■ アラカルト
宝塚歌劇団演出家 鈴木圭 × 逆転裁判 巧舟 Special対談
第一回第二回第三回第四回最終回

【Special対談:第四回】

司会進行:中井 実(カプコン)

某日某時間。株式会社カプコンにおいて、宝塚歌劇団の鈴木圭先生と、逆転裁判の生みの親、巧舟の対談が行われました。

鈴木先生

鈴木 圭(すずき けい)先生
1998年に宝塚歌劇団演出助手として採用され、翌年4月に入団。演出助手としてジャンルを問わず研鑽を積み、『里見八犬伝』『THE SECOND LIFE』等の演出を担当。その後、2009年に行われた『逆転裁判-蘇る真実-』で、宝塚歌劇とゲームの見事なコラボレーションを果たした。

巧舟

巧 舟(たくみ しゅう)
『逆転裁判』の生みの親。’94年カプコン入社。2000年に『逆転裁判』を企画。以降、成歩堂シリーズ3部作の脚本・監督を兼任し、最新作『逆転裁判4』ではシナリオ原作と総監督を務めた。

中井 実(なかい みのる)
宝塚歌劇とカプコンを繋ぐコラボプロジェクトの発起人。
『デッドライジング ゾンビのいけにえ』ではディレクターとプロデューサーを兼任した。

■ ミステリーは僕の一生のコダワリ

--ものを書くときに、ここを大事にしていますっていうポイントがあれば教えていただきたいんですが、いかがでしょうか。
 僕の本職はゲーム作りですからね。ゲームがどう面白いかというのが一番重要です。小さい頃から、ミステリー、推理小説が大好きで、そういうゲームを作りたいと思ってカプコンに入社して、その夢を叶えたのが『逆転裁判』なんです。僕にとってミステリーは一生のコダワリですね。そして、もうひとつ大事にしてるのが、さっきも少し言いましたけど、普遍性みたいなものです。たとえば、10年後に遊んでも「古いな~」と思われないような物語。いつの時代、どこの国で遊んでも面白いものを作りたいという気持ちで、物語を作っています。
鈴木 なるほど。
--なるほど、ありがとうございました。鈴木先生はいかがでしょうか。
鈴木 うーん…僕は最後に舞台というゴールがあって、そこを目指して書いてますんで、大きな流れというか、起承転結っていうんですかね。ここで持ち上げて、ここでこういうものを掴んで、ここで進めていくっていう大きな流れのほうが大事かなと思って書いてますね。ここで泣かす、ここで笑わす、ここで呼吸をしてもらう、ここで引きつける、引きつけたものをここまで持ってく、だからここはテーマを伝える箱にする、みたいな構成は、非常に大事だと思いますね。あとは繋がりですね。この場面がありました、この場面がありましたっていうのを全部分けて書いてしまったら、多分観てる人はついてこないと思うんですよ。でも気付かぬうちにそこに、「ああ」って納得した上で始まってくれたら、ちゃんと気持ちが入っていけるかなと。だから、繋ぎ繋ぎってのは、大事にしてます。音で行くのか台詞で行くのかナンバーで行ってしまうのか。いろいろありますからね。
--なるほど。
鈴木 さらにそこから一歩入ったところでなにを伝えていくかってときに、観てる人…観客が出演者に入り込んだときに喜べるというか、言われて嬉しい台詞とか。そこに持っていけるよう気をつけてますね。たとえば「あなたのことが好きです」と言われて、言われる側にお客さんが入ったときに 嬉しくないって思ってしまったら、そこに来るまでの構成が失敗だったと思うんです。そうならないように繋いでいくっていうんですかね、ひとつひとつの台詞よりも、大きく繋げていくのが大事かなと思ってます。だからやっぱりテンポって大事だと思うんですよね、引き離さないっていう意味で。
--書きながら観る人の事も考えているんですね。自分の表現したいものと、それを観る人の反応を同時に考えて書くと。
鈴木先生 鈴木 うーん、というより、「書きたい」って思うことが、そこなんです。僕が伝えたいことより、お客さんにこう思ってほしいってことからスタートするっていうか…僕が「お前が好きだ」って言いたいんじゃなくて、お前が好きだって言われて 喜ばせたいってところがスタートになると思うんで、じゃあなんて繋げていこうかなって、そういう感じになるんですよね。たとえば、飽き飽きして疲れてるときに大事なこと言われても、多分あまり残らないと思うんですね。でも、グッと引き込まれてるときにドンとインパクトのある一言を言われると、ずっと覚えていてくれるじゃないですか。それが人間かなと思うんですね。舞台に出てるキャラクターも、そうだと思うんです。お客さんもそう。人間が作っているものなんで、そういう人間らしさっていうのを忘れちゃだめだって、僕はいつも心がけてますね。テンポもそうですね。僕は今ワーッて言ってますから早いかもしれないですけど、飽き飽きしてるときってだるくてゆっくり喋ったりして、そういう感情表現って(テンポに)出てくるじゃないですか。だから、大事にしたいと思うんですね。
 なるほど。
--少し趣旨を変えますが、お2人は書く時間帯は決まっていますでしょうか?
 僕は、はかどるのは午前中ですね。
鈴木 午前中ってのは、早朝ですか?
 9時からです。サラリーマンですから(笑)。鈴木先生はいかがですか?
鈴木 僕は、だいたい夜中ですね。夜は外も静かで、出来ることも限られてるじゃないですか。夜に波乗ろうと思っても、見えないし危ないし(笑)。なので、夜中12時とか1時から、朝6時~7時くらいまでですね。
 なんと…それじゃ、いつ寝るんですか?
鈴木 劇団に行くのが12時くらいなんですよ、だからそれまでですね、寝るのは。毎日そうってわけじゃないですけど、やっぱり夜のほうがはかどります。でも、プロデューサーに質問したくても午前2時だったりして、そういうのは困ったりしますね。
 前にお会いした脚本家の方は、昼間は映画を観たりして、夜になってから「もう書くしかない!」って仕事するそうです。
鈴木 朝の4時くらいから書くって人もいますしね。
--書く時は音楽をかけられますか?
 僕はいつも聴き慣れた音楽をヘッドホンで流してますね。ものすごくゴツいヘッドホンでね、まわりに「話しかけるな」ってオーラを出してますね。
--鈴木先生はいかがでしょうか?
鈴木 僕は書くときは一切聞きませんね。シャットアウトします。
--なるほど。そういう意味でも、夜の方が良いんですね。
鈴木 そうですね。気分転換したくて、あ~って身体動かしながら1回音楽聞いてまた戻るとか、一瞬だけ映像観てそろそろ書こうかなってするとか、そういうのはありますけどね。
 集中力が途切れる感じなんですか、音が入ると。
鈴木 そうですね、なんか気になっちゃうんですよね。たとえば好きな音楽が流れるとそっちに入っていきたくなっちゃうんですよ、自分も。僕はなにか書いてるときはパソコンの中に入っていたいんで、だからそこだけでいられるようにしてますね。

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