Rufus’s treat.

ルーファスとキャンディ。
ふたりが運命的な出会いを果たしたのは、2年前の秋の日だった。

その日、中西部格闘大会で優勝を飾ったルーファスは、
賞金を手に意気揚々と会場を後にし、愛用のバイクが停めてある駐車場へ
向かっていた。
その道すがら、どうも遠くのほうが騒がしいことにルーファスは気がついた。
おそらく、優勝した自分を探して、ファンが駆けずり回って騒動になっているんだろう。
まったく仕方がないな、これだから人気者は楽じゃないぜ・・・。
ルーファスはその大きな巨躯をすばやく翻し、騒がしい方向に向き直った。
その先にいるはずの自分のファンに、自分の居場所を教えてやろうと思ったのだった。
すると間もなく、向こうから若い女性が、猛烈な勢いでルーファスのほうへ走ってきた。
その後ろからも、数人の男たちが走ってくるのが見える。
近づいてくる靴音から、先頭の女性はかなり高いヒールを履いているようなのだが、
そのスピードはおそろしく速く、後続の男たちをぐんぐん引き離していく。
「うおっ、すげえ!」
ルーファスが感嘆の声をあげた次の瞬間、
その女性がルーファスの胸に思いきり飛び込んできた。
女の小柄な体が一瞬ルーファスの巨躯に埋もれたが、すぐに顔をあげると、
女は叫んだ。
「助けて! 追われてるの!」
「なんだって・・・」
ルーファスが口を開こうとするより早く、男の声が割り込んだ。
「食い逃げだ!!」
見れば、ようやく追いついた数人の男たちが、ばらばらと足音をたてて走り寄ってきた。
そのうちの一人が肩で息をしながら、ルーファスと若い女性を見やり、
ほっとしたように言った。
「・・・はあ、はあ、まったく・・・とんでもねえ逃げ足だ。助かったよ、
その女をこっちに渡してくれ」

それを聞くなり、ルーファスは野太い声で
「断る!」
と、言い放った。
「は?」
力強いルーファスの言葉に、男たちは思わずぽかんと口を開けた。
ルーファスはそんな男たちを前に、大きな声でしゃべりはじめた。
「お前ら、どう見てもこいつに追いついてなかったじゃねえか。勝負はこいつの勝ちだろ!
だいたいお前、さっき俺がしゃべろうとしたところに割り込みやがったな。
俺はしゃべるのを邪魔されるくらい腹の立つことはねえんだよ。
この俺様、カリスマバイクビルダーにして超有名な格闘家ルーファス様の言葉
をパンピーがさえぎるなんて、 そんな無作法なことってあっていいのか?
まさかな。いいわけねえだろ。なんて礼儀知らずなんだまったく」

「いや、勝負って・・・そもそも食い逃げ・・・」
思いもよらないルーファスの反応に、若い男たちはあっけに取られながらも、
なんとか言い返そうと試みたが、今度は甲高い声がその言葉をさえぎった。
「かあっこいい〜! あなた、ルーファスって名前なの? 格闘家なのね?
どのくらい強いの? あ、あたしはキャンディよ!」

キャンディがルーファスの顔を嬉しそうに覗きこむと、ルーファスも彼女を見、
満足げに微笑んだ。
「フッ、お前もイカシてるぜキャンディ。俺の強さは、まあ全米一ってところ・・・」
「なーに言ってんだ、アメリカ最強といえばケン・マスターズに決まってん・・・ふぐっ!」
性懲りもなくルーファスの言葉をさえぎった男の顔面に、
ルーファスは封筒を思いきり押しつけた。
「な、なにすんだ!」
ルーファスは哀れな“パンピー”を見下ろし、やれやれと首を振った。
「雑魚は黙ってろって言ったろうが。それ持って消えろ。
俺はキャンディと話をしてるんだよ」

男たちは怪訝な顔をしながら封筒の中を覗き込んだが、
次の瞬間、おおっと驚きの声を上げた。
「なんだ、この小切手! も、もらっていいのか?」
「レディのメシ代を払うのはセレブの義務だからな」
もはや彼らに目もくれずに言うと、ルーファスはキャンディに向き直った。
「さてとキャンディ、メシはもう食ったんだったな? じゃあ食後にココアでもどうだ?」
「きゃーっ、それステキ! でもルーファス、今の小切手はどうしたの?」
「なに、ちょっとした賞金さ」
「なんかわかんないけどステキー!」
「よし、じゃあ行くか!」
「うん!!」
キャンディはぴょんと跳ねて、ルーファスの太い腕に自分の細い腕をからませた。
小切手を受け取った男たちは、腕を組んで歩きだすふたりを、
ただ呆然と見送るしかなかった。

ルーファスとキャンディの世界最強への道は、ここから始まったのだった。

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