prologue

場所は米国ロサンゼルス。現地時間2017年6月12日。
PlayStation® E3 Media Showcaseの会場でスクリーンに映し出された映像。

最初に、ハンターが大剣を背負い密林を歩く姿。その後、映像はめまぐるしく展開し、ハンターとモンスターが、時にはモンスターとモンスターが生存競争を繰り広げる。多彩な命が躍動し、多彩な命が息吹く世界。その映像を見て、会場にいた国内外のゲーム業界関係者は惜しみない拍手喝采を送った。

全世界に強烈なインパクトを与えた「モンスターハンター:ワールド」。シリーズ最新作となる本作の開発に当たっては、企画・構想の段階から明確なコンセプトがあった。

あらゆる面で進化したモンスターハンターの実現。

今の時代の最新技術でモンスターハンターをつくると、どうなるか。それを体現したものがモンスターハンター:ワールドだ。「本作ならではの新しさ、シリーズを通して培ってきた“らしさ”。どちらも損なうことなく、最新技術を駆使したモンスターハンターを完成させることが、私たちの使命です(辻本)」。

本作は、シリーズで初めてPS4でリリースされる。さらに従来作にはない様々な新要素も盛り込まれるため、クリエイター一人ひとりに要求されるレベルは非常に高い。「シリーズ初の試みが多い分、開発プロセスにおいて既存の物差しで測れない要素が数多く発生することが予想されました。そのため、チームビルディングの段階から、破綻せずゴールまで走り切れるチームを目指す必要がありました(辻本)」。

モンスターハンター:ワールドの開発チームの規模は社内人員だけでも多い時期で約200名。トータルで関わった人数は、過去最大規模。
ディレクターの徳田(※)をはじめとする中堅~ベテラン層はもちろんのこと、今回は若手のクリエイターも多くチームに入っている。モンスターハンターシリーズに精通したクリエイターはもちろん、シリーズ未経験のクリエイターも多い。

このチーム構成のバランスは、モンスターハンターシリーズの“らしさ”を維持しつつ新しいことにも挑戦するという点で非常に効果的だった。「従来作のゲーム性ではボトルネックだった要素でも、“とりあえず作ってみてから入れるか削るか判断しよう”という意志が常にチーム内にありました。シリーズ経験者と未経験者、ベテランと若手がチームとしてうまく噛み合って機能した結果だと思います(藤岡)」。

※徳田優也 モンスターハンター:ワールドで初めてディレクターを担当。入社前からのモンスターハンターシリーズのファンでもある。

未知への挑戦と、“らしさ”の共存。

モンスターハンター:ワールドで採用する新要素がモンスターハンター“らしさ”を損なわないかどうかの判断には、常に難しさが付きまとう。「先入観や数値ではなく、感覚値で『これはモンスターハンターか、そうではないか』『本作のゲーム性と合っているかどうか』を判断するよう、チーム全体で心掛けてくれました(辻本)」。

例えば、従来作ではマップにエリア制を採用していたため、アイテム使用による硬直はモンスターとの駆け引きを含むゲームバランスを維持するために必須だった。「しかし、エリア制を撤廃した今作では、動きながらのアイテム使用はゲームデザインと絶妙にマッチしていたんです(藤岡)」。

しかし、マップのレベルデザインには相当な労力を要したという。「シームレスなマップを採用した本作では、フィールドの規模感や距離感について過去作のノウハウを参照できないため、かなりの試行錯誤を重ねました。さらに、そのシームレスで複雑なマップ構成にモンスターも対応させる必要があったので、モンスターのAI面の構築も一筋縄ではいきませんでした(藤岡)」。

作り手の想像が及ばないことをカタチにしていくのは、非常に困難が伴う。そのため、プロトタイプの段階に到達するまでに、非常に時間がかかったという。「ただ、そこを乗り越えたことで、多くのクリエイターが今の技術に関する知識や作り方のレベルが上がったと思います(辻本)」。

極限までカスタマイズされた、次世代開発エンジン。

自社エンジンを要するカプコンのゲーム開発では、開発エンジンのマイナーチェンジや機能向上も日々行われている。「本作のモンスターやフィールドのコンセプトやデザインをCGにしていく過程で、開発エンジンを改良しないと実現できないことがたくさんありました。例えば、モンスターの翼や草木の光の透過処理や、肌の質感など、数え上げればきりがありません。絵づくりの面でも開発エンジンが担う役割は非常に大きなものでした(藤岡)」。

モンスターハンター:ワールドの開発では、ゲーム制作と並行してMT Framework(※)のチューンナップが日々行われ今回のモンスターハンター:ワールドの制作に最適なエンジンにまでカスタマイズした。開発チームに技術者が入り、クリエイターたちと意思疎通しながら、本作向けにエンジンの改良を重ねていたのだ。「自社エンジンがあるということは、社内に技術者がいるということ。そのメリットは非常に大きいですね(辻本)」。

「技術者とクリエイターでは、ゲームづくりに対するアプローチやそもそも果たすべき役割が違いますが、ゲームを完成させるという到達点は同じです。その意味で、各部門が一致団結し、全スタッフあげてゲームづくりに取り組めるのはカプコンの大きな強みだと実感します(藤岡)」。

正式発表を控えテンションを高めるメンバーたち。

新しく採用するアイデアもあれば、やむを得ずオミットするものも多い。それがゲーム制作の現場の常でもある。そうしてゲームは少しずつ完成に近づき、ある段階で正式発表するタイミングを模索する。モンスターハンター:ワールドにおいてのそれは、E3 2017だった。

「モンスターハンター:ワールドで表現したいものがすべて凝縮されたセミプレイアブルは比較的早い段階で完成していて、社内にもそれを試作版として公開しました。そのときのリアクションが非常に良かったので、E3 2017に向けて自信を持っ突き進むことができました(藤岡)」。

そして、E3 2017で公開するPVをチーム内のプロジェクターでチェックしていたときのこと。開発チームの面々が自然と周りを取り囲み、映像を見て一様にテンションを上げたという。「メンバー一同、大いに盛り上がっていました。口々にすごい! って興奮した様子で。当の本人たちがつくったものなんですけどね(笑)。ゲームづくりに対して、これほどまでにモチベーションの高いメンバーを誇らしく思います(藤岡)」。

「プロデューサーとしても、モンスターハンター:ワールドを世界が注目するE3の場で発表できることが非常に楽しみでした。ただ、E3の当日、発表のまさにその瞬間を迎える直前はすごく緊張しましたね。伝えたいことがきちんと伝わるかな、という不安がよぎったんです(辻本)」。

その歓声は、世界中の大歓声。

そして迎えたE3 2017当日。PlayStation® E3 Media Showcaseにおいて、モンスターハンター:ワールドのPVが世界に向けて公開された。絶え間ない拍手と口笛でモンスターハンター:ワールドに喝采を送る、海外のゲーム業界関係者たち。本作の期待が、日本国内だけではなく全世界に及ぶことを物語る光景だった。PVの最後に“Early 2018”の文字が映し出されると、会場のボルテージは最高潮に達した。

「実はその場に居たにも関わらず、これほどのリアクションがあったことに全然気づかなかったんです。おそらく、発表を終えたという安堵の方が大きかったからでしょうね」。そう辻本も藤岡も話す。「発表時の会場の様子をスタッフが撮影してくれていたんですが、後でそれを見たときに、ようやく会場のリアクションと、伝えたいことが伝わったことを実感できました」。

――そして2017年8月現在。開発は佳境に差し掛かりつつあり、既に各種のチェックを行う段階に突入している。

「実際にプレイしていただければ、間違いなくこれはモンスターハンターだ! と思えるものになっています。本作からプレイし始める方にとっては、これまでに味わったことのない新しい世界を体験していただける自信があります(辻本)」。

「私はモンスターハンターシリーズを『このゲームをつくりたい!』と憧れてもらえるタイトルにしたいと考えています。そして、モンスターハンター:ワールドは、ゲームクリエイターを目指す多くの人にそう思ってもらえるタイトルになったと自負しています(藤岡)」。

今の時代だからこそ実現できるモンスターハンターの世界とは?
モンスターハンター:ワールドが目指した高みとは?

2018年初頭。
全世界のゲームファンが、それを肌で感じられる日は、もうすぐだ。