CAPCOM

伊津野 英昭 1994年プランナーとして入社。『ストリートファイターZERO』他を担当後、1995年よりディレクターとして『スターグラディエーター』『私立ジャスティス学園』、その後もアーケード、モバイル、コンシューマなどのタイトルを担当する。 岡部 愼輝 2010年入社。海外コミュニケーションチームで、海外販社CUSA、CEEとプロモーション・マーケティングに関わる。その後プロデューサーとして『バイオハザード リベレーションズ2』を担当。現在はプロデューサーとして活躍。伊津野 英昭 1994年プランナーとして入社。『ストリートファイターZERO』他を担当後、1995年よりディレクターとして『スターグラディエーター』『私立ジャスティス学園』、その後もアーケード、モバイル、コンシューマなどのタイトルを担当する。 岡部 愼輝 2010年入社。海外コミュニケーションチームで、海外販社CUSA、CEEとプロモーション・マーケティングに関わる。その後プロデューサーとして『バイオハザード リベレーションズ2』を担当。現在はプロデューサーとして活躍。

prologue

2001年にPlayStation(R)2で鮮烈なデビューを飾った『デビル メイ クライ』。その微細なところまでつくり込まれたキャラクターの造形に加えて、当時のハイエンドゲーム機のスペックの限界を極めたスピード感あふれるアクションに、世界中のユーザーは衝撃を受けた。そしてその登場は、アクションゲームの中に新たな「スタイリッシュアクション」という一ジャンルを誕生させたのだ。
その後、シリーズ化され、常にその時、その時のゲーム機の限界を極めるところまでつくり込まれたグラフィック表現と練り込まれたストーリーは、高く評価され、進化し続けた。しかし、2008年の『デビル メイ クライ4』リリース以降、長きに渡ってナンバリングタイトルの続編が開発されることがなかった。

それから10年後の2018年6月、「E3 2018」の会場で初めて発表されたシリーズ最新作のトレーラームービーに来場者は釘付けになった。そして、初めて世に『デビル メイ クライ』が登場した時以上のインパクトを受けたのだ。
「正統派アクションゲームが少なくなった今、世界のユーザーに、震えるような感動と、突き抜けるような衝撃を、カプコンの「デビル メイ クライ」シリーズで、今一度」

そんな思いを抱いて、ディレクターの伊津野英昭が開発を決意してから5年の歳月を経て、ついに実現することとなったのだ。

正統派アクションゲーム不在の
危機感に突き動かされた続編開発。

遡ること5年前の2014年。当時、伊津野はある危機感を抱いていた。「当時、世の中に正統派アクションゲームがかなり減ってきているという実感がありました。アクションゲームって、挑んで、学習して、改善してまた挑み、クリアする、という純粋なおもしろさがありますよね。そうしたおもしろさ、アクションゲームの良さを今一度世に問いたい、伝えたいという思いを持っていたんです。その中で僕自身がつくりたいのが「デビル メイ クライ」シリーズの最新作でした(伊津野)」

そんな思いを持って、伊津野は、経営陣に「デビル メイ クライ」の新作をつくらせて欲しいと直接願い出た。「会社としても何か私につくらせたいという考えがあったのかは分かりませんが、すぐにOKとの判断が下りました」と伊津野は述懐する。

そこから話は進み、開発に向けた動きは加速する。開発準備段階でプロジェクトに参加した岡部は「最初企画書を見させていただいた時に、伊津野さんの考えるアクションゲームが少なくなっているという危機感に私も共感していました。それを受けて、私のプロデューサーとしての役目は、アクションゲームとしてしっかり売っていくことが大事だと決意しました。その中で、今までカプコンが培ってきた一番強みを出せる『デビル メイ クライ』シリーズで勝負することに、大きな意義があると思いましたね」。

しかし、開発が決まり、メンバー構成を考える中で急遽『デビル メイ クライ 4 スペシャルエディション』の開発が決まり、その終了後、正式に社内で『デビル メイ クライ 5』開発の発表をすることとなった。

メンバー集めの壁とも格闘しながら、
最高のチームづくりに日々挑む。

『デビル メイ クライ 4 スペシャルエディション』の開発が一段落し、いよいよ新作の開発が始まろうとしていた2016年。伊津野や岡部は、一つの問題に直面していた。その頃は、カプコン全体で、他タイトルが多数同時進行している状況にあり、メンバー集めが難航したのである。理想は、シリーズを担当してきたデザイナーやプログラマーを揃えて、盤石の状態で新作開発へと臨みたかったが、そう上手くはいかなかった。

「最初はなかなかシリーズの過去作品をメインクラスでつくった人を集めることができず、必要なパズルのピースが欠けた状態での開発スタートとなりました。でもその中で、未経験者を抜擢し、つくりながら人を育てていくという覚悟を決めました(伊津野)」

一方で開発と平行しながら、過去にシリーズに関わった経験あるメンバーに声をかけ、彼らの開発が終わり、タイミングが良い段階で参加してもらえるよう、地道な活動を行ったという。この最後の1ピースがそろうまで、あきらめない伊津野の姿勢は、全メンバーの「世界一の作品をつくろう」という思いを、より強固なものにさせた。

「最初は、どうなることかと思いましたが、未経験メンバーも他作品で培った視点を活かして新しいアイデアが次々と生まれるようになりました。そしてプロジェクト当初苦労したが、後には、かなり多くの経験メンバーも合流することになったのは良かったですね。始めは新たなメンバーと新たなチャレンジをし、徐々に過去作品の経験者が増えるにつれて、メンバー同士が互いに切磋琢磨するという形になったのは、本当に良かったと思います(伊津野)」

「開発が本格スタートした時に、私もプロデューサーとして参加し、グローバルに強いメンバーを招集し、チームをつくりました。そうして海外のマーケティングやプロモーションをするための土台作りから始めましたね(岡部)」

そう語る岡部が、作品をプロモートするための絶対条件として、伊津野ら開発陣に伝えたのは、「妥協の無いグラフィック表現、スペックとしても高精細・高フレームなアクションゲームを実現して欲しい」ということ。あとは、クリエイター達の自由な感性や「最高のクオリティのものをつくりたい」という熱い思いに委ねるという考えで、それぞれが新作の開発を進めていった。

「一見の価値あるものをつくる」
を指針に技術の限界を追い求める。

プレスリリースでの発表やメディアで何度も取り上げられているように、『デビル メイ クライ 5』の特長は、見る者を圧倒する高精細なグラフィックと爽快なスタイリッシュアクションである。これまでのナンバリングタイトルでも、PlayStation(R)2、PlayStation(R)3という風にゲーム機自体のスペックが高まり、進化する中で、同シリーズは、常に圧倒的に美しく、カッコイイ表現を極限まで追求してきた。そのDNAは、当然新作にも受け継がれていないとユーザーの納得は得られない。ましてや10年ぶりのナンバリングタイトル、PlayStation(R)4という最新機をプラットフォームにしたタイトルである。ユーザーの期待は絶対に裏切れないという状況での開発は、まさにチャレンジの連続だった。

「チーム全体に与えられたミッションは、“一見の価値あるものをつくる”ということでした。具体的に言うと世界中のトリプルAクラスのタイトルがゲームイベントなどで並ぶ中で、素通りされない、これは!と思ってもらえるものをつくるということですね。そこで“徹底したフォトリアルを”という思いを持って、開発に取り組みました(伊津野)」

開発を進めていく中で、キャラクターを描くベースとしてのスキャン作業は、カプコンの大阪スタジオだけでなく、セルビアの先進的技術を持つスタジオで行う、顔の表情をより豊かにする新技術の採用など、次々と新しい表現づくりに取り組んでいった。

「高フレームレイトの高精細、フォトリアルということに最初から取り組んだ結果、本当に一見の価値があるスゴイものができたという実感があります。伊津野さんが最初に、企画書で実現したいことを明確に打ち出し、高い目標を設定していたこともありますが、メンバーのがんばりというか、世界一のクオリティをめざすという思いが非常に強かった成果だと思います。だから我々も、表現を実現するための新技術を持った企業を探し、チャレンジとして使ってみる、そこから良いものが生まれるという好循環にもつながりました(岡部)」

世界中の人が一見の価値があるものをつくりだすという大きな目標をコアに、開発はいよいよ大詰めを迎えていく。

「世界一をめざす」というメンバーの思いが、
全員のギアを上げる。

最初は、未経験メンバーが多数という状況からスタートし、開発を進めていた中、開発チームにも大きな変化が起きた。世界最高の技術、世界最高の役者、アーティストを使って・・・と、常に最高を突き詰めていく中での開発に触発される形で、若手も成長していたのだ。そんな時、メンバーからある言葉が発せられた。

「これは、今回の開発のターニングポイントだと言えるのですが、実はストーリーやエフェクト、ボイス収録など、ある程度開発が進み、ゲーム部分に向けてつくり込みをしていこうとした時に、思っていた以上に作業進捗が良くなかったんです。序盤の経験者不足もあったので、仕方なく目標設定を下げなくては完成に間に合わないなと思ったほどでした。ただ、そこでメンバーから“伊津野さん、これで本当に良いんですか?世界を獲れるんですか?”と言われたんです」

この言葉をきっかけに、伊津野をはじめ、開発チームでは、一から全てを見直し、誰もが納得のいくまで、ブラッシュアップを続けた。

「“細部に神は宿る”なんて言葉がありますが、ディテールにどこまでこだわれるかというのは、人を惹きつける作品になる重要なポイントだと思います。そこから考えると、今回の作品ではメンバーの一人ひとりのこだわりがすごく、“ここまでやるのか”と思ったくらい徹底していました。実際にできあがった画面、動いているものを見た瞬間に、自分の予想の数段上をいっていたのには驚きました。これはいける、おもしろいと思いましたよ(岡部)」

こうして、『デビル メイ クライ 5』の開発は、最終段階へと進んでいった。

そして世界は、
新たなスタイリッシュアクションに歓喜する。

2018年6月の「E3 2018」でのトレーラームービー公開、そして2018年8月の「gamescom 2018」でのプレイアブル出展で、『デビル メイ クライ 5』は、世界中のユーザーから、高い評価を受けた。当初から意図していた、徹底したフォトリアルで表現された画力に、前作を凌ぐアクション性と進化したスタイリッシュさ。それは、世界中の人が“今まで見たことのないアクションゲーム”という大きな衝撃を受けた瞬間であった。

「私のゲーム開発人生の中で、一番苦労した作品が今作でした。開発がデバッグなどの終盤を迎えた今だから言えますが、しばらくは「デビル メイ クライ」シリーズには関わらなくて良いくらいにやりきった感じですね(笑)。その分、最高の作品に仕上がったという自負もあります(伊津野)」

「販売してすぐに終わりではなく、5年、10年と長い期間ユーザーに楽しんでもらえる作品をつくるという私の中の目標は実現できるだろうという確信を持てています。本当に最高の作品ができあがったと思います。発売が待ち遠しいですね(岡部)」

2019年3月8日に発売が決まった『デビル メイ クライ 5』。
世界中のユーザーに楽しんでもらうべく、2月初旬には日本のみならずアジア、北欧、中東、オーストラリア、北米でプロモーション活動を実施した。
正統派アクションゲームが減少しつつある今、アクションゲームのカプコンが、世界を相手にアクションゲームの神髄を今一度提示する時が、刻々と近づいている。