくプレイできるカードバトルゲームとなっていますので、ぜひダウンロードしていただきたいと思います。できればイヤホンでプレイしていただき、その世界観にどっぷりと浸かっていただければ幸いです。どうぞ、よろしくお願いいたします!
タンタン
『TEPPEN』コンポーザーメンバーの皆さんありがとうございました!
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