ロックマン11 運命の歯車!! 王道追求とブランド復活 土屋 和弘 1992年、プログラマーとして入社。「ロックマン7」や「ストリートファイターZERO」の家庭用移植などを担当し、2001年頃にディレクターに、2004年にプロデューサーに転向。現在は「ロックマン クラシックスコレクション」や「ロックマン11」を担当。 小田 晃嗣 1991年、プランナーとして入社。「超魔界村」の開発や「バイオハザード」の立ち上げ、「バイオハザード0」のディレクションをはじめ、さまざまなタイトルの開発に携わる。「ロックマン11」では企画の立案を行い、開発承認を経て本作のディレクターに。

prologue

コンシューマーゲーム黎明期の1987年に産声をあげ、2D横スクロールアクションゲームの名作として多くのファンの心を掴んだロックマンシリーズ。絶大な支持を得て数々の派生シリーズが誕生したものの、2010年以降、コンシューマー機でのリリースは完全に途絶えてしまった。

しかし、シリーズ誕生30周年となる2017年。その年の9月に開催された東京ゲームショウにおいて土屋が放ったこのひと言に、シリーズのファンはにわかに色めき立った。

「カプコンはロックマンを忘れたわけではありません」

そして、2017年12月。シリーズ完全新作となる「ロックマン11 運命の歯車!!」が2018年後期にリリースされることが正式発表された。

長い沈黙を経て、再び動き出したロックマンシリーズ。

実に8年ぶりの続編となる「ロックマン11」だが、そもそもシリーズ再開に至る経緯とは何だったのだろうか。

「発端は、小田がディレクターとしてセルフリメイクを担当した『バイオハザード0 HDリマスター』を開発していたときのことでした。私も小田と共に同タイトルに携わったのですが、開発終盤の忙しい時期なのにもかかわらず、小田が熱心に次回タイトルの企画書の草案を練っていて。それが、ロックマンの続編の企画書だったんです(土屋)」

「私は入社前からプライベートでもロックマンを楽しんできました。しかし、社内の事情でシリーズが途絶えたことを非常に悔しく思っていたんです。カプコンのソフト購入者様のアンケートを見ても、続編を望むユーザーの声は多数。仕事で海外に行っても『カプコンはもうMEGA MAN(※)をつくらないのか』とよく言われました。じゃあ、誰もつくらないのなら自分がやろう。国内外の大勢のファンのために、カプコンはロックマンを再開させる責任がある。そう思ったんです(小田)」

※ロックマンの英語圏におけるタイトル

入念なマーケティングの結果、目指したのは“王道”。

企画書作成の段階でも、シリーズ再開に当たってさまざまな懸念があった。派生シリーズが多いロックマンは、どのシリーズでの続編が望まれているのか。そもそも、エンターテインメントの選択肢が多彩な今の時代に、2D横スクロールアクションゲームを手に取ってもらえるのか。発売して万が一、大きな損失を生み出してしまった場合、今度こそロックマンシリーズは完全に終わってしまう。

「そこで、企画の初期段階からきちんとマーケティングをした上で方向性を決めることになりました。日本だけではなくアメリカも対象に、どのシリーズの続編が望まれているのか、そもそもロックマンシリーズを知っているかどうかなど、幅広い層に対して入念に調査しました。その結果わかったのは、一番望まれているのはオリジナルシリーズの続編だということ。また、『ロックマンに特に惹かれない』という層の意見もプロファイリングし、どんなロックマンを開発すべきかについて方針を固めていったんです(土屋)」

「一番求められているのは“王道追求”だとマーケティングでわかったので、企画書もその方向で練っていきました。単なる原点回帰にならないよう、王道を守りながら新しいことを盛り込んでいくことも意識しました。王道を崩さないボーダーラインの判断は、開発承認が得られてプロジェクトを進めている現段階においても極めて難しいと実感しています。それでも、今回集まってくれたスタッフであれば、どんな高いハードルでも必ず乗り越えていけると信じています(小田)」

原点回帰ではなく王道追求に向けて
多種多様な人材をスタッフィング。

チームビルディングの際は、バラエティ豊かなメンバー構成にするよう意識していたという。

「というのも、ロックマンファンのスタッフだけを集めてしまうと、昔の様式美に固執したロックマンになる懸念があったからです。ベテラン、若手、中堅、ロックマンが好きなスタッフ、そうでないスタッフをバランス良く集めて、バラエティのグラデーションをつくる。そうすることで初めて、ファンの期待に応えられて、かつ今の時代に求められるロックマンが実現できると判断しました(土屋)」

チームメンバー各々のロックマンへの思い入れは多種多様。もちろん、ロックマンファンのクリエイターの熱量はひときわ高い。

「チーム内には、ロックマンが好きでカプコンに入社したというプログラマーもいます。入社2年目のデザイナーは『子どもの頃からずっとロックマンが好きで、いつかチャンスがあればやってみたい』と直属の上司に話していたそうです。配属が決まると満面の笑みで喜んでいて、こちらとしても本当に嬉しかったですね(小田)」

「もちろん、ロックマン・シリーズに関わってこなかったクリエイターの中にも参加してほしい人がたくさんいました。そういうクリエイターに対しては『新しいロックマンが生まれる現場にいなくていいのか?』を殺し文句に説得してまわりました(小田)」

古参のファンにも、現代のゲームユーザーにも受け入れられるロックマンを目指して、多様なスキル、多様な想いを抱いたスタッフが集まり、開発に取り組んでいる。

個々の力が結集し、新世代のロックマンを形づくる。

メンバー間の衝突は日々あるが、それも「良いものをつくりたい」という意志がぶつかり合うからこそだ。

「各メンバーのこだわりが詰まったプログラム、サウンド、テキスト、演出。それらをひとつの画面の中に盛り込もうとすると、どうしてもいずれかの要素が溢れてしまうんです。今回は優秀なスタッフが集まっていることもあり、それがより顕著です。“つくっては捨て”がゲーム開発現場の常ですが、いくら捨ててもまったく追い付かないほど、日々新しいアイデアが生まれています(小田)」

「個性の強いクリエイター陣が衝突しながらもまとまって走り続けられているのは、小田の力によるところが大きいと思います。どんな小さな変更点に関しても毎回アンケートを取って、全員の意見を聞いた上で意思決定しているからです。それによって、メンバー全員がすべての事項を自分事に捉えることができています(土屋)」

「私としては、リーダー陣が状況に応じて的確に提言してくれるので非常に助かっています。あと、土屋が開発をクリエイターに託しながらも、要所で方向性を明示してくれるのも開発がスムーズな一因だと感じています(小田)」

「開発の細かい面にまで口を出さないのは、私のモットーでもあります。例えば、自分の想いを完璧に形にしても、それは単に私にとっての100点のゲームにしか成り得ません。想いをシンプルに言語化してクリエイターに託すことで初めて自分の想像を超えた110点、120点のゲームを実現することができるんです(土屋)」

8年の空白の期間を経て、ブランド復活へ。

2018年2月現在、「ロックマン11」は開発の真っ只中にある。ロックマンの王道を追求しながら、ファン以外のゲームユーザーの興味も喚起する要素の実装。その実現は決して楽ではないが、開発メンバーの全員が各々の想いと技術をもって新世代のロックマンの実現に邁進している。

「私が入社して初めて開発にかかわったゲームがロックマンでした。ゲームをする側からつくる側になって初めて担当したロックマンシリーズは、いわば自分にとっての“ゲームづくりの先生”です。その新作の開発にプロデューサーとして携わっていることに、ロックマンシリーズとの縁の深さを感じています。最高のメンバーで開発に取り組んでいるロックマン11を、ひとりでも多くの方に遊んでもらいたい。プロデューサーとして、ひとりのロックマンファンとして、心からそう願っています(土屋)」

「私がロックマンシリーズに初めて出会ったのは学生時代で、夢中になってプレイしていました。当時はロックマンがどのような手順を経て出来あがっていくのかわかりませんでしたが、今ならわかることがあります。それは、ロックマンシリーズがどれだけの高い技術と緻密な計算のもとにつくられていたのかということ。そんな素晴らしいシリーズの新作の企画を立ち上げ、制作に携われている今を嬉しく、そして誇らしく思っています(小田)」

土屋や小田をはじめとする開発メンバーも、ロックマンシリーズの復活を心から望んでいる。2018年後期、多くのファンの願いと期待と共にロックマンが帰ってくる。