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4 CEOインタビュー

長期的な企業価値向上のために。成長戦略と将来を見据えた経営の仕組み化を推進します。

ここでは、CEOの辻本憲三が、自身の経営論や市場分析、コーポレートガバナンス強化のための組織改革やリスク管理体制など様々な側面からカプコンの中長期的な企業価値向上に向けた取組みをご説明します。

代表取締役会長最高経営責任者(CEO) 辻本憲三

1. 経営の立ち位置

経営者として挑戦し続けてきた創業からの33年間

「逆境とは誇り高き人生なり」 これは私が定時制高校の卒業アルバムに書いた一文です。中学2年生で父親を亡くし、ゼロからの出発を余儀なくされたことは私を鍛えてくれました。失うものが何も無いからこそ、全てを前向きに捉えることができました。当時、進学校の全日制の生徒には成績では負けていたかもしれませんが、そうした彼らと実社会で渡り合うにはどうしたらいいのか。常に考え続けていた自分がいました。貧しさから這い上がるには人の2倍、3倍の濃い人生を送らなくてはならない。逆境こそが自分を育ててくれると確信していたからこその一文であり、私の経営哲学の原点がここにあるのは間違いありません。

その後、ゲーム機レンタル会社などを経て、1983年にカプコンを創業して以来、株主の皆様から経営を委任されて33年となります。

株主の皆様には、足元の業績をご報告する前に、特に上場からの26年間、私が経営者として皆様のご期待に添えたのかをお話ししたいと思います。経営者の成績は、企業価値の向上にあり、その大きな構成要素である収益結果についてご説明します。

この26年間は大きく3つのステージに分けることができます。

第1ステージ('90/3~'98/3)は、『ストリートファイターII』が大ヒットを放つなど当社の開発力を世界中に知らしめ過去最高益を達成したものの、その後ヒット作の不在や在庫処理などで収益が大きく変動する課題を抱えた9年間でした。 ※上場直前期を含む。

第2ステージ('99/3~'07/3)は、前出の課題「特定のヒット作への依存」と「海外での在庫管理」に取り組みました。「バイオハザード」や「デビル メイ クライ」、「モンスターハンター」など複数の大型タイトルをシリーズ化し、毎年大型タイトルを発売できる体制を整えました。加えて、日本と異なる海外の商習慣を徹底的に分析し、直販体制の導入や在庫数を販売数量の10%以下に抑える仕組みを作りました。

その結果、図表の通り全ての収益項目が増加するだけでなく、営業利益の相対標準偏差も改善するなど安定収益の基盤を構築することができました。一方、ゲーム市場のグローバル化に伴い、開発部門主導のタイトル戦略に限界が出てきたことから、編成・企画機能と制作機能を分離するとともに、試作・本開発の2段階承認制度を確立するなど、経営主導に切り替える構造改革を実施しています。

第3ステージ('08/3~'16/3)は、経営体制の強化のためのガバナンス改革とデジタル戦略に取り組んだ期間です。まず私が会長CEOとして経営戦略を、社長がCOOとして業務執行を担当することで、経営戦略の決定機能と、戦略に従った業務執行機能を明確に分離しました。社長業は中長期的な成長と短期業績の両方に取り組まなければなりません。しかし、私の経験上、経営を進めていくと、どうしても足元の業績に70%の時間を費やす傾向にあります。これでは中長期の成長を確かなものとすることはできません。私も、いつまでも経営に関与できる訳ではありませんので、このような監督と執行の分離をはじめ諸種のガバナンス強化による「経営の仕組み化」を進め、将来にわたって会社が確実に機能するように努めています。なお、デジタル戦略については、統合報告書2016「COOが語る成長戦略」をご覧ください。

この結果、第2ステージの構造改革との相乗効果もあり、全ステージに比較して、全ての収益項目で大きく増加しました。

各ステージの営業利益の正規分布図

※1 '90年3月期は上場前のため、経常利益を代用

※2 各ステージ期間の営業利益の相対標準偏差

2.市場の長期見通し

ゲーム産業の高い潜在成長性と社会的価値

ゲーム産業が勃興したのは1983年に、日本でファミリーコンピュータが発売されたことを契機としています。グローバルの公表データは2000年からしかありませんが、約30年の長期的視点で見ればほぼ右肩上がりに成長しているというのが私の肌感覚です。これは、家庭用ゲーム機がサイクルを経るたびに販売台数を増やしていることからも裏付けられるでしょう。また、2007年以降、スマートフォンやインターネット環境の整備に伴うPCの普及により、これらがゲーム汎用機として市場をけん引したことで、先進国のみならず新興国でも市場拡大が加速したことも要因です。

今後10年後、20年後の見通しですが、私はまだまだゲーム市場の潜在成長性は高いと予想しています。1つ目の理由は、ゲームはデバイス(端末)を選ばないからです。ゲームだけ遊べる専用機、DVDやブルーレイも見られるゲーム機、ゲームもできる携帯電話、など過去の変遷が、ゲームの広がりを物語っています。直近では、ウェアラブルやVR(仮想現実)端末による新たなゲームの"体感"が期待されるなど、AIをはじめ最先端のIT技術との親和性が非常に高いこともゲームのアドバンテージです。2つ目の理由、これは私が確信していることですが、ゲームの本質部分はシミュレーション技術だということです。ゲームは、世界最先端のコンピュータであるゲーム機の性能を使って、プレイヤーの全ての動きを想定してプログラミングしています。したがって、長期で見れば、最高のコンピュータで作られた洗練されたゲームのシミュレーション技術は使い方次第で、医療や教育などのトレーニングに応用できたり、経済・金融における予測に活用できる可能性があると考えています。

これまでゲームが社会に提供する価値は、ストレスの解消など精神的充足面が中心でしたが、当該シミュレーション技術の応用・発展により新たに社会的課題を解決するなど、ゲーム産業の新たな未来が楽しみでなりません。

私はゲーム産業を興した創発メンバーの一人として、ゲームの新たな可能性を具現化できるよう、その礎を築いていきます。

3.経営課題

現在のテーマは、持続的成長のためのリスクコントロール

私の経営者としての集大成がこれからの第4ステージ('17/3~)です。主たるテーマは、成長戦略を確実なものとし企業価値を更に向上させるためのリスクコントロールです。

過去と今後の経営ステージ

私が経営者として大きな企業リスクと考えるのは主に2つ、「収益変動リスク」と「経営判断リスク」です。経営判断リスクは後述しますので、ここでは収益変動リスクのコントロールについてお話しします。

中長期的な収益変動リスクを低減し、持続的成長を可能にする対策は、(1)コンシューマにおいて、従来の売り切り型のフロービジネスから継続型のストックビジネスへとビジネスモデルを根底から変更すること、(2)当社の基本戦略である「ワンコンテンツ・マルチユース」の徹底展開により、事業ポートフォリオを構築し収益リスクを分散すること、の2つと考えています。

私達が中核事業とするコンシューマビジネスは、前述のようにヒット作の有無により収益が変動してきました。複数のヒット作を分散して発売することで、一定の成果(収益の変動抑制)は得ているものの、私が目指す安定成長とまでは言えませんでした。しかし、2013年以降、ゲーム機の本格的なオンライン機能の実装により、過去のヒット作や新作の追加コンテンツの継続的な販売が可能となり、毎年安定した収益をもたらしています。現在のダウンロード売上比率は26%ですが、これを中期的に50%まで改善することで、更に安定性を高めます。また、「ワンコンテンツ・マルチユース」はこれまでコンシューマの変動を補完するほどの規模ではありませんでした。しかし、今やモバイルやPCオンラインがゲーム機として市場の75%を占めていることに加え、双方ともストックビジネスであることから、人気コンテンツ(IP)のマルチユース展開の徹底により、更に安定収益比率を向上させます。

カプコンの最大の強みは、上記2つの対策の核となる「多数の人気IPを保有していること」にあります。

私は、ヒットビジネスと呼ばれるゲーム産業において、持続的成長可能な経営体制と戦略を構築し、企業価値を高めていきます。

中期経営目標の進捗分析

中期経営目標 2014年3月期からの5ヵ年(累計)目標

営業利益累計(2014年3月期~2018年3月期)700億円 2018年3月期の営業利益率 20%

中期経営目標の進捗分析(1) 累計営業利益

営業利益額ですが、累計目標値から、2017年3月期計画までの4期分を差し引くと、2018年3月期の営業利益は235億円となります。この高い数値を達成するには、「自社の成長」は当然のこと、「テンセント社との協業などアジアビジネスの拡大」との両輪が必須です。

したがって、2018年3月期の自社タイトルは、2017年3月期と同等かそれ以上のラインナップを予定するとともに、ダウンロード比率の更なる向上と合わせて、利益を上乗せしていきます。また、アジアビジネスは前期から本格的に開始しており、現在は『モンスターハンターオンライン』(MHO)が先行しています。月額の売上は計画通り推移しており、当社業績への貢献はまさにこれからとなります。『MHO』で徹底的に成果を上げるとともに、他のタイトルや中国以外のアジア地域でも展開していきます。

【オンライン統合報告書2016】[成長戦略] オンラインビジネスの立て直し

今の説明を事業セグメント別で申しあげます。逆算した2018年3月期のセグメント毎の数字は図表の通りで、デジタルコンテンツ事業およびアミューズメント機器事業の2つは達成可能圏内です。一方、アミューズメント施設事業、その他事業の2つは、達成困難です。2018年3月期を今期計画並みの数字と置き換えた場合、この2つでの未達額は66億円となります。

したがって、自社部分で最低10%の成長は果たしていきますが、このマイナスを含めた残額は、期初で計画に含めていなかったアジアビジネスの成長で補っていきます。

事業セグメント別営業利益 (億円)

  '14/3 '15/3 '16/3 '17/3 '18/3 '17/3-
'18/3
'18/3
実績 実績 実績 計画 逆算値 差異 累計目標
デジタルコンテンツ事業 45 102 122 143 158   570
アミューズメント施設事業 16 9 7 8 45 (37) 85
アミューズメント機器事業 71 27 28 30 44   200
その他事業 10 7 5 2 31 (29) 55
全社費用 (39) (40) (42) (47) (42)   (210)
営業利益 計 103 106 120 136 235   700

注)'18/3の数値は、累計目標から'14/3~'16/3実績および'17/3計画を控除した値

中期経営目標の進捗分析(2) 営業利益率

次に営業利益率ですが、図表の通り、16%まで改善してきています。残りの4ポイントは、自社事業により、1ポイントずつ着実に改善していくことをベースに、アジアビジネスでの上積みも含めて20%を目指します。たとえアジアライセンスを除いたとしても、1~2年遅れ程度で達成したいと考えています。

今の説明を事業セグメント別に5年分申しあげます。
まず、アミューズメント施設およびその他事業ですが、中経目標の達成は困難の見通しです。消費税の増税などにより市場が低迷したことに加え、新開発ビルも中経策定時には見込んでいなかったこと、などが要因です。アミューズメント機器事業は、2014年9月のパチスロ機型式試験のルール変更以降、利益率が低下しています。しかしながら、来期は原価管理の徹底により、利益率を改善できると考えています。

一方、デジタルコンテンツ事業は、概ね目標値を達成しつつあります。主な要因はコンシューマにおける、(1)外注タイトルの改善、(2)内作タイトルの効率化、(3)ダウンロード売上比率の向上、によるもので、モバイルやPCオンラインの不調を補っています。

連結の営業利益率20%を達成するには、未達の事業を穴埋めする必要があります。それらはデジタルコンテンツ事業でカバーしていきます。モバイルやPCオンラインの利益率は現在ゼロに近いですが、30%まで上げることが可能なビジネスです。加えて、利益率の高いアジアライセンスビジネスが拡大すれば、デジタルコンテンツ事業の営業利益率を30%にすることも可能であると考えています。

事業セグメント別営業利益率 (%)

  '14/3 '15/3 '16/3 '17/3 '18/3
実績 実績 実績 計画 目標
デジタルコンテンツ事業 6.8 22.5 23.1 24.2 22.0
アミューズメント施設事業 15.2 10.2 7.7 8.9 15.0
アミューズメント機器事業 30.8 36.3 21.1 20.0 27.0
その他事業 38.6 30.8 25.0 10.0 45.0
連結営業利益率 10.1 16.5 15.6 16.0 20.0

4. 業績説明

3期連続の営業増益を達成、持続的成長の端緒を開く

(1) 足元の市場動向

ゲーム市場の短期的な動向ですが、2015年は858億ドル(前年比24.7%増)となりました。大きく伸長した理由としては、モバイル市場が新興国を中心に拡大速度を上げていることによるものです。また、2016年においても942億ドル(前年比9.8%増)と引き続き成長を見込んでいます。2015年と同様、モバイル市場がカジュアルユーザーを中心に拡大継続するためです。なお、コアユーザーで構成されるPCオンラインやコンシューマ市場はモバイルと棲み分けはされているものの2014年規模で頭打ちとなる見込みです。

(2) 2016年3月期の業績

このような状況下、当期(2016年3月期)の業績は、売上高770億21百万円(前期比19.8%増)、営業利益120億29百万円(前期比13.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益77億45百万円(前期比17.1%増)と3期連続の営業増益となりました。

増収増益の主な要因は、(1)シリーズ最新作『モンスターハンタークロス』が大人気を博し300万本を突破したこと、(2)『バイオハザード0 HDリマスター』など過去のヒット作のHD版が手堅く販売本数を伸ばしたこと、(3ダウンロードによるリピート販売が伸長したこと、によるものです。また、3期連続の営業増益は、過去3期にわたり中核事業であるコンシューマ・オンラインビジネスの仕組みを変更する改革を断行したことで、収益性が大幅に改善したことにあり、中期的な収益変動リスクを低減する仕組みが整いつつあります。

また、期初に掲げた4つの課題に対しては、まず、2つの主力タイトルは実績470万本と期初計画450万本を上回りました。ダウンロードコンテンツ(DLC)ビジネスは期初計画90億円に対して実績109億円、『モンスターハンター エクスプロア』はダウンロード数が300万を突破しました。ただし、アミューズメント機器事業は一部パチスロ機の苦戦もあり営業利益計画30億円に対して28億円に留まりました。

1 主力ソフト『モンスターハンタークロス』と『ストリートファイターV』の販売計画合計450万本を達成
2 DLCビジネスの計画(売上高90億円)を達成
3 『モンスターハンター エクスプロア』のヒット
4 パチスロ機の型式試験運用方法の変更に対応した機種を発売し、計画(営業利益30億円)を達成 ×
(3) 2017年3月期の業績予想

次期(2017年3月期)は、売上高850億円(前期比10.4%増)、営業利益136億円(前期比13.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益90億円(前期比16.2%増)と4期連続の増益を計画しています。その根拠は大きく2つあります。
1つ目は、デジタルコンテンツ事業において、3つの大型タイトルを投入するコンシューマを中心に、モバイルやPCオンラインの回復により売上高590億円(前期比12.2%増)、営業利益143億円(前期比17.5%増)を計画していることです。
2つ目は、アミューズメント機器事業において、パチスロ機を4機種発売するなどタイトル拡充により、5.5万台(前期比1.3万台増)を販売することで、売上高150億円(前期比12.4%増)を計画していることです。

私は、当社が企業価値向上のために持続的成長が可能な企業であるとの信頼を投資家の皆様から獲得するには、実績で証明するしかないと考えていますので、毎期計画の達成に全力を尽くしていきます。

5. CSR(社会的責任)

ゲーム会社として社会課題に向き合い、共通価値を創造

(1) 当社のCSRの基本的な考え方

私は、事業活動が社会に及ぼす負の影響を防止・軽減する従来型の社会的責任(CSR)だけでなく、事業活動を通じて社会的課題を解決し社会に価値を提供することで、自社にも経済的価値をもたらす「共通価値の創造(CSV)」を推進することが、企業価値の向上に繋がると考えています。

「生活必需品でないゲームが社会にどのような価値を提供するのか?」この疑問に対する解決の糸口に気付いたのは、遡ること50年前です。当時私は、駄菓子屋を営んでいました。ある時、店の軒先に置いていた綿菓子機に子供達が列をなしているのを見て、子供たちを夢中にするのは綿菓子ではなく作る過程(遊び)であると気付きました。そして、「経済成長は富とともにストレスも溜めている。大人もやがてゲーム(遊び)を必要とする。」と確信したのです。その後、インベーダーブームを皮切りに、いまやゲームは9兆円の産業となり、近年はeスポーツとして従来のスポーツ同様に楽しまれるなど、世界中でストレス解消の手段の1つとして社会的価値を生み出してきました。

(2) 地域社会との関わり

基本戦略「ワンコンテンツ・マルチユース」の推進により、広く社会に貢献していきます。具体的には、当社の人気コンテンツを活用した地方創生活動として、(1)経済振興の支援、(2)文化振興の支援、(3)治安向上のための啓発支援、(4)選挙投票の啓発支援を行っています。例えば、(1)では地方自治体と連携して町興しを支援しています。
人気コンテンツ(知的資本)を用いたイベントの開催や世界観の実体験など、若年層やファミリー層への訴求により、地元への観光支援として大きな経済効果をもたらしています。また、(2)(3)(4)についても、共通する課題は若年層の集客やアプローチであり、博物館や警察、選挙管理委員会などへ能動的に提案し、定量的な成果を出しています。一方、上記4つの活動から当社にもたらされる価値は、(1)イベント参加による既存ユーザー(ファン)の満足度向上、(2)中高年層のゲームへの好感度向上、です。特に(3)は、現在ユーザーとして取り込めていない層であり、当社の人気コンテンツが地元へ貢献する中で、身近なスマートフォンなどを通じて、新たなゲームユーザーになる可能性があります。

また、教育支援活動として、ゲームとの正しい付き合い方を啓蒙するリテラシー教育やキャリア教育を実施していることも当社ならではです。これは、ゲームに対する青少年の健全育成面での社会的不安を取り除くための取り組みです。

(3) 従業員との関わり

ゲームソフトの開発費の約80%が人件費で占められていることからも分かるように、ゲーム産業は「労働集約産業」ならぬ「知的集約産業」として、人材がとりわけ重要な経営資源です。

私は、グローバルで通用するコンテンツを創出するには、ダイバーシティが重要と認識しており、育児休業、短時間勤務による子育て支援や女性従業員の幹部登用に加え、グローバルな人材の確保・育成を推進しています。

また、人材の育成が開発力の強化に直接繋がることから、職種ごとの専門スキルの習得やゲーム制作の実践的な経験を高めるための育成プログラムなどを実施しています。加えて、新たな研究開発ビルを建設し、世界最先端の開発設備や技術を取り揃えるなど、開発者のやる気を引き出す充実した開発環境を整備しています。報酬面では、通常の賞与に加え、タイトル別インセンティブやアサイン手当制度を導入し、モチベーションの向上を図っています。

しかし、私は、人材育成で最も重要なのは、新しいことに挑戦できる環境を与えることだと考えています。一般的に、経営者は従業員に「もっと新しいことにチャレンジしろ。」ととかく言いがちですが、挑戦させるのであれば、きちんとセーフティネットを用意してあげることが必須です。ネットも敷かれていない空中ブランコで背中を押されても、誰も飛び出したくはないでしょう。新しいことにどんどん挑戦させて、「うまくいかないこと」を見つけ、対策を練るのが経営者の役割です。そうすれば従業員も失敗を恐れることなく挑戦することができ、それがビジネスチャンスを生み出す好循環になります。私が取り組んでいる「経営の見える化」は、従業員が自由闊達に成長・活躍する場を与える役割も担っています。

6. コーポレート・ガバナンス

客観性を重視し、会社が長く存続するための「仕組み」をつくる

当社は、企業価値、特に経済的価値の持続的向上を目標としており、そのための「成長戦略」を推進しています。

一方、成長戦略を加速させるほど比例してリスクは高まりますが、このリスクの回避もしくは低減に有用なのがガバナンスであると考えています。

リスクには大きく「収益変動リスク」と「経営判断リスク」がありますが、ここではガバナンスの活用でコントロール可能な「経営判断リスク」についてご説明します。

対策1. 数字を主体とした「経営の見える化」

私は、企業規模や事業特性の変化に合わせて、経営者も経営スタイルを柔軟に変えていくことが肝要と考えています。

例えば、会社が小さい時の経営は、いわゆるプロペラ機による有視界飛行です。現場に行くなどして自分の目で確かめて判断することができます。一方、会社が大きくなれば、ジャンボジェット機を操縦するようなものですから、これを有視界で操縦するのはリスクが高すぎます。したがって、飛行機の操縦では計器飛行に切り替えるように、企業経営では数字を主体とした判断に変えていかなければならない、ということです。

したがって、私は、経営判断する材料(資料)を原則数値化させています。具体的には、資料は対売上比、対前年比、対計画比など比較対象を示し、複合的に組み合わせてチェック可能にすることで問題点を見つけ出しやすくしています。更に、当該資料は、社外取締役による監督にも活用してもらうことに加え、IR活動で投資家にも活用していただく。この一連の仕組みを私は、「経営の見える化」と呼んでいます。業務の可視化に基づく経営判断に、二重の社会の目でジャッジを加えることで、経営の透明化を図る仕組みです。

また、私は、開発者と話す時も数字を共通言語にしています。定性的な言葉や文章だけでは担当者の恣意性が入る余地が大きいのに比べて、数字は様々な角度から照合できるのでリアルな状況として判断できるからです。

「うまくいっている事業は放っておけばいい。経営者の仕事は、問題を抱えていたり、計画通りにいかなかったりする事業をうまくいくように変えていくことである。トップは現場に足繁く通うのではなく、判断するために存在しているのだ。」今私が進めているリスクコントロールの仕事は、創業者として培ってきた経営ノウハウを次世代メンバーに実戦で教えるとともに、経営を「仕組み化」して、将来にわたって会社が確実に機能するようにすることです。

対策2. 社外取締役を中心とした機関設計

当社は、これまでに17年間にわたり、諸種のガバナンス改革を断行してきました。

2002年3月期から社外取締役制度を導入したのを皮切りに、2016年6月には取締役の社外比率を50%まで向上させています。

社外取締役比率推移(%)

ある投資家の方から「創業オーナー企業は、経営の意思決定の迅速さや環境変化への対応について優位性がある一方で、独断専行のリスクがあるのではないか?」と指摘されたことが契機です。

社外取締役の選任基準は導入当初から現在も変わらず、一言で言えば、「各分野で最高レベルの"良識"を持つ専門家に、当社の経営・事業活動を冷静に判断していただくこと」です。

事業投資リスクを回避することを優先課題として、「業界事情を斟酌せず、創業者にも物怖じせず、正論を意見できる日本トップクラス(経営危機管理・法令・行政)の方々」を選任し、一般社会の視点で妥当性を判断していただきます。

更に、2016年6月に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。安定した企業運営をしていくためには、リスクマネジメントを徹底できる経営基盤をより一層強化する必要があります。今回の移行は、取締役会の監督機能の強化に加え、迅速な意思決定による機動的な経営展開や海外機関投資家の理解を高めることを目的としています。

監査等委員会設置会社への移行

図:監査等委員会設置会社への移行

私が、この機関設計の変更を決意した最大のポイントは「妥当性の監査」にあります。従来の監査役会設置会社は「適法性の監査」に重点を置き、法的リスクは回避するのですが、経済的価値の向上にガバナンスを活用するには、業務執行の妥当性を監査する機能が必要と常々考えていたからです。2012年3月期に業務監査委員会を設置したのは、当該機能の重要性を認識していたからにほかなりません。

監査等委員会設置会社への変更により、社外取締役は、取締役会の数値化された資料だけでなく、直下の組織である内部監査部門から集約した情報からも妥当性をチェックできます。

その結果、より合理的な判断が下せるようになることで、成長戦略を確かなものとし、経済的価値、ひいては企業価値の向上に寄与すると考えています。

7. 株主還元

上場以来、26年間配当を継続する信念

(1) 配当に関する基本方針

私は株主の皆様への利益還元を経営の重要課題の1つと考えており、財務構造や将来の事業展開などを勘案しつつ、安定的な配当を継続することを基本方針としています。

私が安定配当を大切にする理由は、例えば年金生活で配当を生活費の一部として生計を立てている方にとっては、急に無配・減配になると死活問題になります。定期的かつ安定的に収入が入ることで、将来の生活設計をしっかり立てることができます。これは私が若い頃、父を亡くし、小売店を起業したものの、生活が困窮する中で、日々の安定収入の有難さを感じたことが背景にあります。

多様な株主の皆様の中にも、このような方々がおられると思うからこそ、1990年の上場から26年間、一度も無配にしたことはありません。

上場以来の1株当たり配当金 (円)

図:上場以来の1株当たり配当金

株主還元の方針として、(1)投資による成長などにより、企業価値を高めるとともに、(2)安定配当を旨としながら、業績水準に応じた配当を継続すること(配当性向30%をイメージ)、(3)自己株式の取得により、1株当たり利益の価値を高めること、としています。

経営者の社会的責務は、人を雇用し、企業を成長させ、利益を上げ、税金を納め、配当を支払うことで、ステークホルダーとの共存共栄の関係を構築することだと、私は考えています。したがって、配当をこの10年間で2倍にしたことに加え、株主資本を効率的に活用することも重要と考え、ROEを過去3年平均6.7%から8~10%まで上げる目標を掲げています。

(2) 当期および次期の配当

当期(2016年3月期)は、コンシューマで大型タイトルやリピート販売が寄与し増収増益となりました。したがって、2016年3月期の配当は、上記の基本方針に則り配当性向29.0%となる年間40円を継続しました。

次期(2017年3月期)の配当は、配当性向25.0%となる年間40円を予定しています。なお、配当性向が30%を下回っていますので、次期の連結業績予想を達成した場合、増配の検討が必要と考えています。

今後も投資の原資を確保しつつ、業績水準に応じた段階的な配当金額の引き上げや、自己株式の取得などにより、株主還元を強化していきます。

私は、この業界に50年の経験を持つ経営トップとして、過去33年間の成長を上回る企業成長を図り時価総額を増大させることで、株主の皆様のご期待に応えてまいります。

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