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『デビル メイ クライ』シリーズを愛する週刊ファミ通編集者たちが、実際に『デビル メイ クライ HDコレクション』をプレイ。
当時の思い出で振り返りつつ、新たに生まれ変わった『デビル メイ クライ HDコレクション』をレビューする。

  思い出すのは、いまから10年以上昔のE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ。北米で開催される世界最大のゲーム見本市)。世界中から注目が集まるプレイステーションのカンファレンスの舞台で、あるゲームクリエイターが身振り手振りを交えて新作タイトルの思想を熱く語っていた。彼の口から出てくる単語は、
 「爽快」「かっこいい」「スタイリッシュ」
 新発売のジーンズのプレゼンを聞いているのかと錯覚すら覚える単語の羅列だったが、会場中の視線は釘づけとなり、あちこちから「ブラボー!!」の声が飛んだ。「ピーピー!!」と甲高く飛び交う口笛の音は、耳をつんざくほどだった。

 お披露目されたタイトルはカプコンのプレイステーション2用ソフト『デビル メイ クライ』
 日本のゲームが、間違いなく世界のゲームトレンドの発信地点だったことを証明する象徴的な作品であり、そのプレゼンテーションだった。
 発売された『デビル メイ クライ』を見て真っ先に思ったのは、「いい意味でケレン味のあるゲームだな」ということ。プレゼンで強調された"かっこよさ""スタイリッシュさ"を徹底的に追い求めるため、非常に割り切った"はったり"を利かせた作りになっていたのだ。好き嫌いの分かれる画面固定視点を逆利用し、美しいグラフィックを実現。固定カメラだからこそのこだわり抜いた映像アングルは、そこだけ切り取ってポスターにできるくらいの迫力と美しさを醸し出していた。小気味のいいアクションも出色で、八頭身美男子のダンテがくり出す華麗な剣戟がガンアクションは、ただボタンをガチャガチャと押しているだけで自分をゲームの主人公たらしめてくれたものだ。それぞれが意思を持っているかのような個性的な敵キャラ、考え抜かれたステージ構成、そして謎解き……。後のアクションゲームの土台に大きな影響を与えたエポックメイキング的な作品だったと、俺はいまでも強く思っている。とくに、初代『デビル メイ クライ』は。当時のアクションゲームは、ハードの制約もあって"グラフィックの美しさ""緻密なアクション"が二律背反のような関係にあったが、欲張りな『デビル メイ クライ』はどっちも捨てずに追いかけた。その結果が、シリーズの大ヒットにつながった。

 そんなことを懐かしく思い出しながら、装いも新たに登場する『デビル メイ クライ HDコレクション』をプレイしてみる。ROMを入れてしばらく待つと、色っぽい女性の声が英語で「DEVIL MAY CRY~(うふん)」と発音。思わずつられて「でヴぃるめぇいくらぁ~い(うふん)」と口に出して言ってしまう。それを聞いていた同居人が「……あんた、昔から『デビル メイ クライ』やると同じこと言うよねww」と思い出し笑い。自分ではまったく記憶になかったが、俺は力士が取組前に塩を撒くように、毎度毎度「でヴぃるめぇいくらぁ~い」と言っていたようだ。
 そして、ゲームがスタート。『HDコレクション』の最大のウリはハイデフ化された映像にあるのだろうが、正直俺は画面を見るまで「そこまで違いが出るのかな?」と思っていた。というのも、前述の通りオリジナルの『デビル メイ クライ』はプレイステーション2用ソフトの中でも指折りのグラフィックを誇っていたので、そこまでの恩恵は受けられないだろうと感じていたのだ。「多少画面が明るくなって、発色がよくなっていれば御の字」。そんなことまで考えていた。
 で、画面を見たわけだが……。
 俺は「さっきまで知ったかなことを考えていた俺よ、いますぐファントムに喰われて死んでくれ!!」と言わんばかりに驚きの声を出した。
「うは!!! ぜんぜん違う!!!!!」
 発色、明るさ、細かなディテール、そして迫力と、オリジナル版とまったく違う! オリジナル版では見づらくてイラッとさせられた場面でも、暗がりまで緻密に描かれたグラフィックの美しさでノーストレスだ。もちろんこれは『デビル メイ クライ 2』、『デビル メイ クライ3 Special Edition』でもまったく同じで、"壁走り"をして建物の屋根に上り、あたりの景色を眺めているだけで満足できちゃうってくらいのシロモノである。

「こんだけ見やすくてキレイならば、アッと言う間に昔の勘を取り戻して、Sランクを連発できるに違いない」
 レッドオーブを集めて少しずつダンテの技を増やしながら、"スタイリッシュさ"を肝に銘じてザコを相手に立ち回る。多彩な技を出して敵を圧倒し、逆に相手の技は美しくスルーすることで上のランクが近づいてくるのだ。うん、いいぞ。この感じだ! 流麗な剣舞と問答無用のガンアクションに自分で見惚れながら、俺は瞬時にミッションをクリアーした。その結果は……。
"ランクC"
 オイ待て。Cってナンだ? ABCのC?? もしかして、A<B<Cって感じで、Cがいちばんいいんだっけ……? アレ? じゃあSってのはナンだ……??
「おっかしいな……」
 首を捻りながらつぎのミッション。ここでも自分なりにかっちょよく立ち回れたと思ったが、ナゼか結果は"ランクC"。さらに2回続けてCを取り、本格的に「Cがいちばんいいのかも」と思い始めたころ、前出の同居人にこんなことを言われた。
「思い出したw 前にやってたときもランクCばっか出して、"ミスターC"って呼ばれてたよねwww」
 ………………。
 ……まあ考えてみたら、悪名高き"ファントム"にボコボコにやられ、"シャドウ"にも"ネロ アンジェロ"にも"グリフォン"にもやられまくってイエローオーブをすべて使い尽くしている俺が、Sなんか取れるわけねーんだよな……。

 それでも、ゲーム中の俺(ダンテ)はかっこいい。ザコに斬られて「はう!」っとなる姿すらスタイリッシュだ。
『デビル メイ クライ』をプレイするときは、制作者の術中にハマってしまうのがいちばんいいと俺は思う。自己陶酔してダンテになりきり、ガチャガチャとコントローラを叩きまくっているだけで最高に楽しいのだ。ガチャプレイですら美しい、唯一無二のゲームかもしれない。オリジナルをプレイしたのが10年も前なので、『1』も『2』、『3 SE』も新作を遊ぶのと同じ気分で没頭できる。そういう意味では、もっとも旬なタイミングでHD化されたタイトルと言える。
「くぬやろ! くぬやろ!」
 画面のスタイリッシュさとは裏腹に、口を突く言葉は下品極まりない。
 でも、これがいい。
 いまも昔も、『デビル メイ クライ』には「くぬやろ!」がよく似合う。