大倉崇裕×巧 舟 スペシャル対談!

初代『逆転裁判』[注1]から、2015年7月9日発売予定の最新作『大逆転裁判』に至るまで、
『逆転裁判』シリーズを牽引し続け、ミステリ好きっぷりをいかんなく発揮し続けるディレクター巧 舟と、
『福家警部補』シリーズ[注2]や『白戸修』シリーズ[注3]など、
多くの人気ミステリ小説シリーズをお書きの作家 大倉崇裕氏の対談が実現!

ミステリ作家から見た『逆転裁判』シリーズや、お互いのルーツとなった作品など、
ミステリへの熱い思いを濃密に語っていただいた。

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ミステリ作家:大倉崇裕(おおくら・たかひろ)
1968年、京都府生まれ。学習院大学法学部卒。
1997年、『三人目の幽霊」で第4回創元推理短編賞佳作となり、翌98年に『ツール&ストール」で第20回小説推理新人賞を受賞。
著作に『三人目の幽霊』『七度狐』『白戸修の事件簿』『無法地帯』『オチケン!』『BLOOD ARM』などがあり、『福家警部補の挨拶』をはじめとする「福家警部補」シリーズで人気を博している。
ブログ:Muhoの日記
Twitter:@muho1

明治時代の闇にときめく!

――冒頭部分をプレイしてみて、『大逆転裁判』のご感想はいかがですか?

大倉  初期の『逆転裁判』からの進化を強く感じましたね。ベースは一緒なんですが、別次元です。グラフィックはもちろん音楽もとてもよくて、盛り上がるときにかかる曲なんか、プレイヤーの感情とのマッチ具合がとてもよかったです。今回は舞台が明治時代の日本とロンドンだけれど、内容はまごうことなき『逆転裁判』の正統進化ですね。

  時代が現代から明治時代になったので、お話の方向性に影響が出ました。現代と違って科学捜査もないし、道を往来しているのは車ではなく馬車という……。そういうクラシックな世界観はいかがでした?

大倉  ミステリものですと、今回登場するシャーロック・ホームズはもちろん、江戸川乱歩作品にも見られる、時代が持つ陰の部分が舞台として効果を生んでいるので、これらの時代をテーマにした作品はすごい好きなんですよ(笑)。

  ミステリ好きな方だと馴染みがある時代ですよね。

大倉  そうですね。

  今回、『大逆転裁判』の発表にあたって、ミステリ作家の方とお話しさせていただく機会が何回かあったのですが、作家のみなさんと僕のミステリ体験に近いものがあって、すごくうれしいですね。綾辻行人[注4]さんともお話しさせていただいたのですが、綾辻さんがデビューされた頃って、新本格派ミステリ[注5]の登場!ということで、日本のミステリ界が活気づいた時期じゃないですか。あの洗礼は大倉さんも受けられていたのですか?

大倉  私は1968年生まれなんですけど、「新本格」として綾辻さんが『十角館の殺人』[注6]を出されたとき、じつはまだミステリ小説を読んですらいないんです。私が本を読み始めたのは、大学時代にやっていた、山登りでの暇つぶしがほしかったという理由で。ただ、いきなり文学なんて読めないですから、まずはミステリだろうということで読み始めました。ただし、当時はお金がないから新刊が買えないんですよ。たまたま訪れた古本屋にアガサ・クリスティ[注7]の作品があって、アガサ・クリスティの名前は流石に知っていたので買って読んでいたら、名作といわれている『ナイルに死す』[注8]に当たって、虜になりました。そこからミステリをどんどん読み始めたんです。

  じつは僕も大倉さんと同じで、海外の古典から入っているんです。僕のチームに入ってくる若いスタッフも、ミステリ好きな人間はいるんですけど、やはり新本格から入るパターンが多いんです。自分とは原体験が違うので、ちょっと感じ方が違うのかな、という気がします。そういう人たちにとってはなじみが薄いかもしれませんが、『大逆転裁判』の舞台になる19世紀のイギリスは、ミステリ的には定番の世界じゃないですか。

大倉  一番いい時代ですよね。ミステリが生まれる余地がある。

  本当にそうです。今回、作品を作るにあたって初めて19世紀について調べたのですが、この時代ってまだ科学捜査がないなかで、指紋やカメラなど、現代にもつながる新しい技術が登場してきている時期なんですよね。同時に、「シャーロック・ホームズが現代にも存在しないような独自の技術による科学捜査をしていたかも?」という夢も見られる、とてもおもしろい時代なんです。このゲームでは、現代人からすると、ある種異世界な19世紀のロンドンをみなさんに紹介するイメージだったので、その世界ではありふれている日常のなかで起きる事件を、異世界ならではのロジックで解いてもらうというのが魅力的で、みなさんへの引きになるのではないかなと。

大倉  聞くだけでワクワクしますね。現代の日本では、何かが起こりそうな暗闇を作るのもひと苦労ですけど、昔のロンドンや、昭和初期の時代は、自然と闇を作ることができるので、そういう部分のおもしろさもありますよね。

[注1]『逆転裁判』
主人公の弁護士となって、無実の罪着せられた依頼人の無実を、ムジュンを突くことで立証し、事件の真相を暴く「法廷バトル」という新たなジャンルを作り出したゲーム。第1作目は2001年発売。

[注2]『福家警部補』シリーズ
大倉崇裕による推理小説。大倉氏が愛する『刑事コロンボ』シリーズへのリスペクトもあふれる。
2006年に『福家警部補の挨拶』、2009年に『福家警部補の再訪』、2013年に『福家警部補の報告』が刊行されている。

[注3]『白戸修』シリーズ
大倉崇裕による推理小説。大倉が第20回小説推理新人賞を受賞した「ツール&ストール」をはじめとする短編が収録された『白戸修の事件簿』が第1作で、続編として『白戸修の狼狽』、『白戸修の逃亡』が刊行されている。

[注4]綾辻行人
日本の推理作家。
大学在学中に『十角館の殺人』でデビューし、以降は『館』シリーズ、『囁き』シリーズ、『Another』など、様々な作品で注目を集め、「新本格派ミステリ」というジャンルを作り出したひとり。

[注5]新本格派ミステリ
1980年代以降、「純粋にトリックを楽しむことに回帰すべきである」と考えた作家たちによって書かれたミステリ。
「孤島」や「雪の山荘」を舞台とした惨劇など、「古典的な本格ミステリの定番やお約束を意識しつつ、現代性が盛り込まれた、ミステリ作品」と定義されることも多い。古典的本格ミステリと一線を画す作品群。

[注6] 『十角館の殺人』
大学の推理小説研究会に所属する主人公たちが、角島と呼ばれる孤島の十角形の屋敷で起こる惨劇に巻き込まれる推理小説。

[注7]アガサ・クリスティ
イギリス出身の推理作家。名探偵エルキュール・ポアロとジェーン・マープルの生みの親。
『オリエント急行の殺人』や『そして誰もいなくなった』など、現代においても愛され続けるベストセラー作品を執筆した。
人呼んで「ミステリの女王」。

[注8] 『ナイルに死す』
アガサ・クリスティが1937年に発表した推理小説。ナイル川を遡る観光船を舞台に起きた殺人事件に、名探偵ポアロが挑む。

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