インタビュー

ベスト版『大神 絶景版』発売記念特別インタビュー

1月29日(木)「大神 絶景版 PlayStation 3 the Best」発売を記念し、カプコン公式ファンサイト「マイカプコン」のコラム「カプコン伝説」の「大神絵師インタビュー」完全版をここに掲載!

大神絵師:吉村 健一郎氏インタビュー

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"人がいない"大神世界?

――吉村さんが大神の開発に入るきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?

吉村:カプコン在籍時に、一旦ペンディングになった『バイオハザード4』の開発スタッフに入っていたんですね。
そこで一度開発中止になったため、クローバースタジオ(※)に移籍して神谷さんのチームに入り、そのまま『大神』スタッフに、という流れでした。

――人物のキャラクターデザインを島崎(麻里)さんとご担当されていますが、その分担はどのように決めていったのでしょう?

吉村:実は最初、人間は出ない予定だったんです。

――えええええええええ!?

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人間同士の掛け合いも、非常にドラマチックな大神の世界。
まさか、人間がいない設定もありえたとは!?

吉村:最初は「白い狼が出てくる」「緑豊かな世界に」というコンセプトだけが決まっていて、出てくるのは名前も無い動物だけ、という設定でした。
「荒廃した惑星をテラフォーミングしていく」という方向性のときもありました(笑)。

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初期のコンセプトアート。
最初は、恐竜も登場予定!?

――ゲームシステムの制作は、かなり迷走したんですか?

吉村:一週間ごとに、企画書のシステム案が書き換わっている時期がありましたね。
アクションをしながら、シミュレーションゲームのヘックス(マス目)を順番に緑にしていく"アクション×シミュレーション"という案のときや、フィールドの輪っかを順番にくぐると"大神降ろし"が発動する案、魔法陣が出現してリアルタイムバトルで技を選択して戦う案もありました。

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最終的な戦闘画面です。
漢字のタイポグラフも駆使した、"和"の妖しい雰囲気が強く出ています。

――かなりの試行錯誤だったんですね。そして最終的には、アマテラスを中心とした日本神話や昔話ベースのアクションRPG的な形になったと。

吉村:途中までは、現在のデフォルメタッチの方向性ではなく、『バイオハザード』的なフォトリアルの方向性も考えられていたんです。

――え、そうだったんですか!?

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デフォルメの中に、和の清冽さを感じる『大神』世界。
表現として、フォトリアルの可能性もあった!?

吉村:神谷さんはゲームキューブの『バイオハザード』リメイク版を見て、その方向性を検討したようなんですが、ゲームキューブ版『バイオハザード』はプリレンダリングで、基本的には背景は一枚絵で動かないんですよね。
『大神』は背景もすべてリアルタイムのポリゴンを想定していましたから、プレイステーション2のマシンパワーも足りなかったんです。
私としても、『バイオ』でフォトリアルはさんざんやった後だったので、それ以外のビジュアルの方向性を主張していました。
その流れもあり、最終的にあのタッチになりました。

――あの画面の美しさに感動した人は、多いと思います。

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ビジュアルで大きなインパクトを残した『大神』。
花が咲くときの、あでやかさも良いですね。

吉村:技術的には全然たいしたことはやってなくて、後でCG雑誌の取材とかで困ったんですけどね(笑)。
あのタッチは、影を落とさない基本のモデルを作って、アウトラインのために一回り大きな真っ黒なモデルをかぶせ、基本モデルの表示を優先させることで輪郭線を出し、それに全体にフィルターをかけているだけなんです。

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画面上のアマテラス。
一回り大きな黒いモデルをかぶせて、輪郭線を作っていたそうです。

吉村:トゥーンシェードではないですし、ライティングすらついていない。
アウトラインをブラしたり、黒を抽出していくつかズラして重ねたり、頂点カラーで色のグラデーションを入れたりはしていますが、そんな高度な技術は使ってないんですね。

――技術的には難しいことをせずに、あの美しい画面を設計したのも、それはそれでスゴいと思います!

キャラクターデザインについて

――人物キャラクターのデザインについてですが、島崎さんとは、どういった形で分担したんでしょう?

吉村:実はあまりに企画が難航しているので、ある年末に開発の片貝さんと焼肉屋で晩飯食べながら、「このままキャラとか背景作っているんじゃなくて、ちゃんと企画を進めないとマズいんじゃないか」という話になって。

――えらく場所が具体的ですね?(笑)

吉村:それで、半年キャラクターデザインを止めて、私も企画をやることになったんです。
で、もともと制作すべきキャラ数から手が足りなくなるのは分かっていたので、上手い島崎さんにキャラクターデザインに入ってもらっていたんですが、企画をやっている間は彼女をメインにデザインを進めてもらいました。
それで、イッスンとかサクヤとかは、彼女がデザインする形になって、悔しくて。

――え、"悔しい"!?

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精霊であるサクヤ。
彼女は島崎さんのデザインです。

吉村:企画を担当しているので、それらのキャラが重要になるのは分かっていて、しかもキャラの個別ストーリーや設定は、自分で把握しているわけです。
そのデザインを、他人に渡さなければならない!

――(笑)なるほど。

吉村:でも、彼女のデザインは素晴らしかったと思いますよ。

――ではデザインについてお聞きしますが、アマテラスのデザインについては?

吉村:それなりにデザインの落とし込みは検討しましたが、大きく悩む部分はありませんでした。
企画立ち上げの段階から、"和風""白い狼"という部分はブレていなかったですし。

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アマテラスデザイン案です。
左上が最終決定したデザインですね。

――アマテラスは、背中に鏡と炎が付いていたりシルエットが独特で、シンプルですが非常にオリジナリティのあるデザインだと思います。その辺も、すんなり決まったのでしょうか?

吉村:私は個人的に、犬が服を着ているのに違和感を覚える人間なんですね。
"人為的に着せられている"感じがしてしまうので、そういうデザインにはしたくなかったんです。
そして、アマテラスは"神様"なので、"三種の神器"的なものを考えたとき、まず"鏡"を付けよう、というのも決まって。
犬でそういうものを付ける場所って、背中のあの位置ぐらいしか無いんです(笑)。

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アマテラス技発動の設定画です。
さまざまなアイディアが投下されたことがうかがえます。

吉村:ただ、鏡だけだと、銅の塊をしょっているだけなので、色味的に見栄えがしない。
そこで"天照"は"太陽神"でもあるので、太陽を示す炎を入れて、デザインは決定しました。

――すごく理屈の通ったデザインだと思います!

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画面に落とし込まれた"主人公"アマテラス。
神々しさと親しみやすさを合わせ持つキャラクターです。

――人物に関しては、いかがでしょう?

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それぞれが個性溢れるキャラクターである大神。
ストーリーも、人間味あふれるものが多いです。

吉村:人間のキャラクター造形に関しては、昔テレビでやっていたアニメ"まんが日本昔話"のリスペクトの部分はありますね。
実はアニメのほうは、毎回キャラクターデザインのタッチが変わっていて、イメージもバラバラなんですが、自分の印象の中では、"大神"世界の、あの頭身のキャラクターのイメージが近いんです。
なので、こちらもそれほど迷わず決まりました。
ただ、別の部分で迷いがあって。

――それは、どういったものですか?

吉村:『大神』の世界では、人物は"デフォルメ頭身"なのに、動物は"リアル頭身"なんです。
その二つが同じ世界にいていいのか、という迷いがありました。
実は1キャラだけデフォルメを試した動物キャラクターがいて、イノシシだけはデフォルメなんです。
そこも迷ったんですが、結局はその形に落ち着きました。

――なるほど。プレイヤーとしては「そういうもの」として受け入れてしまいますが、送り手としては迷う部分ですよね。

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リアル頭身であるアマテラスと、デフォルメ頭身である人間キャラ。
描画タッチの統一もあり、違和感無く世界が成立しています。

吉村:また、主人公に関して、アマテラスは、"個性が無いのが個性"という部分もあって、いろんな人の思い入れを受け入れなければいけない分、あまり強烈なキャラクター付けもできない。
例えば、『ヴァンパイア』のガロンのような、筋肉の強弱をつけたデフォルメキャラをすることが、アマテラスは難しいんです。
そういうものを含めて検討し、結果として動物の大半はリアルな形に落ち着いたんですが、あれはあれで良かったと思います。

――さて、そして人物ですが。

吉村:人物の造形に関しては、"男性""女性""子供""老人"の4パターンの基本モデルを作って、そこから、最終的には8種類ぐらいまで発展しました。

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コカリファミリーイラスト。
コカリは、子供のベースパターンになったそうです。

吉村:男性の基本モデルは、クサナギ村のデカいやぐらにいる、オレンジ色の服のオッサンがベースです。
ただの端役ですね(笑)。
女性の基本モデルは、西安京のイベントで葉っぱの舟のミニゲームがあるんですが、そこで出てくるピンクの服の女性です。
これまた端役です。

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こちらが男女のベースデザインです。
これを基盤として、キャラクターが造形されていきました。

吉村:子供のモデルは、コカリですね。
老人のベースは、ミカン爺さんだったと思います。

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ミカン夫婦。
ミカン爺が老人のモデルのベースというところに、納得感がありますね!

――吉村さんお気に入りのキャラはいますか?

吉村:スサノオが好きですね。

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スサノオ。
数々の事件の大元になる、"愛すべき軟弱者"ですね。

吉村:個人的にシンプルな方向性のキャラクターが好きなんですが、スサノオはシンプルでかつ、個性的なキャラになっていると思います。
あの"ダメさ"加減が良いですね。
あれが、ただのイケメンではダメで、あのキャラがオロチを倒すところで、カッコ良さが出るのだと思います(笑)。
個人的なところを言うと、高校時代の体育教師のM先生にインスパイアを受けて仕上げてあって、あのドワーフのような外見と、目のキレイなところに共通性を持たせています。
スサノオのまつ毛で、M先生の目のキレイさを表現しています(笑)。

――スサノオには、そんな極私的なデザインが潜んでいたんですね!
女性キャラはいかがですか?

吉村:私は巨乳好きなので、ツヅラオが好きです(笑)。

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ツヅラオ。デフォルメキャラなのに、色香が溢れるキャラですね!?

吉村:画集「大神絵草子 絆」でも書きましたが、にっ●つ映画の影響からか、"尼さん"という言葉の響きに、甘美なものがありますよね(笑)。
デザインも、心底楽しかったです。
プログラム担当の大森さんという人がいるんですけど、本職のプログラムに疲れると、息抜きに"乳揺れ"プログラムの修正を延々とやっていましたね。
その甲斐あって、すばらしい揺れ…じゃなくて、素晴らしいモーションのキャラになったと思います。

――あと、ウシワカなどはメインキャラの中ではとくに人気キャラですが、デザインのときにはいかがでしたか?

吉村:実は、デザイン時には、ストーリーでああいう活かされ方をするキャラだとは全然決まってなくて。

――え!そうだったんですか!?

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デフォルメキャラでもイケメンなウシワカ。
ストーリーは、後付け!?

吉村:日本の昔話をベースにするゲームの方向性が定まってからは、有名な物語のキャラクターはすべてデザインする形で、先行して作業をしたんです。
ウシワカも、"牛若丸"源義経の伝承をベースに、鞍馬寺で鞍馬天狗に育てられた、という逸話などを参考に、天狗をデザインに落とし込みました。
ああいうキャラと、エピソードになったのはデザインが決定してからなので、その辺もかなり普通と違った作りをしたゲームでしたね。

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鞍馬天狗が意匠として落とし込まれています。
高下駄が、イケメン的な足の長さに貢献していますね。

吉村: "日本の昔話キャラ総キャスト出演"のお話をキチンとまとめたのは、やはり全シナリオを担当した神谷さんが上手だったんだと思います。
ただ結果論ですが、キャラの出番は昔話のエピソードである程度絞り込まれますから、「和風」「昔話」というテーマに助けられた部分も、多分にあったと思います。

――キャラデザインであの数のキャラクターが先に仕上がっていたからこそ、すべてを活かす形で、あのボリュームのゲームになったんですね!

吉村:ボリュームという意味では、モーション担当の方の苦労も大変だったと思います。
確か、人間キャラには男、女、男の子、女の子、爺さん、婆さん、太った人、おばさん、の8種類の基本キャラパターンがあって、それぞれアクションが違います、そこにこれまたたくさんの筆しらべに対するリアクションがあるわけですから、×8でモーションが増加していくので、その数は膨大なものになったと思います。
モーションは『逆転裁判』の岩元辰郎くんも担当されていたんですが、近くに筆しらべがあったとき、目をこする動作などは、『逆転裁判』キャラクターの動きに共通したものを感じます。
逆転裁判ファンの人は、そこも注意してプレイしてみてください(笑)。

――イラストに関して、お気に入りのイラストなどはありますか?

吉村:アマテラスを中心にした、筆神勢ぞろいイラストが好きですね。

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筆神12神集合イラスト。
先頭に立つアマテラスが、りりしいですね!

吉村:集合している感じが出せたかと思います。
これは、描いていて楽しかったですね。
大神のイラストは、日本画の絵の具的なタッチの感じを出すために、アウトラインと中の塗りを別々に筆で多層的に描いて、それを合成しているんですよ。

あとは、アマテラスを中心にした、初期に描いたイラストが思い出深いです。

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最初のコンセプトデザイン画です!
アマテラスの左右にいるキャラクターは…?

吉村:ゲームのタッチの方向性が決まって、初めて描いた絵です。
さっきのお話に出た、基本モデルのキャラクターも全員登場しています(笑)。

――では最後に、プレイヤーに一言お願いします。

吉村:今もファンでいてくれる人には、本当に感謝しかないですね。
第一作からけっこう経っていますが、PS2のゲームだったものがPS3になり、今回ベスト版もサントラ付きで出るのは、やはり支えてくれる人の力によるものだと思います。
今後も、可能であれば続いてほしいところですね。

――ありがとうございました!


※クローバースタジオ:『バイオハザード』シリーズ等を作っていたカプコン第四スタジオが、カプコンの子会社として制作したスタジオ。『大神』『ビューテイフルジョー』『GOD HAND』を製作。2007年解散。

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大神 絶景版 PlayStation 3 the Best 2015年1月29日発売!

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