INTERVIEW

2012年2月8日

バイオハザードリベレーションズ発売記念サウンドスタッフインタビュー!

バイオハザードリベレーションズ 恐怖のサウンドメイキングストーリー!
お馴染みのテーマ曲がどうやって生まれたのか?
そんなちょっとマニアックなサウンドメイキングストーリーをご紹介!
ゲームサウンド制作の極意とは!?
タン★タンがサウンドスタッフにゲームサウンドに対する熱い気持ちを聞き出します!

全てはいい作品をユーザーに届けるため頑張るのみなのです!

タン★タン
リベレーションズの曲といったら、テーマ曲「Revelations」。初めに、コンポーザーへ今回の楽曲制作スタートから収録など、順々と完成していく流れをガツッとインタビューしていきたいと思います!まず始めに、「これがないと始まらない!」曲作りの制作環境を教えていただけますか?
サウンドスタッフ
ソフトウェアはYAMAHA社の「Cubase5.5.2」を使っています。直観的に音楽制作できるところが気に入っています。使用音源はソフトウェアシンセが主です。 ピアノコンチェルト風の曲にしたかったので、今回はSynthogy社の 「Ivory II GrandPianos」で作曲を行いました。ピアノで音楽の構成ができたら他の楽器で肉付けしていきます。オーケストラは ProjectSAM社の「Symphobia」を基軸に構成しました。
タン★タン
曲によっていろんな機材を使いわけるんですね~! いったい出来上がった楽曲はどのようなものになったのでしょうか?
サウンドスタッフ
初期プロットはこちらです!

Revelations -Plot Ver.-

サウンドスタッフ
実はボツが出てお蔵入りとなってしまったバージョンです(苦笑) あまりボツ曲は残しておかないタイプなのですが、奇跡的にデータが残っておりました。
重要な楽曲なのでディレクターに聴いてもらったところ、「雰囲気はサスペンスを感じて良いが、もっと疾走感があってエンターテイメント性がほしい。メロディラインも、もっとハッキリ欲しいね」とのご指摘を受けまして、次のパターンを考えることになりました。ゲームサウンドの現場でこのようなことは日常茶飯事…。
全てはいい作品をユーザーに届けるため、頑張るのみなのです!
タン★タン
あ、熱い!熱すぎますです!いや、この繰り返しのチェックがあってからこそ、満足したものが届けられるのですね!そしてディレクターのOKはもらえたのですか?
サウンドスタッフ
いくつかのパターンを作ること数週間、ついにディレクターOKが出ました!それがこちら!

Revelations -Digital Ver.-

サウンドスタッフ
修正点が反映されたように感じて頂けたでしょうか? 確かに直してみると、ゲームのイメージにもマッチしています。
ちなみにミキシング、マスタリングはしていないので、細かな調整はしていません。この状態のことを僕たちは「プリプロ」「ラフ」等と呼びます。
プロデューサーやチームの方々にも聴いてもらい、いい評価を頂きました。 映像担当のスタッフには「是非この曲に合わせて“前回までのあらすじ”を作ってほしい!」と熱くプレゼンしました。そう、あらすじシーンは楽曲先行で誕生したのです。

※ミキシング…多チャンネルの音源をもとに、ミキシング・コンソールを用いて音声トラックのバランス、音色、定位(モノラルの場合を除く)などをつくりだす作業。
※マスタリング…、ミキシングして作られたマスター音源をイコライザーとコンプレッサーを用いて加工し、最終的な曲の音量や音質、音圧を調整すること。

クリエイターとしての直感は大切にしています。

タン★タン
でも、まだ完成ではないのですよね?ゲームで流れるこの曲は、生オケと聞きました!オーケストラ収録は、どのようにして収録を迎えるのでしょうか?
サウンドスタッフ
まずはオーケストラアレンジャーを選定し、サウンドマネージャーを介して 協力依頼をします。普段オーケストラに多く携わっている方とのコラボレーションで、 さらに楽曲を良くしたいと思ったためです。

アレンジャーが決定すると、次に楽器編成を決めます。弦楽器の人数、管楽器の人数、打楽器の人数、ピアノ、ハープはどうするか等々…。最近のソフトウェアシンセサイザーは本当に質が良いので、リズムセクションの 多くは打ち込み音源をそのまま生かし、生オーケストラとの融合を行うことにしました。

編成が決まったらアレンジャーと密な打ち合わせを繰り返しながら、 スコアを完成させ、収録へと臨みます。

このようにゲームコンポーザーはジャンルを問わず、幅広い知識が要求されるのです。

タン★タン
いろんな人とコミュニケーションを取ってより良い曲を生み出していくのですね…!感動的です!それでは、最終形態を聴かせてください!
サウンドスタッフ
こちらです! ※ミキシング、マスタリング済の音源です。

Revelations -Full Ver.-

サウンドスタッフ
さらに躍動感が増してアグレッシブになっていることがお解りになりますでしょうか?実はリズムをもう少し抑え目に仕上げるつもりでいましたが、 生演奏のパワーを聴いてこのような仕上げにすることを決めました。 こういったクリエイターとしての直感は大切にしています。
タン★タン
同じ曲なのに、収録やミキシングで変わっていくのは面白いですね。今日はレアな音源まで聴かせていただき、ありがとうございました。最後にユーザーさんに一言、お願いいたします。
サウンドスタッフ
今回「曲を作る~楽器収録をして仕上がるまで」を紹介させて頂きましたが、 いかがでしたでしょうか? ボツ曲まで載せている作曲家もなかなかいないのではと思います(笑)他の曲も1曲1曲いろいろなプロセスを経て誕生していますので、いろいろと想像しながら聴いてみるとゲーム音楽がもっと面白く感じるかもしれません。
リベレーションズの音楽をもっとじっくり聴きたい!という方は 2/22発売のオリジナルサウンドトラックを是非お買い求めください!初回仕様分のみマーセナリーズ3Dのサントラも付いてきますので、お早めに…。
これからもカプコンサウンドチームをよろしくお願い致します!

リベレーションズのサントラが購入できる、e-capcomはこちらから!

タン★タン
ありがとうございました!さて次は、サウンドデザイナーにバシバシっとインタビュー!リベレーションズでどんな音を生み出したのか聞いていきましょう♪

どの言語を聞いても雰囲気に差が出ないようにするのを心がけました。

タン★タン
まずは、ゲーム中でどんな部分を担当していたか、 教えてもらえますか?
サウンドスタッフ
色々とゲーム中の音を作ってきましたが、敵ではグロブスター、シークリーパーなどの音付け、イベントシーンの多言語ボイス対応(フランス、イタリア、ドイツ、スペイン)を 主に行っていました。
タン★タン
リベレーションズのチェックポインツですね!バイオザードシリーズ、初の6言語対応!
サウンドスタッフ
はい、英語、日本語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語の6言語になります。ボイス量ももちろん、増えた分だけ多くなりましたので、分担して作業をしました。まずは、カプコンスタジオ(bit MASTER studio)で英語のイベントシーンをミキシングします。ここでBGMとSEのバランスや、場所の空気感を作り上げます。 これを指針にします。

※bit MASTER studio…カプコン社内にあるスタジオ。 ゲームのイベントシーン、PVのミキシング、楽曲のレコーディング、ミキシングを行う。

スタジオでバランスをとったSE、BGM、と各キャラクターに分かれたボイスをDigidesign社の「ProTools」のセッションデータを受け取り、ひな形として利用します。ボイスのトラックに各言語を適応させると、英語と同じボイスの加工や、 空気感が出来上がっていきます。

タン★タン
なるほど!同じ作業データを共有することで、 全ての言語での音響的な差異をなくすようにしたんですね。
サウンドスタッフ
そうです。ゲーム中の部屋の広さで変わる響きや、 TVから聞こえている様なボイスなど、どの言語を聞いても 差が出ないようにするのを心がけました。
もちろん言語や声優さんによって、 子音の強さ、息の使い方が違うので、 音量の調整やイコライザ(EQ) での調節は一つずつ丁寧に編集していきました。こうやって各言語、聴いて調整したインベンシーンの数は79個×4言語分となり、 だんだん台詞を覚えていき、しばらく真似するのが流行っていましたね(笑)
※イコライザ…音声信号の周波数特性を変更する音響機器
タン★タン
言語の勉強にもなっちゃいますね!お得ですね~!
サウンドスタッフ
一番覚えやすいのは、ジルがベッドで寝ていて、起き上がるシーン。2言しかしゃべらないのですぐ覚えられるはずです!あまり、普段使いは出来なさそうですがね(笑)
タン★タン
さて、今度はゲーム中の音制作について聞いていきたいと思います♪先ほど敵の音も作成されていると言ってましたが、工夫した点などありますか?
サウンドスタッフ
担当していた敵にシークリーパーというクリーチャーがいるのですが、 見た目、足が昆虫のようにたくさん付いていて、白く、口が小さい奴なんです。
タン★タン
水中で泳いでるやつですよね。見た目からして気持ち悪いですね~…。
サウンドスタッフ
初め、キチキチキシャー!という虫っぽい音や鳴き声をさせていたのですが、敵の設定書やグラフィックデザイナーさんから「この敵、元女性なんで、もっと女っぽくしてください。」と、お話がありました。

はじめちょっとだけ入れていた女成分…ボイスなんですが、 息っぽいものが多かったので、これじゃ薄いな…ということで。もう、発音させてしまおうと思い、 もっとはっきり声になっているものをだいぶ大きめに入れていきました。

シークリーパーボイス

サウンドスタッフ
シークリーパーがプレイヤーを見つけていない、「落ち着いている」状態では、 このような歌声でゆらゆらと漂っています。 しかし、プレイヤーを見つけて攻撃モードになると、 女性からクリーチャーの叫び声になり、襲いかかってきます。
タン★タン
もう掴まれた瞬間、ギャー!!って自分が叫んじゃいましたよ…。放してー!ってすごい焦りました…。
サウンドスタッフ
そして、プレイヤーは彼女の抱擁で水の底へと、どんどん引きずり込まれていくわけです。

すごい連打を繰り広げているところなんで、気づきづらいかもしれませんが、彼女は笑いながらプレイヤーを沈めていくのです。クックックック…って笑っているんです。でも、きっとそんな場合じゃないですよね(笑)

タン★タン
気づきませんでした…。そんなストーリーが繰り広げてられていたなんて。
サウンドスタッフ
グラフィックデザイナーさんの考えを聞きながら作っていくというのは、 勉強になるし、新しい想像が生まれて楽しいですね。敵の行動、敵のアクションの音を作る時は、そのイメージから 自分の中で敵の気持ちを考えてストーリーを作って 音を作るのが面白いのです。
タン★タン
それでは、最後にプレイヤーの方に一言お願いいたします!
サウンドスタッフ
今回はホラー重視ですので、 プレイヤーの方々に、「あの敵怖い」や「あの音にびっくりする」と、 感じていただければ大喜びです!
タン★タン
ありがとうございました!さて、ラストスパート!最後に、リベレーションズの音を監督している、癒し系サウンドディレクターにインタビュー!リベレーションズでは一体どんなサウンドスタッフがいたのか聞いていきましょう♪

”今、そこにいる恐怖感”がキーワードです

タン★タン
まずは、リベレーションズではどういったサウンドメンバーが関わっているのでしょうか?
サウンドスタッフ
担当としては、BGM、プレイヤー、台詞、武器、敵、イベントシーン、環境音… 大まかにはこのように分かれます。その他、ボイス収録や、オーケストラレコーディングで関わって頂いた方々を含めると、 かなりの人数になります。そして、曲は信頼するコンポーザーに任せました。また、カプコンでは初めての6言語吹き替え対応ということもあり、台詞に関わるスタッフの比重は大きかったです。
タン★タン
いろんな役割があるんですね~!ニンテンドー3DSでのトップクオリティを目指したリベレーションズですが、 サウンドでは何を目標に取り組んだのでしょうか?
サウンドスタッフ
”今、そこにいる恐怖感”がキーワードです。そして、そのためには音響としてのリアリティーと演出を如何に行うかを考えました。

所謂、携帯ゲーム機という固定概念は取っ払っています。そういう空気は一切読みませんでしたね(笑)なので、携帯ゲーム機でバイオハザードシリーズ初となる6言語のフルボイス対応も実現しようと。
あと、ニンテンドー3DSを手にしたとき、疑似サラウンド効果に驚きました。ヘッドホン端子の出音もクリアーでかなり良かったんです!「これはイケるっ!!!」って。

タン★タン
なるほど、まずはニンテンドー3DSの音の特徴を聴いて制作をするのですね。恐怖を感じさせるために、制作面での工夫はどんなことをしましたか?
サウンドスタッフ
恐怖演出という点ではやはり、メリハリですね。携帯ゲーム機だからといって、音圧の高い音を無理に突っ込むようなことはしていません。高くジャンプするには低く屈まないといけないですよね?そのためには程良い音の隙間が大切でした。
激しい戦闘では細かな音は消えますし、曲が鳴れば、環境音はぐっと下がります。

シーン毎に音の立ち位置を明確にして構築しました。その中に距離感、響き、質感があってリアリティーに繋がると思っています。音のレンジのコントロールです。

タン★タン
その場でどの音が重要か、出し引きをしているんですね~!音同士がケンカしないように調整するんですね。
サウンドスタッフ
そのポイントが制作環境にあります。音の基準レベルを定め、定格で出力するモニタースピーカーで”ちゃんとモニター”すること。それを各スタッフ共有しました。音響制作の世界では当たり前のことですが、ゲームオーディオは定着しにくい側面があるのも事実なんです。基準の上でミキシングすれば意図した音でちゃんと鳴ってくれます。
小さい音大きい音、人やオーディオ機器のボリュームでその感じ方は千差万別ですよね?その基準を定めるんです。そして、ニンテンドー3DSの実機スピーカー、ヘッドホンで最終的な確認をします。

「うん。間違いないね!」って。

複数人のサウンドスタッフと制作するとこうしたことが重要になってきます。やはり、みんな魂込めて作った音は聴こえて欲しいし、テンションも上がるから制作が進むにつれ、音を詰め込みがちです。トータル何時間も遊べる音の繋がりを時間かけて作っていると、音の立ち位置が解らなくなってしまうんです。パート毎に制作した音のピースを確実にはめ込むためのポイントです。その結果、効率的に制作を行えます。

僕は「フウン~♪ ンン~♪」ってハミングがお気に入りです!

タン★タン
演出面としてはどのような点を重視したのですか?
サウンドスタッフ
細かいことは無視して、笑っちゃうくらいブチかます(笑)
タン★タン
あれ?今の説明に矛盾しませんか?
サウンドスタッフ
矛盾しますね(笑)例えば、人気のレイチェルウーズ。人間味を残しつつ、イッちゃった感じを出したいと思いました。音程を凄く下げて、EQとコンプレッサーで調整した狂乱の声と、 素の声とを上下させて織り交ぜました。個別の残響も加えて。それをポジション、距離減衰、遮音、ルームシュミレートなんか無視で えいや~っ!ってブチ鳴らす。そうすると心情的に耳元で響くんです(笑)”ここぞのときは思い切りよく尖らせろ!!!”これは新人の頃から敏腕ディレクター達に叩き込まれたことです。バイオは緻密でリアルな音響を構築しています。しかし、一番大事なのは「うわっ!」って感じれることですから。無意識に積み重ねた緻密さのほうを守ってしまいがちなんですね。
タン★タン
確かに!これがなかったら本末転倒ですよね。
サウンドスタッフ
でも、チームレビューのときは吉と出るか、凶とでるかドキドキでしたよ。所謂、ジャパニーズホラーテイストでそもそも方向性が逸脱してるんじゃないかと。でも、結果は「イイ感じ!」の連発で、自席で思わずガッツポーズした!何より、台詞、声優さんの演技が最高だったからなんですけどね…。こうして”レイチェルウーズサウンド”ができました。僕は「フウン~♪ ンン~♪」ってハミングがお気に入りです!
タン★タン
ボイス収録では海外も行かれたとポッドキャストでお話がありましたが、海外と日本で、収録に違いはありましたか?
サウンドスタッフ
海外収録ですごく納得したことがあって、LAでの英語収録のとき、 所謂、「台本」がないんです。録音ブースのテレビモニターに映し出されます。エコですね。部数印刷する手間って結構かかりますし、その場での台詞変更も多いですから…なるほどっ!って。それと、素朴な疑問なのですが、 食事でいつもChicken or Beef?と尋ねられますが、日本人としては味の違いで聞いてくれたほうがいいですね(笑)

タン★タン
それでは、最後に一言お願いいたします!
サウンドスタッフ
操作してグッとくる感触を作るのが仕事だと思っています。そして、チームワーク。ゲームディレクターをはじめ、キャラクター性、遊ばせ方、演出に「変態的」なまでの拘りとイメージを持っています。それをサウンドとして、しっかり実現することですね。そのためにはコミュニケーションが大切。僕は器用に話をすることは得意ではありません。
でも、そういうことではなく、相手が望むもの、自分が考えることを理解し合おうという姿勢が大切です。ゲームクリエイターを目指す方に、最も必要なことだと思いますよ。
タン★タン
ありがとうございました!

いかがでしたか?今回は深いサウンドのお仕事内容まで紹介しちゃいましたが、 なんとも熱い制作内容を聞けちゃいましたね!インタビュアーのタン★タンと、バイオハザードリベレーションズのサウンドスタッフがお送りいたしました!

バイオハザード リベレーションズ 公式サイト »