DEAD RISING 4 Special Edition

柳田理科雄氏 監修 空想科学研究所

ひょっとしたらゾンビより怖い『デッドライジング 4 スペシャルエディション』のEXOスーツ!

オソロシイですなあ、ゾンビ。
あのヒトたちは、すでに死んでいる。だから、殴ろうと、蹴ろうと、斬ろうと、撃とうと、何をしてもダメージは与えられない。崩れそうな体で、平然と向かってくる。
また噛まれた人間もゾンビ化してしまって、どんどこ数が増える。

むえ~っ。そんな厄介な連中に立ち向かう方法なんてあるわけないから、この原稿はもうここで終わりに……と思ったのだが、『デッドライジング 4 スペシャルエディション』をやってみると、おおっ。このアクションシューティングゲームは、明確な答えを示しているではないか。そう、対ゾンビ最終兵器「EXOスーツ」を着ればいい、と。ホントですか、それ!?

ゲーム中、ゾンビの群れと必死に戦っていると、「EXOスーツ」と書かれたケースが目につく。スイッチを押すと、電気火花が走って鎧のようなスーツが装着される。

手足の関節部にボリュームのある装置がついているから、おそらく使用者が体を動かすと、その力を増強する「アシストスーツ」の一種なのだろう。

このアシスト能力がものすごい!
パンチやキックを見舞えば、ゾンビはバラバラになりながら吹っ飛んでいく!
道路の信号機を引っこ抜いて武器にできる!
さらに、他の機械を装備すると、ブリザードや電撃などが放てる!

一挙に形勢を逆転し、ゾンビどもを蹴散らせるのだ。うひょひょーっ。これはもうメチャメチャ嬉しい!もうゾンビなど怖くありませんぞ。

EXOスーツを着ると、いったいどれほど強くなるのか?
ゲームの画面から、そのパワーを明らかしてみたい。

◆道路標識を引っこ抜く!

科学的にたいへん興味深いのは、EXOスーツに身を固めた主人公のフランクが、道路標識や信号機を武器にすることだ。
ゾンビにはどこで襲われるかわからないから、道路設置物を武器として活用するのは、臨機応変のスバラシイ対応である。

でも、それらを武器にするなど、そう簡単にできることなのか?
たとえばフランクは、高さ2mぐらいの信号機を、根元から引きちぎって武器にしていた。

ゲーム内では簡単にやっているが、信号機の支柱をちぎるというのは恐るべき行為である。
描写を見ると、その支柱は、日本の道路標識の基準で「直径8.91㎝、肉厚4.2㎜」に近いもののようだ。これを引きちぎるための力を計算すると、ぎょっ!なんと54tだ。
これ、どれほどの力かというと、陸上自衛隊の10(ヒトマル)式戦車を持ち上げられる力。あの戦車は44tだから、EXOスーツを着れば余裕で持ち上げられる!
一気に強くなったものですなあ。

それだけではない。フランクは、道路標識も武器にしているが、こっちはもっとすごい行為だ。
なぜなら、ゲーム画面をよく見ると、支柱の根元に縦横60㎝、高さ70㎝ぐらいのコンクリートの塊がついている。これは「引きちぎった」のではなく、このカタマリごと「引っこ抜いた」ということだ。

画面で描かれているコンクリート塊は、重量が620㎏ほどと思われるが、もちろん620㎏の力では引っこ抜けない。まわりのコンクリートから、底面と側面で破断させねばならないからだ。
これに必要な力は、ぬわんと1100t!さっきの20倍だー!16両編成のN700系新幹線は715tだから、EXOスーツを着れば新幹線1両編成が持ち上げられる!

しかもフランクは、このコンクリート塊つきの支柱をバットのようにぶん回し、ゾンビたちをドカドカ殴り飛ばしている。果ては、焼け焦げた軽トラックまでぶっ飛ばす!

うーむ。オソロシイことですなあ。
プロ野球選手のバットは重さ850gぐらいだが、フランクが振り回すコンクリート塊つき支柱はその730倍も重いのだ。しかも重量が先端近くに集まっている。
仔細に計算すると、これをバットと同じ速度で振り回には、バットを振るときの910倍の力が必要で、当たった衝撃も910倍になるはずである。

ってことは、これでぶっ叩かれたゾンビは、プロ野球選手910人に一斉にバットで殴られるよりヒドイ目に遭っているのだ!あ。いま調べたら、プロ野球機構に所属する選手は全部で840人だから、全員が参加してもまだ足りない。

すげー。なんか、ゾンビが少し気の毒になってきた……。

◆ゾンビは125m飛んでいく!

驚くべき話は、なお続く。いちばん基本的な攻撃ともいうべき「パンチ」の威力がものすごいのだ。
フランクがEXOスーツに身を固めてパンチを打つと、一振りでゾンビ数人がふっ飛ぶ。
普通パンチ一発で複数人を倒すことはできないから、どうなっているのかとゲーム画面を注視すれば、ややっ。
1人のゾンビを殴り飛ばし、その体を激突させることによって、後方のゾンビも飛ばしている!いや、これはすさまじいパンチだ!

とばっちりで飛ばされたゾンビの人数を5人、飛んだ距離を3mと考えよう。
彼らの身長を180㎝、体重を80㎏とすると、その1人を3m飛ばすには、直接殴ったゾンビがぶつかる衝撃で、後方に時速25㎞で飛ばす必要がある。
そして、直打したゾンビの運動の勢いは5人に分散されるから、フランクは1人目を時速25㎞×5=時速125㎞で殴り飛ばした計算になる。
現実のボクサーのデータから計算すると、このパンチ力はアッと驚く3400t!

こ、これはそのゾンビが気の毒だ。
後ろに他のゾンビがいたから、みんな揃って飛ばされたけど、このヒトしかいなかったら、彼は125mも飛んでいったはず。
こんなパンチを食らったら、飛ぶ前に死ぬでしょうなあ。いや、もう死んでるんだけど、もう一度死ぬような気がします。

◆絶対零度など、どこ吹く風だ!

そしてもう一つ。他の機械を装備して繰り出す「アップグレード」のなかから、筆者が目を見張ったのは、アイスアップグレードだ!

なんとアイスクリーム製造機を装備すると、ブリザードが放てる。ゾンビたちは一瞬にして凍りつき、クルクル回りながら上空へ飛んでいく……!

上空へ飛ぶのもさることながら、注目したいのは、ゾンビが一瞬で凍りつくことだ。
いったいどれほど低温のブリザードならそんなことが可能なのか!?

遠洋で獲れたマグロは、内臓を抜かれ、急速冷凍されて市場へ運ばれる。冷凍室の温度はマイナス-50℃だが、凍り始めるまで30分、完全に凍りつくまで2時間を要するという。
なのに、ゾンビは一瞬で凍る!凍りつく時間が1秒だとしたら、マグロの冷凍の1800分の1の時間で凍ってしまうということ!
これはもう、生半可な低温では実現できないことである。
筆者があれこれ仮定して計算したところ、ブリザードの温度は……ええっ!?マイナス6万3000℃!? なんじゃそりゃあ!
温度には上限はないが、下限がある。それはマイナス273.15℃の「絶対零度」であり、すべての原子のエネルギーがゼロになっているので、それより温度が下がることはない。
それは筆者もわかっておりますが、ゲームのような現象を起こすには、マイナス6万3000℃のブリザードを放たないとムリ!という計算結果になってしまうのだ。
わーっ。いったいどうしたらいいのでしょう!?

恐ろしいゾンビと戦うには、これほど恐ろしい装備が必要ということであろう。
いや、むしろそんな装備を着こなしてゾンビを蹴散らすフランクこそあまりにオソロシイ! さすがは「人類最強のフリージャーナリスト」とも呼ばれるフランク・ウェスト、その異名に偽りなしである!

【空想科学研究所】

空想科学研究所では、漫画やアニメ、ゲームなど人間の想像力が生み出した世界を「空想科学の世界」と呼んで、そこでの出来事を科学的に検証しています。

柳田理科雄

柳田理科雄

作家・明治大学理工学部兼任講師。東京大学理科Ⅰ類中退。『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』シリーズの著者。『EMIRA』『電ファミニコゲーマー』で連載中。近刊に『スター・ウォーズ空想科学読本』がある。「理科雄」は本名。執筆のほかに講演会や実験教室も精力的に行っている。

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