『ストリートファイターV』アートインタビュー

伝説の帰還・未来への出発~『ストリートファイターV』アートインタビュー~前篇

さて、ついに発売となった『ストリートファイターV』!
今作の発売を記念し、今作のアートに深く関わったデザイナー二名、BENGUSさんとKikiさんのインタビューを行いました!
それぞれの立場から、カプコンタイトルの関わりと、そして『ストリートファイターV』開発に携わることになった経緯を、語ってもらいます。
ロングインタビューになったため、お二人とも前後編で掲載。

まずは一人目、『ストリートファイターV』のキャラクターデザイン、数々のアートを担当されたKikiさんのお話(前編)。
どうぞ!!

Kiki

Kiki

キャラクターデザイン室所属。『デッドライジング』シリーズ、『バイオハザード』シリーズ、『オトレンジャー』シリーズ等、数多くのタイトルのキャラクターデザイン、ビジュアルイメージを担当。 『ストリートファイターV』では、キャラクターデザイン、モデル監修、販促物デザインなどを担当。

カプコンでの足跡

――これまで、たくさんのカプコンタイトルに携わっているKikiさんですが、今回の「Kiki」というペンネームは、どういった由来でこの名前にされたのでしょうか?

Kiki:思いつくまま、その場で決めました。作品のみに価値を求める人間なので、その辺に対するこだわりはないです。『バイオハザード』のときには、また違った名前を使っていました。「○○が描いたそれ」という見方ではなく、「それを描いた○○」でありたいので。定着しそうになれば、また違うペンネームを使うでしょうね(笑)。

――今作、『ストリートファイターV』を担当することになった経緯は、どのようなものだったのでしょうか?

Kiki:かねてより仕事で一緒だった中山D(※『オトレンジャー』ディレクター)の推薦で、現ポジションに座らせていただいております。
考え方や趣向まで合致するところが多いのが理由でしょうか、「背中を任せられる」と言われたことが何よりもうれしい言葉でした。あと「女だったら奥さんにしたい人」とも(笑)。

過去タイトルの、Kikiさん制作アート集。『バイオハザード』シリーズや『デッドライジング』のアート、キャラクターデザインなど、振り幅の大きい、多彩な仕事をこなされてきたKikiさん。『デッドライジング』に登場する2千点以上のアイテムも、かなりの数がKikiさんデザインとのことです!!

――Kikiさんのアートは、ペインティング、“塗り”が中心のものと、“線”が中心となるドローイングの二種類のデザインがありますが、どういった形でタッチを使い分けられているのでしょう?

Kiki:学生のころから油画もエアブラシも彫刻もやっていましたから、元々複数のタッチは持っていました。強いて言うなら、とあるタイトルで物凄い量の作業を振られ、線ではなく面で描くことを強いられたことがきっかけでしょうか。面は線以前の構成要素であり、スピードや適格性において線に勝るので、そのタッチを選びました。今でも、線画はたまに描きますよ。デザイン手法としては、Photoshopを使い、シルエットを黒で塗りつぶして、“平面彫刻”のようなイメージで、光でディテールを掘り起こしていきます。

――カプコンのデザインは、塗りつぶしたときにキャラが判別できる“シルエット主義”とよく言われますが、Kikiさんがデザイン時に注意していることはありますか?

Kiki:デザイン物を任させることは全体バランスもそうですが、個人的には、ストーリーや世界設定を読み聞きした段階で、その世界へ飛び込んでイメージし、実際にキャラクターに合うような想像行為(イメージ作業)を行います。キャラに限らず、背景、世界を構築するさまざまなものを見て、それを、イメージの世界からデスク上に連れてくるような感覚です。コンセプトアートやデザイン設定段階において、最も重要な作業ではないでしょうか。

Kikiさんによる、『ストリートファイターV』アレンジコスチュームデザイン画。『ストリートファイター』シリーズの文脈を踏まえつつ、それぞれの個性を活かしたデザインがされています。

さて、Kikiさんインタビュー(前編)はここまで!
続いては、今作のデモイラストや限定版イラストを担当したBENGUSさんです。
続けて、どうぞ!

BENGUS

BENGUS

代表作『ストリートファイター』シリーズ、『ヴァンパイア』シリーズ、『MARVEL VS.』シリーズ等、数多くのタイトルを担当。『ストリートファイターV』では、ストーリーデモ、限定版BOXアートなどを担当。

カプコンでの足跡

――BENGUSさんは1992年にカプコンに最初に入社されて、『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』や『エイリアンvs.プレデター』の背景、デモを担当されています。イラスト集「ストリートファイターアートワークス 極」では、間違ってプログラム担当と記載されていますが、実際は、背景・スクロール担当のグラフィッカーをされていたのでしょうか?

BENGUS:そうですね。入社当時は背景の部署で、主にデモのドットを打ってました。

――学生(日本工学院八王子専門学校)時代には、そのあたりの勉強をされていたのでしょうか?

BENGUS:当時は、今みたいにゲーム学科とかマンガ・アニメ学科みたいなものは全然無い時代だったので、まったくそういう勉強はしていません。絵は子供のころはよく描いていたのですが、学生時代は、たまにコソコソ描いている程度でした。

BENGUSさんが開発に参加された『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』のデモ画像。当時の限られた表現力の中、その絵の上手さ、キャッチーさで人目を惹きました!

――BENGUSさんが開発に入られて、初めてキャラクターを描いたのはいつですか? 『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』のデモで人物を描いたのが、キャラクターをCGで描いた、初めての形になるのでしょうか?

BENGUS:そうです。初のキャラがラスボスの「リッチ」で、グラスを掲げてるところです。次が集客デモで流れる「コボルド」で、そのバックの街並みが、唯一打った背景ドットです。あとはキャラクターばかり打っていました(ショップの店員はやってないです、すごく打ちたかった!)。その街並みを制作中、ちょうど社長(現会長)が開発を見て回っていらして、「ファミコンみたい(なドット)やなあ」と言っていただいたことが、良い思い出です。

こちらが、『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』ラスボスのリッチと、ゴブリンデモイラスト。キャラクターの邪悪なまがまがしさと、グラス等の繊細な描写が共存する、素晴らしいグラフィックです!

そしてこちらが、『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』も入った『ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記』。パッケージイラストは、BENGUS(剛田チーズ)さん担当です!!

――その後、BENGUSさんは「ギャルズアイランド2」(ゲーメスト刊・1993年)の春麗の表紙で、初の紙のイラストを担当されますが、どのような形で声がかかったのでしょうか? 一晩で数十枚のラフを描かれたという逸話が残っていますが、制作期間はどのぐらいでしたか?

BENGUS:他の描ける方々の手がいっぱいだったので、仕事が回ってきました。それまで学校の図工や美術で描いていた程度だったので、リキテックスとか初めて使ってみて、とても塗りやすく、いい道具を使うと描きやすいんだな~!ということを思いました。

ゲーム雑誌『ゲーメスト』より刊行された、ゲーム美少女キャラを集めたムック『ギャルズアイランド2』の表紙イラスト。こちらがBENGUSさんのデビュー作で、当時はイラストレーターの名前が掲載されていなかったため、「これは誰が描いたんだ!?」と話題になりました。

――その後、『ストリートファイターII’ターボ』でキャラ単体イラスト(上半身イラスト)を担当されます。初めて単体イラストを担当されて、いかがでしたか?

BENGUS:このタイトルは、同時に西村キヌさん(※元カプコン所属のイラストレーター)が全身版の単体イラストを担当されていて、何枚かポーズのラフをお手伝いさせていただいたのですが、仕上げまでしなくていいのと、勢いのあるポーズをザッと殴り書きできたので、こっちの方が楽しかったです。上半身だけだと、どうしてもかしこまったポーズになってしまうので。


こちらは、BENGUSさん作『ストII’ターボ』の上半身イラスト(春麗)。
セル画によるイラストです!


こちらが、西村キヌさん作の『ストII’ターボ』全身イラスト(サガット)。BENGUSさんがラフを制作し、キヌさんがペン入れやディテールを詰めたそうです。

――作品毎に絵柄を変えられることが多いBENGUSさんですが、『スーパーストリートファイターII』から『ストリートファイターZERO』、また、『パワーストーン』や『ヴァンパイア』『新鬼武者』などでも大幅にタッチを変えられています。それぞれ、どのように開発と相談し、タッチを決められているのでしょうか?

BENGUS:絵柄を変えるのは、とくに意識してないです。基本的に“締切に間に合わせる”ことを第一優先にして、期間内でなるべくいい感じの絵になるように一生懸命やる、という感じです。当時は“締切”という項目が辞書に無い方々が周りに多かったので、間に合うならタッチはとやかく言うまい、という感じだったのではないでしょうか。

『スパII』『ストZERO』『ヴァンパイア』『パワーストーン』『新鬼武者』と、さまざまなタッチを使いこなすBENGUSさん。まったく別の人が描いている、と思った人も多かったそうです。

――個人のタッチを徹底して追求される方がいらしたので、逆にBENGUSさんとしては、タッチはこだわらなかった、と。

BENGUS:そういう追求する方々がいらっしゃったので、僕みたいなタイプも一応居場所があったのですが、今はどうなんでしょうかね? 『パワーストーン』の時は、こういう絵で行こう、というのがあきまんさん(※『ストII』など数多くのカプコンタイトルのキャラデザイン、アートディレクションを担当。『パワーストーン』ではキャラクターデザイン)からあったので、練習しました。そういえば、パワーストーンは、なかなか描けなくて苦労しました。

BENGUSさん作『パワーストーン』メインビジュアル。対象年齢が上がっていく対戦格闘ゲームに対して、より低年齢層も意識した、意欲的なタイトルでした。

――以前、『マーヴル vs. ストリートファイター』のイラストで、キャラクター単体イラストを丸く描かれたのは、効率化のためとうかがったことがあります。ほかにも、効率化の工夫をされた思い出はありますか?

BENGUS:キャラクターが沢山出てくるゲームを複数担当することが多かったので、効率化の工夫をせざるを得ない、という状況がほとんどです。凄い絵を描こう、とかそういう余裕はあんまり無いです。絵柄が変わるのは、効率化のための副産物だと思います。

『マーヴル vs. ストリートファイター』の春麗イラスト。円形に収まるように、キャラクターイラストが制作されています。

――当時のカプコンデザイン室は、対戦格闘ゲームのイラストが多かったこともあり、筋肉の描写が素晴らしいですが、筋肉や人体解剖、また色彩の勉強なども、デザイン室に入ってからされたのでしょうか?

BENGUS:デザイン室に入ってからです。筋肉や人体解剖はいまだによく分かっておらず、なんとなくでやっております。色彩は、好きな色に好きに塗っているだけです。

――それでこのクオリティ! 驚きです!!

BENGUSさんの代表作の一つ、『ストリートファイターZERO2』春日野さくらのイラスト(リキテックス、ガッシュ併用・紙に着彩)。ヒジまわりや脚の抑制の効いた筋肉表現、足元・地面に落ちる影の赤から青へのグラデーション、頭部にかかる差し込み光などがキャラを彩る、本当に素晴らしいイラストです!

さて、BENGUSさんインタビュー(前編)も、今回はここまで!

次回はKikiさん、BENGUSさんの今作『ストリートファイターV』への関わり、そして、数々のナゾに迫ります!

[→インタビュー<後篇>はコチラ]