アニメ『逆転裁判』のひみつ

2016/04/07

渡辺歩監督×巧ゲームディレクター対談 ~後編~

イメージ

皆さん、4月2日土曜夕方17時半より毎週放送のテレビアニメ「逆転裁判 ~その『真実』、異議あり!~」(読売テレビ・日本テレビ系)第一話、ご覧になりましたか?
見逃した方は、2016年4月9日17時29分までは無料配信中のytvにて、ご確認ください!!
前回に続き、アニメの監督をされている渡辺歩監督と、ゲーム『逆転裁判』シリーズの生みの親であり、今回のアニメの監修を担当した巧舟ディレクターの対談後編!
4月2日の第一話公開後ということで、より一話の内容に迫った対談内容になっております。
非常に熱いトークを、引き続きご覧ください。
どうぞ!!

イメージ

■渡辺 歩監督(左)
(わたなべ あゆむ)
数々の作品を手掛けるアニメ監督。代表作は『ドラえもん』、『宇宙兄弟』、『団地ともお』など。

■巧 舟(右)
(たくみ しゅう)
『逆転裁判』シリーズの生みの親。『ゴースト トリック』、『大逆転裁判』なども手掛ける。

一話の密度も濃厚だった!

――アニメ第一話が放送された後になるのですが(※対談収録は放送前)、実際に1話を見ると、よく入ったな、という情報量になっています。

渡辺:そうですね、かなりの欠番カットも出しました。大家さんのところとか(笑)。

:最初のころ、渡辺監督と脚本家のみなさんで、いろいろ設定を考えていただきましたよね。アパートの大家さんとか、事務所の一階の喫茶店の美人マスターとか(笑)。

渡辺:妄想がふくらんでいましたね。実際にやってみると意外と情報が多くて、これは入らないぞ、と。

:そうでしたね(笑)。

イメージ
▲第一話冒頭、裁判所に向かうなるほどくん。
一見何気ないシーンですが、ゲームを知らない人にも“現代劇”ということを伝え、
他にも“なるほどくんの生活感”、“現在の季節”など、さまざまな情報が入っているのです。

:桜の季節に新米弁護士誕生! という感じで、すんなりサワヤカに入っていくと、実は物語は濃厚にいろいろ詰まっている感じがします。

渡辺:そうですね、キャラの味付けも濃いですし、ストーリーも濃いですし。ときどき、ちゃんと伝わるか心配になったりします(笑)。

:アフレコに立ち合って、みなさんの演技を聴いていると、毎回笑ってしまいますね(笑)。想像を超えるキャラクターの方が必ずいらっしゃるんです。ダークホースで、この人スゴいな、みたいな。

渡辺:意外な人物が、その回の光をすべて持って行ってしまう(笑)。

イメージ
▲アニメでの亜内検事。
アニメでも光りそうなキャラです(とくにオデコが)。

――アニメとゲームの、表現としての違いを感じられることはありますか?

:ゲームはなるほどくんが主人公で、絶対的に一人称の視点で進むんですけど、アニメはそれ以外のキャラクターに光を当てることで、より“ゲキアツ”というテーマが明確ですね。たとえばトノサマンの回では、脚本制作の最初の打ち合わせから、監督が“この事件は九太くんに焦点を当てたいです”とハッキリおっしゃっていて。収録を聴いていて、なるほどな‥‥と思いました。

渡辺:アニメはゲームとはちょっと違った角度で、新しい切り口でと考えています。そうすると、ゲームで描かれている物語がより深くなっていくんです。ゲームとアニメの自由度って少し違っていて、ゲームなら前の場面に戻れることもありますが、アニメは戻れないものですから、経過する時間を濃厚に描く必要がどうしても出てきます。

:ゲームは自由に“時間”が作れますけど、アニメは時間がキッチリ決まっていますから。その時間の中に何を詰め込むかの戦いなんでしょうね。

渡辺:毎回、絵コンテのページとの戦いです(笑)。

:またゲームの場合、セリフはテキストで読む形なので、すべてはプレイヤーの想像にゆだねられるわけですが、アニメの場合は“声”としてイメージが定着するので、収録現場はやっぱり、なごやかな中にも緊張感がありますね。

渡辺:『逆転裁判』はいったんゲームで確立されている世界なので、それをアニメという切り口で、新たに世界を示すことができる。スタッフも声優さんも、プレッシャーと同時に、使命感をもって打ち震えて(笑)、臨んでいる形だと思います。

:アフレコの現場も“熱い”ですよね。

渡辺:キャストもそうですし、アニメスタッフの皆が『逆転裁判』が好き過ぎて、使命感を持って作っていますね。

:ゲーム版は“舞台劇”というか、あえて定点カメラで撮っているような感じで、セリフと同じくプレイヤーの想像にゆだねている部分が大きい。そこを、具体的に映像化するのは、きっと難しいんだろうな、と思います。

渡辺:そうですね、小説などでの“行間を読む”ような、受けたイメージを損なわないような感じで、映像化していきたいと思っています。

:心から応援しております(笑)。

映像としての『逆転裁判』

――前回、『逆転裁判』は映像的、というお話をいただきましたが、渡辺監督が感じるそういう部分は、ほかにもありますか?

渡辺:最初に犯人がプレゼンテーションされるところも、非常に映像的ですね。

――たしかに、『逆転裁判』は犯人が最初に提示されて、その化けの皮がはがれていく形の構成ですね。

渡辺:そこが非常に映像的というか、『刑事コロンボ』のような構成ですよね。それが視聴者には、最初につきつけられる謎になりますので、それで「これは何の物語?」となって話が進むうち、「ああ、こういう人間なのか」と解明されていく、という。

:『逆転裁判』は、必ず真犯人が証言台に立つという、不思議な構成なんですよね(笑)。

渡辺:そこが良い意味で“違和感”と“裏切り”というところになっている。一番、アニメがゲームから影響を受けている部分でもありますし、大切にしている部分でもありますね。

:『逆転裁判』は、現実の世界をベースにしながら、現実には絶対あり得ない要素が素知らぬ顔をしてまぎれ込んでいる、というところがあって、そのバランスが最も重要ですね。アフレコの現場では、監督、演出家、声優さんと一緒におしゃべりしながらサジ加減を共有するところから始めました。

イメージ
▲さまざまな人物が交錯する法廷。
その会話の迫力は、役者さんの肉声の力による部分が大きいです。

渡辺:そうですね。役者さんたちも、原作者に聞きたいんですよ、どうやったらより良くなるかと。ただ、彼らなりにも、彼らの中で熟成させてきた答えがあって。現場ではその擦り合わせですよね。それがある方が、絶対いいものが録れると思うんです。やっぱり一度、演者の心に入って出てこないと、そこまでにはならないんですね。

:声の演技は本当に難しいですよね。たとえば、このヒトコトはコミカルだけど、そのままコミカルに言うべきなのか、とか。

渡辺:その辺は、演じてくださる梶 裕貴さんやキャストの皆さんも、すごく気を付けて考えてくれています。彼らのフィルターを通すことによって、意外な発見が僕らのなかにもあって。「あっ、これはこういうトーンのほうが成立するな」とか。「意外にギャグなんだ」とかね。僕らが喋らせたいというところとはまた別に、おもしろい化学変化があるんですよね。

:そうですね。みなさん、セリフと映像をシッカリ見たうえで、一番効果的な言い方を練り上げてきていて、頭が下がります。

イメージ
▲アニメでの、なるほどくんのアップ。
ゲームに沿ったストーリーでも、アニメならではの切り取り方で、違った味わいが生まれています。

――細かい話ですが、ゲームの中での矢張の「今世紀最高のカップルだ」という言葉が、アニメではあえて変えられていて、そういったディテールの修正が的確なことにも驚きました。

渡辺:あれに対する、なるほどくんのツッコミも素晴らしいでしょう?(笑)。

――そうですね!

渡辺:あれが後の話にも効いてきますし、そういった一つ一つのワードが説得力をもって入れ込まれているところが“巧節”の真骨頂かと思います。アニメも、その恩恵に浴している形ですね。

:ありがとうございます。「今世紀最高のカップル」というセリフは、ゲームが発売された2001年だったから面白かったわけで、今回2016年仕様にリニューアルしました。脚本家の方々はゲーム版を非常に大切にしていただいて、セリフも原作シナリオから抽出してくれたのですが、「変えていいのかな?」という遠慮があったと思うんですね。そこを変えられるのはぼくなので、いろいろ手を入れました。逆に、「このセリフは外せない!」というポイントを知っているのもぼくなので、なるべくそこは活かしていただいたり。

渡辺:ボクらとしては、ゲームどおりじゃない、ゲームを踏まえたうえで、新しいものが作られていく形になります。ゲームを知った人は、新しい発見があるものを、ゲームを知らない人は、これを踏まえたうえで、ゲームを始めてみたくなるようなものになっているかと思います。

:温故知新、というヤツですね(笑)。

渡辺:同じ話なんだけれども、二度おいしい!(笑)。

――また、アニメ第1話で千尋さんの“あのセリフ”の入り方は、ゲームファンならグッと来るのではと思うのですが。

イメージ
▲ゲーム版には無い、しかしゲームを知るファンにはより楽しめるやりとりが、アニメ版で楽しめるようです。

:あのセリフ、原作の第1話では言ってなかったんですよね、確か。これは脚本担当の冨岡さんとのやり取りで起こった化学反応ですね。いただいた脚本に入っていたので、「セッカクなら、その前の場面でこんなフリを入れたら」とぼくがセリフを書き足したりして作りあげました。ゲーム版のシナリオは場面ごとにバラバラに書かれているので、読み通すにはゲームをプレイするしかないのですが、脚本チームのみなさんは、しっかり物語の隅々までポイントを押さえていただいて、本当にありがたかったです。

渡辺:それは、ホントにそうだと思います。最初は脚本チームがゲームをベースに全体の構成を組み立てて、それを“核”としてアニメの方向性を決めていった。その中で、巧さんと協議をして味付けをしたり、改変をされていきました。これは本当に、巧さんでしかできない作業でもありますので、良い形で影響とヒントをもらって完成されたものです。ここまでの質に仕上がるものは、ボクの数少ない経験の中でも、そうは無い形かと思います。

:ここまで出しゃばる人は、そうはいないですよね?(笑)。

渡辺:いえ、良い意味で出しゃばっていただけて、ありがたいです。ただNGを出すのではなく、「こういう場合、こう変えるのはどうでしょう?」と提案できるというのは、実はスゴイことなんです! キッチリとした原作者である、ということですね。また、その代案の精度が高く、スピードが速い!

――ホメ殺しに近いですね、巧さん。

:ぼくは、ホメられて伸びるタイプですから(笑)。

渡辺:また、役者さんも、そういう指摘を聞きたいんですよね。これまでのスタッフ間の意見のキャッチボールで熟成されてきたものと、アフレコ現場での役者さんの解釈との擦りあわせですね。それがある方が、絶対に良いものが録れると思います。

:そう言っていただけると助かります。アフレコに参加させていただいて、「今回は少し出しゃばり過ぎたかな」とか、いつも悩みながらではありますけど、新幹線で大阪に帰るときには毎回、充実感があります。

イメージ
▲裁判長も、法廷の中で状況を左右する、非常に重要な役割です。
アニメでの存在感も、かなりのものでした!

渡辺:そこが良いんじゃないですか? そういう意味で、一生懸命さや一途さ、というのが、巧さんという人なんだろうな、と。でなければ、『逆転裁判』という作品が、そもそも生まれてないでしょうから。少年期に得た体験がベースになっている、というのを聞いたときに、ボクの中で、非常に合点がいった形でした。

:“学級裁判”のことですね。初期のシナリオ会議で、あれが自分の実体験だったとお話ししたら、みなさんに予想外に同情していただいてビックリしました(笑)。

渡辺:そういった体験をする中で、なるほどくんは、世のためになりたい、とか、同じような境遇の人を救いたい、というところが、彼の最もベーシックな部分、精神の支柱となっている。似た体験をされても、そういったところにたどり着かない人が大半だと思いますので。

:そう言っていただけると、濡れ衣を着た甲斐があります(笑)。

渡辺:そういう部分で、成歩堂とカブる部分が、巧さんの中にある気がします。

――『逆転裁判』スタッフのお話や、初期シリーズでキャラクターデザインを担当された岩元さんのインタビューなどでも、「なるほどくん=巧さん」というお話は出てきますよね。

:正直なところ、キャラクターを作る技術が無かったので、自分の“素”で書くしかなかった、という感じです。

渡辺:でも、それが細かい部分で活きるんですよね。アフレコでのセリフの細かいニュアンスの部分でも、ご自身の中になるほどくんがいるからこそ、スタジオ内で「異議あり!」と言うことができる。

:あ、なるほど(笑)。

渡辺:そういう意味では、アフレコスタジオは法廷そのもので、巧さんはなるほどくんなわけですよ。ボクは矢張あたりの立ち位置かもしれません(笑)。

イメージ
▲アニメならではの角度の、なるほどくん。
巧さんもスタジオで“異議あり!”と言っていた?

“熱”がもたらした感動の最終回!?

――最後に、制作真っ最中だと思いますが、現在の手ごたえなどはいかがですか?

渡辺:そうですね、なかなか自分では言いにくい部分がありますが(笑)、脚本は巧さんの協力の下、大変素晴らしいものになっています。現在はシナリオがすべて完成している状況ですが、最終回などは、ボクは一読してホロリとしてしまいました。大変“ゲキアツ”な内容になっているので、これはぜひとも良いものにしなければいけない、という使命感に燃えております。

:すごくうれしいです。実は先週、最終話まで走り切ったばかりなのですが、「早く監督に読んでもらいたい!」と思っていました。

渡辺:これは、いつか巧さんにお礼を言わなければと思っていて、メールでは失礼だ、どこか機会があれば直接言わなければ、と思っていたんですが‥‥それが、今だったんですね(一同笑)。

:(笑)この場をお借りして、ですね。

渡辺:『逆転裁判』シリーズのすべてが入っているものになっていると思います。大変感動しました。ありがとうございました! あとは、これをどう味付けして、料理してやろうか、というところですね。“アニメならではの要素をそこに追加していきたい!”と、アニメスタッフ一同で考えております。アニメチームとしては非常に良いシナリオを預からせていただいたな、と思っております。

:そう言っていただけて、何よりです。

――巧さんは、実際にアニメの制作に関わられて、いかがでしたか?

:僕も作り手の端くれですから、今回、アニメの現場の皆さんとエネルギーの共有ができてよかったです。また、ひさしぶりに昔の自分のシナリオと真正面から向き合う機会にもなって、これも個人的に刺激になりましたね。“逆転”のプロジェクトでは、いつもすばらしい出会いがあるのですが、今回も、渡辺監督に手がかけていただいてよかったと思っています。次回からいよいよ真宵ちゃん、御剣検事も本格的に登場するので、ぜひ、これからもアニメ『逆転裁判』を見ていただけるとうれしいです。

渡辺:アニメスタッフ代表として言うのですが、掛け値無しに“逆転裁判が好き”というスタッフが集まったものですから、作品が客観的に見れているかが心配になりますが、大変“濃い”仕上がりになっていますので、ぜひこれからの放送も、楽しんでください。

:とても楽しみです(笑)。

渡辺:また、ゲーム最新作『逆転裁判6』では成長したマヨイちゃんに会えますので、合わせてよろしくお願いいたします(笑)。

――(笑)。本日はお忙しい中、ありがとうございました!!


さて、いかがだったでしょう?
渡辺歩監督やアニメスタッフ、そして巧ディレクターの『逆転裁判』への“ゲキアツ”な想いを、感じられる対談だったと思います。
これから毎週土曜の夕方17時半には、ぜひテレビアニメ「逆転裁判 ~その『真実』、異議あり!~」(読売テレビ・日本テレビ系)をご覧いただければと思います。

また、『逆転裁判123 成歩堂セレクション』も、好評ダウンロード販売中です!
(4月18日(月)9:59まで半額セール!)

イメージ

ニンテンドー3DS版『逆転裁判123 成歩堂セレクション』ダウンロード
※ニンテンドーアカウントがあれば、上記サイトからダウンロード版の購入が可能です。
※ゲームのダウンロードには3DS本体および無線でインターネット接続できる環境が必要です。

ぜひ、ゲームもご確認ください!!

イメージ

関連記事

今週の逆転通信

2017年8月17日
「逆転四コマ」を更新!
2017年7月20日
「成歩堂龍ノ介のミステリークイズ」を更新!
2017年7月13日
「逆転四コマ」を更新!