巧 舟 スペシャルインタビュー!

ひそかにカプコンの歴史を紹介するマイカプコンコラム「カプコン伝説」。
その第34回での巧さんインタビュー「海をも越える大逆転」は、実は序章だった!?
今回ここに、完全バージョンを公開です!
巧ディレクターのカプコン入社から『ディノクライシス』を経ての『逆転裁判』の立ち上げ、
そして、カプコン伝説で語られた『大逆転裁判』の開発秘話に加え、
なんと『逆転裁判』ナンバーシリーズを踏まえたうえでの『大逆転裁判』のキャラクター創りに言及!
超ボリューム、1万字越えのインタビューです!!

『大逆転裁判』始動!

――今作『大逆転裁判』の企画スタートは、どのような感じだったのでしょうか?

巧:2013年の初めに、「今までの『逆転裁判』ナンバリングのシリーズとは別に、もうひとつの『逆転裁判』を作ってみないか」という話があったんですが、そこで「シャーロック・ホームズ」をねりこんだゲームの企画を考えたのが“始まり”でした。

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『大逆転裁判』は、 “シャーロック・ホームズありき”で作られていた!?

――最初から、シャーロック・ホームズの登場が前提だったんですか!?

巧:他の方向性も検討しました。
新しい切り口として“民事裁判”はどうだろう、とか。
でも、“遺産分与でモメる家族の調停!”とか“チカン冤罪の示談!”と、題材がナマナマしいうえに、決着がハッキリしないゲームになりそうだな…と思って(笑)。

――たしかにそうですね(笑)。

巧:もともと『逆転裁判』は、“ミステリー”をゲームにするとき、それまで一般的だった『選択肢を選ぶ』という方式ではなく、もっと直感的に推理を入力する方法はないか? という命題に、“ムジュンを指摘する”という答えを出したところから始まった企画だったんです。

――なるほど! たしかに『逆転裁判』は、“選択肢を選ぶ”モノとは、ひと味違うゲーム性になっていますね!

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テキスト入力や行動選択ではなく、相手や証拠の矛盾点を推理・指摘するという、独特なゲーム性を持つ『逆転裁判』。

巧:そこから考えて、主人公は探偵ではなく“弁護士”、舞台は事件現場ではなく“法廷”がいいだろう、ということになりました。
ただ、その命題のもうひとつの答えとして、「推理をすべて間違える名探偵のロジックを修正して、正しい真相に導く」というミステリーのゲームも作れないかな、と考えていたんです。
それが、『シャーロック・ホームズ(仮題)』というゲームのアイデアだったんですね。

――今回の新システム“共同推理”にあたる部分ですね!それは、いつごろから企画を考えられていたんですか?

巧:2000年代…『逆転裁判』か『3』の頃だったと思います。

――そんなに昔だったんですか!?

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今回の新システムの一つ“共同推理”。
それは、巧さんが10年以上温めてきたアイディアの結晶だったのです!!

――それを『逆転裁判』のゲームに合わせよう、というスタートだったんですか?

巧:いつの日かホームズさんのゲームを作りたいと思っていたので、この機会に合体させて、強引に実現してしまえ!と、たくらみました。
だから、今回の企画の始まりは「シャーロック・ホームズ」だった、と言えますね。

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『大逆転裁判』の重要キャラクターである、シャーロック・ホームズ。
見事に、巧さんの世界のキャラクターとして成立しています。

巧:今回、ホームズさんを題材に選んだのは、実はいろいろな意味がありました。
ゲームシステムはもちろんですが、今回の企画はナンバリングのシリーズとの差別化も重要なテーマなので、それには時代を変えるのが一番分かりやすいし、ミステリーとして今までとは違う、新しいこともできる。
あらゆる意味で、今回の企画にピッタリだったんですね。
そこで、ホームズさんの生きたころ、日本はどんな時代だったんだろう…と逆算していって、世界観ができていきました。

――ホームズが登場するというところで、巧さんは“19世紀のロンドン”に、どういった印象をお持ちですか?

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『大逆転裁判』のメインの舞台である19世紀の倫敦(ロンドン)。

巧:中学生の頃「シャーロック・ホームズ」に出会ってから、当時の時代を舞台にしたミステリーばかり読んでいたんですね。
だから、想像ではあるけれど、自分の中で、あの時代の空気は、かなり親しみのあるものなんです。
調べてみると、あの時代…ビクトリア朝の終わりごろというのは、指紋が証拠として採用されて科学捜査の歴史が始まったり、カメラや蓄音機、自動車などの技術革命があったり、蒸気機関やガス燈から電灯へ移行があったり、とにかく時代が大きく動いた、面白い時期だったんですね。
その巨大なエネルギーみたいなものが、物語の底に流れています。

――なるほど! ちなみに、巧さん自身が一番お好きなホームズの作品はどれですか?

巧:これはよく聞かれるのですが、本当に答えづらい質問ですよね。
やはり第一短編集に収録されている12本が、わかりやすいと思います。
ホームズさんといえば“名探偵”の印象があると思うのですが、実際には、たまに失敗してくやしがってみたり、ワトソンさんとの友情があったり、非常に人間味あふれる方なんですよね。
そういう魅力は、多くの作品を読めば読むほど深まるので、いろいろ読むと楽しいと思いますよ。

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ホームズの言う“通俗小説”である原作。
発行から1世紀以上経っても、世界中に愛読者がいる名作です!

――今回は全編シナリオ制作を担当されたということで、大変だった部分はありますか?

巧:ひさしぶりに『逆転裁判』シリーズのシナリオを書くということで、やはり『逆転裁判』の『1』から『3』のクオリティに負けないものにしないと…というプレッシャーには苦しみましたね。

――過去の『逆転裁判』に拮抗・対抗できるものでなければならない、ということですか?

巧:そうですね。
そんなプレッシャーもあって、カンを取り戻す前にペース配分も考えずとにかく書き始めたのですが、いろいろな事情で構成が二転三転したりして、とにかく暴れ馬のようなシナリオに振り回されていましたね。
シナリオって、最初から最後までキチンと決めて計算どおりに書いていく、というイメージがあるかもしれませんが、そううまくはいかないんですよね。
書きながら思ってもみない方向性が見えてきたりして、特に今回は、ナゾの巨大なエネルギーに動かされた部分を感じました。ホームズさんのパワーなのかな…。
ミステリーは“意外性”が大事ですが、計算された意外性を超えた、作り手ですら「ここへこう来たか」という驚きがあったりして、なかなか一筋縄ではいかない物語になっていると思います。
20年もゲームを作っているんだから、そろそろ自在にコントロールできないものかな、と思ったりしますね(笑)。

――そこが“モノ作り”の奥深いところなのかもしれませんね。

巧:チームのスタッフが、恐らくあたたかい目で見守ってくれていたのも大きいですが、今回はスケジュールも含めて、本当にギリギリまで作り込んでいますね。

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現時点での、巧さん作品の集大成の部分がある『大逆転裁判』。
第一話から“主人公が殺人容疑者!?”という、ものすごく緊張感のある展開となります!

大逆転キャラクター創作秘話!?

――では、『大逆転裁判』のキャラクター造形に関しての質問です。
ポリゴンを活かしたキャラクター制作という部分で、『ゴーストトリック』から始まり、今回の『大逆転裁判』という部分になったかと思いますが、そこで苦労された部分や、新たに演出された部分はありますか?

巧:『ゴーストトリック』は最終的には2Dのグラフィックですが、そこから『レイトン教授vs逆転裁判』、そして『大逆転裁判』へ…と、以前のゲームのモチーフが、より膨らんできているという印象はありますね。
『ゴーストトリック』では、キャラクターの全身を見せる舞台劇という方向性だったので、スポットライトを使ったり、キャラクターが踊ってみたり、『逆転』とは違う見せ方を考えたのですが、その見せ方を『大逆転裁判』でも応用、発展させています。

――たしかに『ゴーストトリック』では、スポットライトが印象的な演出でしたね!

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スポットライトが効果的に使われる『ゴーストトリック』。その手法が、『大逆転裁判』にも継承されています!

巧:『大逆転裁判』ではモーションキャプチャーを取り入れたのですが、それは「シャーロック・ホームズ」の原作で、ホームズさんが、人間のちょっとしたしぐさ、目の動きから驚くべき推理する…という有名なシーンをゲームとして再現するために、採用しました。
そういうわけで、重要な表現になるのが「目の動き」ですね。
今回、初めて「目の動き」を制御できるようにしたので、それをゲームの序盤で象徴的に見せたい…と思って考えたのが、『目が泳ぐ龍ノ介』です。

――ああ、たしかに! キャラクター紹介映像を見ても、すごく目が泳いでいますね!!

巧:あれが、今回ぼくたちが最も言いたかったコトですね(笑)。
今回、主要なキャラクターは、視線を制御できるようにしたのですが…想像以上に作業量が増えて、ぼくたちの目も泳ぎ出しましたね。
そのぶん、演出の効果はかなり上がったので、泳いだだけのことはあったかな。
モーションキャプチャーも、ただリアルな動きを表現するだけではなく、いかにも『逆転』らしい使い方をしているので、それも楽しんでいただければと思います。

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目が泳ぐ龍ノ介。ここに、『大逆転裁判』ならではの演出効果が含まれていました!

――では、個別のキャラクターについてお伺いできればと思います。まず主人公“成歩堂龍ノ介”に関してですが、『逆転裁判』シリーズの新主人公という部分も含めて、巧さん的に意図した部分はありますか?

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今回の主役、成歩堂龍ノ介。
成歩堂家の雰囲気を持ちつつ、学生らしい初々しさも持っています。

巧:『逆転裁判』のなるほどくん…成歩堂龍一と、王泥喜法介を作ったときに考えていたのは、“主人公はプレイヤーの分身でなければならない”ということでした。
そのため、シナリオを書く上で強い個性づけはせず、自然なキャラクターにしようと思っていました

――ほかの開発の方々によると“なるほどくんは、そのまま巧さんだ”というコメントもありますが?

巧:“特別な色をつけないキャラクター”ということで、自分の素のままの言葉でセリフを書いているのですが、それが、結果的にぼく自身を反映してしまっているのかもしれないですね(笑)。

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『逆転裁判』に登場の学生時代のなるほどくん。
「性格が巧さんそっくり」というお話も、よく聞きます。

巧:『逆転裁判4』のオドロキくん、“王泥喜法介”というキャラクターを考えるときには、成歩堂龍一との差別化を意識して、一人称を「オレ」に変えたり、新しい個性を作ろう、というのがテーマでした。

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『逆転裁判4』でのオドロキくん。「みぬく」能力などが新たに設定された、『逆転裁判4』の主人公です!

巧:もちろん、新しいキャラクターには新しい個性が必要なのですが、やはり主人公は、書き手である自分に近い存在であるほうが書きやすいというのも事実なんですね。そこで、『大逆転裁判』を企画しているときに浮上したのが『先祖』というキーワードだったんです。
明治時代の成歩堂、というイメージで書けば、時代の力に引っぱられて、特に意図的に差別化をしなくても、自然に新しくて馴染みのあるキャラクターが生まれるだろうと(笑)。

“成歩堂家”という一族の個性づけなので、龍一くんをご存じのみなさんにはすんなり受け入れやすく、これまでのシリーズを知らない方にも、親しみやすい主人公になっていると思います。

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ゲーム中、豊かな表情を見せる龍ノ介。
“成歩堂家”らしい(?)、さまざまなリアクションも必見です!

――亜双義に関してはいかがでしょう? 逆転裁判の味方側のキャラクターとしては、かなり一直線なキャラクターになっているかと思います。

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非常にまっすぐなキャラクターである亜双義。
デザインは、刀の位置など、龍ノ介との対比も考えて成立しています。

巧:亜双義に関しては、設定が決まるまでは時間がかかったんですが、アートディレクターの塗くんのデザインがよかったので、キャラクターデザインはすんなり決まりましたね。
龍ノ介がイギリスに留学するきっかけを作ったり、ストーリー上でも非常に重要なキャラクターなので、描き方が本当に難しいです。

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龍ノ介と深い友情で結ばれている亜双義。
彼を支える、思慮深いキャラとして描かれています。

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