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開発者インタビュー2008

05.カプコン・インタラクティブ,INC. プレジデント / 湯浅 緑

無名パブリッシャーから、業界4位へと躍進 新規参入のカプコンが推進した北米成長戦略

広報  北米におけるカプコンの携帯電話向けゲーム配信事業の市場シェアが上昇しましたが、北米モバイルコンテンツ事業を統括するカプコン・インタラクティブのプレジデントとして、成長の背景にはどのような事業努力があったのでしょうか。
湯浅  当社シェアが上昇したこの時期は、同時に市場全体が大きく変化した時期でもありました、外的変化で最も大きかったのは、直接配信会社の絞り込みです。北米には15社のキャリアがありますが、15社全てが、直接配信・直接契約をするコンテンツパブリッシャーの数を、2006年より最大で7社まで絞りこみました。今までは北米市場でのパブリッシャーは15〜20社程度でしたが、実際のところトップ7社にならないとビジネスとして成功しないのです。そういう市場環境下で、運よく我々はその7社に入ることができました。これが順位を上げた大きな要因です。
広報  トップ7社に選定された要因としては、コンテンツの質の高さもあったのではないでしょうか。
湯浅  もちろんそうですね。キャリア側にはいくつか選定基準があります。過去5年の売上高、直近1年間の売上高、それと過去1年間の技術力です。アメリカの場合はキャリアがQA(Quality Assurance、品質管理)を行い、ホスティングをしてユーザーへ配信します。この点は日本のシステムとは大きく異なっています。従って、バグの多いタイトルを提出するとキャリアの負担が大きいので、キャリア側としては技術力が高く、欠陥商品の少ないパブリッシャーを選びます。それから、ブランド力、タイトル力という評価側面もあります。1年間に50タイトルほどリリースしてそのうちどれかが当たれば良い、という戦略を採る会社もありますが、一方で当社の場合は、10タイトルをリリースし、その10タイトル全部をトップセラーにランクインさせるという戦略ですので、クオリティも、コンテンツの魅力の面でも、キャリアにとって良いパートナーであったといえます。売れないタイトルは絶対出してこない、という信頼感が醸成されたことで、厳しい基準をクリアして当社が選抜されたのだと思います。実際のところ、カプコンはいくつか選定基準を満たしていませんでした。そのひとつが、「過去5年間の歴史」です。カプコンが北米のモバイル市場へ正式に参入したのは2006年であり、他社に比べて約5年遅れているので、過去5年間の歴史や功績といったものは全くありませんでした。しかし、2007年にリリースしたタイトルが全てヒットとなりました。『メガマン2(和名:ロックマン)』や『ストリートファイターII』、『Who Wants To Be A Millionaire』、そして大ヒットとなった『Are You Smarter Than a 5th Grader ?』というクイズ番組のライセンスを使用したモバイルゲームで、当社タイトルは非常に大きな人気を得ました。これまで北米においては、『テトリス』と『パックマン』が過去5年間の不動のトップであり、同2タイトルを越えることは非常に意味のあることでした。今回のヒットで、『Are You Smarter Than a 5th Grader?』は『パックマン』を抜いて2位、『テトリス』に迫りました。こういったタイトルのヒットが、ランキングトップ3に入り、市場シェアを上げた要因です。
広報  『Are You Smarter Than a 5th Grader?』が『パックマン』を越える人気を得た理由は何でしょうか?
湯浅  やはりタイトルが新鮮であったことです。同番組は2007年2月から放映が開始されたばかりでした。一般コンシューマーに受ける知名度のあるブランドであり、ブランドそのものも新しく、かつユーザーに魅力のあるコンテンツだったというのが大きな要因です。『パックマン』と『テトリス』はレトロで昔からの定番タイトルでしたので、やや陳腐化していたところに新しいコンテンツが出てきたという点で、皆様に喜ばれたのだと思います。
広報  携帯電話のゲームユーザーは30-40代の女性のシェアも高いという資料がありましたが、そうした女性に受けるコンテンツや、あるいはプロモーションの手法はありますか。
湯浅  『Are You Smarter Than a 5th Grader?』は、まさにその女性を含めたファミリー層に幅広く支持されたことが大きいですね。この年代の方達は必ずしもプレイステーションやXbox 360などの家庭用ゲーム機を持っていないのですが、しかしもちろん何らかの方法でエンターテインメントを楽しみたいという気持ちもあります。こうした方々に、知名度の高いブランド力のあるコンテンツで、携帯電話という高い普及率を持つメディアを通じて訴求できた点が成功したのだと思います。
広報  販促グッズなどのプロモーショングッズもファミリー層をターゲットとしているのですか。
湯浅  そうですね、これはアメリカの子供たちが学校に持っていくランチボックスです。プロモーション用に制作し、キャリアに配布しています。ご指摘の通りで、基本的にファミリー層を想定し、ブランド価値をいかにユーザーに遡及していくかを十分に検討しています。他のターゲットの例で申しあげると、『Resident Evil(和名:バイオハザード)』の時は、フェイクのピストルをモチーフにしてゾンビキラーキットというのをつけて、銃と弾をセットにして配布したりしました。
広報  『ストリートファイター』や『メガマン』なども、やはりターゲット層が異なっていると思いますが、どのような手法をとられましたか。
湯浅  こちらはデジタル広告のみに絞りました。ユーザー層としては20代後半から30代後半で、初期のアーケードゲームや、ファミコンで遊んで育ってきた人たちが、再びモバイルゲームで遊んでいただいています。大きな試みとしては、アメリカで一番有名なモバイルゲームのデジタルサイト上の広告枠を2週間買い占めたりしています。
広報  カプコン側からキャリアに対する取り組みとしては、どのようなアプローチを行い、効果を得ていますか。
湯浅  キャリア毎に違ったプロモーションを行うことはあまりありませんが、1つのノウハウがあるとすれば、各キャリアの担当者との人間的な相性を考慮して、我々の営業担当者を配置することです。個性のマッチングを適正に行い、基本的な信頼関係を築き、そこからモノが売れるようになる、という流れです。
広報  一貫して対人間力という営業スタイルですね。
湯浅  ええ、そこさえ適正化し、人間関係の礎さえ構築できれば、あとは対処しやすいと思うのです。当社にはマーケティングツールや広告をプログラムとして保有していますし、また当社のタイトルはブランド力、技術力も揃っているわけですから。
広報  カナダでの開発について、現地の人材採用はどのように進められていますか。
湯浅  採用はなかなか難しいですね。開発のパターンは、先ほど申しあげたように、大量生産をする開発の方法と、少数精鋭で限定したタイトルをきちんと出すという2つのパターンがあります。例えばゲームロフト社は大量生産手法で、聞くところによると開発ラインを10本ほど稼動させ、一定の品質のものを次々と出荷するそうです。一方で当社の戦略はいわば「ブティック商品」、高品質なタイトルを絞り込んでリリースするので、開発者の人数は少なくても極めて能力が高いと考えています。かつては、2〜3ヶ月の間に200人程度の面接を行い、実際はその中で1人採用するかしないか、という確率に厳選していました。今年で立ち上げ2年目ですので、中核となる社員が高い技術力を有していないと、今後入社する社員のレベルによっては全体が下へ引きずられる危険性があります。現在20人ほど開発者がいますが、その20人は厳選された少数精鋭です。やはり時間はかかるものの、しかしそれだけ投資する価値があると考えています。その優秀な人材を1人雇うか平均クラスの開発者を2人雇うかの決断となるわけですが、当社はトップクラスの人たちを限定的に採用しています。
広報  200人の中から1人に選ばれるには、何がポイントとなるのでしょうか。
湯浅  順応性が高いこと、それから「あきらめない」という志向です。プログラミング上、様々な端末に向けて開発していると、必ず壁にぶつかる事例があります。アメリカでも機種形態の多様化が進んでいて、例えば最近はフリップ型の端末も出現しているので、今までのコーディング手法では対応出来ない端末も多いわけです。しかしそこで出来ないとあきらめたらそこで終わりです。何らかの解決策があると思い、深く追求できる根性のある人がなかなか少ない。いつものやり方で解答が見つからなかったので、これは答えがないと決めてかかってしまうプログラマーが多いですが、他の組み合わせで試してみるとその一部に解答があったりする場合もあります。様々な試行錯誤を重ねて成功するまで答えを見つける順応性のある人、と言えます。
広報  面接でそのような人物に出会ったら、直感的に見えてきますか?
湯浅  実際には働いてもらうまで分からない部分が多いです。面接と、いくつかの実技試験を受けていただき、そこで及第点だったとしても実際働いてもらわないと何とも言えないですね。ですので、採用後3ヶ月間の試用期間を置いて、その中で見極めていきます。
広報  人材登用については厳しく線を引いているのですね。
湯浅  企業と従業員は相思相愛でないといけないと考えています。従って、会社が嫌だったら出て行ってもらってかまわないし、また経営側も、従業員が努力の結果基準に満たないレベルであれば、ご退出いただく。これは北米のビジネス社会だから出来ることでもあります。
広報  北米でのビジネスは、対人・対ユーザー・対パートナー企業にもシビアというか、日本の慣習とは全く違うスタイルで成り立っていますね。北米におけるビジネスを拡大させ、信頼関係を構築する人材となるために重要なことは何ですか。
湯浅  そうですね、人なつっこいこと、空気感が読めること、行間が読めること、でしょうか。アメリカ社会は、一方的にアグレッシブではいけません。いつ攻めるか、逆にいつ引くかという行間が読める人でないと成功は難しいでしょう。開発にしても営業にしても、また社員との関係にしても同様です。お互い遠慮したり、言いたいことが言えなかったりということは多々あります。それは取引先でも一緒です、ですから、その機微を思いはかれるような人が適切だと思います。
広報  現在の北米市場動向と、今後の開発で注力する点や事業展開などについて、ご説明ください。
湯浅  2008年は市場が大きく変化しているタイミングです。これまではクラムシェル形式(折りたたみ)の電話機が主流でしたが、日本で言うPDA型、アメリカで言うスマートフォン型、すなわちスライダー形式の端末が多く出てきました。さらにタッチスクリーン形式の端末が多く出現しました。一番人気なのがiPhoneですね。iPhoneは20代〜40代の幅広いユーザーに人気があります。アメリカ人はインスタントメッセージや、SMSといったメッセージ機能をよく使うので、iPhoneは、PCの前にいなくてもメッセージ機能やウェッブブラウジングが出来るように調整された、非常によく出来た端末といえます。一方でスマートフォンも、アクティブなデータユーザーが増えて人気が拡大しています。スマートフォンは当初はビジネスユーザー向けに作られたものですが、今や一般ユーザーに向けて安価にプロモーションが行われています。この結果、モバイルゲームユーザーが、これらの新たな端末にどんどん移行しています。このように変化をとげる端末に訴求できるようなタイトルラインナップを強化するため、もちろんカプコンのヒット作もどんどん出していきますが、一方で新たな他社ライセンス系のタイトルも準備しています。MGMの『アメリカングラディエーター』というTVショーがありますが、今秋から出荷しています。
広報  『アメリカングラディエーター』とはどのような番組ですか?
湯浅  視聴者参加型のスポーツ番組です。グラディエーターと呼ばれる戦士が10人いて、一般ユーザーがその人たちと競争するというスタイルです。80年代にとても流行った番組なのですが、そのリメイクが2008年1月から始まり、高視聴率を獲得しています。カプコンの得意なアクション系の要素もあり、通常のTV番組なので一般ユーザーにも広く受け入れられる、という観点からライセンスを獲得しました。
広報  やはり20代の若い男性層をターゲットとしているのでしょうか。
湯浅  全般的にそういった最新端末を持つ方々に受け入れられるでしょう。ただパロディー的な要素や、女性のグラディエーターもいるので、女性視聴者も多く、そういった層も見過ごせないでしょう。これが今秋以降の大型タイトルですね。アメリカ市場は、一般的に4月から9月までは市場は落ち着いており、10月から上昇して、一番のピークが1月〜2月となります。ユーザーはクリスマス商戦で各種新しいハードウェアを買って、それを本格的に使い出すのが、購入後3ヶ月以内と推定されます。そういう流れがありますので、デジタルコンテンツはハードウェアが出荷された直後のタイミングでリリースします。
広報  他に新しいタイトルラインナップの予定はありますか。
湯浅  端末が高機能化して、3D画像も大分動くようになってきました。そこで新作の3Dタイトルを、日本のモバイル開発チームと協力して製作しています。3D画像や高機能端末に向けたゲーム開発は、熟練度から見て日本人の開発者が担当するのが最も効率的ですので、開発を委託して我々が販売する方式にしています。例えば、12月にソニーピクチャーズから、バイオハザードのDVDが出荷されます。そのリリース時期に向けて3Dタイトルを日本のカプコンで制作しています。当社の高い開発力と技術力、そして日本でもパブリッシャーであるという強みを活かした高機能の3Dゲームを北米でもリリースしていくことには意義があるものと思います。
広報  やはりアメリカでも3D対応の機種が増えていくのでしょうか。
湯浅  徐々に、ですね。全部が一斉に切り替わることはないでしょう。
広報  PCゲーム市場では、複数で参加するMMOやMOなどのようなゲーム形態がありますが、モバイルゲームでもそういった新しい形態のゲームは考えられますか。
湯浅  モバイルでは当分難しいでしょう。まず、15ものキャリアが存在していることで、やはり多すぎるという面があります。MMOの面白いところは誰とでも遊べるところだと思いますので、例えばAT&TユーザーはAT&Tユーザーとしか遊べないというのはつまらないでしょう。15キャリアを同時にコネクションするというような壮大なチャレンジも、技術的な可能性としては考えられるでしょうが、やはり実現性が低いように思います。実現してもそれに伴う様々な制約で、むしろフラストレーションがたまるという可能性も捨て切れません。これはアメリカのネットワーク政策の課題ともいえるでしょう。モバイルゲームは1プレイ最大5分間程度で、遊ぶ時間も短い。またモバイルでMMOを実現しようと思えば、アメリカのネットワーク環境では接続を待つ間に最悪数分を要してしまう場合もあります。やはり広大な土地、且つ、キャリアが多い為、これらのインフラの整備には、時間がかかるでしょう。
広報  そういう事情のある北米モバイル市場で、今後カプコンが目指すべきポジションとはどこでしょうか。
湯浅  やはり、トップに残らないと意味がないと考えています。今回はトップ5に入りましたので、次の目標はトップ3に入ることです。トップ5とトップ3はかなり質的に異なっており、トップ3以内のパブリシャーはワールドワイドでビジネスを展開しています。一部地域でピンポイント的に競争できるのは、ある一定規模のビジネスまででしょう。当社のこれまでの事業展開は、北米地域に集中し、北米だけのリソースを使って、ここまで成長しました。しかしトップ3に入ろうと思うのならば、グローバルで成長している企業と同じレベルの環境をまずは整えないといけないでしょう。したがって方策としては、日本と協力して日本の技術力を活かし、3Dゲームに関しては日本からアメリカに輸入する方式を採用します。また欧州とアメリカは端末やビジネス慣習が類似しているので、欧米を一括して運営することでワールドワイドでのビジネス展開を目指したいと思います。
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  1. 07.オンライン開発部 部長 / 小野 義徳
  2. 08.店舗開発部 副部長 / 青木 純也
  3. 05.カプコン・インタラクティブ,INC.プレジデント / 湯浅
  4. 06.キャラクター・コンテンツ事業統括 執行役員 / 徳丸 敏弘
  5. 03.編成室 / プロデューサー ベン・ジャッド
  6. 04.MC開発部 / 部長 手塚武
  7. 01.編成部 部長 / バイオハザード5 プロデューサー 竹内潤
  8. 02.編成室 / モンスターハンターポータブル セカンド G プロデューサー 辻本良三

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