2014年12月12日
モンスターハンター4G発売記念特集 Vol.2
- 大好評発売中!『モンスターハンター4G』!
- 発売記念特集Vol.2
今回はBGMの秘密を徹底解剖!
細かい所で様々な演出を入れています。
- インタビュアー
- 大好評発売中!モンスターハンター4Gのサウンドを徹底解剖!
今回は[BGM編]という事で、メインコンポーザーの茅根さんと 前回に引き続き藤岡ディレクター(以下、藤岡D)、 サウンドディレクター(以下、SD)にお話を伺います!
今回はどのようなお仕事を担当されたのでしょうか? - 茅根
- MH4Gではメインコンポーザーとして楽曲の方向性決めや曲制作、 スケジュール管理、BGMシステムの考案やPV制作等… BGMに関わる部分の諸業務を担当させて頂きました。 また、今回のBGMは私含め4人のメンバーで制作しています。
- インタビュアー
- コンポーザーが4人!これは多彩なサウンドが楽しめそうですね!
サウンド面での演出や、システムにおいて今回こだわった部分はありますか? - 茅根
- 『モンスターハンター4G』(以下、MH4G)は『モンスターハンター4』(以下、MH4)の 続編的なゲームですので、 その世界観を壊さない為にも大きなシステム変更等は行っておりませんが、 やはり、どこかしら「新しさ」を感じさせる要素や ユーザーの方に、更に没入感であったり楽しんでいただけるような 仕掛けは組み込みたいなと思い、細かい所で様々な演出を入れています。
例えば、 今作では「オオナズチ」という過去作のモンスターが再登場しており、 この「オオナズチ」においてもちょっとした仕掛けが 潜んでいます。 オオナズチが口から霧を吐いてエリア一面を霧の海にする… という行動があるのですが、この時のゲームへの没入感を更にUPさせる為、 霧が充満している際はBGMにローパスフィルターをかけて BGMが篭ったように聴こえる演出を行っています。
- 藤岡D
- 元々、オオナズチは怒った状態でしかBGMが再生されない というちょっとマニアックな仕様のモンスターでした。 怒り状態になっている時間もBGMの1ループ分持つか持たないか… 程度の長さで、曲がそもそも全部聴けない事が多かったんです。
- インタビュアー
- かなりレアなBGMだったんですね!
- 藤岡D
- そうなんです。そこで、今回モンスター自体を4G仕様に調整・改造するにあたって 「BGM演出も考え直さないか?」という話をさせてもらいました。 オオナズチは消えたり、霧に紛れたりという行動を取るので、 そういった怪しげな雰囲気は残したいと考えていました。 もともと、(過去作において)BGMを消すという仕様があったんですが、 そこまでやらなくてもオオナズチの雰囲気は出せるんじゃないか? という事で、大きくフェーズが変わるときにBGMにローパスフィルターを かける演出を入れてもらってます。
- 茅根
- サウンド内でもどんな演出を入れるべきか…と 色々な案を出しながら何度も話し合いを重ねました。 ゲームはインタラクティブな進行により色々な要素が絡みあってきますので、 「モンスターの狩猟中にBGM再生優先度の高い別モンスターが エリアに入ってきた場合はどうなるか?」 「マルチプレイの時はどのような聞こえになるのか?」 「SEや他の音に対して影響が起きないか?」 「例外要素が発生した場合でも問題ないか?」…等、 様々な他要素も踏まえた上でも破綻がないかどうか、 仕様書と睨めっこしながら演出や、 演出を実現する為のシステムを考える必要があります。 結果、BGMメンバーの鈴木さんのアイディアによる現在の案がベストだ! と落ち着きました。
- インタビュアー
- また、今作では雑貨屋やギルドストア等の特売日に 関する演出も新しく実装されていますよね!
- 茅根
- はい、モンスターハンターでは雑貨屋やギルドストア等において、 商品が半額になる「特売日」がたまに発生します。 MH4では、店員に声を掛けなければ「今が特売日なのかどうか?」が わからなかったのですが、今作では特売日が発生すると お店の周辺のBGMが変化するといった仕様が実装されています。 BGMを聴いていれば店員に声を掛ける手間が省けますので機能的にも便利かと思います。
- 藤岡D
- 過去作では特売日となると村の曲全てが少し賑やかな曲に変わってたんです。 ただ、MH4からは村や街等の拠点が複数存在するため 全ての村専用の特売日BGMを制作するのも現実的ではなく…、 また、特売日自体結構頻繁に起こるので その辺をどううまく制御するのが良いのか?と考えていました。 (見た目的に)店員に吹き出しを出すというアイディアもあったのですが、 他の重要会話等の吹き出しとも被って紛らわしさがあった為、 BGMで部分的に演出するのが機能的にもストーリー演出的にも良いのでは? という結論になりました
- インタビュアー
- この特売日のBGMはどんなイメージで制作されたのでしょうか?
- 藤岡D
- 元々、竜人商人というキャラクターのテーマ的BGMを想定していたのもあり、「越前屋」「あきんど」というキーワードを喚起させるような ちょっと和風なBGMを依頼しました。
- 茅根
- コンポーザーの鈴木さん作曲のBGMです! 賑やかで楽しげな雰囲気と、後半のエモーショナルな曲調の対比が絶妙なんです!
- インタビュアー
- 特売時の高揚感が良く表現されていますね!
『礎の唄』『まほろばの唄』という楽曲を今回新規で収録しました。
- インタビュアー
- 今作では、前作MH4の モンスターの狂竜化に続き、ゲームの終盤になると 更にモンスターが強化された状態が存在するとの事ですが…
- 茅根
- そうなんです。ネタバレになりますので多くはお話できませんが…、 BGMもモンスターの強化に合わせて、 ジングルが再生されたり、狩猟曲が変化したり…と 様々な演出が実装されていますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 この曲は切迫感や緊張感溢れるBGMで、狩猟中アドレナリンが大放出する事請け合いです!
- インタビュアー
- 請け合いです!そうそう!今回のボーカル曲も印象的ですが 収録に関するエピソードがあればお話ください!
- 茅根
- 『礎の唄』『まほろばの唄』という楽曲を今回新規で収録しました。 どちらもMH4シリーズのテーマ曲『旅立ちの風』のアレンジです。 MHには過去作より「歌姫」というキャラクターが存在しておりまして、 その「歌姫」役の歌唱をボーカリストのIkukoさんに毎回ご担当頂いています。 事前に譜面や歌詞をお渡ししてから収録に臨んでいるのですが、 こちらが想定していた以上の「歌姫」としての解釈をIkukoさんが提示して下さるので、 収録中、とても刺激的で感動したのを覚えています。 やはり、MHシリーズにおける歌姫の唄は、Ikukoさんの声(解釈)が加わることで初めて完成するものなのだと強く感じました。
- 藤岡D
- Ikukoさんには2006年発売のモンスターハンター2(dos)(以下、MH2) の時に初めて歌唱をお願いして、それからもう8年のお付き合いになります。 その時から、「歌姫」というキャラクターに入りこんで頂いているのでとても有り難いです。オファーをする度に思った以上のリアクションを返して頂けるので、 ディレクションも殆ど必要ない位なんですよ。(笑)
- インタビュアー
- 作詞は、なんと!藤岡Dがご担当されているとか。
- 藤岡D
- そうです。なるべく僕が関わるタイトルにはボーカル曲の新譜を用意したいと思っていまして、 今回も作詞を担当させて頂きました。”
- インタビュアー
- MHシリーズのボーカル楽曲は造語で構成されていますが、 どういった意図で造語にされているのでしょうか?
- 藤岡D
- はい。あまり耳に聞き覚えがない言葉が良いなと思って。 まずは僕が日本語で作詞をして、弊社ローカライズチームにフランス語翻訳を依頼します。 そのフランス語をカタカナに直して、そこからはサウンドスタッフの方で歌いやすい様に 音節を抽出して造語詞を形成する、というフローです。
- インタビュアー
- なるほど!いきなり造語で作詞するのではなく、 先ずは日本語で作詞するのですね! そしてフランス語に翻訳され!そして造語になると! まるで暗号のようですね!
- 茅根
- 最終的には、造語詞をIkukoさんにお渡しして、 歌いにくい部分であったり、より良くなるような所があれば変更頂いています。(例えば、「ここは巻き舌の方が良い」とか「ここは”chi”じゃなくて”Ti”が良い」等)
- インタビュアー
- いや~!「造語詞」実に興味深いです!さて!MHシリーズも10周年を迎えておりますが 今作では過去曲のアレンジも多いですね! 多くのファンの皆様と歴史があるからこそ出来る表現だと感じました! 今作では過去曲のアレンジも多いですね!
- 茅根
- はい。今作では過去作要素が多数復活しているので、 BGMも数曲リアレンジさせて頂きました。 アレンジ曲のうちの1曲、ドンドルマという街の曲では SDにクラシックギターを演奏して頂いています。
- SD
- 過去のドンドルマ曲のメロディーはフィドル(バイオリン) と笛で構成されていて、とても伸びやかなイメージがあったので、 そのイメージを崩さずにギターで『懐かしさ』と 『新しさ』を表現する点に苦労しました。 ちょうど演奏していた時期が真夏だったのですが、 収録部屋にこもって汗だくになりながら弾いていたのを思い出しました。(笑)
リオレウスが「赤レンジャー」ならセルレギオスは「青レンジャー」みたいな(笑)
- インタビュアー
- アツいですね!ヒューヒュー!さて!そろそろお話も佳境です!今回のパッケージモンスター 「セルレギオス」狩猟曲に関するエピソードを教えて下さい。
- 茅根
- セルレギオスの狩猟曲に関しては結構紆余曲折ありまして…、制作着手したのは2013年の春頃だったのですが、 最終的に曲が完成する頃にはすっかり秋になっていました。(笑) 当時は絵の方も制作段階でしたので、 その時に得られる情報を手繰り寄せながら、 毎日セルレギオスの事を考えていた記憶があります。 初めに伺ったのは
「リオレウスのライバルであり、ダークヒーロー的なモンスター」というキーワードでした。 - 藤岡D
- 「リオレウス」というMHシリーズ内でも認知度の高いモンスターの ライバル的存在にしたかったので、まずはそこを中心に据えてもらいました。 リオレウスが「赤レンジャー」ならセルレギオスは「青レンジャー」みたいな(笑) どセンターのヒーローと、2番手キャラで斜に構えてるけどかっこいいやつ、 というイメージです。
- 茅根
- そのテーマを中心に据えつつ、 素早い動きや苛立っている様子といった表層的な所から、 モンスターのバックボーン等、見た目だけでは分からない、 音楽でこそ表現できる部分に関しても藤岡DやSDと何度も話し合い、 より良い狩猟曲を目指して試行錯誤を繰り返しました。 制作の変遷を一部ご紹介します。
(実際には、マイナーチェンジも含めると倍以上のバージョンが存在します。(笑))『煌めく千の刃 ~ セルレギオス』デモ 第1形態
『煌めく千の刃 ~ セルレギオス』デモ 第2形態
『煌めく千の刃 ~ セルレギオス』デモ 第3形態
『煌めく千の刃 ~ セルレギオス』デモ 完成版
- 藤岡D
- パッケージモンスターって何回もユーザーの方に遊んでもらうので、 どんなタイミングで出現しようが セルレギオスとしてキャッチーなものにしたかったんです。 MHシリーズでは世界各地の民族楽器を曲に取り入れる事が多いですが、 パッケージモンスターに関しては、あまりに地域性が強すぎると 意図する所と表現がズレてきてしまうという事もあり、 そのバランスが重要になってきますね。
- インタビュアー
- モンスターの狩猟同様、制作も一筋縄ではいかないからこそ達成した時の喜びもひとしおですね!また、今回は過去~現在までの歌姫楽曲を全て聞く事が出来る「アリーナ」という施設が存在しますね。
- 茅根
- そうなんです!過去作にも登場した、ドンドルマ(拠点)内のアリーナという コンサート施設が今作では装い新たに再登場しており、 アリーナ内では実際に歌姫のコンサートを楽しむ事ができます。 過去~現在までの曲が(特定条件により解放されると)全て視聴可能です。 カメラのアングルを変えたり、オンライン上では他のハンターさんと一緒に コンサートを楽しむ事もできます。 狩りの合間、一休みしたい時にお楽しみ頂けたら幸いです。
- インタビュアー
- 他ハンターさんと音楽を共有する事で友情も深まる、素晴らしいシステムですね!
- 藤岡D
- アリーナも含めて、ドンドルマは元々MH2の施設で、 オンラインでしか行けない場所な上、 既にサービスが終了してしまっていたんです。 このタイミングで、皆様のお手元に残る形で 今まで作った楽曲をゲームに全部入れたいなと思い、今回再登場する運びとなりました。
- インタビュアー
- まさに10年の歴史があるからこその演出ですね!
という事で、最後にユーザーの皆さんに向けて一言お願いします!” - 茅根
- モンスターハンターの歴史がたっぷり詰まったMH4G、 今回紹介した以外にも、サウンドでは沢山の仕掛けを仕込んでいますので、 お楽しみ頂けたら幸いです! また、オンライン上でお会いした際にはどうぞよろしくお願い致します!
- インタビュアー
- 藤岡D、SD、茅根さん、どうもありがとうございました!